2012年2月26日日曜日

もう作ったんですか・・・(by アイリスオーヤマ)

日経ビジネス2012年2月27日号を読んだ。以下、印象に残ったこと。

■自由化で矛盾際立つ運賃規制
「JALとANA、並びにこの2社の資本が入るグループ航空会社は、1996年に設立されたスカイマークや北海道国際航空といった新規航空会社の運賃を下回ることはできない」

※お恥ずかしながら知らなかった。しかも、”新規航空会社の一番高い価格よりも高い価格設定にしなければいけない”という規則らしい。どうりで、一回りも二回りも高いわけだ(宿泊とセットのパッケージは安いけれど・・・)

■倒産から33年越しの悲願
「再上場には様々な意味があります。株式がを持ってくれた取引先への恩返しや、社員の士気高揚という狙いもあります。ただ、私にとっては「上場会社に戻ることで経営をガラス張りにするという目的もあったんです。」 (吉川康長 永大産業社長)

※「上場は何のためにする?」という疑問は常につきまとうが、ガバナンスのため・・・という回答は興味深い。

■被災バネにトップヘ
(担当者を納得させられなかったプレゼンから3日後の月曜日)「遅くなってすいません。ご指摘いただいた点を改良してきました」。そして大きな包みを差し出す。中からは、改良されたLED照明が姿を現した。「もう作ったんですか・・・」。担当者はあっけに取られた。おそらく、ほかの企業は、報告すら終わっていないだろう。 

「ライバルが部品代や人件費、輸送コストなどの経費に利益を足して商品価格を決定しているのに対して、アイリスはまず価格を決定する。それから商品をどう低コストで開発するかを考える。「足し算ではなく、引き算の開発なのだ。)(アイリスオーヤマ)


■新製品は半分でいい
「BC(ビューティーコンサルタント)に実際に工場に行ってもらったりという取り組みも始めています。」(末川久幸 資生堂社長)

※当たり前だが、重要!実は、こういったことをできている会社は意外に少ないのでは?と思う。

■介護の地平を切り開く
「言われたことをやるのは当たり前。言われる前にここまでしてくれるのかという感動があって初めて、入居者に喜んでもらえる。ライバルは同業者ではなく、ザ・リッツカールトンやディズニーランドだと思っています)」(ロングライフホールディング 遠藤正一 社長)

日経ビジネス2012年2月27日号

2012年2月23日木曜日

刺激いっぱいの日経ビジネス2012年2月20日号!

今週の日経ビジネスは読み応えがあった。わがしがここで言う”読み応え”とは、自分のアンテナにひっかかり印象に残る部分が多かった、という意味だが、具体的な以下の記事だ。
  • 日産、トヨタ超えに見せる執念
  • 波に乗り損ねる日本
  • 決別、そして世界へ
  • 泥臭く「ヨコテン」
  • 海外展開は「まだまだ遅い」
  • 「健康弱者」救うサムライ
  • 財政難下で開会、式苦悩するロンドン五輪
今回は自分の考察を書く時間が無いので、気になった一文をそれぞれ書き記しておくことにする。

■日産、トヨタ超えに魅せる執念
「2011年、日産は災害などの突発事項への対応力が他社を凌駕することを示した。」

※以前、中国市場での日産の躍進に目を見張る・・・ゴーンすげぇーって書いたが、中国市場への進出の件だけでなく、震災やタイ洪水など災害対応への取り組みなど・・・日産の強さを理解するために、何かこうもう少しゴーン氏のリーダーシップや日産の会社としての戦略、あるいは文化・教育について深く突っ込んで勉強すべきところが多分にあると感じた。

■波に乗り損ねる日本
「治安にも問題のある待ちに同業他社はきっと現れまい。誰も入らないのだから物件は安いに決まっている。雑然が生み出す混沌こそドンキの活力と考えればどこよりもふさわしい立地ではないか」(ドン・キホーテ 安田隆夫会長兼CEO)

