2011年10月24日月曜日

ズームアップマイク

日経ビジネス2011年10月24日号。
日経ビジネス2011年10月24日号
本誌で紹介されている”ズームアップマイク”・・・という技術に興味がわいた。これは、30メートル離れた場所の音だけを明瞭に拾うことができる新技術だ。NTTが目下開発中らしいが、試作機はもうできているようだ。

知らない間に、色々な技術が出るものだなぁ。

セミナー会場で、マイクがなくとも出席者の質問を拾うことができたり、サッカー選手のフィールド上での声を拾うことができたり・・・と、用途はつきない。

これから注目だ。

2011年10月23日日曜日

書評: 運命の人

作風が大好きでほとんどの作品を読んできた。そして今回、ついに彼女の最新作「運命の人」を読むことができた。

「運命の人」(全4巻)
著者: 山崎豊子
発行元: 文春文庫

■1人の男を通じて見る沖縄返還史

時は、昭和46年。主人公は、毎朝新聞政治部記者、弓成亮太(ゆみなりりょうた)。政治家・官僚に食い込む力は天下一品、自他共に認める特ダネ記者。沖縄返還をめぐる鮮烈なスクープ合戦の中、弓成自身が、妻が、同僚が、仲間が・・・強大な国家権力の渦に巻き込まれゆく。

この本は、一言で言えば、1人の男の生き様を通じて戦後沖縄と沖縄を取り巻く世界を見つめ直す小説だ。

■山崎豊子節は健在

山崎豊子節は健在だ。作風は彼女の過去の作品、「沈まぬ太陽」「不毛地帯」を思い起こさせる。いつもものすごく近くを見ているようで、どこか遠くを見ている感じがする。全4巻だが、最初の1~2巻を読み終えても、話がどこに向かって進もうとしているのかが全く分からない。それがもどかしくもあり、エキサイティングでもある。

主人公、弓成亮太は山崎豊子氏のレンズであり、そのレンズを通して何かを訴えかけようとしている思いが伝わってくる。

■40年経つ今も何も変わっていない

小説の舞台は、今からなんと40年も前のこと。しかし、古くささを感じない。驚くべきは、今のこの時代2011年・・・この瞬間で起きている出来事と、小説で語られる当時の出来事が非常に似通っている点だ。沖縄を取り巻く、その全てが現代とシンクロしている・・・そんな印象だ。

沖縄国民の感情は、政治家・他の日本国民には、どこまでいっても他人事・・・。

我々は何も変わっていない、いや、学んでいない・・・そういうことなのだろうか。

■タイトルからは想像できない奥深い世界

これ以上、この本について語ろうとする、ついうっかり中身のことをしゃべり過ぎてしまいそうで怖いので、今回はこの程度にとどめておきたい。内容の濃い4冊でありながら、あっという間に読破してしまう・・・それだけ面白い作品ということなのかもしれない。特に、山崎豊子氏の作風が好きな人には、はずせない一冊ではないだろうか。ぜひ読んで欲しい。

【関連リンク】
 ・運命の人 in 渦中の人(ブログ)


バレンタイン17年 ウイスキー

Ballantine(バレンタイン) 17年!!!

バレンタイン17年

つい最近、いただきまして・・・。自分自身ではもちろん手が出ないウイスキー。

最初は、まずストレートで・・・

ん、ん・・・んん!?・・・誤解を恐れず言うと、正直、セ○ダインに似た感じのにおい・・・。まぁ、ウイスキーはみんなそんなものか・・・。

しかし、一口、飲んだととたんマイルドーーー。おおおおーー。嬉しいーっ! いや、おいしいっす。

次に、ロックで・・・。

おお、おおおっ、おおおおおおおおおおおっ!・・・さらにマイルドに・・・。

私にはロックが一番おいしいかもしれない・・・。

ちびちび飲むことにしますが、後、何日持つことやら・・・。

2011年10月18日火曜日

心がとてもポカポカする

ここ数年、心がとてもポカポカしている。

最近嬉しかったこと。

小学校一年の息子が野球に興味を示し始めた。

彼には偏見無く色々なものにトライして、好きなモノをやって欲しかったので、サッカーや野球、ドッジボールなどやらせてきたが、どうやら野球に焦点が絞られてきたようだ。そして、そんな彼が、日に日に投げられる距離が伸びている。また、ボールをグローブに収めることが、ついほんのおとといまでできなかったのだが、突然、昨日できるようになった。そしてキャッチボールができるようになった。それが嬉しかったのか、家に帰ってくると、こっちが何も言わずともグローブを磨き始めた。精神的に上手くまわっているときは色々なはぐるまがかみ合うのだろう。勉強も、あまりこちらから言わずとも手をつけるようになった。

