2010年12月30日木曜日

書評: ITロードマップ2011年度版

ここに1つのテーマがある。

「来年以降のITを取り巻く動向はどうなるのか?」

年々加速度的に増す技術革新のスピードには、もはや驚きを通り越してあきれる思いすらある。そんなわけで正直、目を背けたくなる気持ちもある。しかし一方で、ビジネスに携わっている者であれば、このようなテーマに多少なりとも触れておくことは、決して損なことではないと感じるのも事実だ。

そこでだ。「ITロードマップ2011年度版」(野村総合研究所)を読んだ。

様々なキーワードが注目される中、とりわけ自分の興味を引いたのは、以下のものだ。

・ワイヤレス
・ソーシャルCRM
・ITモダナイゼーション
・次世代データセンター

「ワイヤレス」という言葉自体に目新しさはないが、ここに2つの注目されるべき技術がある。

(正直もう英語3文字の略語にウンザリだが)1つはLTE(Long Term Evolution)だ。携帯の通信速度が、また格段にアップグレードされる。現行はWiMax(ワイマックス)と呼ばれる技術が普及しつつあり40Mbpsだが、LTE技術により論理的には最大100Mbps(下り100Mbps、上り50Mbps)にまでスピードアップする。さらに、ゆくゆくは4G(フォージー)と呼ばれる技術で、最大1Gbps(1000Mbps)のスピードが実現されるそうだ。

「そんなにスピードが速くなっても、コンテンツや使う人間の側がおいついていかない」

という声が聞こえてきそうだが、少なくとも可能性は無限大に広がりそうだ。果たして、どのようなビジネスチャンスがあるのか、アンテナを張っておく必要がある。

「ワイヤレス」に関わるもう1つの技術は「ワイヤレス給電」だ。個人的には、この技術が注目度ナンバーワンだ。我々の生活スタイルを劇的に変える可能性のあるものではなかろうか。ワイヤレス給電とは、電化製品であっても電源ケーブルが半永久的に不要になる技術だ。空気中を伝わって電気が供給される世界を思い描くと、なんとも不思議で、また、やや恐怖心もわいてくるところではあるのだが・・・。

しかし、よく考えてみれば、その一部は既に実用化されている。携帯電話の子機などがいい例だ。子機などの充電に使われている技術は1センチ以上離すと給電できないというデメリットがあるが、現在、10メートル離れても給電できる技術も開発過程にあるとのことだ。末恐ろしい。

【ワイヤレス給電の種類と給電可能距離】
電磁誘導方式・・・1センチ
磁界共鳴方式・・・ 10メートル
マイクロ波帯電磁波方式・・・給電装置不要

「ソーシャルCRM」は、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェースブック)、Mixi(ミクシー)などに代表されるソーシャルメディアを使って発信される情報を収集・分析し、マーケティングにフル活用するという技術だ。この技術が注目されるべき点は、考え方そのものにある。ビジネスシーンに直結しやすいということから、CRMと結びつけられているが、今後、ソーシャルメディアに端を発した様々な組み合わせ技術が出てくる、いや、開発していく必要があるのではなかろうか。

自身は、リスク管理に関わるコンサルティングを行う立場にあるが、この業界にいたっても様々な利用シーンが思い浮かぶ。(例:人々がつぶやくキーワードからどのようにリスクを抽出し、管理するために活用するか・・・など)(ここには、もちろん具体的なアイデアを書かないけど)

「ITロードマップ2011年度版」を読んで描く思いは三者三様だが、ITに関わる立場にいる者であればぜひ読んでおくことをお薦めしたい。



【関連リンク】
 ・置くだけでバッテリー補充!(2011年12月19日ブログより)

2010年11月26日金曜日

記事評: 真の危機管理とはなにか


ビジネス雑誌、ハーバードビジネスレビュー今月号(2010年11月号)のテーマは「軍隊に学ぶリーダーシップ」である。その中に、危機管理に関する面白い記事があったので紹介しておきたい。

"You have to lead from everywhere(あらゆるところから指揮をとらねばならない)" by アメリカ沿岸警備隊最高司令官 Thad Allen氏

「(滅多に遭遇しないような)”大きな危機”に直面した際、どのように対応してきたか、そして、そこで求められたリーダーシップとはどんなものか?」が、記事の趣旨だ。

ここで「滅多に遭遇しないような”大きな危機”」とは、換言すれば、文字通り予想外の事態のことである。自然災害であっても、ある程度その発生や被害が事前に予測され、対応方法が決められているものについては、この記事が前提とする”大きな危機”には当たらない。したがって、たとえば、アメリカで頻繁に起こっている通常サイズのハリケーンは、大きな危機ではないことになる。逆に、2005年にニューオーリーンズ州(アメリカ)で起きた巨大ハリケーン、カトリーナ災害※1であるとか、つい最近起きたBP社のメキシコ湾オイル流出事故などは、”大きな危機”に当てはまる。

自分はリスク管理の専門家である。起こる前のリスクや顕在化してしまったリスクをどうコントロールすれば良いのかを日々考えている立場にあるため「発生の予想が難しい(シナリオを描くのが難しい)事態に対して、何をどこまで用意しておくべきなのか(または用意できるのか?)」といった点に大きな関心があり、そういった意味で、今回のこの記事は非常に興味深かった。

最高司令官Thad Allen氏は記事中、こう述べている。

「軍隊(あるいは想定範囲内の事態への対応)ではChain of Command(指揮命令系統)※2が重要だ。しかし大きな危機に対しては、Unity of Effort(努力を結集させること)と正確・迅速なコミュニケーションが重要になる」

「努力の結集」と言ってもピンとこない人も多いだろうが、つまり(能力的・リソース的に)独立して動ける複数のチームに、どう効果的・効率的にダイレクトな指示をだせるか、ということを意味している。危機になればなるほど、周囲は混乱状態である可能性が高く、細かい指示を出せないため、多くの場面で自己判断が求められる。おおざっぱな指示を出して、各チームの判断で動いてもらうことが現実的であるし実効的である、というわけだ。

さて問題は、どうやって「努力の結集」を実現するか、というHOWである。

Thad Allen氏の発言をまとめると、先述したように”強力なリーダーシップ”とコミュニケーションに集約される。具体的に強力なリーダーシップは以下の4つになる。

・マクロ的に物事をとらえられること
・明瞭簡潔な指示を出し、正確に現場に伝えられること
・必要な場所に足を運び、かつ、いつどこからでも指揮をとれるようにしておけること
・平常心を装っていられること
・好奇心が強い人間であること

上記2点目の「明瞭簡潔な指示」は、経営に通じるものがある。経営者の意志を正確かつわかりやすく現場に伝えるのは決して容易いことではない。たとえばThad Allen氏はカトリーナ災害の際、約2000人以上の関係者を一部屋に集めて、次のようなメッセージを発信して、リーダーシップを発揮することに成功したそうだ。

【カトリーナで集合した部隊2000人を一室に集めリーダーが出した唯一の命令】
「自分に助けを求めてきた者には、自分が一番大切に思う人達(家族であるとか、親友であるとか)にとるであろう対応と同じ対応をしなさい。そのような行動をとって失敗しても想定される事態はせいぜい2つだけだ。1つは、やり過ぎ(てリソースを無駄に使ってしまう可能性があるということだ)。しかし、やり過ぎは構わない。どんどんやりなさい。もう1つは、誰かがケチをつけてくることだ。しかし、そのような文句があっても、それは全て私の責任だ。気にしないで積極的に行動しなさい。」

私はBCP(事業継続計画:事業が中断するような特定の事態に遭遇した際に、中断した業務をいかに速やかに復旧させるための計画書)だけでなく、CMP(危機管理計画:危機が発生した際の危機管理チームの行動計画書)も見て欲しいとお客様から相談を受けることが良くあるが、上記、記事からもやはり言えるのは、細かい行動手順や(あれば良さそう)的な情報を記載した柔軟性の低い危機管理計画は、予測が困難な事態に対して、役に立たないということだ。当たり前のことだが少なくとも、コマンドセンター(危機管理対策本部)とコミュニケーション手段、そして主要ステークホルダーの連絡先、これをおさえて、後は状況に応じた行動がとれるようにしておくこと・・・それが重要である・・・

と改めて感じた次第だ。


※1. 通常のハリケーンには州政府が機能している前提での行動計画が策定され、それに沿って対応が行われるが、カトリーナの時には州政府そのものが機能しない事態に陥った。
※2. どうもこの点については、軍隊の中でも、海軍・空軍はその傾向が強く、陸軍・海兵隊ではそうでもない、という指摘もあるようだ。

======2011年4月27日(追記)======
日経新聞2011年4月27日朝刊の記事に、「ジュリアーニ前ニューヨーク市長 指揮命令系統を1つに」という記事が興味深かった。記事では生活面や危機管理の両方で大事な心得について述べている。生活面で大事なことは、とにかく「普段通りに振る舞う努力をすること」だそうだ。そして、危機管理における指揮で大事なことは、「ワンボイス(命令を出す人を1人に絞ること)。1人が無理な場合でもワン・セントラル・ボイスにすること」だそうだ。なお、ワン・セントラル・ボイスとは、情報の発信者が複数いたとしても同じ時間に同じ場所から命令を出すという意味だ。

良くクライシスマネジメントの王道として、「スポークスパーソンは1人にすることが良い」と言われる。これは、窓口を一本化することで情報を受ける側が混乱しないための配慮だ。残念ながら、今回の東日本大震災の政府や東電の対応にこの考えを当てはめると、必ずしもそのようになっているようには見えない。

2010年11月5日金曜日

FXの功罪

ここ数年FX(エフエックス)がブームだ。

FXとは、Foreign Exchange(フォーリン・エクスチェンジ)の略で、外国為替証拠金取引のことだ。USドルなど外国通貨を買ったり、売ったりすることで、日々の為替レートの変動を利用して、差分から利益を得ようというものだ。株式取引よりも注目されるようになったのは、その名の通り証拠金取引が誰でも簡単にでき、短期間で大きな結果を得られる可能性があるからだ。証拠金取引では、100円しか元手が無くてもその何倍もの取引ができる。たとえ10,000円しか持っていなくても、それを元手に、たとえば30,000万ドル(約240万円相当)を買ったり売ったりすることができる。おかげで、為替変動が1銭2銭というちょっとした話でも、多額の利益を得られる可能性があるわけだ。

さて、あまりにもまわりが騒いでいるものだから、「自分も勉強がてら・・・」と思いつつFXをやってみた。なるほど、その影響力は凄いものである。

さて、何が凄いのだろうか?

私の実体験から、いかに個人的な感想をまとめてみたい。私の感じたことをまとめると、大きく3点に要約できる。

まず1つめは、その驚くべき手軽さ。自分でパソコンを立ち上げて、通貨を選択し、取引量を入力・・・あとは、「売る」「買う」のボタンを押すだけである。秒単位で為替は変動しているため、買った(あるいは売った)瞬間から、利益や損失が発生する。何が何だかよくわからずに、マウスをいじっていたら、思わず誤って「買う」のボタンを押してしまったことがある。それで数千、数万円の儲け・損失が一気に決まったりするのだから怖い。

そして2つめは、中毒性。この中毒性は半端ではないと思う。FX取引では、パソコンの前に四六時中座っている必要ないように、「何円になったら売る」とか「何円以上下がったら買う」とか、事前に値を指定(指値・逆指値)して、”予約買い”や”予約売り”を行うことができる。当然、こういった機能を使うことで、後は放っておけば儲かる・・・こう考えるのが人間の心情だ。

ところがどっこい、世の中、そんなに甘くはない。

日々変化する経済状況の中で、お偉いさんのちょっとした発言は為替を大きく変動させる。そう、波の高さや流れが一気に変わるのだ。あらかじめ読んで設定した予約(指値・逆指値)の前提が大きく変わってしまう、というわけだ。モニタの前に張り付いていないと、なかなかその波をつかむことが難しい。「FXの必勝策は、24時間パソコンの前に座って取引をすることだ」と書いている、ものの本もあるくらいだ。実際にそうなのだ、と思う。もちろん「そんな1日や2日の中で起こる波の変化は自分は気にしないよ」という人もいる。そんな人であったとしても、やはり、何かのたびにふと為替レートのことが気になってしまうハズだ。自分がそうだったからだ。ついついそのときの為替レートはどうなっているか、とニュースを追い求めている自分に気がつく。実は見た目以上に精神的に、FXにばかり時間をとらわれてしまうこと・・・これが本当に怖い、と思う。

最後の3つめは、経済ニュースに対する自分のアンテナだ。先に述べたように為替変動は、高官などのちょっとした発言や経済指標の発表内容で、大きく変化する。この波を読むためには、とにかく日々ニュースにアンテナを張り巡らせておかなければならない(ディーラーが、ひたすらロイターやCNNなどのニュースを流しっぱなしにしている理由がよくわかる)。すると、今まで気にもとめなかったような、毎月はじめに発表されるアメリカの雇用統計指数だとか、製造業に関係する指数だとか、ありとあらゆる統計情報が意味あるものに見えてくる。日銀の発言や対策、政府の動き・・・全てを理解しようという姿勢になる。一瞬、専門家になったような気分にすらなってくる。FXをやったことで、やたらと経済に詳しくなった・・・これは大きい成果だった。

さて、そんなFXだが2ヶ月ほどやってみて、肝心の金銭的結果はどうなったのか。

実は、一時期10万円近く儲けた。でも、あーだこーだで、120円まで儲けが目減りしてしまった。その後、先述したような中毒性に恐ろしくなり、FXから遠ざかってしまっている。あまりにも頭の中がレート、レートで、せわしくなり、精神衛生上も決して良くないように思えた。まだ、まわりには、「上がったぜ、下がったぜ」とか、「モニターを見てたら日が暮れてしまった」とか、言っている人たちがたくさんいる。

自分は、そういった声を聞くたびに、いよいよますますモニターの前に座る気が起こらなくなってしまっている。

ただ色々な功罪はあろうが、やってみて良かったとは思う。大変、良い人生の勉強になったのだから。得るものはそれなりに大きかった。

2010年10月29日金曜日

苗字のルーツを調べる

現在、ロシアはサンクトペテルブルク滞在中。

さて、ふと

「自分の苗字のルーツはなんだろうか?」

と思った次第である。私の苗字である勝俣(かつまた)は、富士山の周りに多い、というのは以前から噂に聞いてきたことだが、インターネットを駆使してもう少し調べられないものかと奮起してみた。

そうするといくつかのキーワードが見えてきた。

・御殿場
・勝間田一族
・勝間田城
・勝股、勝俣、勝又、勝亦、勝間田

疑いようのない事実として、静岡県御殿場市に行くと、”かつまた”さんが、確かに無数にいるらしい。が、ここより100Kmほど離れた榛原町の勝間田というところに勝間田城とよばれる勝間田一族が支配するお城があったらしい。ところがこれが戦国時代に今川氏の攻撃により落城し、勝間田一族が逃げ延びる形で富士山麓に移り住んだのではないか、とのことだ。うぅむ。敗残したわけね。