※以前、やはりブログで「みんなと反対のことをやるべし!」という記事を書いたが、それに通ずるものがあると少し感じた

■決別、そして世界へ
「(経団連は)護送船団方式を擁護し、あたかもこれが世のコンセンサス(共通認識)かのように振る舞う」(楽天 三木谷 会長兼社長)

※なかなか勇気ある行動だと思う。言葉で言うだけでなくきちんと行動に起こす・・・見習いたい。

■泥臭く「ヨコテン」
「そこで経営陣は一計を講じ、会長権CEOのピエール・コシュースコ・モリゼと数人の役員だけが、最初に名札をつけ始めた。「格好いいね、僕も欲しいよ」。そう評価する社員が増えた段階で、全社員に名札を配布した。狙い通り、「ほとんど抵抗されずに名札文化を定着できた」」(楽天 奥淳己最高戦略責任者)

※人間心理って面白いと思うと同時に、本当に馬鹿にできないと感じさせられた。

■海外展開は「まだまだ遅い」
「僕は普段から”スピード!!スピード!!スピード!!”と言ってるけど、彼らはスピード、スピード、スピード、スピードぐらい早い。コボの買収、これはもう本当にホームランだね。」(楽天 三木谷 会長兼社長)

※同感!うちなんか楽天に比べるのも失礼なくらい小さい会社だが、であればこそ、「スピード、スピード、スピード、スピード、スピード」くらいでいかないといつまで経っても伸びないと反省した。

■「健康弱者」救うサムライ
「「ワンコイン検診はいかがですか」「血糖値や中性脂肪がすぐに分かります。少し高い声で行き交う通行客に呼びかける青年。長テーブル2台が並ぶだけの狭いスペースには彼の声に反応した老若男女が次々と集まっていく。」(ケアプロ社長 川添高志)

※うまい! 壁は多いだろうが世の役に立つことだし、応援したい・・・心底思った。

■財政難下で開会、式苦悩するロンドン五輪
五輪開催のための予算は、当初計画の甘さが災いし、2005年時点から約4倍の93億ポンド(約1兆1200億円)にふくれあがっている。

※五輪計画の難しさなのか、イギリスゆえのいい加減さなのか、その本当の理由を知りたい。

日経ビジネス2012年2月20日豪


2012年2月18日土曜日

書評: 体制維新 - 大阪都

「リーダーシップ、かくあるべし」

MBAで学ぶケーススタディーよりもよっぽど勉強になる本だ。

体制維新 - 大阪都
著者: 橋下徹、堺屋太一
発行元:文春新書
発行年月日: 2011年10月31日

この本を知ったのは雑誌プレジデントに掲載されていた橋本徹市長と大前研一氏の対談記事を読んだのがきっかけだ。

■”大阪都構想”とは何か?なぜ必要か?が分かる本

大阪市、大阪府が抱える致命的な問題、それを解決するための都構想・・・大阪のあり方、日本のあり方について、橋下市長が熱く語った本だ。

「これでも、まだわからないのか!」

そう言わんばかりに、大阪が抱える問題を数多くの事例を交えて激白している。大学問題、教育委員会問題、地域振興会問題、大阪市営地下鉄の民営化問題、大阪市の独裁問題、空港問題・・・。

たとえば大学問題では、東京にすら1つしかない大学が、大阪には2つ(府立と市立)あることに触れ、東京の年間120億円の費用に対し、大阪では市・府合わせて208億円かかっていることを指摘している。


「大阪府庁も、大阪市役所も大阪全体のことなど気にしてない。自分の所管する大学のことだけを意識しているのです。そしてこうした二重行政が長年続けられてきた結果、大阪市民は気づかぬうちに、巨額の負担をさせられている・・・。」

このほか、地域振興会問題では、大阪市役所が補助金を出す団体(地域振興会)が、現職(例えば平松邦夫氏)の市長の選挙マシーンとして活動してきたという、まったくもって理解不能なカラクリについて指摘している。市役所で働く人たちに最も有利な市長を選ぶために、何で関係ない人の税金が投入されなければならないのだろうか。

