2010年5月22日土曜日

ロシアのサンクトペテルブルクに学んだこと

2010年5月16日(日)から22日(土)までの約6日間、出張でロシアのサンクトペテルブルグに滞在した。人生で2回目の訪問(前回は昨年の11月)になる。

■白夜(びゃくや)な世界
まず、びっくりしたのは日の長さだ。自分は、過去に、随分と日の長いロンドンやアメリカのグランドラピッズ(ミシガン州)に滞在した経験がある。このときも最初は、日の長さにとまどったものの、サンクトペテルブルクの日照時間は、その比ではない。この時期にして、夜の9時で、日本の同じ時期の午後3時くらいの明るさだ。夜の12時になっても、まだほんのりと明るさが残っている。調べたところでは、年間約50日間(5月25~26日あたりに開始で、6月中旬に夏至が来る)も白夜になるとのこと。いつまでも明るいので、ついつい油断して夜更かししてしまいがちだ。

【午後9:30のサンクトペテルブルク】


ちなみに、あまりにも気になったので緯度を調べてみた。なるほどの違いがわかる。

東京35度
グランドラピッズ47度
ロンドン51度
サンクトペテルブルク60度

■世界一深い地下鉄
次に驚いたのが、地下鉄の深さ。聞いたところでは、旧ソビエト冷戦時代に核シェルターとしての活用も兼ねて、地中深くに地下鉄を掘ったとのこと。サンクトペテルブルグを通る地下鉄は、なんと運河の底、地上から120メートルも下を走る世界一深い地下鉄になのだそうだ。日本で普段、地下鉄を乗っていると大江戸線がものすごく深い地中を走っているような印象を受けるが、その実態は40メートル強(六本木駅)と、こちらの地下鉄の3分の1の深さにしか過ぎない。延々と地底深くに降りてゆくエスカレータに乗っていると、不安な気持ちになるのは僕だけだろうか。

【地下鉄のホームに向かうエスカレータ】


■東洋風のレストランがたくさん
さらに、サンクトペテルブルクの街で目についたのが、日本風、いや、東洋風(オリエンタル風)といったほうがいいだろうか。そんなレストランを多々、目にする。SUSHIメニューを取り揃えるレストランはモチロンのこと、日本の漢字をレストラン名にした場所まであった。ただ、メニューを、どう見ても、おいしく見えないところはさすが外国だ。

【東洋風?のレストラン】



■全く読めないロシア文字
極めて浅はかなことに「ロシア文字は英語のアルファベットに近いもの」と勝手な思い込みをしていた。実際は、もちろん違う。キリル文字というらしいが、アルファベットよりも、ギリシャ文字に似ている。英語の感覚で、看板文字を読もうとしても、全く読めない。地図を見るとギリシャとサンクトペテルブルクはだいぶ離れているが、陸続きであることから、長い歴史の中で文字が伝わったのだろう。

【ロシア語のマクドナルドとスーパーマーケット】



■際立つ交通渋滞
交通渋滞のひどさが目立ったことを挙げておきたい。ラッシュ時の渋滞は、決して首都高速道路に負けてない。ひどいときは、微塵も動く気配がない。最終日の今日、用事があって約3キロ先の目的地を目指して歩いたが、車だとおそらく1時間はかかっていたかもしれない。レンタカーを借りて走りまわるのは得策でなさそうだ。

【交通渋滞】


■次回こそ、観光を・・・
観光よりも、アルコールに溺れる時間が多かった、かもしれない。次回こそは・・・。

2010年5月18日火曜日

右目を患った日

担当しているクライアントの関係で、ロシアはサンクトペテルブルグに来ている。今週の土曜日まで滞在予定だ。いつも海外出張といえば、のんびりとした時間とは無縁で、今回も例外ではなさそうだ。

そんな忙しさにかまかけて健康を疎かにしていたせいか、どうも右目を患ってしまったようだ。さる5月9日(日)に家族で外に出かけていたのだが、そのときに突然「飛蚊症」という症状になってしまった。医者によれば「硝子体出血」という、眼底(目の真裏)の本来くっついているべき部分が剥がれ、出血を起こし、その血痕が目の裏について視界を常に邪魔しているとのこと。

右目の前に常に、何かが飛んでいるかのような症状で、非常にうっとおしい状態だ。インターネットなどで調べると、極度の近眼や老化、ストレスが原因でなる、とある。

さすがにショックだ。下手をすると・・・いや、下手をせずとも、この不自由さを持ったまま残りの人生を過ごしていかなければならないのには参った。人によって、「自分が年をとったなぁ」と気づかされる場面が異なると思うが、私の場合は、どうやら今回のことが「自分の老化」を何にも増して感じさせる一件となった。

とは言え、気落ちしていてばかりいても何も解決しないので、徐々に前向きにとらえるようにしている。

そう、人生の早い段階で、命までをとられることなく、健康というものの有り難みに気づかされた、という事実は、非常にラッキーなことであったと・・・。

2010年5月11日火曜日

日経アソシエの朝活特集に載った日

おおっ、今月の日経アソシエ2010年5月18日・6月1日合併号 no.208の”朝活”特集の中に、自分自身が”朝の達人”として、載っている! 