これを裏付ける話として、更に「名字の話」(静岡新聞社発行)という本で、

「静岡県榛原の勝間田氏が1476年に滅び勝間田四兄弟が山梨県平野に逃れ、長男が「勝俣」、二男、三男が印野に移住「勝間田」、四男は仙石原で「勝俣」と名乗った。」

と紹介されている。ここまでは正しい史実と思って間違いなさそうだ。


さて・・・・信憑性という点では定かではないが、一応、インターネット上で見つけた興味深い文章があったので、それをそのまま引用(勝手に引用してごめんなさい)しておくと

======
勝間田一族は静岡県の牧の原辺りの横地一族の支族なのですが、この横地一族の始まりは源義家の庶子なのです。つまり清和源氏であり元をただせば天皇家に繋がるのです。この一族は徳川の家臣が最初ではなく源頼朝の挙兵に戸塚・西郷・海老江・二俣などの横地氏族と共に従い、源義経と共に壇ノ浦で戦うものもあれば室町幕府の成立に尽力し足利将軍の御家人になるものもいて、武勲、戦功のあったものは何人もいます。

元寇のときに禁裏の警護をしたものもいました。諏訪神社神事には二人が射手をしており、毎年の年初めの弓射ちの役目もあったそうです。

応仁の乱あたりで今川義忠に当主の勝間田修理亮は討ち取られてしまいますが、残った一族・残党が即座に敵討ちをしてまいます。その後一族はばらばらになりますが、武田の家臣になった者もいれば北条の家臣になった者もおり、帰農した者もいたそうです。

その後に家康の側室に西郷局が入ります。この西郷と言う名は九州菊池氏の一氏族の名です。西郷氏は三河国に移り住んだ後に岡崎城を創建しましたが松平に迫られ家康の祖父の清康を養子に迎え、変わりに城を譲りました。ちなみに九州に残った菊地一族に幕末の下級武士の西郷隆盛、別名・菊地武雄がいます。

そして三河国西郷氏に勝間田五郎大夫忠春の娘が養女にはいり、この養女が後の西郷局です。そして家康と西郷局の子が二代目将軍秀忠です。西郷局の先々代の勝間田正重戸塚七郎の兄弟・勝間田兵庫頭の九代後に喜世がいます。この喜世が六代将軍家宣の側室に入り子供をもうけ、この子が七代将軍家継になり喜世は月光院になります。
======


なにやら話は色々と膨らむようだが、残念ながらタイムマシンでも発明されない限り、これを確かめる術はない。そして、何はともあれ、結局は今の自分が全てである。

過去に浸るのはほどほどにしておいたほうがよさそうだ。


2010年10月22日金曜日

息子のいたずら

やられた・・・。

昨晩、夜11時頃に自宅に帰宅した。家族はもちろん就寝中。物音を立てないように静かに部屋に向かう。暗い部屋の電気をつけようと足を進めると、なにやら左手に黒い影が複数あらわれる・・・。

ふつう・・・の感じではないと察知。

びくっとしながら、左手をみる。

そこにはたくさんのカブトムシとクワガタがはりついている。

情けないことに、おもいっきり後ずさってしまった。

朝、息子に話を聞いてみると、まさに脅かすために自分のアイデアではりつけたのだそうだ。


うーん、やられた。ドキドキだったよ、パパは。

2010年10月5日火曜日

書評: 食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない

今年に入り、右目を患い(飛蚊症)、右肘を痛め、これまで以上に”健康”という言葉に敏感になった。たまに会う健康オタクな(・・・いやあえて専門家と言っておこうか)父からは「人間が口から体内に摂取するもの、すなわち”食”に気をつけることが、健康への一番の近道なんだ」と言われた。

そして先日のラジオで、食に関わる迷信や勘違いについて客観的な事実に基づいた解説をしている本が出版された、ということを耳にした。それが、以下の本を買った背景である。

松永和紀著「食の安全と環境」(気分のエコにはだまされない)

221ページからなり1,600円もした(最近、自分が興味を持つ本は高いものばかりで、ちょっと嫌になる)。

さて、食に関わる迷信って何だろうか? たとえば、こんなことである。

・輸入品より国産品の方が安全である
・有機農業で作った作物のほうが体にいい
・日本で遺伝子組み換えの食品はほとんど消費されていない
・化学肥料は毒である、など

すぐにおわかりいただけるだろうが、例として挙げた上記項目に対する回答は全て”否”である。いや、ケースバイケースといったほうが正確だろうか。

あまり偉そうに書くとまるで私自身「前からそんなことは知っていたよ」と主張しているように聞こえるが、実は(基本的に無知なので)ほとんど知らないことばかりだった、ということをあえてここで付け加えておく。

たとえば「遺伝子組み換え」について。”食の安全に敏感”なので、”遺伝子組み換え”なんて得たいの知れないものは、私を含め日本国民にはまだまだ受け入れられていないものだろうと思っていた。事実、消費者意識としてはそうなのだが、実際は知らず知らずのうちに大量に消費されている、というのだ。

組み換えトウモロコシ・・・この作物の海外からの総輸入量年間1600万トン、自給率はゼロである。スーパーで「組み換え・・・」なんて表示を見かけないのに、なぜこんな大量に輸入されているのだろうか?

答えは簡単。輸入された組み換えトウモロコシは、飼料、でんぷん、シロップ、食用油などに加工されて消費者の前に現れているからだ。飼料として組み換え品種を使っても、肉に表示する必要はない。食用油もそう。みんな知らず知らずのうちに組み換え遺伝子の作物が生活に浸透している、というわけだ。

この本では、このような解説がずらっとされている。

ところで、迷信ってなぜ起こるのだろうか?メディア操作?消費者の偏見?

私は、その理由の1つには「何事も自然であることが一番」という感覚が無意識のうちに働いているせいではないか、と思う。

・遺伝子組み換えはNOだ!
・有機栽培はYESだ!
・化学肥料はNOだ!
・添加物はNOだ!

でも著者は言う。

そもそも”農業”自体が不自然な産業なのに何を言っているのか、と。

木を切り倒し、雑草を抜いて農地にし、単一の植物だけを選んで植え、日の光がよくあたるようにして養分をやって育てるというきわめて不自然な行為こそが農業なのだと。

「うーん」と、うならされる一冊である。

個人的には、この本の隠れたメッセージは

「あれは良いことである」「これは悪いことである」「私が書いた本を信じなさい」

という短絡的なことではなく、

「何事も疑ってかかることが大事だよ」

ということではないか、と思っている。「食品の裏側」を書いた阿部司氏も、彼の本の中で「添加物を悪」だとは一言も言っていない。「何も考えずに言われたもの、与えられたものを受け止めるのは危ないことだ」と語っている。

これは、今の日本国民に何よりも欠けているものではないだろうか。



2010年9月10日金曜日

ディベートがもたらすもの

ジョギングを再開(?)して、3ヶ月弱。継続している。睡眠も万全、体調も万全だ。

さて、Apple社が世にもたらしてくれたiPodのお陰で、世界中のニュースやラジオ番組を簡単に聴くことができるようになった。最初は興味本位で聴いていたが、今ではジョギング同様、日課になっている。移動に多くの時間がとられる朝夜の通勤時には欠かせないアイテムだ。

このようなルーチンワークをこなしている中で気がついたことがある。

アメリカと日本での「テーマに対する検証の仕方」だ。

日本の番組は(田原総一朗さんのような番組は少ないほうだろう)マジョリティを代表する専門家や意見を持つ人を登場させ、一方向から検証することが多いように思う。バラエティであっても、報道であっても、お互いの意見をぶつからせることは進行上よろしくないのか、たとえ、意見を異にする人たちが同じ場にいあわせても、あたりさわりのないことをいって終わらせることが多いように思う。

一方、アメリカでは、多くの番組で何らかのテーマについて検証する場合、ほぼ必ずといっていいほど、ディベート形式がとられる。賛成派と反対派・・・意見を異にする人たちを登場させ、その場で議論をさせる。たとえ、国民や専門家の80%以上が賛成意見に傾いていたとしても・・・だ。司会者は、中立的な立場を心がけ、お互いの論点を上手に引き出す。ただし、結論は出ないで終わる。

この検証の仕方の違いがもたらすものはなんだろうか?


ふと考える。


そこには、ものすごく大事な違いがあるのではなかろうか・・・。


ディベート中心の番組では、見てる者は自分で考えようとする。そう、答えとして、すがりたいハッキリとしたものがそこにないからだ。聴いた者は、自分の価値観で判断するようになるので、賛成する者もいたり、反対する者も多数でてくる。

逆にマジョリティ意見を持つ専門家がしゃべる番組を見たらどうなるだろうか。見ている者は、そこに、すがりやすいハッキリとした意見が存在するので、それが”正解”だと思ってしまう。日本国民は良く「横を気にする国民だ」と言われる。

「みんながそう思っているなら、自分もそれでいいや。いや、そうじゃないとまわりからたたかれるだろうし・・・。いやいや、きっとそれが正解に違いない。」

番組で言っていることこそが正解であり、それこそが自分が持つべき意見だと流されてしまわないか? でも、もし仮に、このマジョリティの意見が間違っていたらどうなるのだろう。末恐ろしいことだ。


最近、円高問題では日銀が一方的にたたかれている。

最近、小沢さんが一方的にたたかれている。


本当にそれでいいのだろうか・・・。日本人は、考えることをやめてやしないか。


そんな生意気なことを、ふと、思った。

2010年9月5日日曜日

めまぐるしく変わったグランドラピッズの天気

9月4日(土)午前10:45分、シカゴ空港にてこれを記す。

いよいよ日本に帰国だ。

今回は4日間の比較的短い滞在となったグランドラピッズ。運悪く大きなハリケーンがやってきた。お陰でほぼ毎日天気が悪く、強い風と雨ばかりの歓迎を受けることとなった。


そんな中にあっても、早朝ジョギングだけは怠らずに続けてみた。走る時間が、朝5時のときもあれば7時の時もあったりとマチマチだったおかげで、真っ暗な暗闇を走ることもあれば、朝日を拝みながら走ることもあった。

朝のジョギングの最中に、結構、色々な写真が撮れたので、それらをここに貼っておく。

【朝5時です】



【朝6時半頃です】



【雨がしとしと降っていた朝です】



【帰国する日の朝8時:ハリケーンが過ぎ去り爽快な朝でした。でも寒かった】


最後の写真を見ても分かるとおり、もう夏も終わり・・・。帰国の日、最終日にそんな雰囲気を肌で感じた。
(一方でこの日の同時刻、東京の気温を見ると35℃と書いてある。グーの寝も出ない・・・。)

2010年8月31日火曜日

書評: 日本人が誤解する英語

再び、戻ってグランドラピッズ。今回は、8月30日から9月4日までの滞在予定だ。

さてさて。いや~、久々にいい本に巡り会った

成田空港にある書店で、いつも持ち歩く”読みたい書籍リスト”を参考に、楽しく読めそうな本を探したのだが、本がどれも見つからず、かといって手ぶらで飛行機に乗る気にもならず、何気なしに機内で時間をつぶせそうな本を物色していた。その際にふと目にとまったのが、この本。

「日本人が誤解する英語」光文社(マーク・ピーターセン著) 724円

僕の仕事には、英語が必須と言っても過言ではない。クライアントの半分が、英語のネイティブスピーカーだからだ。そして彼らは、日本人のコンサルタントだからと言って、稚拙な英語で書かれた報告書に高いお金を払ってくれるはずもない。

そんなわけで、読める、書ける、話せる、聴ける、の4拍子そろうことがどうしても必要になる。英語にそれなりの自信はあるが、ネイティブが求めるレベルの正確性・・・という点になると「まだまだ」と言わざるを得ない。そんな悩みをおおいに手助けしてくれる

それがこの本だ。どのようなレベルの正確性についてのお話か・・・というと、たとえば

I like a dog(名前は言わないがある犬が好きだ)
I like dogs(犬が好きだ)
I like the dog(あの例の犬が好きだ)
I like the dogs(あの例の犬たちが好きだ)
I like dog(犬の肉が好きだ)

上記表現の違いについて正確に解説してくれるレベルだ。

これ以外にも

・will, be going to, will be ~ing
・have, make, get to, let
・would, will, could
などなど

高校受験のときには、同じものとして習うような単語が、実は全く用途が異なる、ということについて懇切丁寧に解説してくれている。

何よりも、この本が優れているのは、単に表現の違いを例をあげて説明するだけでなく「どうしてそんな正確性を求める必要があるのか」、その訳についてわかりやすく説明してくれている点だ。

たとえば、日本人にしてみれば、

I like a dog と表現しようが(間違えかも知れないと分かっていたとしても) I like dog と表現しようが、対して違いはないだろう・・・

と思うだろう。しかし、それは日本人にとってみれば、

とある建物の入り口(いりぐち)に、人口(じんこう)という張り紙をはっておくようなもの・・・ほどの違いがある・・・と著者は説明する。ちなみに、英和辞書の説明や高校での説明の仕方に大いに原因がある、と著者は提起している。著者が、英語のネイティブでありがながら日本人以上に日本語や日本文化に精通しているからこそこういった説明ができるのだと思う。

いやぁ、とてもためになった一冊。まさに、最近ずっとこのテーマについて考えていたので、自分がすごくパワーアップできた気がして、読み終わった後とても幸せになった。

なお、英語の勉強はまだこれから・・・という人や、英語は通じれば十分・・・というような人、には必要のない一冊。ターゲット読者は少ないだろうが、洗練された英語を求めたい人にとっては、ハマると感動する一冊になることは間違いない。

【類書】
 ・実践 日本人の英語(マーク・ピーターセン著)

2010年8月25日水曜日

アメリカ(ミシガン州)のお寿司屋さん

さる8月21日グランドラピッズ(ミシガン州)のお寿司屋さんに行ってみた。MIKADO(ミカド)という名前のレストランである。きっと”帝”をモジっているのだろう。

ぱっと見たお店の雰囲気は、

忍者タートルズ

の世界である。なんか、全て造りが大げさで、日本のように見えない。お店の中なのに、大きな瓦屋根のレプリカがある。障子のついたてが、わざとらしく見える。


アメリカの和食のお店がみんなこんななのではなくて、きっと、たまたま僕らの入ったお店がこんなだっただけなのかもしれない。そう思いたい。実際、レストランのオーナーは韓国人のようだった。

同僚が先日、お刺身を食べたみたいだが、上手くなかったとのこと。そんなわけで、寿司屋に入ったのに、寿司を頼む気にもならず、かわりに、よっぽどひどく料理をしてもまずくはならないだろうという勝手な直感で、親子丼を食べることにした。


そしたらこれが正解。決して、すごく上手いわけではないが、十分、かといってまずいわけでもない。ランチとして食べたがこれで7ドルは、海外にしては十分手頃だなと感じた。