こうした問題の根は深い、と氏は語る。こうした問題1つ1つの火消しをしても、第二第三の類似した問題が浮かび上がってくる。人を入れ替えたり、ルールを付け替えたりする対応ではダメで、その土台となっている仕組みそのものを抜本的に変えなければ治らないんだ・・・というのが橋下市長の訴えである。そして、それが”大阪都構想”だ。

■橋下市長と平松前市長の考え方の違いが分かる本

この本を読むと、いかに橋下徹氏が大局を見て勝負をしようとしているかが分かる。

当然のことだが、大阪が抱える問題を言及するにあたり、この本が執筆された当時市長だった平松邦夫氏への橋本氏の憤懣遣る方ない想いが随所に吐露されている。しかし、平松前市長だって、大阪のために役立とうと思って行動してきたはずだ。だからこそ市長として何年も活躍してこれたわけだし、実際にいくつも功績を残されている。にもかかわらず橋本氏とこうまで対立してきたのは・・・すなわち、二人の考え方に決定的な違いを生んだのは、見ている”視野の広さ”にあるのだろう、ということが本書を読んでみると良く分かる。

橋本氏自身、本書の中で語っているが、平松氏は、”大阪市”という与えられた土台、すなわち、与えられた枠組みの中で問題解決を図ろうと尽力してきた。翻って橋下徹氏は、その枠組自体を変えることで問題解決を図ろうとしている。その目は”大阪市”だけではなく”大阪全体”を見つめ、そして、日本全体、果ては世界全体を見つめている。

枠組みがしっかりしているとき、平松氏のような方はベストのパフォーマンスを発揮するのだろうが、枠組みそのものが腐りかけている今の大阪においては、橋本氏のような大局観を持つ人間こそがライトパーソンのように感じた。

■本書が持つ3つの特徴

橋下徹が自分の思っていることを一方的に説明する本・・・それ以外に何か特徴なんてあるのか?

そう思うかもしれない。私は本書の特徴=魅力は3つあると思っている。

1つは、心の奥底に”ずいっ”と入ってくる橋本氏の熱く丁寧な語り口調。紙に印刷された冷たい文字を読んでいるに過ぎないのに、氏の熱い想いが心の奥底まで侵入してくる。「リーダーはみんなが同じ方向を向けるように、”明瞭かつシンプルなメッセージを示すことが大事」と言われるが、まさにそれを体現しているかのようだ。

たとえば、橋本氏が”大阪の仕組みを変えることの重要さ”を、”OSとソフト”と言う言葉におきかえて説いた彼の説明はとても印象的だった。

「OSがウィンドウズ95のままでは、いまのウィンドウズ7用の最新のソフトは動かない。同じように、140年前にできた行政の仕組みを前提にしてできる政策なんてたかが知れているんですよ。明治時代にやればよかったような政策程度しかできないんです」

もう1つは、堺屋太一氏の存在。なぜ橋下徹氏一人の本にしなかったのだろうかと、ふと疑問に思ったのだが、振り返ると堺屋太一氏の存在意義は意外に大きいことに気が付かされる。どちらかといえば良い意味で感情的に訴えかける橋本氏に対し、歴史観も含め冷静かつ客観的にその訴えかけを補完する堺屋氏の存在は、読む者に思いのほか、安心感を与えてくれる。

最後の1つは、この本が”大阪市長以前の本”であるという点だ。橋本氏が市長になる前に書いたこの本と、市長になった後の橋本氏の実際の活動を見比べることで、彼の言動にブレがないのかを確認することができる。某民主党に代表されるように主役に選ばれたとたん軸がブレ出す人たちが多い中で、橋下徹氏はいったいどこまでブレずにやれているのか?それを観察してみるのも一興ではなかろうか。