正直、3月初め頃に取材の話があったときは「まぁ、こういう類のものは取材を受けたとしても、滅多なことじゃ掲載されないだろう」とタカをくくっていた。それだけに、少し感動。この雑誌を見た父から電話が入り、

「もともと元祖はオレのハズだぞ。運良く載ったな。」

と言われた。まぁ、確かにその通り。うちの親父は朝3時起き(ただし夜は8時寝)。この性格、知らず知らずのうちに親の影響を受けた・・・のかもしれない。

ところで、今更ながら”朝の達人”ってなんだろう。

「朝の達人」=「朝の時間を有効活用している人」ということになるのだろうか。今月の日経アソシエを見ていて、意外に多くの人が早起きで、しかも、僕以上に色々と工夫をして”朝”という時間を有効活用している人がいることに気づかされた。「自分はまだまだだな」と励まされる。

ただし掲載されるスペースに限りがあったためか、一部自分が伝えたかった事項が簡略化されていたので「自分が何故早起きをするのか?」そして「何をやっているのか?」について、雑誌の中身を以下に補足しておきたい。

まず前提として、自分の立ち位置から補足説明をすると、自分は、経営者兼コンサルタントという肩書きだ。したがって、自身には、大きく『経営者としての役割』、『コンサルタントとしての役割』、『スタッフを管理する役割』の3つ役割を担う必要があると考えている。たとえば、経営者という立場からは、今日・明日の仕事ばかりに目を向けてばかりではいられない。中長期的な目標を視野にいれた活動が必要だ。そして、コンサルタントとしての立場からは、自信の能力を日々高める努力をしなければ、多様化するお客様のニーズに十二分に応えていくことができない。自分の引き出しを増やす努力が必要だ。最後に、スタッフを管理するという立場からは、スタッフにどんどん伸びていってもらわないと自分がいつまでたっても苦しい状態が続く。なので、常日頃から彼らのスキルアップの術を考え、支援する活動が必要だ。

この3つの役割を果たすために、朝という時間は非常に有効だと思っている。なぜなら、朝には次のようなメリット(僕自身にとっての”得する早起きの三文”)があるからだ。

1文目:
朝という時間が1日の中でも、最もコントロールしやすい時間(邪魔が入りにくく、予め立てた計画通りにものごとをこなしやすい時間)であるということ。

2文目:
満員電車や電車遅延を回避できるため、精神的・肉体的に時間の無駄を排除できること。

3文目:
朝は頭がリフレッシュされているので、頭の回転が速くまわるということ。

朝がコントロールしやすいメリットを最大限に生かして、日中ではなかなかできないこと(ピータードラッカーの言う”重要なこと”)をやってしまうようにしている。言い換えると自己開発や(目の前の仕事・・・ではなく)遠い将来のための仕事を中心に活動する。こういったことを意識していないと、日々のコンサルティング業務に追われ、経営者としての責任をついつい忘れてしまうので、朝の時間は非常に貴重だと思う。

後は、記事中にもあったが、たとえ次の日に、あるいは、その日中に締め切りの来る仕事があったとしても、あえて午前中は手をつけず、そういった仕事はできるだけ後ろにまわすことを良くする。つまり、放っておいても、絶対に忘れない・強制的にやらざるを得ない仕事はギリギリまで手をつけずに、”緊急ではないけれども重要なこと”に、できるかぎり午前中の時間を費やすように心がけている。これにより重要な仕事をこなせるようになるばかりか、締め切りのある仕事に対しては「限られた時間の中で、いかに効率的・効果的にタスクをこなせば良いか」を常に考えて動けるようになる。仕事の質が上がる(もちろん、これをすることで結果的に仕事の品質を下げてクライアントに迷惑をかけては本末転倒なので、あまりに自信がないタスクについては、例外的に早めに手をつけることはあるけれども・・・)。

ちなみに、この”自分を追い込む”方法は、MBA時代からヒントを得た。カナダ人の同級生がエッセイの提出を期限ギリギリまで放っておき、必要以上に1つのタスクに時間を費やさないように工夫している彼を見て、当時の僕は、

