2012年10月28日日曜日

書評: 伝える力

”モノゴトを人に分かりやすく伝える”

池上彰氏のこの優れた能力にはワケがあった。


それを知りたいなら、次の本がオススメだ。

伝える力
著者: 池上彰
発行元: PHPビジネス新書
価格: 800円


■「話す」、「書く」、「聞く」を極めて伝える力をパワーアップ

本書は、コミュニケーション能力を高める秘訣を紹介したものだ。コミュニケーション能力とはすなわち、インプット(聞く)の仕方とアウトプット(伝える)の仕方・・・のことである。

中身は「まず、自分が”知らないこと”を知ろう」といった姿勢の持ち方に始まり、「会話や文章の”出だし”に力を入れよう」「カタカナ用語はできるだけ使わないようにしよう」といったモノゴトを人に伝える際の注意事項の紹介、そして「ブログを書くことを通じて他者に刺激を受ける努力をしよう」といった文章力を効果的・効率的に高める方法にいたるまで、幅広くカバーしている。

読んでみてまず「さすが、池上彰さん。1つ1つのポイントの説明がわかりやすいかった」という印象を持った。

ただし、「やや本の全体感を微妙に掴みづらかったかな」・・・といった感もある。そう感じたのは、この本を読んだ後に「コミュニケーション能力を高めるには、つまり、どうしたらいいのか?」を自分の中で一言でまとめてみようとすると、意外にすんなりできなかったからだ。そりゃー、おまえの能力が低いからだ、と言われればそれまでだが。

※本書の「おわりに」を読んでいて、その謎が解けた。この本は、編集部が取材と称し何回かに分けて池上彰氏に口頭でインタビューした内容をベースに本にまとめたもの、とある。最初に本全体のフォーマットを決めて、論理的に積み上げて書いた、というよりも、池上彰氏の頭の中にあるものを吐き出した後、それらをいくつかのテーマごとに分類整理した・・・そんな感じだ。

■”なるほど”の多さに、いたく感動

池上彰さんの本を読んでいて、いつも感じることだが、今回も”共感できること”、”なるほど”と思えることが多かった。

「わかりやすく伝える役割を持つ教科書こそ、最も専門用語を散りばめており、一番わかりにくくしている元凶だ」とか、「30秒あれば、起承転結を含めたちょっとしたストーリーを人に伝えることができるんだ、ということをキャスター時代に学んだ」といった話。わかりやすい文章を書くためには、「仮タイトル、ねらい、構成要素、結論など、最初にフォーマットを決めておくこと」、「書いた後に音読して読み返してみること」など、「へぇー、ほぉー」の連続だ。

中でも、私が「おぉっ!」と関心したのは次の話。

『知り合いのアナウンサーが放送でニュース原稿を読んでいるのを何気なく聞いていると、ある一箇所で突然、その内容が頭に入らなくなったのです。放送が終わった後で、その人に聞いてみました。「今の放送で、意味がわからないまま読んだところ、なかった?」と。思ったとおりでした。原稿を読んでいるとき、突然フッと集中力が途切れ、その部分の原稿の意味がとれなくなったそうです。意味が分からないまま読んだり話したりすると、それを聞いている相手も意味がわからない。そのことを、私はこのとき初めて知りました。』(本書より)

ドキッとした。読み上げている内容を自分でも実はそこまで理解できていないのに、相手に無理に説明していた過去が、私にもあった。この話を読んで「あー、聞いていた人は、あのとき頷いていたけど、きっと分かっていなかったんだろうな」と。

■技術者にこそ読んでもらいたい

先に挙げたいくつかの例を見て、お分かりいただけたと思うが、書かれている内容は、明日からでもすぐに実践できるものばかりだ。分厚い本ではないし、軽い気持ちで、読めるものだ。

ビジネスの世界では、コミュニケーションは何よりも大事なツールなので、ビジネスマンなら誰でも一読しておきたい本だ。

特に「君の話はわかりにくい」と良く言われる人や、テクニカルな内容を人にわかりやすく伝えなければいけない立場の人・・・そう、たとえばITエンジニアなど、には強くオススメしたい本である。