ちなみに、この日、一緒に行った同僚はカツ丼を頼んでいたが、あまり上手くなかったと言っていた。

親子丼とカツ丼を並べて写真を撮ってみたが、まったく見分けがつかない(笑)


おまけ:同僚が食べていたトンカツ定食

2010年8月21日土曜日

アメリカのお寿司屋さん

さる8月21日グランドラピッズ(ミシガン州)のお寿司屋さんに行ってみた。MIKADO(ミカド)という名前のレストランである。きっと”帝”をモジっているのだろう。

ぱっと見たお店の雰囲気は、

忍者タートルズ

の世界である。なんか、全て造りが大げさで、日本のように見えない。お店の中なのに、大きな瓦屋根のレプリカがある。障子のついたてが、わざとらしく見える。


アメリカの和食のお店がみんなこんななのではなくて、きっと、たまたま僕らの入ったお店がこんなだっただけなのかもしれない。そう思いたい。実際、レストランのオーナーは韓国人のようだった。

同僚が先日、お刺身を食べたみたいだが、上手くなかったとのこと。そんなわけで、寿司屋に入ったのに、寿司を頼む気にもならず、かわりに、よっぽどひどく料理をしてもまずくはならないだろうという勝手な直感で、親子丼を食べることにした。


そしたらこれが正解。決して、すごく上手いわけではないが、十分、かといってまずいわけでもない。ランチとして食べたがこれで7ドルは、海外にしては十分手頃だなと感じた。


ちなみに、この日、一緒に行った同僚はカツ丼を頼んでいたが、あまり上手くなかったと言っていた。

親子丼とカツ丼を並べて写真を撮ってみたが、まったく見分けがつかない(笑)


おまけ:同僚が食べていたトンカツ定食

イスラム教・イン・アメリカ(続)

昨日、CNNで興味深いニュースをやっていたので取り上げておきたい。

さて、ここで質問。


「オバマ大統領の宗教は何だと思うか?」






仏教?・・・






イスラム教?・・・







そう、正解はキリスト教である。







では、次の質問。


「アメリカではこれまでイスラム教徒の大統領を持ったことがあるか?」







答えは、否である。






何をいいたいんだ? 当たり前の話をして・・・と言われるかも知れない。





CNNが「オバマ大統領は何教徒だと思うか?」というアンケート調査を国内で行ったところ、

イスラム教徒と回答した人・・・18%
キリスト教徒と回答した人・・・34%

だったそうだ。つまり、5人に1人が”オバマ大統領はイスラム教徒である”と誤解しているのである。では、何でそんな誤解が生まれたのか? 

CNN曰くメディアの影響が一番の要因であるとのこと。

たとえば、インターネットで「The president Obama is Muslim(オバマはイスラム教徒である)」というフレーズで検索をかけると、なんと約1,500万件もの記事がヒットする。有名な動画サイトのYouTube(ユーチューブ)でも、誤解を招く映像が編集されて公開されているとのことだ。

さらに興味深いのは、Time Magazineで、より詳しい意識調査をやっており、以下のような回答が得られたことだ。

イスラム教徒は、最高裁判官に不適任である・・・28%
イスラム教徒は、大統領選挙への参加を許されるべきでない・・・32%
イスラム教徒は、愛国心あるアメリカ人ではない・・・25%

この調査結果といい、「グラウンドゼロの近くにイスラム教センターを建設する」ことについての論争といい、911のテロ事件は、アメリカ人に暗い影を落としているようだ。

イスラム教・イン・アメリカ

今、アメリカが揺れている。

911のテロで倒壊したワールドトレードセンターの跡地、グラウンドゼロ。そこから数百メートル離れた場所に、イスラム教のモスクを建設するという話が浮上してきたためだ。

アメリカ国民の80%が、この建設に反対をしている。

反対の理由は色々あるが、一番の理由は、テロリスト達が崇める宗教のシンボルが、惨劇のあった場所のすぐ側に建てられるというのは心情的に耐えられない、というものだ。それ以外にも「イスラム教への信仰がアルカイーダという過激派グループを生み出したのは事実だ。だからイスラム教全体の問題であり、そのような宗教のシンボルの建設を許す訳にはいかない」と息巻く人もいる。先日のアメリカの議会では「建設費は100億ドル(8,500億円)がかかる。そんなお金はテロリストが支援しないと集まるお金じゃない。建設の裏には絶対テロリストがいるはずだ。調べるべきだ」と発言する国会議員もいた。

一方で、賛成する人たちは「あれはあくまでもアルカイーダという一組織(過激派グループ)が起こしたテロでしかない。あのテロの犠牲になった中にはイスラム教徒も多数いた。つまり、あの事件は、非イスラム教徒に対して起こされたテロではなく、(どの宗教に入っているかは関係なく)アメリカ国民全員に対して起こされたものだ。あの事件をもって、アメリカに住むイスラム教徒は悪であり、だから、モスクを建てるのは駄目だ、と決めてかかるのはナンセンスである」と主張する。さらに、モスクの建設がテロとつながっているかもしれないという証拠が全くないのに、推測だけで”調査をしろ”というのは宗教の自由の侵害、すなわち憲法違反である、と主張する。憲法を否定するということは、アメリカそのものを否定することに他ならない。

なお、ここで言う憲法とは、アメリカ合衆国憲法修正第1条(1st Amendment:ファーストアメンドメント)である。

【原文】
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.

【和訳】
評議会では、次に掲げる項目につながるような法律を制定してはならない。宗教の設立を促すこと、宗教の設立を妨げること、言論の自由または出版の自由を奪うこと、平和的な集会へ参加する権利に干渉すること、そして、政府に対して不公平となる救済措置を訴えること

先日の議会演説でオバマ大統領は「誰にでも、グラウンドゼロの近くにイスラム教のモスクを建てる権利がある」と明言した。80%以上の国民が建設反対を訴えている中で、勇気ある発言だと思う。日本の国会議員だったら、国民に色目を使う必要があるので、決して、白か黒か発言していなかっただろう。

今後の動向に注目したい。

2010年8月18日水曜日

書評: 日銀を知れば経済が分かる

私は現在、仕事でアメリカはグランドラピッズ(ミシガン州)にいる。今回の滞在予定は1週間だが、日本で1週間滞在したのち、また、すぐに、こちらにとんぼ返りの予定だ。

そんな中、今回の海外出張の際に、なけなしのお金を使って本を2冊買った。そのうちの1冊を読み終わったので、備忘録的な思いも込めて、ここに書いておきたい。

その1冊とは「日銀を知れば経済が分かる」(平凡新書出版) 池上彰 著だ。

池上彰氏と言えば、日本テレビの「世界一受けたい授業」でも良くみかける有名な人である。

難しい事柄をわかりやすく説明してくれる人

そんなイメージがある。だから、つい、この本に手が伸びた。

実際、中身はタイトルほどは堅苦しくなく、日本の中央銀行(日銀)の仕事について、わかりやすく解説してくれている。自分は記憶力はそれほどいいほうではないので、今回、この本を読むことで、薄かった記憶をリフレッシュすることができ、また、誤った記憶を訂正することもできた。さらには、時代の流れとともに、私が当時学んだこととは実態が大きく変わってきていることなどについての”気づき”もあった。

とにかく比較的心地よく読めた1冊である。

内容について触れておくと、日銀の生い立ちをはじめとし、その存在意義、その役割、日本政府との関係、アメリカが持つ中央銀行との違いや、うんちく的な話まで、様々な話題を幅広くカバーしている。

参考までに、単なる”うんちく”ではあるが、個人的に面白い!と思ったテーマを1つ2つばかり、挙げておく。

うんちく・その1) 「紙幣1枚あたりの製造コストはいくらか?」

紙幣1枚に、現在14円~15円の製造コストがかかっているらしい。面白いのは、これがアメリカだと1枚あたり4セント(約3円)という事実だ。いかに日本が偽造対策に注力しているのかが分かる。

うんちく・その2) 「市場に出回っているお金のうち、1万円札が占める割合はどの程度か?」

市場に出回っているお金は現在約76兆4,615億円(2008年時点)。このうち1万円札が占める割合は、54.1%。なんと半分以上が1万円札で占められている。1万円札というと高価なイメージがつきもので、全体に占める割合もさほど大きくはないかなと思ってしまいがちだが、事実はそうではないらしい。

と、こんな感じだ。

上記以外の、より具体的な中身について、その全てを書き写すわけにはいかないが、この本を読むことで、改めて頭の整理ができた”キーワード”を以下に列挙しておく。

日銀券、公定歩合、日銀考査、政策委員会、国債、基準貸付利率、買いオペ・売りオペ、政府紙幣、コールレート、日銀特別融資、国庫金、強制通用力、ゼロ金利政策、量的緩和政策、インフレ・デフレ、日銀短観、金融経済月報、展望リポート、さくらリポート


さて、最後に、このブログを読んでいる物珍しいみなさんにテストをしてみたい。



テスト: 「日銀の役割3つを、簡単に述べよ」






正解は...






「銀行の銀行」(銀行間取引の決済を行う)
「政府の銀行」(国庫金の管理を行う)
「日銀券の発行」(お金を発行する)



この3つである。経済に少しでも興味がある人で、上記質問の回答をすんなり思いつかなかった人、この人たちには、オススメの一冊になると思う。


2010年8月13日金曜日

書評: スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン

今回のタイトルは「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン(人々を惹きつける18の法則) カーマイン・ガロ著」だ。意外と分厚くて400ページ近くある。

「何故、この本を知ったのか?」

それは、最近聞き始めたTBSのDig(ディグ)というラジオ番組での紹介がきっかけだ。僕は気になる書籍があるとすぐに携帯にメモをとるようにしている。この本の紹介を聞いたとき、気がつくとメモをとっていた。

「何故、この本を買ったのか?」

今思えば、この本を買う気になったのは「プレゼン」と「Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)」という2つのキーワードが心に響いたからだ。

「プレゼン」という言葉に心が向いた理由は、「仕事柄プレゼンをする機会が非常に多いため、どうやったら、今以上に上手にプレゼンをできるようになるのか」ここ数年来、そればかり考えていたからだ。実際、この本を読む前には、やはりプレゼンに関わるマッキンゼーの本を読んだばかりだった。

そして、「スティーブ・ジョブズ」。彼のプレゼンが多くの人々を魅了するものである、ということを僕はよく知っていた。彼の「スタンフォード大学での卒業式の祝辞」はあまりにも有名だ(ただしこれはプレゼンではなくスピーチだが・・・)。これ以外にも、様々な新製品の発表のときに、何気ないそぶりで最高の演出・プレゼンをする。

「読み始めてどう感じたか?」

正直、最初は「うーん」と(悪い意味で)唸ってしまった。というのも、もっともらしいことを述べてはいるのだが、よくよく読むと「ジョブズは、なにが凄いだの」「これが凄いだの」と書いてはあるのだが、著者のその表現の大半が単に大げさな比喩を使っているだけで、あまり目新しさを感じることができなかったからだ。たとえば、著者のプレゼン向上のテクニックの1つに「プレゼンには必ず悪役を登場させろ」という言い回しがある。なんのことはない、これは「必ずプレゼンの中で解決させたい課題を明確にしなさい」ということを言いたいだけだ。本当、大げさだ。

ところが・・・

である。初めは多少馬鹿にしながら読んでいたが、読み進めていくうちに自分の知らなかったポイントや、なんとなく知ってはいたけれども、そこまで明確に意識していなかったな、というポイントがポロポロと出てきた。

「何が心に残ったのか?」

そして400ページの本を一気に読み終えて、(本には一切目を通さずに)感じたことを振り返ってメモに書き出してみた。以下のようなことである。

・ストーリー作成に7割、資料作成に3割の時間を割くこと
・説明するポイントを3つに絞ること
・わかりやすい言葉を使い、具体的なイメージがわくように説明すること
・プレゼンは本当にシンプルにとどめること(箇条書きも極力使わない)
・10分同じ話し方をしていると人は飽きるという法則を念頭にいれておくこと
・事前に十分な時間をとってしゃべりの練習をすること

の6つだ。

なお、この中で”シンプル”という言葉を使っているが、ここでいう”シンプル”とは、本当の本当に「シンプルにする」という意味だ。1スライドにおける文章量を1行~2行程度におさえるくらいに、だ。スティーブ・ジョブズは、多くの場合、スライド上に絵を1つだけ描いて見せたり、新聞の見出し程度の文章しか出さない(箇条書きなどは使ったことがないらしい)。後はそれを見せながら必要なポイントをジェスチャーをまじえながら、しゃべるのである。著者いわく、プレゼンに情報をたっぷりいれる人は

「単に怠け者である」

つまり、しゃべりでカバーする自信がないからなんでもかんでもスライド上に書いてしまう・・・、それは怠惰以外の何者でもない、と言いたいのだ。

そしてもう1つ、「十分な時間をおってしゃべるパートの練習をすること」という教訓。これはさりげなく胸に響いた。ジョブズの何気ない格好で、友達に話しかけるかのようなしゃべり、でも、人々を魅了してやまない、あれは全部、緻密に計算して、ものすごい時間をかけて練習している成果、という著者の言葉には、「なるほど」という言葉以外、思い浮かばなかった。

「この本は誰にお勧めか?」

プレゼンする機会がある人、みんなに役立つ本であると思う。この本は、自分にとっても・・・・多少、値は張ったが・・・役立つ部分は多かった。役立つ分が多かったといっても実際に身につかなきゃ意味がない。

さて、実は10月初旬にプレゼンの機会があるのだが、ここで学んだいくつかはそのときに試せるかもしれない・・・。それによってはこの本の評価が変わったりして・・・(笑)

2010年8月12日木曜日

幼少期からはじまる人種差別

今日、CNNを見ていて目を引いたニュースがあったので、それについて少し書いておきたい。人種差別の話だ。それも、子供の人種差別の話だ。

遙か昔に遡って1947年頃、ある博士がアメリカの子供(白人も黒人も全て含めて)に対して「肌の色の違いを、どのように感じているか」について、テストを行った。このときのテスト結果を想像することは難しくないが、一言で言うと「White Bias(ホワイト・バイアス:白人が上位であるという偏見)」を誰もが強くもっている状態、であったとのこと。

そして半世紀以上が経過した2010年、同じようにアメリカに住む子供130人に対して、似たようなテストを行った。具体的には、5人の全く同じ女の子が並んだ絵(但し、色だけそれぞれ違う)を用意して、


「誰が、バカそうに見える?」
「誰が、賢そうに見える?」
「誰が、汚そうに見える?」

などといった質問を子供にする。

これが大人に対しての質問だったら「そんなのナンセンスだ」と言うのかも知れない。

ところが子供は正直で残酷だ。ほとんどの子供が指で絵を指して即答する。

結果、ほとんど白人の子供達が未だに「White Bias」であるということが分かったそうだ。私もその映像を見て愕然とした。みんな即答するのである。

「誰が、バカそうに見える?」

という質問に対して、子供は、一番、右端に描かれている黒人の女の子の絵を指す。そして

「なぜ、そう見えるの?」

と聞くと、

「だって、肌が黒いから」

と回答する。

悲しむべきは、この「White Bias」は白人の子供達だけにかかっているわけではないということだ。実は、黒人の子供達も「White Bias」がかかっている。つまり、黒人も、白人のほうが「頭が賢そう」とか「綺麗そう」とか、そういう劣等意識をもっているのだ(植え付けられている、といったほうが正しいのかもしれない)。

ちなみに子供と言っても年齢に幅があるが、インタビューの対象者は5歳の子供達だった。しかし、3歳の子供でも、既にそのような意識を持っていたことが判明したという。

誰がこんな意識を植え付けるのだろうか? テレビ? 家族? 先生? 友達?