「そんなリスクの高いこと、よくやるよな。俺だったら絶対しないけどね。」

と言っていた。あの頃が懐かしい。「極めて限られた時間を有効活用するため」には、そのようなリスクも上手に選好していくことが重要なんだと思う。

もちろん、息抜きも忘れてはいけない・・・の自戒の念ももって。

2010年5月9日日曜日

なぜ、保守党は過半数をとれなかったのか? in イギリス選挙

はぁ、もうすぐゴールデンウィークが終わってしまう。しかし、今回ほど、充実した休みはなかったように思う。海外出張から戻ってきた直後から休みに入ったが、それから家族サービスをしつつ、書籍を5~6冊読んだ。読んだ上に、ほぼ全ての書籍に対して感想文を書いた(たいてい真夜中だが・・・)。

最近、本やホワイトペーパーを読むだけ(インプットするだけ)では物足りず、すぐにアウトプットしない我慢ならない性分になってきたようだ。

さて、2010年5月6日イギリスの選挙が終わった。投票率65.1%。結果は、保守党(デーヴィッド・キャメロン氏)306議席、労働党(ゴードン・ブラウン氏)258議席、自由民主党(ニック・クレッグ氏)57議席。どの党も過半数(全部で650議席のため326議席が過半数)をとれない、いわゆる”ハング・パーラメント”。つまり、日本の政府同様、連立政権になるわけだ。

個人的には、選挙前まで政権を握っていた労働党のゴードン・ブラウン氏は、近年の大きな失業率の責任追及を免れ得ず、かつ、選挙直前の有権者に対する暴言を暴露されて完全に地に落ちたものと思っていた。保守党がもっともっと躍進すると思いきや、意外や意外、20席足りず。

イギリスに住む知人に

「誰に投票したの?」

と聞いたところ

Yes labour did fail but so did the Tories really with such a hated PM they still couldn't get an over all majority! I voted for Labour because I remember what the Tories did to us last time, they are the reason we have no real industry left in this country Maggie sold it all abroad or closed it! That's why the Tories didn't win out right..to many of my generation just don't like or trust them. People don't really blame the government for the recession they blame the Americans and their banks and our banks for being to greedy! I also know and like our Labour MP who I voted for and he won his seat!

との返事。

簡単に意訳すると「・・・労働党さ。保守党が過去にどんなにひどい失政をやったかハッキリと覚えているからな。サッチャーは、外国企業に売り渡すか閉鎖するなどして、イギリスが誇れる産業を何も残さなかった・・・失業率が高いのは、労働党の政治が悪かったからではなく、強欲なアメリカやイギリスの金融機関のせいだから仕方がないと思っている。」となる。

なるほど。この見方が正しいかどうかの判断は別として、少なくとも、多くの国民がこのように思っている可能性は高いと思う。だからこその今回の選挙の結果だったのだろう。

もしかしたら、これは日本の政治にも当てはまるのだろうか、と、ふと思う。

日本の国民は、今、鳩山首相のリーダーシップのなさ、そして、民主党の数々の公約違反に辟易しはじめているが、だからと言って次の選挙で、自民党に票が戻るというわけではないのかもしれない。今回のイギリス選挙のように・・・。つまり、日本ではまだまだハングパーラメントが続くわけで・・・。

2010年5月7日金曜日

専門記事紹介:アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築

本日のテーマは、ITに関わる事業継続計画(BCP)とCOBIT(ITガバナンスのフレームワーク)。

ゴールデンウィーク中に、ISACAに投稿されたITサービス継続(IT-BCP)に関わる記事「アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築(Using COBIT Best Practices for Developing BCP for an Outsourcing Company by A Rafeq氏)」についてコラムを書いた。内容は会社のHPにアップしたので、ここにはリンクだけ張っておく。

「アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築」に関するコラム

ちなみに、ISACAとは情報システムのセキュリティとアシュアランス、ITガバナンス、そしてITに関係するリスクやコンプライアンスについて、知識、資格認定、コミュニティ、唱道、そして教育を、世界的に提供することを目的とした専門家の国際的団体のこと。

書評:スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力

昨日の夜、竹内一正著書『スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力』(朝日新聞出版)を読んだ。ソフトカバーで200ページ強、¥1,500の本。非常に読みやすい本で数時間で読み終わってしまった。

実は、この本、最近聴くようになった『新刊ラジオ-「話題の本を耳で読む」新刊JP公式ポッドキャスティング』で知ったのがきっかけだ。通勤の道中、解説を聴いて、つい衝動買いをしてしまった。