■リーダーになる人は読むべき本

誰よりも先を見ること、分かりやすくビジョンを伝えること、ブレないこと・・・これらはリーダーシップに求められる要件だと思う。これまで見てきたとおり、それを誰よりも端的に体現しているのが橋本市長だ、ということが分かる本だ。

直接の利害関係者である大阪府民はもちろんこと、組織のリーダーとなる人たち全てに、少なくとも一度は読んでもらいたい本の一冊だ。

ただし、自戒の念も込めて、最後に一言だけ付け加えておきたい。この本は橋本徹氏自身が書いたものなのだから、彼の主張の良い面ばかりが見えるのは当然だ。これと比例して前市長の平松氏が”悪人”にすら見えてくるところに怖さすら覚える。もちろん、事をそんな単純に捉えるのは危険だし、そうするべきではないと思う。橋本氏の主張の意義を真に評価するためにも、われわれは橋本氏の声を聞くだけにとどめず、できれば反論する人の意見・・・とりわけ平松前市長の話にもっと耳を傾けることが大事ではないだろうか(ところで、平松さんは本って出してたのかな~・・・;あればぜひ読みたいなぁ~)



【政治に関する本・・・という意味での類書】
・書評: 東京を経営する(渡邉美樹)
書評: 日本改革宣言(東国原英夫)

2012年2月16日木曜日

知的財産国際取引所(IPXI)がやってくる

中央公論2012年3月号を読んだ。とりわけ印象に残った記事は以下の3つ。


■天皇制存続に尽力したグルーのおはなし

どうして日本の天皇制が敗戦後も維持されたのかという疑問にスポットライトを当てた、田原総一朗氏の記事だ。天皇制存続のために尽力したグルーという人がいた事実を知ることができたのが良かった。

■新書通67人げ厳選した年間ベスト10

ベスト・ワンはふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)という本だ。

タイトルは無宗教な自分に縁遠い響き・・・。しかしながら速攻、この本を買ってしまった(2月16日現在まだ読み始めてもいないが・・・)。

自分の周りに宗教信者が多かったため自分のアンテナにひっかかりやすかったのかもしれない。くわえて、数えきれないほどの新書が出た中でのトップの座をいとめたという事実にもインパクトがあった。後日、読み終えた暁にはその感想をここにアップさせていただく。

■IPXI(知的財産国際取引所)

IPXI・・・2012年中にアメリカ(シカゴ)にこういった名の取引所がオープンするらしい。アメリカ企業がイニシアチブをとって開発した新たな金融商品の取引市場だ。

何の取引市場か、といえば”知的財産権”だ。登録された会員間で知的財産のオープンな売買をすることができるようになる。

たとえば、車のライト用LED照明技術の特許を持っていたとしよう。この特許を軸に・・・「”これから三年後に年間100万個の照明を生産できる権利”を発行します。誰か買いませんか?」という流れになる。買いたい会員は「買いたい、いくらで売ってくれ!」と声を上げる。こうした取引が会員間の中でオープンに行われる・・・

そんなわけで、より効果的・効率的に知的財産権の売買をすることができる。言い換えれば、この取引所は、技術を持つ(・あるいは使いたい)企業の発展に貢献してくれる場所になるとも言える。

それ自体は素晴らしいことだし、歓迎すべきことだ。ただ、こうした記事を見て思うのは、「あー、またやられたな」・・・という思い。個人向けFXにしてもCFDにしても、こうした新しいアイデアは常に海外発。

