2011年8月29日月曜日

映画: カーズ2

カーズ2(3D吹き替え版)を息子と観てきた。

おさらいをしておくと、初回作(カーズ)の舞台はアメリカ。自分の才能を鼻にかけ、やや傲慢だった主人公マックイーンは、ひょんなことから、ある街に迷い込み、そこで人のやさしさや暖かみに触れて、変わってゆく・・・。マイケル・J・フォックスのドック・ハリウッドの自動車版・アニメ版・・・といった作品だったが、登場人物が車であること、アニメであること、そしてそれを演出したのがピクサーであること・・・この3つの要素は、完全に子供達をとりこにした。

そして続編・・・今回の作品(カーズ2)へ。カーズ2の舞台は世界。これまた、ひょんなことから、世界中の車と戦って優勝を目指すことになるのだが、なんと最初の舞台は日本。そして「どっちが主人公だ!?」と思ってしまうくらい、ちゃめっけタップリのメーターも同行し、ストーリー展開にもはや欠かせない存在感となっている。

これでもか、これでもか、というカーアクションの連続・・・(そもそも登場人物が全て車なので、当たり前っちゃー、当たり前の話だが・・・)。113分もの間、子供がじっと座り続けて何かに集中するなぞ至難の業だと思うのだが、それを可能にしたのは、こうしたアクションシーンが盛りだくさんだからだろう。映画のテーマが何か・・・ということも、はっきり(”友情”)としていたし、映像は綺麗だし、3D盛りだくさんだし、日本が登場していたし、観るべきでない理由を挙げるのが難しいくらい。

ちなみに対象年齢は小学校中学年から上といった感じだろうか。もちろん、それより小さい子供も楽しめる(実際にわたしの息子は6歳だ)が、作品に出てくる、わさびを使ったギャグや、カプセルホテル、ゴミゴミ感たっぷりの道路など、日本文化を理解しているほうが、より楽しめる内容となっている。

最後に辛口コメントを出すとすれば、この作品・・・間違いなく子供ウケはいいのだろうが(実際息子は興奮していたので)、全編とおしてのあまりの落ち着きのなさに、多少(ほんのちょっとだけ)、居心地が悪く感じる人もいるかもしれない。

ただ、そんな点を差し引いても、観て損はない映画だ。DVDが出たら間違いなく手に入れる、ということは断言できる。

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2011年8月28日日曜日

謎の裸族

甲子園も終わり、2011年の夏もいよいよ終わろうとしている(まだ暑いけど...)。

昨晩、お風呂に入り、さて出ようかと浴室の扉越しに外を見ると、










「!!!!!!うげぇーーーーっ!!!!!!」










謎の裸族



年甲斐もなく、びっくり仰天。謎の裸族が2人、こっちを覗いているではないか。

残暑に、ちょっぴりと冷やっとした出来事でした・・・。

書評:学校では教えてくれない日本史の授業

みなさんは、学校で習った歴史をまだ覚えているだろうか?

自慢じゃないが、わたしの場合は、かろうじて受験時代に語呂合わせで覚えた年号(例:1333(一味散々)、室町幕府滅ぼされ・・・)が頭の片隅に残っているだけだ。

勘違いしないでいただきたいのだが、わたしは決して歴史が嫌いではない。むしろ好きだ。歴史小説も読むし、古い建物を見ては昔に想いを馳せる。もういちど読む山川日本史を買って読んだこともある。

しかし・・・しかし、である。記憶に残らないのである。

そして「おっ、面白そう。この本なら、きっと・・・」と思って買ったのがこの本だ。

タイトル: 学校では教えてくれない日本史の授業
著者: 井沢元彦 出版社: PHP研究所
発行年月日: 2011年2月7日 (1,700円)

■実は歴史にはおざなりに説明されてきたことが多い

この本は、文字通り”学校では教えてくれなかった日本史”について、斬新で明瞭簡潔な論拠を持って、解説してくれている。”学校では教えてくれなかった日本史”と言っても、誰も知らないマイナーな知識、という意味ではない。歴史上、有名なイベント(例:聖徳太子の十七条憲法や、源平の戦い、大政奉還など)について、なぜそれが起きたのか、実は意外にいい加減に説明されてきた事柄について、突っ込んだ説明をしてくれている。