この本は、アップル社のCEO(最高経営責任者)であるスティーブ・ジョブズのノウハウについて、アップル出身のコンサルタントが6つの要素(16の中項目と77の小項目)に分解、経営の閉塞状況を打破する突破口を指し示したものだ。

読んでみて「なるほど!」と思える印象的な部分が結構あったので、わずかだが、そのいくつかを挙げておく。

・今やっていることを一生懸命にやろう。将来(いい意味で)どうつながるか分からない。
・自分で決めたことの失敗が成長につながる。
・売り込む先の相手の立場に立つ(どうやって利害を一致させるか?)。

といった点は、特に自身の体験からも「なるほど!」と思えたものだ。特に3つ目の「どうやって利害を一致させるか?」のポイントで著者が挙げた、ジョブズのインターネット音楽配信サービスiTMS(アイチューン・ミュージックストア)の成功事例は目から鱗だった。アメリカの5大音楽会社のCEOたちを説得させた彼の論理に僕は、

「全くその通り。5大CEOのみならず、一消費者である自分自身も、当該サービスについて、全くそのように感じていた(から、iTMSを使っている)。うーむ。」

と、ただただ、うなるしかなかった。まぁ「語るに易く行うに難し」ではあるけれども「もっと知恵を絞れ、やりようはあるハズ・・・」というメッセージとして受けとめた。

このほかにも、

・最も重要な決定とは何をするかではなく、何をしないかを決めることだ
・いいプレゼンは全て見せる。凄いプレゼンは少し隠す。
・部下の能力は自分自身の能力の反映
・育てられるのではなく、育つ

などといった点について勉強になった。4つ目の「育てられるのではなく、育つ」とは、「上司が無能だから、自分は成長できない」と自分の仕事環境を呪う人がいるが、

「上司が無能だからこそ、自分がその分、成長できる余地があるんじゃないか」

と考えるべき、という意味だ。発想の転換だ。考え方次第で「自分の力で突破できることがいくつもある」ということのいい例だと思う。




最後に、余談だが、この本を読んであらためて日本とアメリカの起業環境の違いを思い知り、日本政府にはもう少しなんとかして欲しいと感じたことがある。

本の中で著者が(ちょっと古いかなとも思ったが)中小企業白書2002年度版の統計データから

「倒産後に経営者が再就職する確率は日本が50%なのに対し、アメリカは88%にのぼっている。しかもそのうち経営者に復帰する率は、日本26%、アメリカ53%。」

と指摘している。アメリカではたとえ起業に失敗しても命まで奪われることはないが、日本では事業に失敗すると、代表取締役やその連帯保証人は、債権者である銀行に、家、土地、お金など全て持って行かれて、子供を学校に通わせることまで困難になることも少なくない、というわけだ。社会的に白眼視され、債権者に追い詰められて自殺するケースすらある、と。

社会のセーフティーネットがしっかりしてないと、チャレンジ精神がわかないのでなかなか起業家はおもいきったことできないし、それ以上に、起業家になろうっていう人が少なくなる。

日本は言うまでもなく資源の乏しい国だ。知恵を絞った革新的なサービスを次々に出していかないと立ちゆかなくなる。そのようなイノベーションを生み出す起業環境を作るための法整備を国にはしていってもらいたいと願う。

===2011年10月6日(追記)===
2011年10月6日・・・アメリカ時間だと10月5日・・・スティーブ・ジョブズ氏が亡くなったと報道された。1つの大きな歴史が幕を閉じた。会ったこともないのに、悲しみが心に染みこんでくる・・・。


亡くなった日、Apple本社のHPにはスティーブ・ジョブズ氏の写真が掲載された

2010年5月5日水曜日

専門記事紹介: IT Risk Analysis - The Missing "A"

うぅむ。いよいよますます書き込む内容が堅苦しくなっていく・・・。でも、せっかく読んだ記事について感想を書いて(アウトプットして)おかないと、完璧に忘れてしまいそうで怖いので、書いておくことにする。

さて、自分はCISAという資格をとっているため、必然的にISACAという組織のメンバーになっている。

この団体には3万円以上の年会費を支払う義務が生じるのだが、正直、決して安くない年会費だ。ただし、そんな中にあってIT監査に関わる専門家達が毎月、投稿してくれる記事は非常に価値が高いものだと思う。様々な会員になったことがあるが、こういった記事は、世界のITシステム監査に関する最新動向を知っておくことができるので便利だ。実際、自身が過去に(監査ではないが)コンサルをする上で、インプットとして役立った記事はいくつもある。