娘は3歳にして早くもおしゃれに目覚め始めた。

先日、西松屋に行ったら、自分で服を選ぶ!といいだし、これだというものを見つけたらそれ以外にもう目がいかなくなったよう。妻に言わせると、センスも悪くないらしい。それに彼女は頑固だがとてもやさしい子だ。3歳の女の子にとって野球など楽しいはずもないのに、お兄ちゃんについていく!とついてきた。すぐに飽きて「帰りたい!」って言うだろうと思ったが、私が息子に野球を教えている間、何も言わずに横で1人黙々と遊んでいた。そんな彼女に先日、どうしても欲しいというので、ピンクのリュックを買って上げたら、これ以上のうれしさはないとばかりに、毎日、背負っている。昨日、買い物にでかけたのだが、そのときも常に背負ってくる始末だ。

「本当は幸せなのに、それに慣れすぎて幸せに感じられない・・・」

そんなことにならないよう、これからも常に有り難みや感謝を忘れずに生きてゆきたい。

円高対策が必要な理由

日経ビジネスに東レ社長の日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏の記事が載っていた。東レと聞くとユニクロ!とかボーイング!とか、研究開発!といったキーワードが頭に思い浮かぶ。いずれも同社の強さを印象づける。


さて、東レ・・・実態はどれだけ凄いのか。先日、せっかく四季報の読み方本を読んだばかりなので、まずは四季報を手に財務諸表をチェック。ふむふむ・・・売上高は、1兆5千億円を超える。おおっ、1兆円企業。営業利益率は6%強。セグメント別に見ると、国内56%、海外44%の売上比率。事業内訳では、やはり繊維は全体の売上の4割近くを占めているが、情報通信関連が2割近い数字を占めている上、利益率も16%とダントツだ。

東レの売上高(経年変化)

「繊維の会社における情報通信事業って何だろう?」

と思い、ホームページを調べてみると、同社のアニュアルレポートに、情報通信関連フィルムや電子回路・半導体関連材料と書いてあった。薄型テレビのフィルターやパソコンの回路の材料の一部に使われる素材を生産しているようだ。なるほどねぇ。

そんな立派な会社の社長が何を今一番気にしているのだろう・・・と記事を読んだわけだが、やはり円高が一番の懸念材料のようだ。

「円高? そんなに円高が怖いなら海外に100%出て行けばいいじゃないか?」

と思う人もいるだろう。私も安易にそう思っていた口だ。しかしこれに対し東レ社長は次のように語っている。

『ここ3~4年のことを考えれば、国内工場をすべて閉めて海外に持って行った方が利益率は高くなると思いますよ。・・・(中略)・・・だけど、全てを海外に移管して5年後、10年後はどうかと言えばおそらく競争に負けて終わりでしょうね。研究開発拠点である国内の重要性は今後も変わることはありません』

なぜ、10年後は競争に負けるのか・・・その根拠は語られていなかったが、東レの強さの源(コアコンピタンス)は日本でこそ作られる・・・だから海外へ行ったら、いずれ負けてしまう・・・そういうことなのかもしれない。言い替えれば、企業のアイデンティティーに、その企業が生まれた国の文化や風土が欠かせないということなのかもしれない。

あるいは個人的には、これについては小説ジュラシックパークのイアン・マルコム氏が語っていた一説が思い起こされる。

「何事も一極化すると大きな波(変化)がきたときにあっという間に淘汰されてしまう」

100%海外に出てしまうと、何か大きな転換期を迎えたときに、柔軟に対応できる力が残っておらず、つぶれてしまうリスクが高まるのではないか。

日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏の主張をまとめると、次のような感じになる。

円高 → 東レはローエンド製品の海外生産シフト&ハイエンド製品の国内での開発で対応 → 一層の円高 → 他社はいよいよますます海外へ → 東レの作るハイエンド製品の使い手自体が国内からいなくなる → 自分たちも海外へ行かざるを得なくなる → 日本には何が残る?