1つだけ例を挙げよう。大和朝廷と邪馬台国。どちらが日本を統一したのか、どこにあったのか、近畿か九州か・・・など、学者の間で色々な論争があることで有名だ。著者は、”邪馬台国”は中国の文献に記述されていたものなのだから、日本読みでヤマタイコクと読むべきではなく、当時の中国語の発音で読んでみるべきでは?と提案する。著者が調べたところ、当時の中国語で発音すると”邪馬台国”は「ヤマド」という音になることが分かったそうだ。そう、つまり「邪馬台国」は単なる中国語読みでの大和朝廷、というわけだ。この2つは違うとか違わないとか、そういった議論はナンセンスだと著者はバッサリ切り捨てる。

著者曰く、似た様な理由で、説明のつく歴史上の事象が数多くあるのだそうだ。

「源氏の敵とも言える藤原氏へ嫁いだ紫式部はなぜ源氏を讃える源氏物語を書いたのか」
「聖武天皇は、数年の間に何故何回も遷都を繰り返し、結局同じ平城京に戻ってきたのか」
「なぜ百人一首にも選ばれていない人が六歌仙として選ばれているのか」

上に挙げたのはこの本で取り扱っているテーマの一部にしか過ぎないが、いずれにせよ数多くの矛盾・疑問について答えている。

■全てを鵜呑みにはできないが、ハナから無視すべき主張でもない

「大勢の歴史学者が何十年もかけて研究してきたものを、1人の著者に簡単に解決されてたまるか」
「きっとほとんど都市伝説に近いレベルの話ばかりに違いない」

そう思う人もいるだろう。わたし最初はそう思った。「著者の言うことを全て信じていいのか」と言えば、わたしは「ノー」だと思う。それはそうだろう。所詮、タイムマシンでも無い限り、この世の誰も証明できない過去の事象を説明しようとしているのだから。

ただ、先ほど挙げた大和朝廷と邪馬台国の例からも分かるとおり、著者の主張はハナから聞く価値のないものとは言えないだろう。一理も二理もあるような主張も数多くあり、わたしは愉しんで読めた。

■点と点にしか過ぎなかった歴史を太い線でつなげてくれた本

さて、この本を読み終えて数日後、試しに、覚えていることを書き出してみた。すると、出てくるわ、出てくるわ・・・頭の中から。そこには、本で読んだことをほぼ全て覚えている自分がいた。

今まで私の記憶に残らなかったものが鮮明に残る。

点と点にしか過ぎなかったものが、しっかりと太い線で結ばれた証ではないかと思う。そしてそれは間違いなくこの本のお陰だ。また折を見て、読んでみたい。いや、できれば続編が読みたい。心からそう思っている。


【面白い切り口で歴史を紐解くという観点での類書】
 ・学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編(井沢元彦著)
 ・学校では教えてくれない日本史の授業3 悪人英雄論(井沢元彦著)
 ・地図から読む歴史(足利健亮著)
 ・戦国の軍隊(西股総生著)

2011年8月27日土曜日

都内スーパーにある食品の放射線量

最近、見識を広めようと、あまり読んだことないメディアにも努めて手をだそうとしている。

というわけで今回は、週刊文春。実は、人生初めて(^^;)である。しかし残念ながら、買って良かったと思える記事は少なかった。週刊雑誌なんて、まぁ、こんなものか。


そんな中にあって、特に気になったものは”都内スーパーの食品の放射線量について独自に徹底的に検査してみた”、という記事だ。

1台100万円もする機械を用意して、お茶、しょうが、イワシ、お肉、キャベツなど、様々な食品の放射線量を調査した結果を載せている。記事の信頼性を高めるためだろう。これら全ての食料品を、さらに第三者機関に依頼してダブル検査している。

放射線量を調査した結果(一覧表)
そこに掲載されていた表を、興味深く見たことは言うまでもない。

結果、「まぁ、さすがに出るものは出るなぁー」という感じだ。メディアで報じられているように静岡県のお茶は、わりと高い数値を出したようだ。

記事は「最初の茶葉から異常な数値」というサブタイトルをつけているが、我々はこの数字をどう捉えるか冷静に判断する必要がある。

「ゼロじゃないんだな。これは危険だ」と思う人
「全て安全基準値を下回っている。検査は機能しているな。」と思う人

捉えた方によって、数字は全く異なって写る。間違いなく言えるのは、ある程度自分たちの身は自分たちで身を守れるよう情報・リスクリテラシーをあげていく必要性があるということだろう。記事を見て、そう感じた。

【関連リンク】
週刊文春(公式HP)