【これまでに読んだ池上彰氏の他の著書】
 ・書評: 「14歳からの世界金融恐慌」と「14歳からの世界恐慌入門」
 ・書評: 日銀を知れば経済が分かる

2012年10月23日火曜日

「維新の会」は信じられるか

2012年11月号のVOICE。


面白かったのは、今号のテーマにもなっている”「維新の会」は信じられるか”。

著名人が維新の会の政策について、色々な角度から評論している。たいていの場合VOICEでは、こうした声は賛否両論・・・はっきりとわかれるものだが、今回は細かい部分での差異こそあれ、大枠ではみな維新の会の方針に賛同しているという印象を持った。

 ひところに比べると、最近、人気もやや下火になってきたかな、と感じていたが、それは思い違いだったかもしれない。

わたし個人はと言うと、細かい政策1つひとつを批評するほどメディアは橋下市長を独裁者と揶揄するが、間違っていようがなんだろうが、明確なビジョンも意思も持てない他の政党には、辟易気味。


もう1つ面白かったのは、彬子女王の話。英国のエリザベス女王に会ったときの話が描かれている。自身がPrincess Akiko と呼ばれる身でありながら、英国のエリザベス女王に会うときに、我々一般人と同じように緊張しまくった話には、読んでいて思わず笑みがこぼれた。

書評: 「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法

”エリートになる人”には、どんな傾向があるのか? どうすれば”エリートを育てられる”のか?を語った本である。

「勉強しろ」と言わずに子どもを勉強させる法
著者: 小松公夫(こまつきみお)
出版社: PHP新書



この本の著者である小松氏は、一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。法学博士。現在、明治大学法科大学院教育補助講師として・・・あの有名な受験漫画「ドラゴン桜」にも取り上げられ・・・うんぬんかんぬん・・・難しいので省略させていただく。

名実ともに頭の良いエリート先生が書いた本だ。

■”生徒を育てる教育者”と”子を育てる親”の立場から、論じる

さすがに数多くの生徒やその両親と接してきた教育のプロである。ハッとするような話も数多く紹介されている。たとえば以下は、わたしがドキッとした著者の指摘だが、多くの父親が陥りやすい罠の一例である。

『子どもがまだ幼いうちに信頼関係を培っていないと、後で修復は非常に難しくなります。大学受験のときに突如、「私(子どもの幼少期にあまり接して来なかった父親)が率先して面倒を見る!」と息巻いてみたところで、もはや手遅れなのです。』(本書第二章より)

なお、著者自身も二児の父親。教育のプロがエリート育成について、教育者としての立場と、実際に子を育てている親・・・その両面の立場から、学び、感じたことを描いてくれているところにもこの本の特徴があると言えよう。

『ちょっぴりズレてはいるものの、比較的勉強好きな姉に対して、妹の方は勉強に全く興味がありません・・・(中略)・・・あざらしとあしかの違いがよくわからないんだよ。あなた(妹)は動物に詳しいから、明日、学校から帰ったらお父さん(著者)に説明してくれないかな。」すると勉強の宿題には全く積極性のない下の娘が、そういうことはきちんとやるのです。』(本書第三章より)

■エリートが良いか悪いかは別問題

ところで、良くも悪くも、この本には”エリート=目指したほうがいいもの”という前提がある。

実際、著者は本書で、弁護士、東大、国立大学・・・こういった道に進めた人たちをポジティブな事例で紹介する一方で、普通の私立大学、普通のOLになった人を「タダの人」と評する。

こう書くと・・・

「そもそもエリート偏重の世の中が、どうしようもない日本を作り上げたんだ! そんなクソ本、読んでどうすんだ!?」

そう主張し、この本を一蹴する人もいようが、もちろん、そういう人はこの本に時間を割くべきではないと思う。

そもそも「エリートになるのがいいのか、悪いのか」といった話を展開させるのがこの本の目的ではないからだ。冒頭でも述べたように、あくまでも、エリートを1つのゴールとして見た時に、そこにどのような傾向が見て取れるか・・・その一点で、参考になる情報を紹介しようと、色々な事例をまとめた本なのである。