そんな記事の中で今月は『IT Risk Analysis - The Missing "A"』という記事が面白そうだったので、読んで見た。

この記事の趣旨は、以下の通り。

・近年、組織が市場において勝つためには”Agility(俊敏性;機動性)”を抑えることが必要不可欠
・ITは組織の戦略にますます密接なつながりを持つようになってきている
・しかしながら、今日のITリスクアセスメントは、3つのAばかり見る傾向がある
 (3As: Availability(可用性), Access(アクセス性), Accuracy(正確性))
・Agilityに関わるリスクってやつはすぐに顕在化しにくい性質を持つ
・これからのITリスクアセスメントの視点は4Aで行うべきである
 (4As: Availability(可用性), Access(アクセス性), Accuracy(正確性), Agility(機動性))

キーワードは、『Agility』だ(訳せば俊敏性になるが、個人的に、あまり好きじゃないのであえて機動性という言葉を使わせてもらう)。上記4Aについて、言い替えて説明をすると、要するにシステム監査人がITリスクを考える際に、

「災害時対策はできているか?」
「アクセスコントロールはきちっとしているか?」
「計算処理は、期待通り正確に行われているか?」

といった視点でのリスクアセスメントは今日、当たり前のように行うが、

「導入しているITシステムは、古い言語を使ったプログラムで作られてないか?」
「色々なベンダーのソフトを混在させて、保守を難しくしていないか?」

といった会社の機動力の足をひっぱりかねない視点での問いかけは、あまり行っていないのではないか? したがって、これからはこういったことも考慮すべきだ、ということだ。

「言いたいことは分かった。でも、どうやって実現するんだ?」

という問いかけに対し、記事中では、”たとえば”という前置きとともに、監査時のチェック項目になりそうなポイントをいくつか挙げている。ただ、常識的なポイントが多く「おぉー!これはなるほど!」と思うほどではなかった(ただし、これはあくまでも個人的な感想)。

チェックポイント例)「ベンダーソフトウエアは、不必要にカスタマイズされていないか?」

まとめると、「これからの監査は3Aではなく4Aであるべき」という提言には納得したものの、How?の部分にたいする解説については(記事中で、”あくまでも参考にしかならないけれど・・・”という言い訳があるものの)ちょっとがっかり。

システム監査人は、自分なりにアレンジしていく必要があるのだと思う。まぁ、抑えるべき視点さえきちっとわかっていれば、そんなに難しいことではないと思うのだが。

2010年5月4日火曜日

書評:ケースで学ぶERMの実践(中央経済社)

ゴールデンウィークまっただ中のこの時期、奈良の奥地でのんびりとホリデーを満喫中。出張ばかりで迷惑をかけている家族に対するせめてもの償いをする期間だ。

そんな中、家族が寝静まった真夜中にパソコンにむかっている。今日は忘れないうちに、海外出張中に読んだもう一冊の本『ケースで学ぶERMの実践』(中央経済社:3,400円)について紹介しておきたい。


なお、ここでERMとは、Enterprise Risk Management(エンタープライズリスクマネジメント)のことだ。そう、この本は、企業における全社的なリスク管理の方法について解説を行っている。

中身は大きく以下に示す3部構成となっている。

【本書の構成】
第一部: 企業におけるERM
第二部: 企業におけるリスクマネジメント実践
第三部: ERMを促進する法令・規格・基準

この書籍の最大の特徴は、なんと言ってもその豊富な事例(国内外28社のケースを扱っている)にある。これは非常に付加価値が高い。なぜならERMは、まだ歴史が浅く、ナレッジベースが十分にたまってきているエリアとは言えないからだ。実際、(自身のコンサル経験からも)ERMという考え方そのものが、多くの企業で本格的に検討され導入されはじめたのはここ数年のことではなかろうか。ERMの代表的なフレームワークの1つであるCOSO-ERMは、2004年に発表されたものだ。リスクマネジメントの国際規格であるISO31000にいたっては2009年だ。このようにERMのフレームワーク自体の歴史も決して古いものではない。

さて、本書の中身全てについて、ここで触れるわけにはいかないが、事例から見えてくるポイントのいくつかについて軽く触れておきたい。

■意外に少ない「リスク管理部」
リスク管理を所管する部門は、財務部、経営企画部、IR部、総務部、コンプライアンス部、リスク管理部など、企業によって様々だが、従来から存在していた部門のいずれかが、そのまま全社的なリスク管理を担うようになるか、もしくは専門部署は設けず、コミッティ(委員会)を設けて管理しようとするパターンが多い。さらに、意外にも内部監査部門が全社的なリスク管理を行うというケースが多い。