アメリカでは、オバマ大統領が就任した。しかし、前回のテストから半世紀以上経過した今も、人種差別は根強く残っている。これは変わらぬ事実である


※参考リンク: Anderson Cooper's Blog (AC360)
http://ac360.blogs.cnn.com/2010/08/11/kids-on-race-doll-study-revisited/

2010年8月9日月曜日

為替差損

円高が進んでいる。1ドル85円台前半まで続伸した。


一消費者として、今まで気にしたことはなかった。むしろ、海外旅行するには都合がいいし、喜ばしいとさえ思っていた。

ところが・・・である。

一経営者としては、頭の痛い話である。我が社は、小さい会社であはるが海外との取引も発生している上に、全体の売上げに占める割合は決して小さくない。

現在走っているプロジェクトを契約したのは今年の1月、この時点では1ドル約93円だった。仮にこの時の契約金額が5千万円だったとすると、1ドル85円で430万円の損になる。

「零細企業で430万円を損するなんて、ありえない・・・」

トヨタのような大企業(2009年度の売上高19兆円)になると、そのインパクトは計り知れない。

「もう下がるのやめてくれ~!」

と叫びたくなる。政府や日銀の円高に対する対応の緩慢さに腹が立って仕方がない。今やどこの国も自国通貨を安くする誘導を行っているのに、日本はただ指をくわえて見ているだけだ。昨日の日経新聞によれば、せいぜい日本では「日銀は8月9日から2日間の日程で金融政策決定会合を開き、じりじりと進む円高が景気に及ぼす影響などについて慎重に議論する」と言っている程度だ。

「これ以上、慎重になってどうする」とつっこみをいれたくなる。

さて、まさか、85円以下になるなんてことは・・・と思う一方で、1995年4月19日に東京市場で円は史上最高値となる79円75銭を記録した事実が頭をよぎる。

リスクをヘッジするためにドルでお金を持ち続けるなんていう体力もないし、まさにトホホの状態である。

2010年8月4日水曜日

歌舞伎の壁、もとい、バカの壁

会社を立ち上げてから、3回ほど引っ越しをしたが常に最寄り駅は半蔵門。1982年に開業した駅で、近くには国立劇場がある。起業から約4年が経過し、これまで何百回と降り立ったこの駅で、今日、あることに気がついた。

そう「歌舞伎のモザイクタイル」だ。

改札口近辺に大きな歌舞伎のモザイク画が描かれている。あでやかな絵だ。とてもすばらしい絵だと思う。今日、気がついて、こんな絵があることにとてもびっくりした。

「あれ!? こんなすばらしい絵、最近、誰か工事でもしてたっけ?」

と考え込んでしまった。

その後、インターネットなどで良く調べてみると昔からあるとのこと。さらには、東京メトロでは千代田線の新御茶ノ水駅にもモザイク画があるらしい。

それにしても、「これまで何で気がつかなかったのか」、そして、「今日、何故、気がついたのか」。

全く、もって謎である。

歌舞伎の壁、いや、バカの壁・・・とは、まさにこのことなり。

2010年7月31日土曜日

書評:マッキンゼー流 図解の技術ワークブック

ここ1週間夏休みだった。この間「普段、読めない本をできるだけ読んじゃおう!」と気合いを入れたが、結果は、気持ちの先走りに終わっただけだった。情けないことにきちんと読めたのはたった2冊だけ。1冊目については先日書いた。今日は、夏休み最終日に読んだ残りのもう1冊にスポットライトを当てようと思う。

 「マッキンゼー流図解の技術ワークブック」
著者: ジーン・ゼラズニー
出版社: 東洋経済新報社


まず、この本をなぜ読んだのかというと、先日、子供につきあって図書館に足を運んだ際にたまたま目にとまったのから、というのがもっぱらの理由だ。加えて、薄っぺらかったという理由もある。全部で123頁、実質的には読めるのは110頁程度だろうか。普段、仕事で頭をフル回転させているだけに、「休みの日くらいはリラックスして読める本が良い」と、そんな思いから借りた。

ところで、今の図書館に、ここまで色々なビジネス書がそろっているとは夢にも思っていなかった。正直、脱帽した。あるある・・・色々な本が、最近発刊された本までたくさんおいてある。すばらしい。しかも、僕が書いた本までおいてあった(貸し出し中だったのはある意味余計に嬉しかった)。

さて「図解の技術ワークブック」とは、なんなのか?

一言で言ってしまえば「プレゼン資料の見せ方」に対する講釈本だ。何らかのデータを使って誰かに訴えかける資料を作るときの図示の仕方や、なにか、大きな論点を訴えたいときのまとめ方・見せ方についてのアプローチ方法が解説されている。

こんな経験ないだろうか?

「プレゼンのタイトルと中身が全然あっていない」
「もう少し、工夫すれば相手にもっと意図が伝わるのに・・・」
「なんか、まとまっているように見えるがごちゃごちゃして分かりづらい」

私自身、もちろん、えらそうなことは言えないが、仕事柄、そのような場面に出くわすことが多い。プレゼン資料の作成者本人は、そこまで重要なこととは意識せず、パワーポイントのスライドに適当なタイトルをつけたり、あるいは、矛盾する中身を作ったりすることがある。

あるいは、もっと形式的なことで、スライドは横長なのに縦長の表やグラフを無理に挿入して、見栄えの悪いものにしてしまっている・・・なんていうケースもある。

実は、こういったことは、本人が思っている以上に、その資料を見る相手に与える違和感は大きいと思う。そして、非常にアンプロフェッショナルだ。

この本は、ちょっと工夫すれば、劇的に見栄えが良くなるヒントについて教えてくれている。有り難いのは、単なる解説に終始するのではなく、”演習”形式をふんだんに活用しており、読者自身に常に考えさせるスタイルをとっている。私も読んでいる間、夢中になって問題を解いた。しかも、問題を解くのに紙もペンもいらない。ただ、考える頭がそこにあればいいだけだ。

さて、著者がプレゼン資料を改善する際にとるべきアプローチが大きく4つあると述べている。これは一見とても単純だが、非常に核心を突いたポイントであると思うので、ここに触れておく。

【4つのアプローチ方法】
・単純にすることを考える
・枚数を増やすことを考える
・視点を変えることを考える
・クリエイティビティーを駆使することを考える

の4つである。

「単純にすること」とは、要するに無駄な情報は省く、ということだ。非常に多くのケースで「こんな情報もあるとよさげだ」とか「あの情報も入れておきたい」など、存在理由が不明瞭な情報を詰め込みがちだが、そんな情報は省きなさい、というわけだ。スティーブ・ジョブズもそういえば言っていたっけな。「重要なことは、どういったものを盛り込むか、ではなく、捨てるか」だ、と。

「枚数を増やすこと」とは、先に述べた「単純にすること」と似ているが、情報を単に捨てるのではなく「複数のスライドに分けたらどうでしょう?」ということだ。やはり多くのケースで、なんとなく「1枚のページに全ての情報が集約されているといいな」と思ってしまいがちだが、本当にそうなのか、ということだ。実は、複数のスライドに分割しても説明する時間が変わらないことは多い。であるならば、文字も見やすくなるし、伝えたいポイントも明確になる複数スライドを使わない手はない、というのが著者の言い分である。

「視点を変えること」とは、一度、今とろうとしているアプローチを白紙に戻して、他の方法(たとえば、箇条書きかもしれないし、グラフかも知れない、あるいは矢印かもしれない)によるアプローチも考えてみませんか?という考え方だ。実は、棒グラフよりもパイチャートの方が、理にかなっており、インパクトも大きく変わるかも知れない。

最後に「クリエイティビティーを駆使すること」とは、既存の表現方法にとらわれすぎるのはやめよう、想像力を働かせよう、ということだ。もしかしたら、表でもなく、グラフでもなく、矢印でもなく、もっと面白い表現方法があるかもしれない、ということである。

このように、非常にタメになる点が多かった1冊であると感じている。ただし、1点だけ「注意した方がいいかな」と感じたことがある。それは「これまでにあまりプレゼン資料を作ったことがない人は読まないほうが良い」、ということだ。

自分なりに苦労して、これまで色々なプレゼン資料を作ってきた人だからこそ、「ああ、なるほど」と理解できる内容が多いと思う。プレゼン資料を作る際に、どんな点が大変か、自分の頭で考えて苦労してみてからでないと、この本の有り難みが半減してしまうように思う。

いずれにしても、薄い本ではあるが、だらだらと冗長的に難しい言葉で解説してある本よりよっぽど役に立つ本だと感じた。

そして、何よりも図書館様々・・・。

 
 
【資料作りという観点での類書】

2010年7月29日木曜日

書評:ITロードマップ2010年版

本を1冊読み終わった。今回は、仕事にとても近い分野の書籍になる。

ITロードマップ2010年度版(情報通信技術は5年後、こう変わる)
野村総合研究所 2,2000円

■最新IT技術のこの先5年間の動向を解剖
本書は、今注目され(または注目されはじめ)ているIT技術の向こう5年間の動向について詳しく解説しているもので、毎年、更新版が発刊されている。

内容は、その章構成を見るとおおよそ理解できるが以下の通りである。

第1章 5年後のITロードマップ
第2章 5年後の重要技術
第3章 複合的なITの活用による新サービスの可能性
第4章 現在のITトレンドを知る

■「情報技術マップ」と「ITロードマップ」が最大の特徴
本書では、各分野(例:サーバや開発言語、セキュリティなど)において、現状どのような注目すべき技術があるのかということを示す「情報技術マップ」と、それら技術が向こう5年間の中でそれぞれどのように台頭(または衰退)していく可能性があるかについてビジュアル化した「ITロードマップ」の2つのマップを軸に解説を行っている点が最大の特徴だ。しかも、これらマップは比較的深いレベルでの技術的考察に基づいている。

たとえば、「情報技術マップ」では、サーバOSの分野において「クラウドコンピューティング」を先端技術の1つとして紹介している。そして、この「クラウドコンピューティング」の「ITロードマップ」では、2013年頃からこの分野での競争がいよいよ激化して企業淘汰が始まるとともに、クラウドコンピューティングを使ったサービスは、"Infrastructure as a Service(IaaS)"と呼ばれるような、単に「システムインフラをレンタルしますよ」というサービスから、”Desktop as a Service (DaaS)"のようなインターネットにつながる端末さえあれば「OSからアプリケーションまで、ありとあらゆるサービスをネットワーク経由でレンタルしますよ」という社会になっていくだろうと予想している。

■ITに興味ある全ての人が対象
本書は、「効果的・効率的にIT技術の最先端を理解したい」という要望を持つ人に対して有用だろう。言い換えると、以下のような疑問に対する回答を見つける必要がある人たちにとって役立つということもできる。

「IT技術を今後どのように活用して新製品につなげていくべきか?」
「今ある社内システムを今後どのようなタイミングで入れ替えしていくか?」
「ソフトウエアを今後、内製化するか外製化するか?」
「どのようなエリアを重点的に勉強しておくべきか?」など

したがって、システムエンジニアのみならず、ITコンサルタントやIT部門長、そしてCIOをはじめとする経営陣など、幅広い読者層が対象となると言えよう。なお、経営陣向けには、技術ごとにエグゼクティブサマリが設けられているのが有り難い。

■毎年購入する価値のある1冊
先述したとおり、どのような立場の人にも有益な情報源となるものであることに間違いはない。特に毎年、更新されるものであるというのは魅力的だ。IT戦略を立てる立場にいる人ならなおさら目を通しておきたい1冊だ。「インターネットで検索をすれば、こんな情報など簡単に手に入るのでは?」という声も聞こえてきそうだが、ここまで整理されているサイトはないだろう。2,200円でこの内容は、極めて価値ある1冊ということができる。

2010年7月17日土曜日

書評:「ビジネスモデルを見える化するピクト図解」

板橋悟著「ビジネスモデルを見える化するピクト図解」(ダイヤモンド社)を、ようやく読み終えた。こう書くと

「なんだ読みにくい分厚い本なのか?」

と誤解を招くかも知れない。そういうことではない。むしろ読みやすい本だ。単に、読もう読もう、と思いながら、ここ1ヶ月ほどずっと鞄に入れっぱなしになっていただけのことだ。どうも仕事の隙間時間に「ビジネス書を読もう」という気になれなくて、1ヶ月もの間、単なる重石がわりになっていた。

さて話題を本に戻して考えてみる。「ピクト図解って、なんだろう」と、ふと思うわけだが・・・。

意味したいことをシンプルな絵文字で表すツールに「ピクトグラム」と呼ばれるものがある。言葉が通じなくてもそのシンボリックな絵を見れば、それが何を意味しているか一発で分かる簡単な絵のことだ。一番わかりやすい例が、トイレに使われるサインだ。どこに国に行ってもトイレのマークがあれば、それがトイレを意味しているものだと、みな直感的に分かる。

タイトルにも使われている「ピクト図解」とは、この「ピクトグラム」の絵を駆使してビジネスモデルを見える化する手法のことだ。著者が開発した手法らしい。別の言葉で言い換えると、ともすれば複雑怪奇に見えるビジネスモデル、すなわち、企業が収益をあげるためのお金とモノの流れ(構造)を簡単に図式化してしまおう、というわけだ。

著者は、どんな場合も、おおよそ8つの代表的なピクト図解を使ってビジネスモデルを描くことができると言う。

1. シンプル物販モデル (例:たこ焼き屋)
2. 小売りモデル (例:コンビニ)
3. 広告モデル (例:グーグル)
4. 合計モデル (例:居酒屋)
5. 二次利用モデル (例:音楽アルバム)
6. 消耗品モデル (例:プリンター)
7. 継続モデル (例:YahooBB!)
8. マッチングモデル (例:結婚相手紹介所)

なるほど、確かに、これら基礎になる8つのモデルを抑えておくこと、そして、ピクト図解の描き方を覚えておくことで、企業のビジネスモデルをA4ノート紙1枚の上に表現するのも難しいことではなさそうだ。そして、一旦、見える化ができれば、そこからはちょっとした発想の転換で「ピクト図解」を変形させて、新しいビジネスモデルを生み出すこともできる、と著者は言う。

全体的に読みやすく、一度手に取れば一気に読めてしまう。ただ、個人的な感想としては、1,500円のビジネス書としては若干物足りなさを感ぜずにはいられない。上記手法の紹介がメインテーマで、後は、

「ピクト図解を駆使して色々なものを見える化してみよう」

という感じの終わり方だ。上記に挙げたような代表的なビジネスモデルを既に知っている人には、特に物足りなさを感じるかも知れない。

「この本を読んで、自分だけのビジネスモデルが湧き出しそうな気がしてきたか」といえばそうでもない。

もちろん、発想の転換手法の1つとして、このようなアプローチの仕方を知っておくのは有効であると思う。実際、著者自身、この手法を使ってこれまでに様々なお客様のピンチを救ってきたようである。

ブックオフで買うのがちょうど良い、そんな感じの本である。

2010年7月2日金曜日

一通の封筒から学んだこと


ある日、こんな封筒(上記写真参照)が届いた。届いた封筒の表には、自分の住所が記載され、サンフランシスコの消印がおされている。裏には何も書いていない。

「どうせ、どこぞのDMだろう。すぐにゴミ箱行きになる運命の封筒だ。紙がもったいないなぁ。」

と思いつつ、とりあえず封筒を開けてみる。A4サイズの記事らしきものが1枚入っているだけだった。

「やっぱり広告だ。捨てよう。」

と思った瞬間、あるものが目にとまる。そう、記事に少し大きめサイズの黄色いポストイットが貼られていたのだ。しかも、そこには手書きでこう書いてある

"See this. It's really good!!" (これを見てみて下さい。すごくいいことが書いてますよ!!)