ルール作りの得意な欧米とルールに従うのが得意な日本。TPPも、ワールドクラシックベースボールも、ISO規格も・・・。

いつになったら、日本は前者になれるのか。



2012年2月13日月曜日

ケーズホールディングスの「頑張らない経営」

今週の日経ビジネス2012年2月13日号に、ケーズホールディングス会長兼CEOの加藤修一氏のインタビュー記事が掲載されていた。

さすがトップに立つ人だ。メッセージの伝え方が上手いなと思う。キーワードは「頑張らない経営」。「えっ!?」と初めて聞くも者の注意を引くが、わかりやすい。

『人間の体に例えるとよくわかります。長生きするためには腹八分目の食事をして、適度な運動をして、気楽に過ごすことが重要でしょう。一方で、無理を続けると病気になったり、最悪の場合死に至ったりすることもある。経営も同じです。病気は会社がおかしくなること、そして死は倒産です。こういった事態を避けるためには、結果を優先させるのではなく、会社が健康に、つまり強くなる施策に重点をおくべきでしょう』

氏のいわんとすることは、つまり「”緊急ではないが重要なこと”に時間をもっと割こう!」ということなのだろうと理解している。どうしても人は、日々「”緊急だし重要なこと”」と「”重要ではないが緊急のこと”」の2つに軸をおいてしまいがちだが、そうならないように氏自身が強く意識しているのだと思う。

わたしは、仕事をしていると「このまま徹夜すれば全部で6時間、少し寝て仕事をすれば後2時間の作業時間を得られるが、さて、どちらを選択しよう?」という事態に直面することが多い。昔であれば、多少無理してでも前者を選択していた。今は、間違いなく後者を選択する。寝た上に、おまけにこの後に及んで30分~45分時間を失うのを覚悟でジョギングもすることが少なくない。

なぜなら、無理して6時間やっても健康を害するリスクがある上に、6時間起きていたとしても寝不足で実質2時間も集中してないからだ。それであれば、少しでも寝て、少しでも運動して、さっぱりして机に向かう1時間や2時間のほうが圧倒的に健康的だし、効率的だからだ。もちろん、その後の1週間の調子も大きく変わってくる。日々、実践しようと意識しているし、実際にそうしている。

卑近な例になったしまったが、加藤氏がいわんとしていることは、こうしたことを経営レベル・・・いや、会社全体でやっていくべき・・・ということなのだろうと感じた。

2012年2月11日土曜日

書評: 「正しく」考える方法

タイトル: 「正しく」考える方法
著者: 齊藤了文、中村光世
発行元: 晃書房


エリヤフ・ゴールドラット氏の「ザ・ゴール2」を読んでいて触発され、ロジカルシンキングの深淵を覗いてみようと意気込んで、Amazonで適当に探して買ったのがこの本だ。

■”議論”を語るアカデミックな解説本

「正しい議論へのアプローチの方法」をアカデミックに解説した本である。本書で紹介されているアプローチは大きく「演繹的な議論」「帰納的な議論」「非演繹的な議論」「因果的な議論」の4つだ。

ここで”アカデミック”と比喩したのは、上に述べたアプローチの解説にあたって、著者は文章をいくつかの部品に分解して・・・そうそれは、あたかも中学時代に習った英語の五文型(例:SVOC)のように・・・その組み合わせを詳しく考察しているからである。

たとえば「真・偽」「前提・結論」「P・¬P」(¬は論理学で使われる否定記号らしい)といった言葉や記号が頻繁に出てくるが、「不景気が続く」をPという記号で表し、「不景気が続かない」を¬Pを表すことにしよう・・・といった具合いだ。

■読者のスキルアップを促す練習問題

本書は読者が「正しい議論をできる」または「議論を正しく理解できる」ようにすることを狙いとしており、一方的な解説にとどまらず、練習問題を数多く用意している。たとえば次のような感じだ。

【練習問題(一部抜粋)】
以下の議論が妥当かどうかを決定しなさい。また、どのように決定したのかを説明しなさい。

1.ナルミの母は、チェーホフの『桜の園』を何度も繰り返し読んだ。シズカはチェーホフの作品を読んだことがない。それだから、シズカはナルミの母ではない・・・。
2.・・・