■コーチングの必要性を理解したいか、コーチング方法を理解したいか

「東大生の多くは親に勉強しろ!と言われたことがない」

先日、立ち読みしたプレジデントファミリー「東大生184人”親の顔”」にも似たようなことが書いてあったし、本書の売り文句でもある。

親がガミガミ言わない子ほど結果を残している・・・というわけだが、改めて感じたのは、結局のところ「子に対して上手なコーチングを実践できたかどうか」が、子育ての成否に大きくかかわっている、ということだ(※コーチングとは、ゴールを自覚させ、やっていることに楽しみや意義を感じさせ、自発的な行動をとるように仕向ける・・・カウンセリングの一種だ)。

いずれにせよ、本書を読むことで、子育てにおけるコーチングの必要性について、ある程度、理解することができる。

ただし・・・子育てコーチングの必要性は十分に理解しているのだが、その方法が良くわからない・・・そいういう親なら、この本を読むよりも、むしろ、子どもの心のコーチング」のようなコーチングそのものをテーマにした本に手を出したほうがベターだろう。


【類書】
書評: 子どもの心のコーチング(菅原裕子)

2012年10月15日月曜日

映画評: バトルシップ

バトルシップ(Battleship)

「近代兵器を使った”海戦”がどんな風になるのか!?」

この作品を観たいと思った人は、その部分に少なからず惹かれたのだと思う。私もそうだ。実際、ドンパチは圧巻だ。が、同時にそれが、映画にリアリティを求める者をやや興ざめさせる要因にもなっている。

やはり、第二次世界大戦当時ならまだしも、いまさら、船がドンパチやるシーンというのがどうもしっくり来ないのである。湾岸戦争のとき世界中に衝撃映像が流れたが、映像の中心は、巡洋艦から発射されるトマホークや空母から発進する戦闘機だった。確かに、近代先頭において重要な役割を担うが、主役ではなかったことが分かる。あくまでも後方支援のツールだ。

この映画のトレーラーを観た人なら分かるだろうが、にも関わらず、映画の中では船同士がドンパチやっている。そのあたりの不自然さは映画の中で、しっかりと解決してくれているであろうことを望んで観るわけだが・・・。

確かに、映画ではそうならざるをえないストーリーが作られているが、やっぱり無理があったように思う。気になる人は、ご自身の目で確かめられたし。

ちなみに、もう1つの見所は、日本人も活躍するところ。俳優、浅野忠信が主役に負けるとも劣らない役柄を演じている。パールハーバーで日本人とアメリカ人が協力する映画・・・というところに何らかの意図を感じるが・・・。

いずれにせよ、まとめるなら作風も、話のこじつけぶりも「インディペンデンス・デイ」そのものだ。つまり、あんな感じで、ぼーっと観て、スカッとしたい!という人向けの映画だ。

2012年10月14日日曜日

車の配線作業

車の配線作業というものを初めてやった。これまでこういった作業の類は、常に、フルアウトソーシング。

「オートバックスさん、頼んます・・・」

みたいな感じだ。これでは、いかん。全く、自分に知識も技術も残らない。そう思った私は、今回の作業を自力でやることにした。

インターネットにある10数記事を参考にして、作業を開始。

「なになに・・・線をカット? ・・・結線? ・・・絶縁テープ?」

いきなり、コーナンに走るハメに。ニッパー、絶縁テープ、ヤスリ・・・などを買ってきた。

30分後、再び作業に戻る。今度は、内貼りが外れない。説明には、指でつまんで上に上げればとれます・・・とあるが、指を差し込む場所は狭いし、力が入らない。何度格闘しても、外れない。ネット記事を再び見ると、

「内貼り剥がしを使うと楽です」

とある。

今度は、オートバックスへ。ここで専用の剥がし器(数百円)を購入。

30分後、再び作業に戻る。

あっという間に、はがせた。しかし、今度は、カーナビがなかなかはずれない。

「ここのネジを2つ外してから、養生テープなどで思いっきり引っ張れば、外れます」

ネットの説明には、そう書いてあったが、いくら引っ張っても外れない。おかしい。30分くらい格闘した後、よぉく見直すと、外すネジの場所が間違っていたことに気づく。Ozzz。


