2016年12月3日土曜日

書評: 生産性 〜マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

『成果が出せない時に、“成果が出せていないから、せめて頑張る姿勢だけでも示さないと”と考える人がいるんです。たとえば10の成果が求められているのに、スキルが足りなくて2しか出せていないとします。・・・(中略)・・・そういうときに、「どう働き方を変えれば、もしくは、どんなスキルを習得すれば、同じ8時間で成果を2から10に上げられるか」と考えるのではなく、「成果が2しかできていなくて申し訳ない。せめて1日13時間働いて、頑張っていることを示そう」と考えてしまう人がいるってことです。たぶんそれまでの人生で、「頑張るコト」自体が評価されると刷り込まれてしまったんでしょう。』
HBR 伊賀泰代氏に聞く「働き方改革」の本質・・・マッキンゼーは、長時間労働じゃないですか?・・・より)

このコメントを読んで、すぐに伊賀泰代氏の次の本を買った。

生産性 〜マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの~
著者: 伊賀泰代
出版社: ダイヤモンド社



■誰もが悩む人材採用・育成の真の課題とは
著者の伊賀泰代氏は、あのマッキンゼーで17年間人事を担当していた人である。そんな著者が、人材採用・人材育成において企業が直面している真の課題は何なのか? それを明確に示しつつ、解決方法についてヒントを提示してくれている。そして、彼女が紐解くヒントの軸がまさに・・・“生産性“・・・。生産性という観点でモノゴトをとらえたとき、果たして従来の取り組み方が妥当なのか? たとえば、採用。伊賀氏は言う。

『生産性の観点からみれば、こういった“とにかく応募者を増やす”方法は、最も避けるべき方策です。なのになぜ、多くの企業がそういう方向に走ってしまうのか。理由はふたつです。まずは“採用人数を増やすためには、応募人数を増やすしかない”と思い込んでいること。つまり、生産性を上げるという発想がないことです。』(生産性より)

頭の良い人には至極当たり前の問題提起だが、私には新鮮な提起だった。この軸を与えられただけで、今まで見えていなかった課題がはっきりと浮かび上がってくる。

■優秀企業の人事術とは
本書の特徴は言うまでもなく、マッキンゼー出身者が書いた本だということ。ただし、昨今、マッキンゼー出身者が書いた本は溢れている。たとえば、「イシューからはじめよ(安宅和人)」「マッキンゼー流入者1年目の問題解決の教科書(大嶋 祥誉)」「マッキンゼー流図解の技術ワークブック」「不格好経営(南場智子)」など・・・私も読んだ。そんな中にあって、本書の特徴を挙げるとすれば、それはコンサルタントではなく、マッキンゼーで人事を担当していた人が書いたという事実である。それは新鮮な目線だ。

ただし、このように書くと、こう思う人がいるに違いない。ブランド力もあって、“超”のつくエリートが勝手に集まってくるマッキンゼーの人事経験が、我々のような一般的な組織に役立つのか?と。私もそう思いながら読んだ。だが、それは杞憂だ。なぜなら、本書で指摘されたポイントは、中小企業である私の会社にもすべて当てはまったからだ。

■果たして役立つ内容が書いてあるのか?
コンサルの書いた本は特に、答えを教えずヒントをほのめかして終わる本が多い。なぜなら、最終的には自分の商売につなげるのが目的だからだ。そう、マーケティングが主目的だからだ。本書はどうか? 私にはドストライクの本だった・・・、それが答えである。その一部を紹介すると・・・
  • 伸びしろが違う人にどう接するべきなのか?
  • 会議の多さをどう減らすべきなのか?
  • 働けば評価される評価をどう見直すべきなのか?
  • 目標難易度に関係なく達成すれば評価されてしまうという課題をどう見直すべきなのか?
  • 個々人の課題をどうやって見える化するのか?
などなど、誰もが知りたい問いかけが多い。こうした課題解決のヒントを得ることができるのだ。

■成長に組織体制の整備がおいつていない会社の管理部やマネジメント層の人に
多分、私にドストライクだったということは、私の会社のような会社に勤めている人・・・中小企業で、成長しつつあるが、その成長に会社の管理体制の整備が追いついていないような会社の・・・管理部やマネジメント層の人に向いているのではなかろうか。

買ってよかった・・・と心から強く思えた本である。


【マッキンゼーつながりという観点での類書】
「イシューからはじめよ(安宅和人)」
「マッキンゼー流入者1年目の問題解決の教科書(大嶋 祥誉)」
「マッキンゼー流図解の技術ワークブック」
「不格好経営(南場智子)」

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

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