■ERMに密接に結びつく「事業継続管理(BCM)」
ERMを導入した多くの企業において、その後、地震やパンデミックなど事故・災害に対するBCM構築の意志決定をしていることが分かる。全社俯瞰的にリスクを見てみると、「いかに企業にとって、事故・災害といったリスクに対する対策が遅れているか」という事実が見えてきやすいのだろう。ちなみに、BCIが出したグッドプラクティスガイドライン(GPG)2010では、ERMと事業継続管理(BCM)は、生まれてきた経緯が異なる(BCMはITがきっけかで発展してきたものであり、ERMは保険の世界から発展してきたものであるということ)だけで達成しようとしていることは似ている、とまとめている。なるほど、ERMとBCMが密接に関係するのもうなずける。

■ERM導入のメリットの1つは、リスク管理の重複と漏れの排除
リスクには、必ずしも部門単位に明確にその所管をアサインできないものがある。ERMの導入は、そういった管理の境界が曖昧になりがちなリスクの面倒をみやすくする。同時に、個別のリスクごとにどうやって対応したらよいかを考えてばかりいる”部分最適”ではなく、会社全体としてどのような投資の仕方をすれば最も効果的・効率的にリスクをおさえることができるかといった”全体最適”を意識した体制を整備できるようになる。

ところで、私自身、この書籍を読んでみて改めて感じたのは「やはり、ERMの構築方法は企業によってバラバラである」ということ。本書の事例紹介の中で、企業のERMに対する取り組みについて、比較一覧表を作れるような整理分類ができていないのが何よりの証拠だ。つまり、それだけ企業によって取り組みの考え方やアプローチの仕方が異なるともいえる。

そしてもう1点、やはりこれも改めて感じるのは、ERM導入において「その考え方やフレームワークそのものは何ら難しいものではない」ということだ。実際、(フレームワークはどれも抽象的かもしれないが)そこで示されるステップはシンプルだ。むしろ、ERMを構築する上で企業が直面するであろう課題は、

「どうやって”リスク”というものを、関係者共通の言語におきかえるのか」
「どうやって組織横断的なコミュニケーションを図れるようにするのか」

といった非常に身近な点にあるのではないだろうか。と考えるとERMはそもそも、その特性上、企業の事業、文化、組織構成などによって大きく異ならざるを得ないものであり、画一的なアプローチがとりづらいものと言えるのかもしれない。

最後に、本書は、全社的リスク管理の実務者やコンサルに有益な書籍であると思う。その他にも、全社であろうとなかろうと「リスクの管理」に少しでも携わる可能性のある人なら、リスク管理上の自分の立ち位置や役割を再認識するために、オススメできる1冊だ。

2010年5月2日日曜日

書評: 『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』

結局、今回の海外出張中は、雑誌3冊(日経ビジネス4月26日号、5月3日号、ハーバードビジネスレビュー)と書籍2冊(ピータードラッカーのマネジメント、ERMの実践)にかろうじて手を出すことができた。

そんな中から今日は『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』について書こうと思う。先日、週刊ダイヤモンドの特集で見て、つい読みたくなって思わず買ってしまった本だ。(ちなみに図書館にいってみたら、1ヶ月待ち・・・だった)

「なんで今更・・・」

と、言う人もいるかも知れない。

コンサルタント&経営者をやるようになって色々な知識・経験を積み重ねた今だからこそ、改めて読むと新たな発見があるかもしれない、という思いがあった。

この書籍は、文字通り「ビジネスの基本と原則」について、ピータードラッカーが自身の経験にもとづいた確固たる考えを語っている。「企業とは」「事業とは」「戦略計画とは」「経営資源とは」「生産性とは」「組織とは」「マネージャとは」などといったビジネスを構成するコンポーネント(要素)について、事例を挙げながら丁寧に解説をしてくれている。

一見すると、抽象的な言葉に対する単なる定義の羅列・・・ともとれなくはない。もし、僕が社会人になりたてのときにこの本を読んでいたら「企業の目的とは?」と聞かれても「そんなの、言うまでもなく利益を最大限に追求することじゃないか!・・・そんな概念的な問答に何ページも割いて何の意味があるんだ!?」と生意気に一蹴していただろう。

勿論、ちょっと考えれば、そんな簡単な話ではないことは分かる。でなきゃ、これほど世界的なベストセラーになるわけもない。

たとえば、先ほどの「企業の目的とは?」という問いに対してドラッカーは「顧客を創出すること」と述べている。では「利益は?」というと「企業の目的ではなくて、条件である」と語っている。

つまり、企業は「利益を出すためにどうしたらいいか?」という問いの答えを見つけようとするのではなく「企業は顧客を創出するためにどうしたらいいか?」に対する問いの答えを求めることが必要、ということになる。たとえば会計上、利益を創出することはさほど難しいことではないので、利益を上げることを目的としてしまうと、ゆがんだ結果がもたらされるということもありえるわけだ。