ようやく配線と巡り会えたものの、色が一杯あって、何がなんだか分からない。ボディアースだとか、なんだとか説明記事にはあるが、それも良くわからない。1時間くらい記事と格闘して、ようやく理解。

しかし、ニッパーで配線をカットしても、結線する道具やアース線自体がないことに気づく。再び、オートバックスへ。

ひととおり備品を購入し、作業再開。全くなれない手つきで、配線をカット。別の線につなぎ結線した。

ネットには20分で済む作業・・・とあったけど、占めて5時間。ほんっと苦手なんだ・・・自分は、こういうの・・・。

起業家マインド醸成のヒント

日経ビジネス2012年10月15日号の記事で、印象的だったのはリブセンス社長、村上太一氏の編集長インタビュー記事。

村上氏は、いわゆる若手起業家だ。現在25歳だが、10月1日に史上最年少で一部上場を果たした。

やはり注目されるべきは、彼のその起業家精神だ。いったい、いつ、どこで醸成されたのか。

『高校生の頃から私が関心を持ちそうな経済番組を良く録画してくれました。大塚製薬の「ポカリスエット」をいかに苦労してヒット商品に育て上げたかといった、何かを作り出すストーリーには感化されました。今も母や毎週、録画・編集した経済番組をDVDに焼いて送ってくれております。そんなアンテナのはり方は、母から影響を受けたもしれません。最近、学生によく言うのは、インターンでもなんでもいいから社長さんに会ったり、いろんな人に出会うことが大切だということです。子供の頃考えられる職業ってやはり、見たことがある人しかないと思う。』(日経ビジネス2012年10月15日号より)

良く、我々親の側は、子供に対して「やりたいことを見つけなさい」とか「おまえのやりたいことはいったいなんなんだ」、「なんでお前にはやりたいことがないんだ」とか・・・そんな不満をぶつけることがあろうかと思う。

果たして、親の側としてそんな機会を持たせる努力をしてきたのか・・・と言うと、全くそんなことはないのかもしれない。

日経ビジネス
2012年10月15日号

2012年10月9日火曜日

書評: 神去なあなあ日常

神去なあなあ日常
著者: 三浦しをん
出版社: 徳間書店


■都会人 vs 田舎者 with 林業

ご存知のとおり「どうも」という言葉は、ありがとう、すみません、はたまた、こんにちは、・・・など、色々な意味で使われる。日本語の中で最も便利な文句の1つだ。

神去村(かむさりむら)では、「なあなあ」という言葉が、最も便利な文句の1つらしい。「なあなあ」とは、ゆっくり行こう、まあ落ち着け・・・という意味だ。

主人公は、横浜出身の平野勇気(ひらのゆうき)。特にこれといった特技も、やりたいことも持たない、高校を卒業したばかりの19歳。「さて、のんびりとフリーターでもしようか」と思っていたところ、彼の先生が勝手に、林業への就職を前提とした1年間の研修制度へ応募した。親は反対するどころか、その制度への参加に大賛成。主人公は、わけが分からぬまま、神去村へ送られる・・・。本書は、都会人丸出しの主人公と、林業で生活する”なあなあ感”いっぱいの神去村の住人達の化学反応を描いた物語だ。

■読者を魅了する4つの要素

この本は単なる小説ではない。ある意味、主人公の平野勇気は読者自身だ。”勇気”が林業を修業する=読者も林業に詳しくなる・・・という仕組みの小説になっている。つまり、この本を読むと物語を愉しみつつ苦痛なく、林業に詳しくなれるのだ。

この本には読者を魅了させる、三浦しをん氏独特のスタイルが反映されている。それは、話がどう展開するかわからないドキドキ感と、知らない世界(マイナー職種)をもっと知りたいと思わせるワクワク感を、読者から引き出す著者のワザのことだ。三谷幸喜氏を彷彿とさせる要所要所のコミカルな演出も印象的だ。

『力づよくメドのほうへ、ヨキや清一さんたちが立つ方へ、死から生へ、引き寄せられる。「ファイトォォォ!」こめかみに筋を立て、ヨキが吼える。ふざけてる場合か、と思ったけど、オレも右腕に渾身の力をこめて吠えかえした。「いっぱぁあつ!」。』(本書より)