ちなみに、上の練習問題1の回答は「この議論は妥当ではない」だ。

■”大学で使う教科書”といった表現がぴったり当てはまる

この本で書いていることは至極正論だ。ただ、正論であることと理解しやすいか、は別問題だ。正直、わたしの本書に対するファーストインプレッションは

「これ、大学時代に教授から読まされていたあまり面白くない教科書にそっくりだなぁ」

といったものだ。後半になると、A(p, q, r, s, t, u, v)といったような感じで、いよいよ記号が増えてくる。すなわち、簡単なことを難しく説明し、眠りの世界に誘う・・・わたしの地頭が悪く忍耐力がないせいだろうが、そんな印象を持った。

こうした類の本にアレルギーがある人は、本書を読むのはまず無理だろう。正直、大学時代のトラウマが残っているせいか、わたしも本書を読了するのはキツかった。

■どんな人に向いている本か

先述したように決して”万人受けする本ではない”が、「正しい議論をする力」、「議論を正しく理解する力」を身につけたがっている人にとっては、有効な手段の1つになりうるものだとは思う。なぜなら「やれ、記号が多い」「やれアカデミックだ」などと揶揄したが、ロジカルにモノを考えるということは、合理的・・・いや、数学的に考えることと非常に似ているからだ。

人を説得する仕事についている人、ディベートをする仕事についている人、論文を書くような仕事についている人

そういったことが日頃から求められており、スキルに伸び悩んでいる人達には、文章をシンボリックな記号におきかえて、よりロジカルにアプローチできるような意識を持つ訓練は大きな助けになる。

「おまえはどうなんだ!?コンサルだろ!?」

という質問が飛んできそうだが、この本を読んだ後は、人の主張を聞いたときに以前にも増して、数学的な目で見つめるようになった、ということは¬(否定)しない。



2012年2月8日水曜日

書評: It's Not Luck (ザ・ゴール2)

タイトル: It's Not Luck (日本名タイトル: ザ・ゴール2)
著者: Euyahu M. Goldratt (エリヤフ・ゴールドラット)
発行元: The North River Press
発行年: 1994年

前作「ザ・ゴール」のあまりの素晴らしさに感動して、迷うことなく買った本だ(ちなみに英語力を向上させたいという目的もあったため私は英語版を購入して読みました)。

■小説型ケーススタディ再び!

本書は著者エリヤフ・ゴールドラット氏が提唱する「制約理論」の小説型ケーススタディだ。

前作「ザ・ゴール」では、主人公アレックスが工場長として自分の工場再建に立ち向かう話だったが、今作では彼は同会社の副社長として会社全体の再建に立ち向かう話だ。工場長時代のアレックスの活躍もありいくつかの事業は回復基調にあるものの、投資家が求めるレベル・スピードとはまだ程遠い状態。物語はそこからスタートする。取締役は収益に期待するほど貢献していない事業を売却するとまで言及しはじめる始末。事業がなくなれば自分のポジションもなくなる。そんな窮地に追い込まれたアレックスはどう立ち向かうのか・・・。

なお「制約理論」は、もとはサプライチェーン(SCM)を強化するための実証された管理手法であり、製造業などで特に注目されてきたものだが、その本質をついた考え方は、金融をはじめ、教育やサービス業など業界の垣根を超えて成功事例を納めてきた。続編では、理論の有用性を証明するかのごとく、経営やマーケティング・・・果ては、家庭問題の解決にいたるまで幅広いテーマに迫ってゆく。

■”読書によるOJT”を実感させてくれる本

読み終わって感じたのは、主人公同様の疲労感と達成感。それはあたかも1つのOJTをし終えたかのような感じである。さしずめOBT (On the Book Training)とでもいったところか。

その魅力は前作に負けていない。この本の良さについて、大きく3つのポイントを挙げることができる。

1つ目は読みやすさ。ケーススタディでありながら、物語形式をとっているという点だ。二人の子供を抱えるサラリーマン家庭。会社のみならず自宅で直面する苦労話には、ついつい自分の身を重ね、苦笑すらしてしまう。