本の読み方

超久しぶりに雑誌プレジデントを斜め読みした(ちなみにプレジデントは文字が細かいし文書量が多いし、どちらかと言えば図解が好きな私はどうしても敬遠しがちなのだ)。テーマは「一億稼ぐ人の勉強法」


その中に、年代ごとに活躍している人を一人ずつ選び出し、その人が普段からどういった活動を心がけているか紹介している記事があった。

38歳の私が注目したのはもちろん、36歳から45歳の世代代表者。サイバーエージェントの取締役人事本部長、曽山哲人という人がこの年代を代表してコメントを残している。

おもしろいなと思ったのは、読書について彼が実践していることだ。

『・・・(略)・・・1つは最初から全部を読まないこと。全体をざっと斜め読みし、おもしろそうな箇所があったらそのまま読み込み、場合によっては線を引く・・・(中略)・・・二つ目は読んだ本の感想をブログに書くこと。文字にすることで内容を血肉化できる。最後は本に書かれている内容を一つだけまねすること。・・・(略)』

ふむふむ、考えることはみんな一緒なのだなーと、読みながらニヤリと笑ってしまった。

思えば、私がこのブログに書籍の感想文を書き綴るのも、同じ理由からだ。以前は読んでも読んでも、読んだ本のことをすぐに忘れてしまっていた。このことが不思議でたまらなかったし、単に記憶力が悪いだけなのかとストレスにもなった。

色々と考えた末にたどり着いた結論は、自分はそれまで読んだことをきちんとプロセス・・・すなわち咀嚼(そしゃく)していなかったということ。そもそもプロセスとは、インプットからアウトプットを出す作業のことを指す。そう、アウトプットを出さずして、インプットが活きるすべはないのだ。

そう気づいて以来、積極的にアウトプットを出すようになった。そうしてやってきたわたしの活動が、同年代で成功している人に肯定されたような気がして、何気に嬉しかった。

【関連リンク】
プレジデント(公式HP)

2011年8月25日木曜日

あまりにも綺麗で・・・

今朝は4時45分にジョギングを開始。すぐに止むかなと思っていた雨は、進めども進めども、全く止む気配がなかった。幸いだったのは、長距離を走っても全身グッショリ濡れるというほどのひどい天気ではなかったということか。

そんな中、あまりにも朝焼けが綺麗で何度も足を止めてパシャリ。やたらと時間のかかるジョギングになってしまった。






2011年8月22日月曜日

万が一に備えてセンサーライトを買ってみた

みなさん災害対策はバッチリだろうか!? 東日本大震災からの学びは十分に活かせてるだろうか!? 

実は、”学び”を活かす方法には2種類ある。1つは是正処置、もう1つは予防処置だ。

是正処置とは、起きてしまった事象を二度起こさないためにするための、再発防止策だ。たとえば、「震災の影響で断水が発生しトイレが使えなくて困った」という経験をしたのであれば、予め簡易トイレを買っておく・・・といった対応のことだ。

予防処置は、言わばその発展版。今回の震災で自分の身には被害が起きなかったけれど、隣町で「停電して困った」という話を聞いて、自分の身に置き換えて何か対策を打っておく、といったことを指す。さきほどの事例で言えば「断水→トイレが使えなくて困る」といった教訓を飛躍させ、「今回の震災では、断水が1日でおさまったから良いけど、1週間続いても大丈夫だろうか? これが夏だったら、お風呂に入れなくて困らないだろうか?」といった考え方などもこれに該当する。

■今回、私は1つの予防処置をとることにした

3月11日に東日本大震災を経験したせいもあるが、先日、たまたまアマンダ・リプリー氏の「生き残る判断、生き残れない行動」という本を読んで、火災が発生した際の煙がいかに危険かということを改めて学んだことがきっかけだ。もちろん煙そのものを吸ってしまうことも大きな脅威だが、加えて、「視界が煙で全くふさがれてしまい、逃げ道が分からなくなりパニックになることが少なくない」という話を読んで、それは確かにそうかもしれない、と思ったのだ。

たとえば、自宅で夜中に火事が起きて配電盤を焼き焦がし、停電が発生したとする。電気はつかず、部屋は真っ暗。煙は充満しはじめる。視界がゼロになることは容易に想像できる。火事では一分一秒が大事なので、避難が遅れることは命取りになる。商業施設なら避難経路が明示されていようが、自宅なら意外に困るのでは・・・そんな不安が頭をよぎった。