「ん?誰か知り合いが、どうしても僕に共有したいことがあって、わざわざ記事の切り抜きを送ってきたのだろうか?」

と瞬間、思う。過去数ヶ月の自分の行動を思い巡らせた。

「誰かに、記事(に書かれている内容)に興味があるなんて何気ない話をしたことなんてあっただろうか?」

考えること5分。冷静になって記事を裏返してみる。そこには、どこぞの購読申し込み用紙がついていた。

「なぁんだ、やっぱりDMじゃないか」「それにしても何で手書きのポストイットなんて・・・」

そう、これが彼らの作戦なのだ。マーケティングでいうアイドマ(AIDMA)最初のステージ、Attention(注意をひく)のワザだ。ところでアイドマ(AIDMA)とは

A = Attention(注意を引く)
I = Interest(興味をそそらせる)
D = Desire(欲望を駆り立てる)
M = Memory(記憶させる)
A = Action(行動(購買)に走らせる)

だ。この5ステージを経て人間は最終的に購買に走る、というわけだ。僕はこの最初のステージAttentionに見事にひっかかったことになる。ポストイットに手書きでのメモ・・・なかなか上手だ。ただし、残念ながら次のステージ(Interest(興味をそそらせる))には行かなかったことになるが。AとIのギャップがありすぎたように思う。それにしても、まぁ、太平洋の遙か何千マイルもの向こうから、こんなDMを送ってくるなんて・・・。果たして、(Action(購買))に走った人が何人いたのだろうか。

何気ない封筒1つからも、色々なことが学べるものだと関心した一日だった。

2010年6月29日火曜日

睡眠不足と健康について

おととい日曜日(6月27日)にアメリカから帰国した。1週間の滞在だったが、そのうち3日はほぼ完徹(完全な徹夜)だった。平均すると1週間通して3時間睡眠程度だったろうと思う。

そして場所変わって日本。成田空港に着いたのが27日日曜日の午後2:30。駄々混みの税関を通り抜けて、ようやく空港のバス乗り場へ着けたのが午後4:00。そこからさらに自宅のある横浜までは混雑していなくてもバスで片道2時間の道のり。日曜日の夕方ということもあり、残念ながら、渋滞に巻き込まれて自宅に着いたのは3時間後の午後の7時半だった。アメリカはグランドラピッズを飛び立ってからちょうど24時間後のことになる。

疲れや眠気も何のその。アメリカから持ち帰った仕事がいくつか残っていたため、2時間ほど休憩してから仕事机に。ハッと気がつけば時計の針は午前1:30。就寝。

その3時間半後の朝5:00。優しく鳴る目覚ましの音に敏感に反応して、スパっとベッドから飛び起きる。慣習は怖い。時差ぼけ・寝不足・疲労など、体にべったりとまとわりついた不快感を取り除くべく、直後に近所をジョギング。

「さぁ、今日はさっさと仕事を終わらせて帰るぞ!」

と誓って会社へ出社。この思いも束の間、溢れてゆく仕事。結局、その日は夜中の3時まで仕事を続けた。

話はまだ続く。

いわゆる”今朝”と言える午前5時(夜中の3時に就寝してから2時間後)、跳ね上がるように起床して、再び仕事にむかった。午前9:00ぎりぎりまで仕事をし続け、大阪出張のために自宅を出発した。クライアント先には午後1時に入り、そこから午後4時過ぎまでコンサルティング。その日の仕事はなんとか無事に終了した。

・・・そして今、自宅へ向かう新幹線の中。「おかしいな」と思う。

こんなむちゃくちゃな生活をしているのに、

「眠くない」・・・いや「眠くない」どころか、

「疲労感がない」・・・むしろ「元気」かもしれない。

これはどうしたことだろう。

「死ぬ前兆」? 「突然死」ってこういうタイミングで起こるのか?

とネガティブに考えてみたくもなってしまう。

そんな思いを馳せたつい矢先、一つのことが思い浮かんだ。「そういえば先日、父から85歳でつい最近亡くなった小松茂美さんという人についての記事(産経抄)が送られてきていたっけな」。

小松茂美さんという方は古筆学の研究者(85歳)。なんと「80歳を過ぎるまで睡眠時間が4時間を超えることがなかった」と記事中にはある。この人が常に睡眠不足を惜しんで80歳まで活動しつづける原動力となったのは、学歴のない人間をさげすむ学会への対抗心だったとか...。

人はここから何を読み取るだろうか。

「精神は肉体を超える」ってこと?

もしかしたら、自分も既に精神が肉体を凌駕しようとしている気がする。

なぁんて、言っている奴が突然死なんかになったりするんだろうか。睡眠と健康については、いつも疑問で一杯だ。


孔子曰く「過ぎたるは及ばざるがごとし」

さて。

2010年6月21日月曜日

災難続きの今回の海外出張

アメリカへ再び海外出張。今回は同僚を入れて3人での出張だ。移動日の今日、色々な意味で最悪だった。


まず成田空港からシカゴ空港へ。自分座席についたら、何故か足下に大きなバッグがおいてある。隣の女性を見るとやたらと大きい手荷物を抱えながら座っている。

「まさか隣の女性が、持ちきれない手荷物を勝手に僕の座席の前のスペースにおいたのか?」

取り除いてもらうべくお願いをしようとスチュワーデスの呼び出しボタンを押すがなかなか来ない。今考えるとこのあたりがケチのつきはじめだったのかも知れない。ようやく来た女性スタッフの人が、誰の者かを調べてくれて、結局、僕の座席の前に座っていた人が犯人だということが分かった。座席の下は自分のストレージスペースだと思っていたらしい。

さて、その後シカゴ空港まで10時間強のフライト。到着後、シカゴ空港にて入国審査へ。ここで膨大な旅行者が行列をなしていた。私の人生の中でここまで溢れた行列は過去に見た記憶がない。審査官の窓口にたどり着くまで、なんと2時間半もかかった。多くの人が、シカゴ空港を経由して異なる目的地に向かうからだろう、みんな一様に、現場に一人だけいた女性係員に質問を集中させていた。

「コネクションフライトに間に合わないんですが、なんとかしてもらえませんか?」

ところが、そこへ彼女の同僚の係員が登場。

登場した係員「みなさーん、こちらはベストを尽くしています。コネクションフライトのために特別に処理をするということはしませんから、頼むから、彼女に同じ質問をして困らせないで下さい。次に同じような質問を彼女にしたら、罰として最後尾に並ばせます!」

との発言。そこに並ぶ誰もが唖然・・・。

「困らされているのはこっちだ!!」

と誰もが叫びたかったに違いない。実際、一人が行列を飛び越して最前列まで来て、係員に「なんとかしてくれないか」と主張していたが、むげな態度で対応され、最後は、最後尾に連れて行かれていた。

結局、誰もがそれ以上刃向かう勇気もなく気長に行列にならび続けるしかなかった。さて、自身もシカゴ空港からグランドラピッズ空港へ飛ぶための接続便をつかまえる必要があった。が、当然のごとく、2時間以上もあった貯金もなくなり、結局フライトを逃してしまった。

仕方なく、同僚2人とともに次の便の予約をしに、United Airのカウンターへむかった。シカゴ空港に到着したのが現地時間の午後2時で、既にこの時点で午後5時半をまわっていた。カウンターの女性は、1時間後と5時間後にグランドラピッズにむかうフライトがある、と言う。しかし、いずれもキャンセル待ち。さらに彼女が言うには、

「この2つのフライトに乗れなかった場合は、シカゴに宿泊していただきます」

とのこと。なんのこっちゃ。

そして、時計の針が6時を指す。「XXXさーん」「XXXさーん」と次々にキャンセル待ちの客が呼ばれる。ギリギリ最後の方になって、同僚2人の名前が呼ばれた。まさか・・・とは思ったが、なんと、呼び出しはそこで終わり。そう、私だけ置いてきぼりを食うハメになったのだ。


結局、そこからさらに5時間近くを空港で過ごした。その日の最後のグランドラピッズ行きは、夜10時20分のフライトだった。が、このフライトは何とかつかまえることができた。このフライトでは、出発が30分遅延するというトラブルに見舞われたが、これまでのトラブルを考えたら誤差の範囲で、もう、起こる気力も悲しむ気力もなかった。

なんとか歯を食いしばって、グランドラピッズ空港へ到着。時計の針は夜の12:30。ホテルには朝の1:00に到着した。


さて、明日(?)の朝は7:30半にホテルを出発して客先にむかわなければならない。初日のスタートがこんなだと先が思いやられる。何かの前兆だろうか。

2010年6月20日日曜日

専門記事紹介: Business Skills for the IT Audit and Assurance Professional

ISACAの記事「Business Skills for the IT Audit and Assurance Professional(IT監査におけるビジネススキル)」を読んだ。

「IT監査をする者には、テクニカルスキルだけでなく、ビジネススキルが必要であり、企業は組織のITの使い方や利用度に合わせて、それを監査させる者のスキルの持たせ方に配慮せねばならない」というのが趣旨だ。

「技術が分かっているだけでは、ビジネスに役立つ監査はできない」

それは全く当たり前のことだと思う。何を今更言っているのか?という気すらしてしまう。

ただし、確かに当たり前のことなのだろうが、

「技術を持っているから即IT監査人になれると思う人が溢れており、実際、そうしている人が多い」
「マネジメント自身もIT監査人を技術者扱いしてしまい、本来は共有すべき経営情報を共有していない」

といった事態が現実には多いのだろうと推察される。自身もそういう現場を数多く見てきた。

なお、せっかくなので記事の概要をまとめると、

まず、IT監査のあるべきアプローチ方法として、

1. 監査対象とする企業の属性を定義する
2. 企業の属性に応じて、その企業の8つの項目について理解する
3. 監査を行う

と述べている。ここで「1. 監査対象とする企業の属性を定義する」については、大きく以下のような種類を挙げている。

・金融業(Financial Services)
・大規模コンシューマー向け産業(Consumer-intensive)
・ヘルスケア(Health care)
・運輸業(Transportation)
・政府(Government)
・資源(Resource Industry)
・製造(Manufacturing)
・農業・漁業(Extractive)
・生活インフラ(Utilities)
・パブリックセクター(Public Sector)
・非営利団体(Nonprofit organizations9

また「2. 属性に応じて、その企業の8つの項目について理解する」における「8つの項目」とは以下のことを指している。

・業界・組織(Organization)
・統治・業務分掌(Governance)
・法規制(Laws and Regulations)
・ビジネスプロセス(Business Processes)
・オペレーション(Operations)
・技術の使い方(Use of Technology)
・ビジネス上の成果として活用される指標(Business Measurement)


先述したとおり、至極ごもっともな話だが、このような項目に対する理解は、IT監査人に限った話ではなく、企業において何らかの改善活動や仕組み作りを行う者にとっては、当然、実施すべきタスクであるように思う。私自身、企業において様々なコンサルティングをしてきたが、どのような目的のプロジェクトであっても、上記8項目は最初に抑えておく、というアプローチが最も重要だと感じている。

ただし、監査人一人に求めるスキルとしてはかなり贅沢な要求だと思う。難易度が高いわりに、IT監査人に対する経営陣の意識は低く、なおかつ、まだまだ報酬も低いのではないだろうか。特に日本においては。

2010年6月11日金曜日

メールアドレスの価値

今日のBBCのニュースに、「今、話題のApple社の iPadを利用するユーザ(米国)114,000人分のメールアドレスがハッカーによって不正取得された」とのニュースが出ていた。

この事実が判明したのは、実際のこの不正行為を行ったハッカーグループ(Goatse Security)が、そのような声明を行ったため、とある。いわゆる”なりすまし(あたかもインターネット上で、当人であるかのように装うこと)”を使ったハッキング手法により、AT&T社のウェブサイト上からユーザのメールアドレスを簡単に取得できたらしい。メールアドレスの中には、著名人の者も含まれており、個人情報保護の観点からインパクトは大きいとしている。

さて、記事中メールアドレスの価値について言及している。セキュリティ専門家によれば

「今やメールアドレスの価値は低い。なぜなら、我々はメールアドレスをいたるところで公にさらしているからだ」

という意見もあれば、

「いや、メールアドレスの価値は高い。メールアドレスそのものに価値はないかもしれないが、価値ある情報(機微情報など)を引き出すための”鍵”になるからだ」

という意見もある。

両方とも正論だ。両方とも正しい・・・だからこそ、個人的にはメールアドレスの価値を議論してもあまり意味はないだろうと思う。そういったことよりも、

「企業や個人は今後メールアドレスの取り扱いに対して、どのような対策をしていけばいいのか?」

という点が重要だ。

「メールアドレスはバレるものである」

という観点に立ち、バレても困らないような対策を打っていかなければならない。もう何年も企業が躍起になって対策を考えているが、スパムメール防止の仕組みを強化するだとか、あるいは、原点に立ち返り、認証時にメールアドレスをIDとして使わせないように配慮するなど、考えていく必要がある。ユーザ個人も、バレたときのことを考えて、不正に使われてもあまり困らないメールアドレスを普段から用意しておくことが肝要かもしれない。