ところで、三浦しをん氏と言えば、2012年の本屋大賞に輝いた「舟を編む」が有名だが、本書もそれと同じスタイルで描かれていると言えば、わかりやすいだろう。「舟を編む」が辞書作成業にスポットライトを当てた物語であるのに対し、「神去なあなあ日常」は、林業にスポットライトを当てた物語といえる。

本書には、こうした特徴に加え、もう1つの要素が加わる。田舎独特の空気感というか・・・都会人が失ってしまったもの・・・つまり、のんびりとした雰囲気と強い仲間意識(≒よそ者排他感)を持つ社会が描かれており、都会に住み慣れた読者の憧れを誘う。ただし、単なる憧れ者を否定する生きる厳しさ・・・みたいなものも上手に描かれている。

■”なあなあ感”を求める人へ

わたしは常に「何かを習得したい!」という想いがあるため、読書においても、どちらかと言えば、自己啓発本や専門書、ビジネス書の類を好んで読む。ただ、こういった本ばかりを読んでいると、常に似たようなテーマ、似たような文体、難しい専門用語にさらされることになるし、内容を自分の人生に照らし合わせてみたり・・・など、疲労感を伴うことが多い。

だからだろう。そんなとき、こんな「なあなあ感」丸出しの小説を読むと、とてもリラックスできる。

「本からリラックスしながら(知識など)何かを得たい」と求める人、「ちょっと変わった本を読みたい」と思う人、「舟を編むにハマった」という人・・・そんな人たちに間違いなくオススメできる一冊だ。


【類書】
 ・書評: 舟を編む

2012年10月6日土曜日

書評: 戦国の軍隊

「長篠(ながしの)の戦いの勝利は”銃三千丁三段打ち”のおかげ、というのは嘘

そんな話をきっかけに読んだのが次の本だ。

戦国の軍隊 ~現代軍事学から見た戦国大名の軍勢~
著者: 西股 総生
出版社: 学研



■学校では習わなかった歴史

戦国史の欠落を埋める最新の歴史研究本だ。主に、東国・・・小田原に居城を構えていた北条氏や甲斐の武田信玄、越後の上杉謙信など、東国の戦国大名の軍隊について著者の考察を、素人でもわかる言葉で紹介している。

本の帯には「眼からウロコの新解釈が満載!!」とあるが、具体的には例えば次のようなものだ。




  • 長篠の戦いの勝利の鍵は、本当に”銃三千丁三段打ち”なのか
  • 戦国の兵士は、本当に半農半士(農業と兵士業を兼務)だったのか
  • 侍、足軽・雑兵にはどんな立場の者がなっていたのか
  • 実際に、どうやって兵を募集したのか、など

そこには確かに学校で習ったことのない内容・・・あまり聞いたことのない話ばかりが紹介されている。

たとえば、冒頭でも触れた「長篠の戦いにおける銃三千丁三段打ち」だが、多くの人は、わたし同様に「信長はこの見事な戦術で戦(いくさ)に勝利した」と信じていることだろう。

しかし、これに対して著者は次のような疑問を呈する。

「長篠の戦いは、実は織田軍のための戦いではなく、徳川軍+織田軍の戦い・・・もっと言えば、徳川軍のための戦いだったはず。あたかも”三段打ち”が、勝利の鍵であったかのようにとらえられているが、戦(いくさ)の背景や書物を改めて観察してみると、そうでなかったことが見えてくる」と。

本書では、当時の布陣を図示しながら、その核心に迫っている。

※ちなみに、著者によれば、この主張の論拠については学者の間で違いがあるものの、銃が主役ではなかった、という考え方は今ではだいぶ通説になってきているようだ。

■視点を変えることによる大きな発見

ところで・・・「何人もの歴史学者が何年も研究してきた分野において、今更どうしてこのように新しい見解がワンサカ出てくるのか?」

そんな疑問もわいてくる。

これについては、西股氏が”城郭研究の専門家”であることが大きく貢献しているようだ。事実、著者は次のように述べている。

『著者はずっと城郭研究の場に身をおいてきた・・・(中略)・・・生物の世界と同様、人間の創りだす構造物やシステムの場合も進化とは単純なものが複雑化してゆく課程ではなく、変遷する環境への適応ではなかろうか。だとしたら、城郭構造の進化とは、城郭をとりまく環境の変化への対応として生じたのではなかったか。城郭の本質が軍事的構造物であるのだとしたら、城郭の構造が進化するという現象の背後には、それを構築し使用する人間集団、つまりは軍隊の変化があるのではないか』(本書”あとがき”より)

