2013年2月3日日曜日

日経ビジネス2013.2.4 庶民が相続税を払う日

日経ビジネス2013.2.4の特集は「庶民が相続性を払う日」。もしかしたら、将来、そのようなことを心配する日が来ることがあるのかもしれないが・・・、やっぱり、現実味がわかず、記事に目を通す気力がわかなかった。

日経ビジネス2013.2.4
一番印象に残ったのは、糸井重里氏と米ハーバード大学教授マイケル・ポーター氏の対談記事。「経営の”原点”を再考せよ」というもの。特にマイケル・ポーター氏の発言内容は含蓄に富んでいる。

  • 他社とは異なる選択をすることで差別化を図ると同時に、万人を喜ばせるのとは別の方向へ進む。戦略を簡潔に言い表せばこうなりますが、・・・
  • 事業において最も大切なことは、他社とは違う独特の方法で(顧客や社会の)ニーズを満たすことです
  • 私のアドバイスはいつも同じです。「報酬をもらえなくてもやりたいと思えることは何かを考えなさい」と
  • あなたがおっしゃった「人を喜ばせる」という思いは、資本主義の神髄です
  • 戦略を考えるうえで1つのカギとなるのは、すべての人を常に満足させるのは非常に難しいと言うことです。これは、「戦略とは『何をするか』という問題であると同時に、『何をしないか』という問題でもある」という、戦略のもう1つのカギにもつながります
  • しかし、すばらしいリーダーや企業がほかと一線を画しているのは、その選択の積み重ねがユニークで、結果的に本物の価値を生み出しているからです。
  • しかし、多くのビジネスリーダーは投資家や株主のためにしなければならないことばかりを考え、時として「会社が成功するために必要なことは何か」という大局を見失っています
ここまでメモをとりたいと思ったのは久しぶりだ。

ところで、同日に読んだ日経新聞朝刊(2013年2月3日版)の「アップル悩ます”シェア”3つという記事について触れておきたい。

この記事で、かのスティーブ・ジョブズ氏が「株主のための経営ではなく、驚きを与える製品開発に重点投資をする」というスタンスをとったいたのに対し、現CEOであるクック氏は「株主重視」に踏み切ったということが取り上げられている。クック氏はカリスマ亡き後、主要幹部や社員の努力に報い、結束力を引き続き得るため・・・そうせざるを得なかった・・・という趣旨が語られているが、見方によっては、上記、ポーター氏が指摘する大局を見失いつつあるといえなくもない。

さてさて、今後のアップル社から、いろいろな意味で目が離せない。

2013年2月2日土曜日

書評: 医者が患者をだますとき

・妊娠中の体重増加を制限すること
・ピルは妊娠より安全であると誤解して自由に服用すること
・定期健康診断を毎年受けること
・子供に予防接種を定期的に受けさせること
医者がこれらを患者に盲目的に実践させるのは”罪”以外の何ものでもない・・・とロバート・メンデルソン氏は主張する。

医者が患者をだますとき
著者: ロバート・メンデルソン (訳: 弓場 隆)
発行元: 草思社


■現代医学がいかに危険かを説いた本

著者が我々の目を覚まさんと、日頃当たり前のように接する”現代医学”が、いかに邪教であるかを説き、みんな、そこから抜けだし”新しい医学”に目を向けなければならない・・・そう訴える本である。

著者の言う”現代医学”とは、患者の病気を根治することよりも、病院ビジネスを継続させるためにいかに一定量の患者を確保し続けるか・・・この過った思想に基づく医療行為を意味し、文字通り、今日の医学のあり方そのものを指している。

たとえば、著者が”現代医学”の1つと揶揄する健康診断について、以下のように述べている。

『検査は受ければ受けるほど、しかもその検査が徹底していればしているほど体はよくなる。ほとんどの人はそう信じ込んでいる。だが、それは思い違いだ。医者の診察というものは、信頼するのではなく疑ってかかるべきである。診察には何らかの危険が伴い、一見なんでもなさそうなことでも、体にはなにかしらの害がある。これは知っておいていただきたい。診察に使われる道具は、それ自体が危険を秘めている。』

『医者は、異常が認められなくても病気を作り出すことができる。100人の子供を検査して、慎重、体重、血圧、尿、心電図を測定すれば、「異常」と見なすことができる子供が出てくる。検査で得られる平均からはみ出した数値には、必ず何人かが引っかかる。いくるも検査を重ねれば、全員がなんらかの検査で異常となってしまうのだ。その結果、それこそ害をお呼びしかねない数々の検査をフルコースで受けさせられる羽目に陥るのである。』(本書より引用)

ちなみに、著者(ロバート・メンデルソン氏)自身が医者だ。故人だが、アメリカで「民衆のための医者」と呼ばれて親しまれた有名な小児科医だったとある。しかるに見方によっては、本書はメンデルソン氏が同僚を非難する内部告発本ということもできる。

■時代と舞台が変わっても、”医療の歪み”そのものは変わらない

説得力ある本だが、かなり前・・・1990年初頭に書かれたものだ。そして、著者がアメリカ人であることから、取り上げるケースも、非難の矛先も、当然、アメリカの医療ということになる。ここで、

「今の日本に果たしてどこまで当てはまるものか?」

という疑問がわく。たとえば、著者が取り上げる事例の1つに「赤ちゃんを育てるのに”母乳でもミルクでも、どっちでもいい”なんてことを言う医者がいる」・・・というものがあるが、こんなことを言う医者はいまの日本にはいないのではないだろうか。頭をかしげながら読んだ。

ただし、これについては”訳者あとがき”に1つのヒントがある。実際に日本の医療にたずさわる医師によれば、本書でとりあげる事例の多くが(”母乳とミルク”の例は当てはまらないかもしれないが)、まだまだ日本にも当てはまるというのである。

また、そもそも”何が具体的に間違った治療か?”を網羅的に指摘することよりも、”医療の本質そのものが歪んでおり、それが間違った治療を生み出す温床になっている”という点を明らかにしていることに本書の意義があるのだと思う。

「病気は、体があげてる悲鳴(シグナル)だが、医療では、この悲鳴(シグナル)を上げた原因を取り除くのではなく、悲鳴(シグナル)そのものを取り除いてしまうという誤った行為が多い」・・・確か、最近何かと話題になっている南雲吉則先生がその著書「50歳を超えても30代に見える生き方」の中で、そう語っていたように思う。これは、メンデルソン氏が、はるか20年前に指摘していた内容だ。いまの時代のこの日本において、本書の意義がまだまだ衰えていないことの証明にほかならない。

■目覚めさせよう、医療に対する自己責任

本書を読んで、今の医療の何が正され、何が間違ったままか、とか、今の医療の間違い探しをしよう・・・ということではない。

「医者は倫理的にも技術的にも秀でた人間。言うことやることのほとんど全てが正しい。具合が悪くなったら、とにかく病院にかかって検査をしてもらう、薬をだしてもらう、手術をしてもらう・・・そうすることが治療への一番の近道・・・」

このように何でもかんでも盲目的に信じるのは危険だ。損をする(している)のは結局、自分なのだ。賢く生きよう。本書は、それを気づかせてくれる本だ。


書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...