つまり、(1ドル60円だとか50円だとかいう)円高がもたらす行く末は、日本企業の衰退を意味していることになる。

しかも、自分たちさえ頑張ってれば、なんとかなるわけではない・・・というのがミソだ。

東レ社長の言うように、やはり、より積極的な円高対策・・・これが必要ということなのか、と考えさせられた。

日銀は・・・政府は・・・果たして、何ができるのか(私には、このあたりについて、いいアイデアなんて当然思いつきませんが・・・トホホ)

日経ビジネス2011年10月17日号

【関連リンク】
東レ(公式HP)
ジュラシックパークの小説(Wikipedia)
トヨタ、日本のための「籠城戦」

2011年10月10日月曜日

書評: 中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか

日本は中国という国を正しく理解しているだろうか?
中国は日本という国を正しく理解しているだろうか?

雑誌VOICE2011年9月号を読んでいたとき、そこで「中国で最も有名な日本人」という若者の存在を知った。彼の北京大学での学生生活時代のエピソードや中国文化に対する考察を読み、自分はあまりにも中国のことを知らなすぎる・・・そう気づかされた。そんな彼が日本で本を出版したという。

■「中国人はなぜそれをやるの?」の答えが分かった

この本は、人生の前半17年間を日本で、後半(大学生以後)9年間を中国で過ごし、両方の文化を肌身で体験した若者が、両国の違いについて語った本である。目次を見れば、おおよそどんな内容の本であるかが見えてくる。
  • 中国人は、なぜ感情をあらわにするのか
  • 中国人女性は、なぜそんなに気が強いのか
  • 中国の「八〇後」は、30歳にして自立できるか
  • 中国人は、なぜ値切ることが好きなのか
  • 中国人は、なぜ信号を無視するのか
  • 中国の大学生、特にエリートは真の愛国者なのか
  • 中国はなぜ日本に歴史を反省させようとするのか
  • 中国は、実はとっても自由な国だった!?
  • 中国は、既に安定した経済大国なのか
  • 中国は計画が変更に追いつかない!?
  • 中国では「政治家」と「官僚」は同義語!?
  • 中国の「ネット社会」は成熟しているのか
  • 日中関係は、なぜマネジメントが難しいのか
  • 中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか
もちろん、私には知らないことだらけ。とても勉強になった。中には、自分がいつも思っていた次のような疑問についてドンピシャリ、明らかにしてくれた。

海外で駅の切符売り場などに並んでいると、中国人はいつも平気で横から割り込んでくる。本当に平然とだ。「どういう神経構造をしているんだ!?」と都度、そう思ったものだ。本を読むと、加藤嘉一氏自身(著者は現在、中国在住だ)、そんな経験を毎日していると言う。しかし、それについて加藤氏は次のように語っている。

『自分の欲しいものを、手段を選ばず手に入れようとしなければ、馬鹿を見る - こう考えているから、中国人は、公共の場において、なにひとつはばからない』

なるほど、正直者が馬鹿を見る社会と、そうでない社会にいる者の違い・・・。そういう見方をすると腑に落ちる。ただし、最近は日本社会でも原発事故の政府対応に代表されるように「正直者が馬鹿を見ることもある」という事件・事故が徐々に増えつつあるような気がするが・・・。

■著者は、どのように日本のことを外に伝えているか

著者は、中国でブログを開設して以来、3ヶ月500万、半年で1,000万、現在2,500万アクセスを突破したそうである。この他にも、英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニストをつとめ、香港フェニックステレビでコメンテーターをつとめるなど大忙しだ。こうした活動の結果、受けている取材の数は年間300以上にも及ぶそうだ。「日本と中国の架け橋として活躍したい」というのが本人の希望だそうだが、もはやそれを実現しつつあるようにも見える。

ところで、本の中で「なぜ日本人女性は専業主婦という社会的に男性より劣っている地位に甘んじていられるのか?」という中国人女性の疑問に対して、著者が次のように答えている。

『日本の女性が重い負担を嫌がらないのは、一家の財政をコントロールしているからだ』

私は、これが必ずしも、日本の今の姿を正しく伝えていないように感じた。これは答えの一部にしか過ぎないのではないだろうか。いや、それ以前に、そもそも”専業主婦=社会的に劣っている地位”という疑問の出発地点が正しくないようにも感じる。