というわけで、何か解決策はないかなと良いグッズを探していたのだが、日経新聞の生活欄でいいモノを見つけた。株式会社ファインが製造・販売している”ファイン LEDコンパクトセンサーライトスリム FIN-338W”という商品だ。この商品が優れていると思うのは、
  • コンパクトである
  • 電池式である
  • 人感&光センサーがついている
  • LEDである

といった点だ。人感センサーにより、人の動きを探知して勝手にライトがつくが、まわりが明るければつかない。早速、3つ買って、自宅につけてある。今のところ、なかなか、良い感じだ。

【関連リンク】
株式会社ファイン(公式ホームページ)
「生き残る判断、生き残れない行動」(書評)

===(2011年8月30日追記)===
■使い始めて2週間経っての感想
期待値を100点とすると、60点くらいか。センサーの感度がいいのか悪いのか・・・微妙な思いをするときがあるからだ。感度を調整するスイッチがあるとベターだ。まぁ、何かあったとき、人が側を通ったときに間違いなくついてくれさえすれば、それで要件のほとんどは満たしていると言えるのだが。



2011年8月21日日曜日

LCCの淘汰が始まる

2011年8月22日号の日経ビジネスのテーマは「流通進化論」。地元、自国から、外へ・・・言わば”越境”して、他地域の市場へ打って出る必要性や難しさについて言及している。
日経ビジネス8月22日号
今号で興味深く読めたのは、ジェフリー・スマイゼック氏(ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス社社長兼CEO)に対する編集長インタビューの記事。その中でLCC(格安航空会社)について触れている。

LCCというと、今や航空市場を席巻し、大手キャリアを圧倒している感がある。日本でもつい先日、全日空(ANA)がマレーシアのエアアジアと手を組んで、エアアジア・ジャパンを設立するという発表をしたばかりだ。日本を代表するLCC、スカイマークの業績も好調のようだ。財務諸表を覗いてみると2011年3月期で、当期純利益は63億円(前年度比3倍弱)とある。わぁお。

ところがスマイゼック氏は、いずれLCCの淘汰が始まるだろうと述べている。アメリカでは、市場は成熟しきっており競争の激化が進んでいるから、同じ事がいずれアジアでも起きるだろう・・・というのだ。

LCC・・・大手キャリア・・・どちらにしても、市場が一層の厳しさを増すことだけは間違いない。

関連リンク:
LCC、エアアジア・ジャパン設立(日経ビジネス2011年8月1日号)
スカイマーク社長の告白「不透明な運賃をぶち壊す」(日経ビジネス2011年5月9日号)
日経ビジネスオンライン

2011年8月20日土曜日

書評: 「失敗の本質」

人は”失敗”にこそ、学ぶことが一番多い。私は自身の経験からも「失敗を失敗のまま放っておくのは、なんてもったいないことなんだ」と常々、思っている。

そんな背景もあり、日経ビジネス6月20日号に紹介されていた書評を読んだとき、その誘惑には抗えなかった。

本が対象とする時代は第二次世界大戦。「物量面で圧倒的に劣っていた日本にとって、最初から負け戦だった」と言われている戦争だが「それにしたって、もう少しベターな戦いができたはずではないのか?」という声も少なからずあった。こうした疑問を持った専門家の方達が協力して「ミッドウェー海戦など大戦のポイントとなる戦いで、日本がなぜ負けたのか」ということを、科学的・・・組織論的・戦略論的な観点から分析を行い考察した本である。

なお、この本が分析の対象としている戦いは以下の通りだ
  • ノモンハン事件(1939年5月)
  • ミッドウェー海戦(1942年6月)
  • ガダルカナル作戦(1942年8月)
  • インパール作戦(1944年3月)
  • 沖縄戦(1945年3月)
戦いごとに、史実の説明、分析、考察という形でまとめられている。おかげで、歴史に詳しくないわたしでも、全体を興味を持って読むことができた。

■浮き彫りにされる敗戦の本質

学校の授業を軽く聞き流していたせいかもしれないが、この本を読むまで、わたしは「やっぱり、負けた理由は物量につきる」と思い込んでいた。

しかしながら、この本が暴いている、各戦いの裏にある日本側の杜撰な動きには、驚かされる。「えっ!? それはないんじゃないの!?」という日本側の戦略・・・いや、当時、存在していたものは、現代ではとても戦略と呼べるシロモノではないのかもしれない。

戦略目的の曖昧さをはじめ、中途半端な人情論に基づく意志決定、コンティンジェンシープラン(バックアッププラン)の不備等・・・仮に同じ分量の物資を調達できる能力が日本にあったとしても、これは「当然に負けていたのでは?」と思えるほど多くの事実を浮き彫りにしてくれている。