「いつの間にか手段が目的化してしまっている」

とは良くいったものだ。なるほど、こうやって改めて1つ1つの言葉の”本質”について考えてみると、自分の視野が広がる。

ドラッカーの理論は、MBAなどでも学んだことだが、実は、当時は、あまり自分の脳の中で消化できていなかったように思う。

「コンサルをやっていて何を今さら・・・」

と言われれば、それまでだ。正直、自分はそれなりに勉強し経験を積み重ね、十分に理解しているという自負があった。普段、完全に理解したつもりで使っていた言葉だが、まだ本質を理解しきれていないものもあるようだ

ただし、「現場で色々なことを経験しては、何度も原点に返って基礎を考え直してみる」ということは自己を成長させるにあたり必然のプロセスなのだと思う。

ビジネスは、本当に奥が深い。だから、面白いのだろうけど。



映画:ANVIL(アンヴィル) ~夢を諦めきれない男たち~

ふぅ~。やっと日本に戻ってきた。今は成田空港のラウンジでぼーっとしている。

ここに来るまでにグランドラピッズからシカゴまで1時間。シカゴから東京まで12時間だった。この後、成田から伊丹へ飛ばなければ行けない。そして、非情にも伊丹空港からさらに2時間の移動が待っている。

そんな待ち時間の間に、ふと最近観た映画『アンヴィル(ANVIL)』について書こうと思う。この映画はサブタイトル(夢を諦めきれない男たち)が全てを物語っているといっても過言ではない。

そう、有名なロックバンドになることを夢見た男二人。14歳の時から、いつかはロックだけで食っていけるようになると信じ、「そしていつかは数万人の前で歌いたい!」と強く願いながら、ひたすら活動を続けてきた。働けど、活動すれど、有名にならず、50人にも満たないホールでのステージが続く。そして、気がつくと二人は50歳代に。まだ夢を実現できていない。

普通の人なら、さすがに熱は冷めてくるものじゃないだろうか。

しかし、二人の情熱は全く冷めていない。いや、それどころかますます熱くなっていく。二人の夢は叶うのか・・・。


僕は、観ていて涙が出てきた。ひたすら夢を、熱いピュアなハートで、一生懸命追い続ける姿は、観る者のどんな気持ちをも貫ける力を持っていると思う。感動を誘わないはずはない。しかもこの映画、全て役者による演技などではなく、ドキュメンタリー。

「いったいどうしてこのような感動の物語がドキュメンタリーなんぞで撮れたのか?」と疑問に思うくらいだった。Wikipediaによれば、アンヴィルの元で働いていたことのあるサーシャ・ガバシ(映画『ターミナル』の脚本家)という人が、2005年にアンヴィルのメンバーにコンタクトをとり、彼らのドキュメンタリー映画を撮りたいと要望したことが始まりだという。筋書きのないドラマは、2年間に及ぶ撮影の末に完成し、2008年にサンダンス映画祭でプレミア上映されたとのこと。

到底言葉では語り尽くせない、いや語り尽くせるわけがない。少しでも気になった人にはぜひ観てもらいたい作品だ。

IMDBでの映画紹介はこちら

2010年5月1日土曜日

映画: KICK-A** (キックアス)

アメリカ滞在最終日の今日、つい先日からアメリカで公開されている映画『KICK-ASS(キックアス)』を観てきた。

この映画は、普段聞いている『小島慶子のキラキラ』に毎週ゲスト出演されている町山智浩さんが2010年4月23日の放送で取り上げてくれたもの。自分は、アメリカ渡米直前にポドキャストで聞いた。町山智浩さんが薦める映画作品は僕の感性とピッタリ合うものが多い。加えて紹介の仕方が非常に上手。映画のネタについてほどよい加減で触れて、聴く者の気を実に上手に惹く。以前『ハングオーバー』という映画の紹介を聴いていたときも、彼の解説を聞いて「ぜひ、観たい!」と強く思ったものだ。

さて、そんな町山さんが紹介してくれた『キックアス』だが、日本での公開は全く未定らしい。そして、R18(18歳以上じゃないと観てはいけない映画)なので、余計に観たくなったとも言える。アメリカに来た今この機会を逃す手はない・・・。で、この映画、