架け橋になるほどの影響力を持つ、ということは、逆にそれだけいい加減な発言ができなくなってくるという意味でもある。「中国人が持つ日本人像」という者が、著者の持つ日本人像の投影になる可能性があるわけだ。この点については、著者が日本人だから、いや日本に住んでいたから、と言って日本人像を正しく理解しているとは限らない。著者には、日本人というものをこれまで以上に理解して外国に発信していってもらいたい、そう願う。

■裸の王様にならないために読むべき

日本では中国のことを理解している人は、まだまだ、ほとんどいないのではないだろうか。冷静に考えれば当たり前のことかもしれない。

韓国については、それこそ色々な形で報道されているし、日本のテレビにアイドルが頻繁に露出するなど、知る機会が多い方だが、中国について我々が知る機会というのは、決して多くない。私が触れる機会なんて、たまに起きる日本を敵視した暴動ニュースくらいだ。しかもそうした暴動も、中国全土で起こっているものではなく、ごく一部の地域の若者(言ってみれば、先日の花王に対する韓流デモ程度のようなものだろうか)が起こしたものであることが多いと聞く。しかし、我々はこうした一部のニュースにのみ左右され、「中国はなんて怖い国なんだ・・・」という誤った印象を持ってしまう。

「中国は、情報統制されて正しい諸外国の事情を把握できず、かわいそうな国だよね」という声を良く聞く。しかし実は、我々日本人こそが正しい外国の情報を実は把握できていない・・・いや、把握できていないという事実に気がついていない」

そうなのだとしたら、それこそ情けない話だ。裸の王様にならないためにも、こうした本を読む機会を増やすことは大事だと感じた。


【関連リンク】

【”中国を理解する”という観点での類書】
2014年、中国は崩壊する(宇田川敬介著)

2011年10月7日金曜日

ディズニーランドが東日本大震災という苦境を乗り越えた理由

”東日本大震災での対応が素晴らしかった企業の1つ”と言えば、ディズニーランドの経営で有名なオリエンタルランド社が思い浮かぶ。従業員の9割がバイトという社員構成でありながら、迅速かつ懇切丁寧な来場者への対応で数万人の安全を確保した。その手際の良さといったら見事というほかない。

実際、同社6月の株主総会では、経営陣に対して賛辞の声があがったそうだ。TBSテレビでは特集が組まれ、その対応の素晴らしさについて専門家の方も素直に褒めていた。地震、液状化、数万人の帰宅困難者、不要不急のビジネス・・・こうしたネガティブキーワードのオンパレードの中にありながら、賞賛を浴びるにいたった事実を単に偶然と片付けることはできない。

さて、そんなオリエンタルランド社の方から最近、同社の地震対策について話を聞くことができた。

「同社のいったい何が最も評価されるべきことなのか?」
「我々が学べる点はどこにあるのか?」

私自身の率直な感想を以下に触れておきたい。

同社の対応について、震災後良く語られるソフト力とハード力・・・テレビでも報道されていたが、この両方についてバランス良く対策が取られていたのは間違いなさそうである。ソフト力という点では、年180回の防災訓練に裏付けされた従業員1人1人の防災スキルの高さはもちろんのこと、「自分たちがお客様を守らなくて誰が守るんだ」という現場での当事者意識の高さが際立っていたように思う。ハード力という観点では、最悪のシナリオを想定した備蓄管理(5日間数万人分の水と食料の確保をしていた)、独自のレスキュー車の所有、液状化への事前の備え、リスクファイナンス(保険の一種)の用意、といった点を挙げることができるだろう。

ただし、これらを”彼らがとってきた対策そのものが素晴らしかったから良い結果が出たんだ”と、安易に片付けてはいけないと思う。

本当に着目すべきは「何故これだけの対策をとる気になったのか」・・・という理由そのものではないだろうか。

「どうして従業員は当事者意識が高かったのか」
「どうして年180回も防災訓練をしようと思ったのか」
「どうしてそこまでお金をかけて液状化対策を実施してきたのか」
「どうしてレスキュー車まで自社で保有する気になったのか」

思うに、理由はいくつかあるだろうが、その1つには「従業員誰もが、ディズニーランドという夢の国の世界の一員なのだ」という意識付けを会社が徹底的に行ってきたことにあると思う。オリエンタルランド社では、従業員のことをキャスト(出演者)と呼んでいる。

そして何よりも最大の理由は、オリエンタルランド社の経営方針やコアコンピタンス(強み)・・・いやレゾンデトール(存在意義)が、マネジメントをはじめ社員全員にはっきりと理解されていたためではなかろうか。そうしたものを守らねばならない・・・と理解されていたからこその、こうした対策だったのではないか。

