2015年5月24日日曜日

書評: 預金バカ

タイトル: 預金バカ 〜賢い人は銀行預金をやめている〜
著者: 中野 晴啓
出版社: 講談社+α新書
キーワード: 投信、長期投信、ポリシー


42歳になって、もう少しお金を賢く活用したいと強く思うようになった。そんな時に書店のランキング上位に見かけた本。投信には興味があったし、そもそも幾ばかりかやっているし、もう少し勉強してみようと思った。

読み始めの感想は、「一般的な内容だなぁ」といったもの。銀行にただ預けることの意味の低さ、株やFXの難しさ等について触れている。「言いたいことは分かってるってばさ」とは私。

ところが読み終わってみて、感じたのは「独立系ファンドのことをもっと知ろうかな」といったもの。つまりいくつかの点で感化されたわけだ。会社と一緒で、長期投資を考えたらそこには太い哲学というか、軸があるべきなのだろう。それができる近い位置にいるのが独立系ファンドと言うわけなのだろう。

さてそんな本書だが最大の特徴は、著者が独立系ファンド立ち上げまでの道のりを、赤裸々に告白していることだろう。まるで起業家の本を読んでいるかのようだった。そうした告白を通じて自分の投信の商品に対する哲学を読者に理解してもらいたい、という著者の最も垣間見える。思惑の是非はともかく、人間が正直に何かを伝えると言うときには、それを読んだ人の共感を呼びやすいのは間違いない。私にもその気持ちは間違いなく伝わった。

この著者の商品を買うべきかどうかは別にしても(買ってもいいかなぁ〜笑)、同じ投信の商品でも、とても大きな違いがあるということを理解させてくれたことに感謝したい。


    山梨県笛吹川のベンチにて


2015年5月9日土曜日

書評: 大人の流儀

ひと言で例えろ・・・と言われたら「人生のメトロノームのような本」と答えそう。

大人の流儀
著者:伊集院 静
出版社:講談社

伊集院静を、テレビ番組(ゴローデラックス)で見かけたのがきっかけだ。態度は不遜な感じで、「なんだろーこの人」と思わされるが、言うことにイチイチ、何か惹きつけられる。子に人生の生き方を説くような父親のような雰囲気を持っていた。

で、「大人の流儀」を買って読み始めたわけだが、第一印象は、“のらりくらり”。エッセイのような思ったことをありのまま、気の向くままに書いたような中身。ある意味、驚きで、文章におきかわっても、そこから伝わってくる雰囲気がテレビで見た場面そのままなのだ。もっと驚きなのは、“のらりくらり”・・・超マイペースに書かれたこの本の販売が100万部を突破したという事実だ。居酒屋で話す親父の言葉を文章にまとめたような印象なのだから。

でも、読んでいると、なぜかイチイチ・・・チクチクと突き刺さるときがあるんだよなぁ。

『私は、人が社会を知る、学ぶ上でのいくつかの条件のひとつは、“理不尽がまかりとおるのが世の中だ”ということを早いうちに身体に叩き込むことだと思っている。・・・(中略)・・・“そんな理不尽な・・・”などと言ってはいられない。なったものは受け入れて、“世の中に理不尽はある。これを機にこちらも改革し、たちむかおう”と、すぐに対処できるかどうかは、その人たちが理不尽を知っていたかが決め手になる。だから、諸君、煙たがられたり、嫌われることを怖れてはいけない。言うべきことをあなたの言葉で言いなさい。それが新人に必要なことだ。』(本書「大人が人を叱るときの心得」より)

人一人の人生の密度の濃さをなめちゃいけない、と直感的に分かっているから、いちいち著者の言葉に反応してしまうのかもしれない。密度の濃い人生を送ってきた人の言葉には、(全部ではないにしても)大いなるヒントがある。40年以上生きてきた私自身の実感だ。著者の人生の密度が濃いかどうかなんて分からないって?まぁ、でも、あの夏目雅子が見初めた人だもの。とにもかくにも本書を読んでいると、まるで、スマフォにハマり過ぎて、リアルな世界やリアルな人との接し方を見失いつつある我々現代人の歪んだ精神を整体してくれるかのよう。

それにしても、やはり“のんべんだらり”としたつかみどころのない書きっぷり。もうちっと、論理的に読者の頭に重要なことがすんなり入ってくるように書けないものかなぁ・・・と思ったところに本の中の一文が目に飛び込んでくる。

『すぐに役立つものを手にして、何かが上手く行ってると思うな。すぐに役に立つものは、すぐに役に立たなくなる』

「ドキッ」。


書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...