「ハーバード白熱日本史教室」の北川智子氏を彷彿とさせるが、北川氏が戦国時代の侍(サムライ)を当時の女性・・・妻の視点から観察することで新たな発見を得たように、西股氏も従来とは異なる切り口・・・すなわち、当時の城郭のあり方から、戦国の軍隊を観察した結果、新解釈をしなければ説明できない事項がたくさんでてきた、ということだ。

これにはある程度の納得感がある。

■好奇心旺盛な人におすすめ

ただ、間違ってはいけないのは、本書で紹介されている内容は、あくまでも西股氏が紹介する新解釈であるということだ。考察は確かに丁寧で、論理的だが、仮説や推測も少なくない。

また、仮に西股氏の解釈が正しいとして、これまでの歴史解釈の間違いを発見できたからといって、それが「自分の人生にどういう意味をもつのか?」ということはイメージしづらい。

したがって、単に「正しい歴史の知識を得たいんだ」とか「何らかの自己啓発のきっかけとしたい」という想いで本書を読むと期待を裏切られることになる。事実、著者自身もそのように明言している。

わたし自身は、本書を通じて

・我々が知る歴史は、決して正確なものではないということ
・何ごとも切り口を変えて見ることが大切であるということ

といったことを実感できたという点で、それなりの意義があったと考えているが、そんなに深く構えず、純粋に「世の中ことを、もっともっとたくさん知りたい」・・・そういう気持ちがある人であれば、きっと楽しめる本だと思う。

2012年10月2日火曜日

埼玉県秩父市へ一泊二日旅行

先日、埼玉県秩父市に家族と友達と行って来ました。以下は、その報告録です。

【旅程】
9/29 
        9:00 横浜を出発
       12:00 秩父花園 道の駅 到着
       12:30 もみの木にて昼食
       13:30 荒川のライン下り
       14:30 天然氷蔵元 阿左美冷蔵 寶登山道店
       16:00  吉田元気村
       17:00 大浴場
       18:00 ピザ作り&バーベキュー&花火
       21:00 トランプ
       22:00 就寝

         7:00 起床
         7:30 バドミントン
         8:00 朝食
         8:30 クリ拾い
       10:00 吉田元気村チェックアウト
       10:30 こんにゃく工場
       11:30 吊り橋
       12:30 パン屋にて昼食
       14:00 秩父ミューズパーク
       15:00 お菓子のアウトレット 花園フォレスト
       15:30 自宅へ向け出発
       18:30 横浜到着

今回はコテージ一泊二日 in 秩父長瀞!!

 メインはライン下りと夜のピザ作り&バーベキュー。家族4人で2万8千円の旅でした。

もみの木

ライン下り(出発直後)

ライン下り(調子に乗る息子)

ライン下り(台風が来るとはとても思えない空)

ライン下りで見た地層(何層にも重なった非常に興味深い地層)

天然氷蔵元 阿左美冷蔵 寶登山道店
(人生の中で最もおいしいかき氷だった)

天然氷蔵元 阿左美冷蔵 寶登山道店
(値段も半端ない)

吉田元気村(一泊したコテージです)

ピザづくり@吉田元気村

バーベキュー@吉田元気村

栗ひろい@吉田元気村

拾ったクリでアンパンマン@吉田元気村

おでん食べ放題200円

怪しいダムへのトンネル

吊り橋(稲川淳二も恐れる橋)

吊り橋(自殺の名所でもあるそう)

吊り橋から見る景色

吊り橋(稲川淳二も恐れる橋、穴あいてます)

吊り橋(地上は穴の下、遥か遠く)

ミューズパーク(長い滑り台;無料!)

お菓子のアウトレット(クッキーシュークリームを食べました)


書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...