オリエンタルランドの経営方針には次のようにある。

『我が社のミッションは、自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供することである』


※リスクファイナンス
リスクの顕在化に備える資金面での対応のことであり、同社のケースでは、災害規模(被害の程度ではなく、発生した地震の大きさに比例させて)一定額が速やかに支払われる保険を特別に組んでいた、と言われている。

【関連リンク】
・東日本大震災後に同社への影響を心配した私の記事
・オリエンタルランド社(企業ミッションをうたったHP)

2011年10月6日木曜日

1つの大きな歴史の幕が降りた日

2011年10月5日(アメリカ時間だと10月5日)、Apple社のスティーブ・ジョブズ氏が亡くなったと全世界で報道された。心から、ご冥福をお祈りします。

Apple本社のトップに掲載
Apple本社のジョブズを追悼するメッセージ
CNNのトップ画面
BBCのトップ画面

2011年10月4日火曜日

社内分業化のススメ!?

日経ビジネス2011年10月3日号の特集は「確実に来る未来100」。現時点で分かっている人口増減や経済成長、技術ロードマップから、どのような10年後、20年後、30年後にどのような世界が来るかを予測している。

日経ビジネス2011年10月3日号


■マネージド・プリント・サービス!?

さて、それはそれとして・・・、今回、おっ!?と思ったのは富士ゼロックス社の「もうコピーに頼らない」という記事。テーマはMPSだ。MPSとはマネージド・プリント・サービスの略称で「企業の複合機やプリンターなど出力機器の運用管理を一手に請け負うもの」だ。社内食堂の印刷版・・・すなわち、専門業者が運営する社内印刷センターができると思えばいい。

記事で触れている事例会社JFEでは、富士ゼロックス社にこの業務を委託することで、年間の運用コストを1億円以上削減できたとある。なるほど。確かに印刷というのは言葉でイメージするほど簡単な作業ではないかもしれない。私のやっているような小さい会社であっても、用紙切れ、給紙トラブル、トナー切れ、ドラム寿命、部品破損、製本トラブル・・・など、数多くの手間やコストが存在する。こうしたトラブルをIT部門がいちいち対応していたり、リースメンテナンス会社を呼んで対応させたりしていると返ってコストと時間がかかる。大企業であればなおさらだ。

■社内分業化のススメ!?

ここでふと思う。他にも、意外に単純作業そうでありながら、手間のかかる作業はないものだろうかと。ある、ある。プレゼン資料作りや提案書作りだ。コンテンツはともかくとして、体裁や図表作成・・・実は、意外に手間だ。もちろん、今でこそ多くの人がマイクロソフトオフィスをある程度使いこなせるようになってはいるだろうが、我が社でも、ある人は、ワードで自動目次作成機能を使いこなせるが、ある人は使いこなせなかったり・・・。作業する人によって、見栄えも違うし、できも違う。

聞いた話、大企業では資料作り専門部隊がいるとか・・・。我が社でも、マイクロソフトオフィスやデザインのスペシャリストを雇って、資料作りを任せた方が実は効率がいいのかも・・・なんて思ったり。

2011年10月2日日曜日

書評: 「レッドゾーン」

クラウンジュエルって・・・

『クラウンジュエルとは、敵対的な買収において、買収者が欲しがっているターゲット企業のコア資産やコア事業のことを指し、それをターゲット企業が故意に手放してしまうことにより、買収意欲を減じさせる方法を言う。』

私自身もMBAなどで習った言葉の1つ。他にも買収と言えば、MBO(経営陣自身が会社の株を買い実質的なオーナーになること)、EBO(従業員自身が会社の株を買い実質的なオーナーになるということ)、ホワイトナイトなど様々なキーワードが存在する。たとえば、日本では”すかいらーく”がMBOしたことで有名だが、実際は、我々素人がこうした言葉を耳にする機会はそれほど多くない。

ところが、こうした言葉が、生き物として頭に入ってくる小説がある。それがこれだ。

タイトル: レッドゾーン
著者: 真山 仁
発行元: 講談社文庫 (発行年:2011年6月1日)※レッドゾーンは「上」「下」巻2冊に分かれています

■中国国家の影がちらつく買収劇

この本はファンドの買収劇をテーマにした小説だ。主人公は、鷲津政彦(わしづまさひこ)という日本人。1986年にアメリカ最強のファンドKKLの日本法人ホライズン・キャピタルのトップとして日本に帰国。日本で買収合戦を繰り広げ、大旋風を巻き起こした人物・・・。ちなみにこの時の話は、シリーズ初回作「ハゲタカ」、二番目の作品「ハゲタカⅡ」で描かれている。