2つ目はケーススタディそのものの質の高さだ。ゴールドラット氏は前作「ザ・ゴール」の反響が大きかったせいもあるのだろう。読者を通じて、その後も数えきれないほど多くの事例に接する機会を得られたに違いない。時間も援助も限られた中で次から次への振りかかる無理難題の連続は、そうした実際に現場で起こった事実が数多く採用されており、真実味に溢れている。

3つ目は”制約理論”の汎用性の高さだ。先にも触れたが、ケーススタディが取り扱うテーマは、会社の話にとどまらない。アレックスは師ジョナから習得したテクニックを(前作ほど深刻な話題ではないが)一般的な家庭で父親が直面するちょっとした問題解決に対しても使ってみせる。

一般的な父親が直面するちょっとした問題とは、具体的にはたとえば「自分(アレックス)が出張している間に、その間だけ車を使いたいと子供が突然言ってきた。しかし、自分は感覚的になんとなくあまりノリ気がしない。」・・・こんなシーンで自分は子供にどう接するか?といったようなものだ。普通であれば「適当に理由をつけて断る」か「やや不機嫌な面持ちで貸すことに合意する」か・・・そのどちらかだろうが、本ではお互いがしっかりと納得できる形の解決をさぐる。

■原点回帰できる本

「~理論」と言っているが、その内容は決して難しい話ではない。現状整理の仕方や根本原因の追及の仕方は、コンサルタントが普段行なっているそれと同じようなものだ。ただ、コンサルタントのみならず仕事の経験値が増えてくると、ついつい、基本的なことを忘れてしまいがちなのが人間だ。

たとえば「お客様にどうやって商品を売るか?」というテーマを抱えた時、みなさんはどのようにアプローチするだろうか? 多くの人が「どのお客様が興味を示しそうか?」「いくらだったら買いそうか?」「商品の付加価値を理解してもらえるだろうか?」そんな問いかけをする人も少なくないのではなかろうか。もちろんそういったことも大事だが、それよりも前に「そもそもお客様は何に困っているのか? 我々はどうやったらお客様のその悩みを解決してあげられるのか?」といった視点を持つことが大事である。

「そんなの当然!」と一蹴する人も多いだろうが、意外にそういったことを忘れて供給者側の視点で物事を追及しようとしている人は少なくないように思う。そういった意味で、原点に回帰させてくれる本だ、と思う。

■社員の教育本として・・・

私の会社はコンサルティング会社であるので当然の話だが、どのような組織に務めていても、この本に書かれているような考え方は身につけていて決して損のないものだ。いや、身につけているべきものだ。

しかし、一方で”当然”と思える知識を教育することは意外に難しいのではないかと思う。OJTなどで身につけさせるのが一番の近道だが、場合によっては学習に適当な案件がないときもある。また、我社のように若く、教育スタイルが確立されていない会社は、教育の質にもばらつきが出る可能性がある。

こういった問題を解決する手段として、この本を配って読ませるというのも一興だと感じている。もしそれを行った際には、後日談としてその効果をここに記載させていただく。


【コーチングという観点での関連リンク】
 ・書評: ザ・ゴール(The Goal)
 ・書評:子どもの心のコーチング 
 ・書評:この1冊ですべてわかるコーチングの基本

2012年2月7日火曜日

SNS情報漏えい対策

今週の日経ビジネスの特集は「忍び寄るSNS疲れ ~思わぬ失敗、続々~」。SNSとは、ツイッターやFacebook、Mixiなどに代表されるネット上の交流コミュニティシステムのことだ。

企業において、決して軽視できないSNSにまつわる事故が数多く起きている。有名なのは、アディダス社の事例だ。社員が店舗に来店したお客様(有名人・・・しかもアディダス社がスポンサー契約を結んでいる選手)について、不愉快な投稿をして大炎上した。個人のつぶやきが会社・・・いや、社会レベルの問題に発展した例だ。