一言で言うと「凄い映画」。

色々と考えてみたが、これ以外の形容詞が見あたらない。

そして、もし二言目の感想を付け加えられるのなら「自分の倫理観が問われる映画」と言うことができるかもしれない。


【原作の本がある模様】

あまり映画の中身を触れずに説明すると、アメコミに出てくるヒーローにあこがれる青年が「自分も変わるぞ」と意気込んでヒーローを目指すお話。しかし、ストーリーはこれまでのX-MENやファンタスティック4、スパイダーマンやバットマンといった絶対的な強さを持ったヒーロー者とは全然違う。アメコミの世界とは全然違う厳しい現実と向かい合いつつも、彼の行動が徐々にまわりに変化をもたらしていく。そしてその変化は大きな渦となり、自身が巻き込まれていく・・・。

「倫理観が問われる」と言ったのは、「楽しんでいいのか?」と自問自答してしまうシーンがたくさんあるからだ。ところどころに出てくるユーモラスなシーンは観客の笑いを誘わずにはいられない。僕も何度も爆笑。でも、その多くがブラックユーモアで、なおかつ、11歳の少女が殺戮を繰り返すシーンがたくさん出てくる。キルビルも真っ青。でもその真っ青さをジョークと絡めている・・・観る者の心を試しているかのような恐ろしい映画。この映画を作った監督はすごいと思う。

この映画を賞賛すると、人格を疑われそうな気がする。が、正直に認める。個人的にはすごく楽しめた。観に来て良かったと思っている。アメリカでDVD発売されたら買っちゃうかもしれない・・・。

※IMDBでの紹介はこちら

仕事の効率が上がるマインドマップ

本日は、Grand Rapids滞在最終日。当初予定していた仕事の大半を終えることができ、とりあえずは御の字。

さて、今日は最近なかなか有りがたく思った話を書きたい。

ここ最近になり、仕事でやたらと「マインドマネージャ(MindManager)」というソフトを使うことが多くなった。このソフト、簡単なマウス操作やキーボード操作でマインドマップを作ることを可能にするソフトだ。マインドマップとは、文字通り「心(頭)の地図(を書くこと)」。

なんのこっちゃ、というふうにも思うかもしれないが、人が普段、頭の中で考えることは、算数の公式や、エクセルの表のように綺麗にはまとまっていない。そんなまとまりのないごちゃっとした考えを、図的にしかもわかりやすく表現して
整理しやすくしてしまおうというのがこのマインドマップという手法だ。

数年前に何かがきっかけで興味を一度持ったことがあり、そのときは「マインドマイスター(Mind Meister)」という無料オンラインサービスの利用を試みたが、「微妙な操作性の悪さ」にすぐにやめてしまった。

その後、マインドマップのことは、すっかり頭の奥底に埋もれていたのだが、このキーワードを耳にする機会が少なからずあったことも事実。実際、勝間和代さんも『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』という著書の中で、マインドマネージャが効果的という話を書いていたし、また最近では、会社の同僚から「山本敏行(株式会社EC studioの社長)さんという人がUSTREAMでマインドマネージャについて熱く語っていて面白い」と教えてもらう機会もあった。



「そんなもの紙とかホワイトボードでやったほうがいいんじゃないの?」

僕もそう思っていた。紙やホワイトボードのメリットは、変な技術的便利さがない分、余計なことに思考をとらわれないですむメリットがある。実際、ワードやパワーポイントなどを使っていると、いつの間にか、フォントのサイズや色、図形の形など、本来の目的とはほど遠い部分に思考の時間を奪われていることがある。

でも、マインドマネージャは確かに便利だ。紙やホワイトボードよりも有利な点は、切り貼りが簡単にできること。頭の中で考えることをはき出してから、整理分類をするマインドマップでは、切ったり貼ったりといったこの機能は必要不可欠だ。自分のパソコンにインストールをして使うソフトだからネットワークにつながっていなくても使えるし、操作性もいい。添付ファイルの貼り付けや、ハイパーリンクの貼り付けもできて、さらに便利。

直感的に使えるので、操作を覚えるのに時間がかからない。おかげで、今では、お客様への提案書やソリューション(案)など何かのブレインストーミングをする際には、常に使用している。マインドマネージャを使用すると「仕事の効率があがる」との触れ込みだったが、なるほど確かに明らかに効率が上がっているように感じる。

なかなか、うれしい発見になった。




ちなみに、僕に話を教えてくれたこの同僚、「よく考えたら、自分には使う場面なかったです・・・」とあっさり。あー、いつもと同じパターン。僕に薦めてくれるまわりは使わず、いつの間にか自分だけがどっぷりとその世界にハマっている。



===2011年8月4日(追記)===
この商品、2010年5月頃から使い始めて、はや1年以上が経過するが、今でも使っている。書評や、論文を書く際に頭を整理するものとして非常に便利だ。

難点は、このツールに慣れすぎてしまい、逆に、このツールがないときにモノが書けなくなるのでは・・・という恐怖感を持っているところか・・・。

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

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