そして今回・・・舞台はマカオから始まる。そこにいた鷲津政彦に突然語りかけてきた謎の中国人。それが日本最大の自動車メーカーアカマ自動車を標的にした買収劇の始まりだった。今回の買収の裏には、圧倒的な資金力にものをいわせた中国という国家がそのものの影がちらつく。そのとき、日本は、アカマ自動車は、鷲津政彦は、いや、世界は・・・どうするのか。

■主人公が日本人であることの痛快さ

正直、前作「ハゲタカ」「ハゲタカⅡ」はあまりにも面白くて何度も読み返してしまったものだが、今回の作品も負けず劣らず面白い。この本・・・いや、シリーズ通じて読者を惹きつける特徴が色褪せていないからだろう。

1つは、フィクションでありながら、そう感じさせない真実みを持たせたストーリー展開にあるだろう。非常に良く調べてある。

もう1つは、ストーリーの奥深さ。人間的側面に対する描写が上手い。ファンド、買収・・・と聞くと、なんとなく派手な金銭のやりとりが全面に出てくるものと思ってしまいがちだが、単なる契約や金銭上のやりとりにとどまらない、その裏にある人間的な泥臭さを色濃く描いている。人の欲、心の葛藤、絶望。登場人物の個性もはっきりと伝わってくるので感情移入しやすい。

そしてもう1つは、主人公が日本人であることの痛快さ。金融工学の先進国と言えば、アメリカ、イギリスというイメージが強い。常に彼らが彼らに有利なルールを作り、そのルールに踊らされてきたのが日本・・・私にはそんな印象がある。そんな中にあって、1人の日本人が旋風を巻き起こす。そこに気持ちよさを感じるのは私だけではないはずだ。

■1粒で4度おいしい

さて、そんな「レッドゾーン」。専門用語でも非常にわかりやすく描いてくれているので、私のように「大学で勉強したけれど実際を経験したことがないのでもっと知りたい」という人はもちろんのこと、少しでも買収という世界に興味ある人・・・にはお薦めの作品だ。

さらに「映画版は観たことがある」という人(この作品には映画版もある)。「もう観てしまったから、内容はある程度一緒だろうし、今更原作を読む気はしない」。もしそう思っているとしたらそれは間違いだ。実は、私自身がその口だったから、そう断言できる。モチベーションがやや低い状態でありながら原作を読み始めたのだが、読んでみたら、「次はどうなる、次は? その次は?」と小説の世界にあっという間に引き込まれてしまった。というのも、”あとがき”で著者自身も述べているのだが、映画と原作は全く違う仕上げになっているのだ。

1粒で2度おいしい。いや、3度も4度も愉しめる・・・。そんな作品である。

【関連リンク】
「ハゲタカ」(小説)
「ハゲタカⅡ」(小説)
「ハゲタカ」(映画版予告)





====2011年10月5日追記====
2011年11月5日の記事に、MBOについてこんなことが書かれていた。
 MBO(経営陣が参加する買収)による上場廃止に動く企業が増えている。今年1〜9月のMBOは15社で、昨年の実績を上回った。2011年暦年では3年ぶりに過去最高を更新する公算が大きい。業績が悪化した企業が金融機関の後押しを受けて、経営改革を機動的に進めるのが狙いだ。上場の負担が重いためにMBOが増えている面もあり、投資家の株離れを招くとの声も出ている。
 M&A(合併・買収)助言のレコフによると、MBOによる上場廃止を今年1〜9月に発表した企業は、昨年の実績(13社)を超えた。このうち8社が7〜9月の発表で、四半期ベースでは08年7〜9月(9社)以来の高水準となった。11年は最高だった08年(17社)を上回るとみられる。
 上場廃止を決断するのは中堅企業が多い。DVDレンタルの「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブや、雑貨専門店「フランフラン」を運営するバルスなど、知名度の高い企業も目立つ。短期的な業績の変動や株価の動向に左右されず、抜本的な事業改革に取り組む狙いがある。(日経新聞より抜粋)

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...