企業はいまこうした問題への対応に頭を悩ませている。人のプライバシー・・・ましてや自社のお客様のプライバシーを人にあけっぴろげにしたり、誹謗中傷をしない・・・ということは、”常識”の話である。この常識を社員に徹底させる・・・ということを企業はどうやって実現するのか。

今トレンドの対策は、大きく2つだ。1つ目はSNSツール利用方針の徹底、つまり常識の教育。そして2つ目は、対処的対策だ。すなわち、IT技術を駆使して自社に関するつぶやきをしている社員を監視し、何か問題のある発言が見つかれば即座に対応するというものである。

きっと、わたしのこういう書き込みを見て、年配の方々はこう言うのだろう。

「また変な世の中になったものだな・・・。常識をツールなどで管理しようとするなんて・・・。」

そのとおりである。そのとおりであるが、目に見える形で被害が出ているのもまた事実である。こうした被害への有効な対策を考えるのはなかなか難しい。

ただ、記事では1つ面白い対策例を紹介していた。

「社員にこうしたSNSを使わない、あるいは、使っても余計な情報発信をしないように周知徹底しようとするのではなく、むしろ、そういった活動は許容する・・・ただし、発信する際には必ず社名を記載しろ・・・を徹底させる」といったものだ。

効果の程は定かではないが、理解はできる。「会社名を記載させることで、忘れがちな意識・・・すなわち、会社の代表として社外に情報発信をしているのだ」という意識をもたせることで不用意な発言を回避させるというものだろう。

これは逆の見方をすれば、問題発言をする人たちの多くは、自分が会社の代表として情報を発信したことになってしまうのだ・・・ということを忘れてしまいがち、ということになる。いやもっと言えば、自分の発言がどういう結果をもたらすか、ちょっとした未来を想像する力を欠如してしまっているということか。

想像力を回復させるためにはやはり教育・・・あるいは一回大失敗をしてみるしかないのだろうか。

【関連リンク】
 ・ツイッターの副作用(過去のブログ)


思いがけない発見!(って言ってるところが終わってるかもしれませんが)

今朝、通勤電車の中で、いつものように日経新聞朝刊に目を通していた。1つの記事が目にとまる。

「金曜夜の就寝時から月曜朝まで、自宅のパソコンをネット接続から切り離したらどうなるだろう。米国の元新聞記者が、家族とともにそんな実験に挑んだ。」

なんでも電話での会話や執筆、TV視聴は良しとして、とにかくインターネット関連の道具を使わないという条件設定をしたそうだ。その結果をまとめると次のようなものだったそうだ。

《実験初日》
ネット経由の映像や音楽などを欠いた我が家は、他人の家のようによそよそしかった。見慣れた風景のはずなのに現実感は乏しく、部屋は静まりかえって感じられ、見るものには生気がない。思いついた疑問も天気予報もすぐには検索できず、ただ不自由を嘆いた。

《数週間後》
変化が訪れる。パソコンに「へばりついていた心」が引きはがされ、家族水入らずの時間がよみがえる。本に向かいじっくり物事を考える習慣が戻る。ネット不在の週末が楽しみになると同時にデジタル機器の有益さも改めて理解。ネットとは自分で適切な距離を取らなくてはいけないとの結論に至る。


「これ勉強になるなぁ。妻と親父に送ってやろう」

・・・そう思って「春秋」の記事を送信。

数分後に両者から返信。

妻:「これってあなたに必要なことよ。アタリマエのことでしょ。」


父:「まさにそのとおりと思う。私が君に不自然さを感じたのは、先日一緒に飲んでいたときのことである。人と会話していながら、君の心は常に携帯画面にあった。我々世代ではこんな失礼者は相手にしないことが常識である。気を付けられたい」


「おおっ!・・・これって自分のことかっ!?」

はっ!?っと我に返る。我ながら本当に情けない、という気持ちと共に、朝、数行の記事から大きな学び(?)を得たことに会心の笑みを得た。

日々是精進なり・・・。いや、反省してますって・・・本当に。

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...