2010年5月22日土曜日

ロシアのサンクトペテルブルクに学んだこと

2010年5月16日(日)から22日(土)までの約6日間、出張でロシアのサンクトペテルブルグに滞在した。人生で2回目の訪問(前回は昨年の11月)になる。

■白夜(びゃくや)な世界
まず、びっくりしたのは日の長さだ。自分は、過去に、随分と日の長いロンドンやアメリカのグランドラピッズ(ミシガン州)に滞在した経験がある。このときも最初は、日の長さにとまどったものの、サンクトペテルブルクの日照時間は、その比ではない。この時期にして、夜の9時で、日本の同じ時期の午後3時くらいの明るさだ。夜の12時になっても、まだほんのりと明るさが残っている。調べたところでは、年間約50日間(5月25~26日あたりに開始で、6月中旬に夏至が来る)も白夜になるとのこと。いつまでも明るいので、ついつい油断して夜更かししてしまいがちだ。

【午後9:30のサンクトペテルブルク】


ちなみに、あまりにも気になったので緯度を調べてみた。なるほどの違いがわかる。

東京35度
グランドラピッズ47度
ロンドン51度
サンクトペテルブルク60度

■世界一深い地下鉄
次に驚いたのが、地下鉄の深さ。聞いたところでは、旧ソビエト冷戦時代に核シェルターとしての活用も兼ねて、地中深くに地下鉄を掘ったとのこと。サンクトペテルブルグを通る地下鉄は、なんと運河の底、地上から120メートルも下を走る世界一深い地下鉄になのだそうだ。日本で普段、地下鉄を乗っていると大江戸線がものすごく深い地中を走っているような印象を受けるが、その実態は40メートル強(六本木駅)と、こちらの地下鉄の3分の1の深さにしか過ぎない。延々と地底深くに降りてゆくエスカレータに乗っていると、不安な気持ちになるのは僕だけだろうか。

【地下鉄のホームに向かうエスカレータ】


■東洋風のレストランがたくさん
さらに、サンクトペテルブルクの街で目についたのが、日本風、いや、東洋風(オリエンタル風)といったほうがいいだろうか。そんなレストランを多々、目にする。SUSHIメニューを取り揃えるレストランはモチロンのこと、日本の漢字をレストラン名にした場所まであった。ただ、メニューを、どう見ても、おいしく見えないところはさすが外国だ。

【東洋風?のレストラン】



■全く読めないロシア文字
極めて浅はかなことに「ロシア文字は英語のアルファベットに近いもの」と勝手な思い込みをしていた。実際は、もちろん違う。キリル文字というらしいが、アルファベットよりも、ギリシャ文字に似ている。英語の感覚で、看板文字を読もうとしても、全く読めない。地図を見るとギリシャとサンクトペテルブルクはだいぶ離れているが、陸続きであることから、長い歴史の中で文字が伝わったのだろう。

【ロシア語のマクドナルドとスーパーマーケット】



■際立つ交通渋滞
交通渋滞のひどさが目立ったことを挙げておきたい。ラッシュ時の渋滞は、決して首都高速道路に負けてない。ひどいときは、微塵も動く気配がない。最終日の今日、用事があって約3キロ先の目的地を目指して歩いたが、車だとおそらく1時間はかかっていたかもしれない。レンタカーを借りて走りまわるのは得策でなさそうだ。

【交通渋滞】


■次回こそ、観光を・・・
観光よりも、アルコールに溺れる時間が多かった、かもしれない。次回こそは・・・。

2010年5月18日火曜日

右目を患った日

担当しているクライアントの関係で、ロシアはサンクトペテルブルグに来ている。今週の土曜日まで滞在予定だ。いつも海外出張といえば、のんびりとした時間とは無縁で、今回も例外ではなさそうだ。

そんな忙しさにかまかけて健康を疎かにしていたせいか、どうも右目を患ってしまったようだ。さる5月9日(日)に家族で外に出かけていたのだが、そのときに突然「飛蚊症」という症状になってしまった。医者によれば「硝子体出血」という、眼底(目の真裏)の本来くっついているべき部分が剥がれ、出血を起こし、その血痕が目の裏について視界を常に邪魔しているとのこと。

右目の前に常に、何かが飛んでいるかのような症状で、非常にうっとおしい状態だ。インターネットなどで調べると、極度の近眼や老化、ストレスが原因でなる、とある。

さすがにショックだ。下手をすると・・・いや、下手をせずとも、この不自由さを持ったまま残りの人生を過ごしていかなければならないのには参った。人によって、「自分が年をとったなぁ」と気づかされる場面が異なると思うが、私の場合は、どうやら今回のことが「自分の老化」を何にも増して感じさせる一件となった。

とは言え、気落ちしていてばかりいても何も解決しないので、徐々に前向きにとらえるようにしている。

そう、人生の早い段階で、命までをとられることなく、健康というものの有り難みに気づかされた、という事実は、非常にラッキーなことであったと・・・。

2010年5月11日火曜日

日経アソシエの朝活特集に載った日

おおっ、今月の日経アソシエ2010年5月18日・6月1日合併号 no.208の”朝活”特集の中に、自分自身が”朝の達人”として、載っている! 

正直、3月初め頃に取材の話があったときは「まぁ、こういう類のものは取材を受けたとしても、滅多なことじゃ掲載されないだろう」とタカをくくっていた。それだけに、少し感動。この雑誌を見た父から電話が入り、

「もともと元祖はオレのハズだぞ。運良く載ったな。」

と言われた。まぁ、確かにその通り。うちの親父は朝3時起き(ただし夜は8時寝)。この性格、知らず知らずのうちに親の影響を受けた・・・のかもしれない。

ところで、今更ながら”朝の達人”ってなんだろう。

「朝の達人」=「朝の時間を有効活用している人」ということになるのだろうか。今月の日経アソシエを見ていて、意外に多くの人が早起きで、しかも、僕以上に色々と工夫をして”朝”という時間を有効活用している人がいることに気づかされた。「自分はまだまだだな」と励まされる。

ただし掲載されるスペースに限りがあったためか、一部自分が伝えたかった事項が簡略化されていたので「自分が何故早起きをするのか?」そして「何をやっているのか?」について、雑誌の中身を以下に補足しておきたい。

まず前提として、自分の立ち位置から補足説明をすると、自分は、経営者兼コンサルタントという肩書きだ。したがって、自身には、大きく『経営者としての役割』、『コンサルタントとしての役割』、『スタッフを管理する役割』の3つ役割を担う必要があると考えている。たとえば、経営者という立場からは、今日・明日の仕事ばかりに目を向けてばかりではいられない。中長期的な目標を視野にいれた活動が必要だ。そして、コンサルタントとしての立場からは、自信の能力を日々高める努力をしなければ、多様化するお客様のニーズに十二分に応えていくことができない。自分の引き出しを増やす努力が必要だ。最後に、スタッフを管理するという立場からは、スタッフにどんどん伸びていってもらわないと自分がいつまでたっても苦しい状態が続く。なので、常日頃から彼らのスキルアップの術を考え、支援する活動が必要だ。

この3つの役割を果たすために、朝という時間は非常に有効だと思っている。なぜなら、朝には次のようなメリット(僕自身にとっての”得する早起きの三文”)があるからだ。

1文目:
朝という時間が1日の中でも、最もコントロールしやすい時間(邪魔が入りにくく、予め立てた計画通りにものごとをこなしやすい時間)であるということ。

2文目:
満員電車や電車遅延を回避できるため、精神的・肉体的に時間の無駄を排除できること。

3文目:
朝は頭がリフレッシュされているので、頭の回転が速くまわるということ。

朝がコントロールしやすいメリットを最大限に生かして、日中ではなかなかできないこと(ピータードラッカーの言う”重要なこと”)をやってしまうようにしている。言い換えると自己開発や(目の前の仕事・・・ではなく)遠い将来のための仕事を中心に活動する。こういったことを意識していないと、日々のコンサルティング業務に追われ、経営者としての責任をついつい忘れてしまうので、朝の時間は非常に貴重だと思う。

後は、記事中にもあったが、たとえ次の日に、あるいは、その日中に締め切りの来る仕事があったとしても、あえて午前中は手をつけず、そういった仕事はできるだけ後ろにまわすことを良くする。つまり、放っておいても、絶対に忘れない・強制的にやらざるを得ない仕事はギリギリまで手をつけずに、”緊急ではないけれども重要なこと”に、できるかぎり午前中の時間を費やすように心がけている。これにより重要な仕事をこなせるようになるばかりか、締め切りのある仕事に対しては「限られた時間の中で、いかに効率的・効果的にタスクをこなせば良いか」を常に考えて動けるようになる。仕事の質が上がる(もちろん、これをすることで結果的に仕事の品質を下げてクライアントに迷惑をかけては本末転倒なので、あまりに自信がないタスクについては、例外的に早めに手をつけることはあるけれども・・・)。

ちなみに、この”自分を追い込む”方法は、MBA時代からヒントを得た。カナダ人の同級生がエッセイの提出を期限ギリギリまで放っておき、必要以上に1つのタスクに時間を費やさないように工夫している彼を見て、当時の僕は、

「そんなリスクの高いこと、よくやるよな。俺だったら絶対しないけどね。」

と言っていた。あの頃が懐かしい。「極めて限られた時間を有効活用するため」には、そのようなリスクも上手に選好していくことが重要なんだと思う。

もちろん、息抜きも忘れてはいけない・・・の自戒の念ももって。

2010年5月9日日曜日

なぜ、保守党は過半数をとれなかったのか? in イギリス選挙

はぁ、もうすぐゴールデンウィークが終わってしまう。しかし、今回ほど、充実した休みはなかったように思う。海外出張から戻ってきた直後から休みに入ったが、それから家族サービスをしつつ、書籍を5~6冊読んだ。読んだ上に、ほぼ全ての書籍に対して感想文を書いた(たいてい真夜中だが・・・)。

最近、本やホワイトペーパーを読むだけ(インプットするだけ)では物足りず、すぐにアウトプットしない我慢ならない性分になってきたようだ。

さて、2010年5月6日イギリスの選挙が終わった。投票率65.1%。結果は、保守党(デーヴィッド・キャメロン氏)306議席、労働党(ゴードン・ブラウン氏)258議席、自由民主党(ニック・クレッグ氏)57議席。どの党も過半数(全部で650議席のため326議席が過半数)をとれない、いわゆる”ハング・パーラメント”。つまり、日本の政府同様、連立政権になるわけだ。

個人的には、選挙前まで政権を握っていた労働党のゴードン・ブラウン氏は、近年の大きな失業率の責任追及を免れ得ず、かつ、選挙直前の有権者に対する暴言を暴露されて完全に地に落ちたものと思っていた。保守党がもっともっと躍進すると思いきや、意外や意外、20席足りず。

イギリスに住む知人に

「誰に投票したの?」

と聞いたところ

Yes labour did fail but so did the Tories really with such a hated PM they still couldn't get an over all majority! I voted for Labour because I remember what the Tories did to us last time, they are the reason we have no real industry left in this country Maggie sold it all abroad or closed it! That's why the Tories didn't win out right..to many of my generation just don't like or trust them. People don't really blame the government for the recession they blame the Americans and their banks and our banks for being to greedy! I also know and like our Labour MP who I voted for and he won his seat!

との返事。

簡単に意訳すると「・・・労働党さ。保守党が過去にどんなにひどい失政をやったかハッキリと覚えているからな。サッチャーは、外国企業に売り渡すか閉鎖するなどして、イギリスが誇れる産業を何も残さなかった・・・失業率が高いのは、労働党の政治が悪かったからではなく、強欲なアメリカやイギリスの金融機関のせいだから仕方がないと思っている。」となる。

なるほど。この見方が正しいかどうかの判断は別として、少なくとも、多くの国民がこのように思っている可能性は高いと思う。だからこその今回の選挙の結果だったのだろう。

もしかしたら、これは日本の政治にも当てはまるのだろうか、と、ふと思う。

日本の国民は、今、鳩山首相のリーダーシップのなさ、そして、民主党の数々の公約違反に辟易しはじめているが、だからと言って次の選挙で、自民党に票が戻るというわけではないのかもしれない。今回のイギリス選挙のように・・・。つまり、日本ではまだまだハングパーラメントが続くわけで・・・。

2010年5月7日金曜日

専門記事紹介:アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築

本日のテーマは、ITに関わる事業継続計画(BCP)とCOBIT(ITガバナンスのフレームワーク)。

ゴールデンウィーク中に、ISACAに投稿されたITサービス継続(IT-BCP)に関わる記事「アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築(Using COBIT Best Practices for Developing BCP for an Outsourcing Company by A Rafeq氏)」についてコラムを書いた。内容は会社のHPにアップしたので、ここにはリンクだけ張っておく。

「アウトソーシング会社におけるCOBITを活用したIT-BCPの構築」に関するコラム

ちなみに、ISACAとは情報システムのセキュリティとアシュアランス、ITガバナンス、そしてITに関係するリスクやコンプライアンスについて、知識、資格認定、コミュニティ、唱道、そして教育を、世界的に提供することを目的とした専門家の国際的団体のこと。

書評:スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力

昨日の夜、竹内一正著書『スティーブ・ジョブズ 危機を突破する力』(朝日新聞出版)を読んだ。ソフトカバーで200ページ強、¥1,500の本。非常に読みやすい本で数時間で読み終わってしまった。

実は、この本、最近聴くようになった『新刊ラジオ-「話題の本を耳で読む」新刊JP公式ポッドキャスティング』で知ったのがきっかけだ。通勤の道中、解説を聴いて、つい衝動買いをしてしまった。

この本は、アップル社のCEO(最高経営責任者)であるスティーブ・ジョブズのノウハウについて、アップル出身のコンサルタントが6つの要素(16の中項目と77の小項目)に分解、経営の閉塞状況を打破する突破口を指し示したものだ。

読んでみて「なるほど!」と思える印象的な部分が結構あったので、わずかだが、そのいくつかを挙げておく。

・今やっていることを一生懸命にやろう。将来(いい意味で)どうつながるか分からない。
・自分で決めたことの失敗が成長につながる。
・売り込む先の相手の立場に立つ(どうやって利害を一致させるか?)。

といった点は、特に自身の体験からも「なるほど!」と思えたものだ。特に3つ目の「どうやって利害を一致させるか?」のポイントで著者が挙げた、ジョブズのインターネット音楽配信サービスiTMS(アイチューン・ミュージックストア)の成功事例は目から鱗だった。アメリカの5大音楽会社のCEOたちを説得させた彼の論理に僕は、

「全くその通り。5大CEOのみならず、一消費者である自分自身も、当該サービスについて、全くそのように感じていた(から、iTMSを使っている)。うーむ。」

と、ただただ、うなるしかなかった。まぁ「語るに易く行うに難し」ではあるけれども「もっと知恵を絞れ、やりようはあるハズ・・・」というメッセージとして受けとめた。

このほかにも、

・最も重要な決定とは何をするかではなく、何をしないかを決めることだ
・いいプレゼンは全て見せる。凄いプレゼンは少し隠す。
・部下の能力は自分自身の能力の反映
・育てられるのではなく、育つ

などといった点について勉強になった。4つ目の「育てられるのではなく、育つ」とは、「上司が無能だから、自分は成長できない」と自分の仕事環境を呪う人がいるが、

「上司が無能だからこそ、自分がその分、成長できる余地があるんじゃないか」

と考えるべき、という意味だ。発想の転換だ。考え方次第で「自分の力で突破できることがいくつもある」ということのいい例だと思う。




最後に、余談だが、この本を読んであらためて日本とアメリカの起業環境の違いを思い知り、日本政府にはもう少しなんとかして欲しいと感じたことがある。

本の中で著者が(ちょっと古いかなとも思ったが)中小企業白書2002年度版の統計データから

「倒産後に経営者が再就職する確率は日本が50%なのに対し、アメリカは88%にのぼっている。しかもそのうち経営者に復帰する率は、日本26%、アメリカ53%。」

と指摘している。アメリカではたとえ起業に失敗しても命まで奪われることはないが、日本では事業に失敗すると、代表取締役やその連帯保証人は、債権者である銀行に、家、土地、お金など全て持って行かれて、子供を学校に通わせることまで困難になることも少なくない、というわけだ。社会的に白眼視され、債権者に追い詰められて自殺するケースすらある、と。

社会のセーフティーネットがしっかりしてないと、チャレンジ精神がわかないのでなかなか起業家はおもいきったことできないし、それ以上に、起業家になろうっていう人が少なくなる。

日本は言うまでもなく資源の乏しい国だ。知恵を絞った革新的なサービスを次々に出していかないと立ちゆかなくなる。そのようなイノベーションを生み出す起業環境を作るための法整備を国にはしていってもらいたいと願う。

===2011年10月6日(追記)===
2011年10月6日・・・アメリカ時間だと10月5日・・・スティーブ・ジョブズ氏が亡くなったと報道された。1つの大きな歴史が幕を閉じた。会ったこともないのに、悲しみが心に染みこんでくる・・・。


亡くなった日、Apple本社のHPにはスティーブ・ジョブズ氏の写真が掲載された

2010年5月5日水曜日

専門記事紹介: IT Risk Analysis - The Missing "A"

うぅむ。いよいよますます書き込む内容が堅苦しくなっていく・・・。でも、せっかく読んだ記事について感想を書いて(アウトプットして)おかないと、完璧に忘れてしまいそうで怖いので、書いておくことにする。

さて、自分はCISAという資格をとっているため、必然的にISACAという組織のメンバーになっている。

この団体には3万円以上の年会費を支払う義務が生じるのだが、正直、決して安くない年会費だ。ただし、そんな中にあってIT監査に関わる専門家達が毎月、投稿してくれる記事は非常に価値が高いものだと思う。様々な会員になったことがあるが、こういった記事は、世界のITシステム監査に関する最新動向を知っておくことができるので便利だ。実際、自身が過去に(監査ではないが)コンサルをする上で、インプットとして役立った記事はいくつもある。

そんな記事の中で今月は『IT Risk Analysis - The Missing "A"』という記事が面白そうだったので、読んで見た。

この記事の趣旨は、以下の通り。

・近年、組織が市場において勝つためには”Agility(俊敏性;機動性)”を抑えることが必要不可欠
・ITは組織の戦略にますます密接なつながりを持つようになってきている
・しかしながら、今日のITリスクアセスメントは、3つのAばかり見る傾向がある
 (3As: Availability(可用性), Access(アクセス性), Accuracy(正確性))
・Agilityに関わるリスクってやつはすぐに顕在化しにくい性質を持つ
・これからのITリスクアセスメントの視点は4Aで行うべきである
 (4As: Availability(可用性), Access(アクセス性), Accuracy(正確性), Agility(機動性))

キーワードは、『Agility』だ(訳せば俊敏性になるが、個人的に、あまり好きじゃないのであえて機動性という言葉を使わせてもらう)。上記4Aについて、言い替えて説明をすると、要するにシステム監査人がITリスクを考える際に、

「災害時対策はできているか?」
「アクセスコントロールはきちっとしているか?」
「計算処理は、期待通り正確に行われているか?」

といった視点でのリスクアセスメントは今日、当たり前のように行うが、

「導入しているITシステムは、古い言語を使ったプログラムで作られてないか?」
「色々なベンダーのソフトを混在させて、保守を難しくしていないか?」

といった会社の機動力の足をひっぱりかねない視点での問いかけは、あまり行っていないのではないか? したがって、これからはこういったことも考慮すべきだ、ということだ。

「言いたいことは分かった。でも、どうやって実現するんだ?」

という問いかけに対し、記事中では、”たとえば”という前置きとともに、監査時のチェック項目になりそうなポイントをいくつか挙げている。ただ、常識的なポイントが多く「おぉー!これはなるほど!」と思うほどではなかった(ただし、これはあくまでも個人的な感想)。

チェックポイント例)「ベンダーソフトウエアは、不必要にカスタマイズされていないか?」

まとめると、「これからの監査は3Aではなく4Aであるべき」という提言には納得したものの、How?の部分にたいする解説については(記事中で、”あくまでも参考にしかならないけれど・・・”という言い訳があるものの)ちょっとがっかり。

システム監査人は、自分なりにアレンジしていく必要があるのだと思う。まぁ、抑えるべき視点さえきちっとわかっていれば、そんなに難しいことではないと思うのだが。

2010年5月4日火曜日

書評:ケースで学ぶERMの実践(中央経済社)

ゴールデンウィークまっただ中のこの時期、奈良の奥地でのんびりとホリデーを満喫中。出張ばかりで迷惑をかけている家族に対するせめてもの償いをする期間だ。

そんな中、家族が寝静まった真夜中にパソコンにむかっている。今日は忘れないうちに、海外出張中に読んだもう一冊の本『ケースで学ぶERMの実践』(中央経済社:3,400円)について紹介しておきたい。


なお、ここでERMとは、Enterprise Risk Management(エンタープライズリスクマネジメント)のことだ。そう、この本は、企業における全社的なリスク管理の方法について解説を行っている。

中身は大きく以下に示す3部構成となっている。

【本書の構成】
第一部: 企業におけるERM
第二部: 企業におけるリスクマネジメント実践
第三部: ERMを促進する法令・規格・基準

この書籍の最大の特徴は、なんと言ってもその豊富な事例(国内外28社のケースを扱っている)にある。これは非常に付加価値が高い。なぜならERMは、まだ歴史が浅く、ナレッジベースが十分にたまってきているエリアとは言えないからだ。実際、(自身のコンサル経験からも)ERMという考え方そのものが、多くの企業で本格的に検討され導入されはじめたのはここ数年のことではなかろうか。ERMの代表的なフレームワークの1つであるCOSO-ERMは、2004年に発表されたものだ。リスクマネジメントの国際規格であるISO31000にいたっては2009年だ。このようにERMのフレームワーク自体の歴史も決して古いものではない。

さて、本書の中身全てについて、ここで触れるわけにはいかないが、事例から見えてくるポイントのいくつかについて軽く触れておきたい。

■意外に少ない「リスク管理部」
リスク管理を所管する部門は、財務部、経営企画部、IR部、総務部、コンプライアンス部、リスク管理部など、企業によって様々だが、従来から存在していた部門のいずれかが、そのまま全社的なリスク管理を担うようになるか、もしくは専門部署は設けず、コミッティ(委員会)を設けて管理しようとするパターンが多い。さらに、意外にも内部監査部門が全社的なリスク管理を行うというケースが多い。

■ERMに密接に結びつく「事業継続管理(BCM)」
ERMを導入した多くの企業において、その後、地震やパンデミックなど事故・災害に対するBCM構築の意志決定をしていることが分かる。全社俯瞰的にリスクを見てみると、「いかに企業にとって、事故・災害といったリスクに対する対策が遅れているか」という事実が見えてきやすいのだろう。ちなみに、BCIが出したグッドプラクティスガイドライン(GPG)2010では、ERMと事業継続管理(BCM)は、生まれてきた経緯が異なる(BCMはITがきっけかで発展してきたものであり、ERMは保険の世界から発展してきたものであるということ)だけで達成しようとしていることは似ている、とまとめている。なるほど、ERMとBCMが密接に関係するのもうなずける。

■ERM導入のメリットの1つは、リスク管理の重複と漏れの排除
リスクには、必ずしも部門単位に明確にその所管をアサインできないものがある。ERMの導入は、そういった管理の境界が曖昧になりがちなリスクの面倒をみやすくする。同時に、個別のリスクごとにどうやって対応したらよいかを考えてばかりいる”部分最適”ではなく、会社全体としてどのような投資の仕方をすれば最も効果的・効率的にリスクをおさえることができるかといった”全体最適”を意識した体制を整備できるようになる。

ところで、私自身、この書籍を読んでみて改めて感じたのは「やはり、ERMの構築方法は企業によってバラバラである」ということ。本書の事例紹介の中で、企業のERMに対する取り組みについて、比較一覧表を作れるような整理分類ができていないのが何よりの証拠だ。つまり、それだけ企業によって取り組みの考え方やアプローチの仕方が異なるともいえる。

そしてもう1点、やはりこれも改めて感じるのは、ERM導入において「その考え方やフレームワークそのものは何ら難しいものではない」ということだ。実際、(フレームワークはどれも抽象的かもしれないが)そこで示されるステップはシンプルだ。むしろ、ERMを構築する上で企業が直面するであろう課題は、

「どうやって”リスク”というものを、関係者共通の言語におきかえるのか」
「どうやって組織横断的なコミュニケーションを図れるようにするのか」

といった非常に身近な点にあるのではないだろうか。と考えるとERMはそもそも、その特性上、企業の事業、文化、組織構成などによって大きく異ならざるを得ないものであり、画一的なアプローチがとりづらいものと言えるのかもしれない。

最後に、本書は、全社的リスク管理の実務者やコンサルに有益な書籍であると思う。その他にも、全社であろうとなかろうと「リスクの管理」に少しでも携わる可能性のある人なら、リスク管理上の自分の立ち位置や役割を再認識するために、オススメできる1冊だ。

2010年5月2日日曜日

書評: 『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』

結局、今回の海外出張中は、雑誌3冊(日経ビジネス4月26日号、5月3日号、ハーバードビジネスレビュー)と書籍2冊(ピータードラッカーのマネジメント、ERMの実践)にかろうじて手を出すことができた。

そんな中から今日は『ピータードラッカーのマネジメント~基本と原則~』について書こうと思う。先日、週刊ダイヤモンドの特集で見て、つい読みたくなって思わず買ってしまった本だ。(ちなみに図書館にいってみたら、1ヶ月待ち・・・だった)

「なんで今更・・・」

と、言う人もいるかも知れない。

コンサルタント&経営者をやるようになって色々な知識・経験を積み重ねた今だからこそ、改めて読むと新たな発見があるかもしれない、という思いがあった。

この書籍は、文字通り「ビジネスの基本と原則」について、ピータードラッカーが自身の経験にもとづいた確固たる考えを語っている。「企業とは」「事業とは」「戦略計画とは」「経営資源とは」「生産性とは」「組織とは」「マネージャとは」などといったビジネスを構成するコンポーネント(要素)について、事例を挙げながら丁寧に解説をしてくれている。

一見すると、抽象的な言葉に対する単なる定義の羅列・・・ともとれなくはない。もし、僕が社会人になりたてのときにこの本を読んでいたら「企業の目的とは?」と聞かれても「そんなの、言うまでもなく利益を最大限に追求することじゃないか!・・・そんな概念的な問答に何ページも割いて何の意味があるんだ!?」と生意気に一蹴していただろう。

勿論、ちょっと考えれば、そんな簡単な話ではないことは分かる。でなきゃ、これほど世界的なベストセラーになるわけもない。

たとえば、先ほどの「企業の目的とは?」という問いに対してドラッカーは「顧客を創出すること」と述べている。では「利益は?」というと「企業の目的ではなくて、条件である」と語っている。

つまり、企業は「利益を出すためにどうしたらいいか?」という問いの答えを見つけようとするのではなく「企業は顧客を創出するためにどうしたらいいか?」に対する問いの答えを求めることが必要、ということになる。たとえば会計上、利益を創出することはさほど難しいことではないので、利益を上げることを目的としてしまうと、ゆがんだ結果がもたらされるということもありえるわけだ。

「いつの間にか手段が目的化してしまっている」

とは良くいったものだ。なるほど、こうやって改めて1つ1つの言葉の”本質”について考えてみると、自分の視野が広がる。

ドラッカーの理論は、MBAなどでも学んだことだが、実は、当時は、あまり自分の脳の中で消化できていなかったように思う。

「コンサルをやっていて何を今さら・・・」

と言われれば、それまでだ。正直、自分はそれなりに勉強し経験を積み重ね、十分に理解しているという自負があった。普段、完全に理解したつもりで使っていた言葉だが、まだ本質を理解しきれていないものもあるようだ

ただし、「現場で色々なことを経験しては、何度も原点に返って基礎を考え直してみる」ということは自己を成長させるにあたり必然のプロセスなのだと思う。

ビジネスは、本当に奥が深い。だから、面白いのだろうけど。



映画:ANVIL(アンヴィル) ~夢を諦めきれない男たち~

ふぅ~。やっと日本に戻ってきた。今は成田空港のラウンジでぼーっとしている。

ここに来るまでにグランドラピッズからシカゴまで1時間。シカゴから東京まで12時間だった。この後、成田から伊丹へ飛ばなければ行けない。そして、非情にも伊丹空港からさらに2時間の移動が待っている。

そんな待ち時間の間に、ふと最近観た映画『アンヴィル(ANVIL)』について書こうと思う。この映画はサブタイトル(夢を諦めきれない男たち)が全てを物語っているといっても過言ではない。

そう、有名なロックバンドになることを夢見た男二人。14歳の時から、いつかはロックだけで食っていけるようになると信じ、「そしていつかは数万人の前で歌いたい!」と強く願いながら、ひたすら活動を続けてきた。働けど、活動すれど、有名にならず、50人にも満たないホールでのステージが続く。そして、気がつくと二人は50歳代に。まだ夢を実現できていない。

普通の人なら、さすがに熱は冷めてくるものじゃないだろうか。

しかし、二人の情熱は全く冷めていない。いや、それどころかますます熱くなっていく。二人の夢は叶うのか・・・。


僕は、観ていて涙が出てきた。ひたすら夢を、熱いピュアなハートで、一生懸命追い続ける姿は、観る者のどんな気持ちをも貫ける力を持っていると思う。感動を誘わないはずはない。しかもこの映画、全て役者による演技などではなく、ドキュメンタリー。

「いったいどうしてこのような感動の物語がドキュメンタリーなんぞで撮れたのか?」と疑問に思うくらいだった。Wikipediaによれば、アンヴィルの元で働いていたことのあるサーシャ・ガバシ(映画『ターミナル』の脚本家)という人が、2005年にアンヴィルのメンバーにコンタクトをとり、彼らのドキュメンタリー映画を撮りたいと要望したことが始まりだという。筋書きのないドラマは、2年間に及ぶ撮影の末に完成し、2008年にサンダンス映画祭でプレミア上映されたとのこと。

到底言葉では語り尽くせない、いや語り尽くせるわけがない。少しでも気になった人にはぜひ観てもらいたい作品だ。

IMDBでの映画紹介はこちら

2010年5月1日土曜日

映画: KICK-A** (キックアス)

アメリカ滞在最終日の今日、つい先日からアメリカで公開されている映画『KICK-ASS(キックアス)』を観てきた。

この映画は、普段聞いている『小島慶子のキラキラ』に毎週ゲスト出演されている町山智浩さんが2010年4月23日の放送で取り上げてくれたもの。自分は、アメリカ渡米直前にポドキャストで聞いた。町山智浩さんが薦める映画作品は僕の感性とピッタリ合うものが多い。加えて紹介の仕方が非常に上手。映画のネタについてほどよい加減で触れて、聴く者の気を実に上手に惹く。以前『ハングオーバー』という映画の紹介を聴いていたときも、彼の解説を聞いて「ぜひ、観たい!」と強く思ったものだ。

さて、そんな町山さんが紹介してくれた『キックアス』だが、日本での公開は全く未定らしい。そして、R18(18歳以上じゃないと観てはいけない映画)なので、余計に観たくなったとも言える。アメリカに来た今この機会を逃す手はない・・・。で、この映画、

一言で言うと「凄い映画」。

色々と考えてみたが、これ以外の形容詞が見あたらない。

そして、もし二言目の感想を付け加えられるのなら「自分の倫理観が問われる映画」と言うことができるかもしれない。


【原作の本がある模様】

あまり映画の中身を触れずに説明すると、アメコミに出てくるヒーローにあこがれる青年が「自分も変わるぞ」と意気込んでヒーローを目指すお話。しかし、ストーリーはこれまでのX-MENやファンタスティック4、スパイダーマンやバットマンといった絶対的な強さを持ったヒーロー者とは全然違う。アメコミの世界とは全然違う厳しい現実と向かい合いつつも、彼の行動が徐々にまわりに変化をもたらしていく。そしてその変化は大きな渦となり、自身が巻き込まれていく・・・。

「倫理観が問われる」と言ったのは、「楽しんでいいのか?」と自問自答してしまうシーンがたくさんあるからだ。ところどころに出てくるユーモラスなシーンは観客の笑いを誘わずにはいられない。僕も何度も爆笑。でも、その多くがブラックユーモアで、なおかつ、11歳の少女が殺戮を繰り返すシーンがたくさん出てくる。キルビルも真っ青。でもその真っ青さをジョークと絡めている・・・観る者の心を試しているかのような恐ろしい映画。この映画を作った監督はすごいと思う。

この映画を賞賛すると、人格を疑われそうな気がする。が、正直に認める。個人的にはすごく楽しめた。観に来て良かったと思っている。アメリカでDVD発売されたら買っちゃうかもしれない・・・。

※IMDBでの紹介はこちら

仕事の効率が上がるマインドマップ

本日は、Grand Rapids滞在最終日。当初予定していた仕事の大半を終えることができ、とりあえずは御の字。

さて、今日は最近なかなか有りがたく思った話を書きたい。

ここ最近になり、仕事でやたらと「マインドマネージャ(MindManager)」というソフトを使うことが多くなった。このソフト、簡単なマウス操作やキーボード操作でマインドマップを作ることを可能にするソフトだ。マインドマップとは、文字通り「心(頭)の地図(を書くこと)」。

なんのこっちゃ、というふうにも思うかもしれないが、人が普段、頭の中で考えることは、算数の公式や、エクセルの表のように綺麗にはまとまっていない。そんなまとまりのないごちゃっとした考えを、図的にしかもわかりやすく表現して
整理しやすくしてしまおうというのがこのマインドマップという手法だ。

数年前に何かがきっかけで興味を一度持ったことがあり、そのときは「マインドマイスター(Mind Meister)」という無料オンラインサービスの利用を試みたが、「微妙な操作性の悪さ」にすぐにやめてしまった。

その後、マインドマップのことは、すっかり頭の奥底に埋もれていたのだが、このキーワードを耳にする機会が少なからずあったことも事実。実際、勝間和代さんも『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』という著書の中で、マインドマネージャが効果的という話を書いていたし、また最近では、会社の同僚から「山本敏行(株式会社EC studioの社長)さんという人がUSTREAMでマインドマネージャについて熱く語っていて面白い」と教えてもらう機会もあった。



「そんなもの紙とかホワイトボードでやったほうがいいんじゃないの?」

僕もそう思っていた。紙やホワイトボードのメリットは、変な技術的便利さがない分、余計なことに思考をとらわれないですむメリットがある。実際、ワードやパワーポイントなどを使っていると、いつの間にか、フォントのサイズや色、図形の形など、本来の目的とはほど遠い部分に思考の時間を奪われていることがある。

でも、マインドマネージャは確かに便利だ。紙やホワイトボードよりも有利な点は、切り貼りが簡単にできること。頭の中で考えることをはき出してから、整理分類をするマインドマップでは、切ったり貼ったりといったこの機能は必要不可欠だ。自分のパソコンにインストールをして使うソフトだからネットワークにつながっていなくても使えるし、操作性もいい。添付ファイルの貼り付けや、ハイパーリンクの貼り付けもできて、さらに便利。

直感的に使えるので、操作を覚えるのに時間がかからない。おかげで、今では、お客様への提案書やソリューション(案)など何かのブレインストーミングをする際には、常に使用している。マインドマネージャを使用すると「仕事の効率があがる」との触れ込みだったが、なるほど確かに明らかに効率が上がっているように感じる。

なかなか、うれしい発見になった。




ちなみに、僕に話を教えてくれたこの同僚、「よく考えたら、自分には使う場面なかったです・・・」とあっさり。あー、いつもと同じパターン。僕に薦めてくれるまわりは使わず、いつの間にか自分だけがどっぷりとその世界にハマっている。



===2011年8月4日(追記)===
この商品、2010年5月頃から使い始めて、はや1年以上が経過するが、今でも使っている。書評や、論文を書く際に頭を整理するものとして非常に便利だ。

難点は、このツールに慣れすぎてしまい、逆に、このツールがないときにモノが書けなくなるのでは・・・という恐怖感を持っているところか・・・。

2010年4月29日木曜日

iPad・・・買うべきか、買わざるべきか


クライアント先でのこと。僕のクライアントは簡単に言えばITサービスプロバイダ。当然ITに精通したスタッフを多く抱えている。そんな環境において「本場米国でのiPad人気はどんなものだろうか」と興味を持っても不思議はないはず。

さて一昨日。休憩時間に勝手にエンジニアルームに乗り込み、突撃インタビューを試みた。

「誰か、iPad買った人いない?」

その場にはその瞬間に十数人のエンジニアが仕事をしていたが、早速、そのうちの一人から「あるよ」との声。

「おー、見せて見せて」

彼はおもむろにiPadを出してきた。ブラックカバーに包まれたかっこよくオシャレなiPad。見ると、大きな画面にiPadアプリがビッシリ。中でも、自慢気に見せてくれたのがiBook。バーチャル・ブックシェルフ(仮想空間の本棚)には、カラフルな本が並ぶ。「本当に普段からそんなに読んでいるの?」と思わず聞きそうになった。

「ブラインドタッチはどう?」

「うーん、慣れればできるかもしれない、といった感じかな。キーピッチが分からないので簡単ではないよ」というのが彼の答え。そう言いながら、彼は両手を使って常にキーボードを見ながらタイピングを行っていた。

「一番、良く使うのは?」

「ブラウンジングかな」。やっぱりiPhoneに比べて画面がでかい分、便利なのだろう。でも、そうなると普通のネットブックに比べて何がいいのか?という疑問がわく。

やっぱり究極はオシャレだから・・・だろうな、というのが僕の印象。本当にかっこいい。最近のiPodのように電子機器でありながら、持つことがオシャレにすら見える。購買意欲をそそる。

で、「僕は買うのか」・・・というと、結論は「買わない」ということに。一番の理由は、単にインターネットに束縛される時間を増やすだけになりそうだから。これは仕事上も私生活上もあまりメリットはない。『仕事の効率化』という観点だけで見た場合、「果たしてビジネスノートの代わりになりうるか」というのが僕の問い。残念ながらビジネスノートの代わりになりそうにはない。例えば、白版のメモを撮るカメラやタッチペンを使って打ち合わせの内容を即座に記録できるようなものとしては想定されているようには見えない。

安くても5万円。これはプレーステーション3を彷彿とさせる値段。決して安くない買い物なわけだし、どのような使い方ができるのか、もっと見えるようになってきてから、買うことを検討しても遅くはない。

時差がもたらす仕事増の罠

今日でグランドラピッズ滞在三日目。到着した日曜日の天気が相変わらず嘘のようないい天気。

時差の関係で、こちらで朝起きた時(日本は朝、夜7時頃)には日本の仲間やクライアントからメールが一杯届いていて、その対応に追われる。

こちらの夜は夜(日本時間の朝9:00頃)で、日本オフィスの仕事がスタートする時間と重なるため、やはり色々なメールが届き始める。

お陰で気がつくと寝る時間が遅くなる。この時差がさり気なく怖い。

Location:Michigan 44,Grand Rapids,United States

2010年4月28日水曜日

いい景気の波は、いつ届く?

グランドラピッズ in ミシガン州。今日は、午前3時に起床して仕事に取りかかった。午前7時からクライアントと打ち合わせがあり、そこから夕方6時までほとんど休憩なしのぶっとおしでの打ち合わせ。激しい疲労感におそわれるわけだ・・・。

さて、今朝のニュースによれば、シャープ(3月決算)が43億円の黒字決算とのこと。確か昨日のニュースでは、キヤノンが第一四半期(12月決算)終了時点で早くも業績の上方修正(3,300億円→3,600億円)を行ったといっていたな。日立(3月決算)も8兆7,000億円から2,600億円増やして8兆9,600億円になる見通しとの話。ソフトバンクも5期連続で最高益。

明らかに景気が良い方向に向かっているように見える。しかしながら、同時期、多くのコンサル会社が倒産や大量のリストラ実施に追い込まれた、という事実を耳にした。同じコンサル業を営む我が社が生き残れているのは、当然、努力のおかげと言える部分もあるだろうが、小回りのきく少数精鋭であったため、とも言えるだろう。コストのほとんどが人件費を占めるコンサル会社では、メーカーなどと違い、即座にコストコントロールをできるような状況にない。

続々報道される各社の黒字の波が、我々コンサル会社に届くのは1年ぐらい後だろうか。さらに我慢の時が続くのか・・・。波が届くのを待つのではなく、波にこちらから近づく方法はないものか。

2010年4月27日火曜日

日が長い緯度42度のミシガン


午後6:30頃。ミシガン出張初日の仕事が完了(「現場での仕事が完了」という意味だけど)。それにしても昨日の大雨・大風の天気が嘘のような快晴。そして、何よりもものすごく日が長い(午後7時撮影の写真参照)。あまりに長いので夏至ではないかと調べてみたらミシガンは6月中旬から末にかけてが夏至の時期になるらしい。これから更に日が長くなるってことね。

イギリスもこんなだったな、そういえば。ただし、ミシガンが緯度42度なのに対して、イギリス(ロンドン)は、緯度50度よりもさらに上。だから、イギリスは夏の明るい時期はもっと日が長かったことになる。

建物の中に閉じこもって仕事するのが馬鹿らしくなるくらいだ。今日、クライアント先の会社の一人から「今度、ゴルフ行かない」と誘われたのだが、こりゃー行かない手はないな。また戻ってくる来月にぜひ・・・。

2010年4月26日月曜日

ブログを再開

本日は、2010年4月26日の午前8:31。今、グランドラピッズ(ミシガン州)のホテルに滞在中。

ここ数ヶ月間、Blogを始めよう、始めよう・・・と思っていたが、ここにいたりようやくその決心がついた。会社のページには、同じタイトルでコラムを掲載しているけれど、載せられるものと載せられないものがあるので、あまり気をはらずに書けるものをこちらにポストしていければ・・・。

さて今日から、再開だぜい。誰か見てくれる人いるのかな、しかし・・・(笑)。

”継続は力なり”を、いざ実践!!

極めて大きな岐路に立つ新聞社

今回は、少しマジメな話を投稿(いきなり初日からまじめな記事を書くと、もたないのは分かっているけど(^_^;))

さて、今この瞬間は、ビジネスでミシガン州はグランドラピッズというところに来ている。

ひょんなことから昨年秋頃にこのプロジェクトがとれて、それからというもの世界中を飛び回っている。もともと、それまではそこまでグローバルに飛び回るようなクライアントはいなかった(多少はいた)のだが、本当に海外出張が増えた。特に、このクライアントは、アメリカだけでなく世界各国(例えばロシアのサンクトペテルブルグなど)に関係会社があるため、マイレージが本当に勢いよく貯まる(^o^)

こういう生活には、インターネットは本当にありがたい。最近、感じるインターネット関連のありがたさの1つに『日経新聞の電子版サービス』がある。今までだと海外出張中は、せいぜいインターネット上にある各種ニュースサイトをサーフィンする程度が精一杯だった。けれど、この電子版サービスのお陰で、日本の外にいてもあたかも手元に日経新聞が配達されたかのようにニュース記事を読める。

このサービスを受けるために従来の月額費用に+1,000円払うことになったのだが、個人的にはむしろお得感がある。オンラインで配信するサービスにお金をチャージできる・・・という日経新聞の戦略はドンピシャリ当たっているわけだ。

一方、毎日新聞はiPhoneアプリを通じて、だいぶ前からオンラインでの新聞記事の無料配信を行っている。最近、朝日新聞や読売新聞も無料配信をスマートフォン向けに開始したと聞く。ユーザとしてはありがたいが、果たしてこれが各新聞社にとってありがたいこと(収益の増加につながる)かどうかは疑問が残る。オンラインサービスを有料化した日経新聞の戦略と対照的に写る。

実は毎日新聞と似たようなことをアメリカの『ニューヨーク・タイムズ』がやっている。2007年9月に『ニューヨーク・タイムズ』のウェブ・サイトである NYTimes.com においてそれまで有料にしていたサービスの全面無料化にした。しかしながら、現時点では収益も減りこの動きは失敗に終わったというのが大方の見方だ。

そこに来てiPadがアップル社から発売された。このデバイスの発売は、電子媒体での購読を促しそうな気配だが、既に無料でニュース配信を行っている新聞社は、オンラインサービスを有料化に切り替えない限り、この恩恵を収益に換えづらいように見える。

手軽にこのようなモバイルデバイスで読めるようになる環境は、大きな付加価値だ。無料にして広告で稼ぐ方法にするよりも、オンラインでチャージする方法を模索するほうが正しいように見えるが、どうなのだろう。

それとも「新聞記事にお金を払ってもらうというビジネスモデル自体が、もう機能しなくなっている」・・・と結論づけてしまうべきなのか・・・。

いずれにしても、テクノロジーの発展にビジネスモデルの変化を迫られる新聞社は、生き残りの岐路に立たされているなぁ、とつくづく思う。

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...