■今の日本に未だまとわりつく、65年以上前の失敗

この本が面白いなと思った理由の1つに、こうした客観的な分析・考察を踏まえた上で、現代の日本について鋭い洞察力を残している点にある。

たとえば本の後半のまとめに次のような”くだり”がある。

『経済大国に成長してきた今日、日本がこれまでのような無原則性でこれからの国際環境を乗り切れる保証はなく、近年とみに国家としての戦略性を持つことが要請されるようになってきていると思われる』

「これまでの日本は明確な戦略がなくとも、なんとか精神力・現場力でやってこれたかもしれないが、これからはそんな甘くはないはずだよ」と言っているのである。

驚くべきは、著者達の洞察力というべきか、日本の学習力の低さというべきか。この指摘から20年が経過する今にいたっても(※この本は1991年に発行されたものだ)、この部分は解決されていない、といってもいいだろう。

余談だが、この点についてハーバードビジネスレビュー2011年4月号で読んだ”Capitalism for the Long Term(長期的視野の資本主義)”の記事が思い起こされる。記事中、「韓国のミョンバク大統領が、マッキンゼー社に向こう60年の韓国の展望についてアイデアを出してくれてと依頼してきた」という事例が紹介されていた。「失敗の本質」が予言しているように、今や世界はそういう時代なのだ。

■今の自分が抱える課題にもヒントをもたらす価値ある本

先に国家レベルの戦略が不在である・・・という例を取りあげたが、(良し悪しは別として)実は、この本を読み進めていくと、他にも戦中の日本と今の日本と本質的に変わっていない部分があると感じることがあった。

もちろん、人によってこのあたりの受け止め方は異なると思う。たとえば私は、リスクマネジメントコンサルタントという(企業の危機対応の在り方を指導する)立場だが、”組織の硬直性”など、今の日本企業が危機発生対応において抱えている多くの課題との共通点を見いだした。これは面白い発見である。

今より20年も前の1991年8月10日に発行されたものであるにも関わらず、内容が色褪せた感じがしない。しかも、2011年6月現在で43刷目だ。色々と自分の考えを上に述べてきたが、つまるところ、この発行部数の事実が何よりも、この本の価値の高さを証明しているように思う。




関連リンク:
・HBR”Capitalism for the Long Term(長期的視野の資本主義)”
NHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」

===(2011年8月23日追記)===
井沢元彦著「日本史の授業」を読んで、興味深い記述を見つけた。伊沢氏によれば古来より、”言霊(ことだま)”という考えが日本を支配していた、と指摘している。わたしたちが日頃良く耳にする「縁起でもないことを言うと現実になるから、慎みなさい」という発言の背景にはこの”言霊”への畏怖があるのだと言う。「失敗の本質」の中で「この戦は負ける。日本は負ける。負けるから、やめた方がいい。」などとは口が裂けても言えなかったと、大戦当時の組織の中で客観的かつ率直な意見をうかつに口にできなかった場面が頻繁に描かれているが、井沢氏によれば、それこそが”言霊”の影響であり、大昔も当時も今も日本を支配する考え方なのだと言う。

2011年8月19日金曜日

個人情報漏洩、とどまるところを知らず

とどまるところを知らない・・・とはまさにこのことだ。

2011年8月12日、外資系アフラック(アメリカンファミリー生命保険)が、販売代理店経由で1万2902件の個人情報が名簿販売業者に売却された可能性が高いとの発表を行った。

実は、(私が記憶しているだけでも)アフラックでは同様の事件を過去に3回ほど起こしている。

2011年8月12日:代理店経由で1万3千件が名簿業者に販売される(今回)
2010年10月22日:代理店が顧客情報3万件を記録したCD-Rを紛失
2007年7月27日:代理店社員が顧客情報15万2758人分の個人情報の入ったパソコンを盗まれる
2005年10月7日:宮崎県の販売代理店のパソコンからファイル交換ソフト(ウィニー)経由で564人分の情報を流出

■アフラックだけでなく保険業界全体の問題

「うわっ、なにやってんだ!?全然、学習してないじゃん」と思う人もいるだろう。

が、ポイントはいずれの事故も販売代理店経由、というところにある。それこそ販売代理店業者は全国に無数にあり、本社のコントロールは実質的に及びにくい、と言わざるを得ない。まして通常、代理店業者はアフラックだけの商品を扱うのではなく、他社の商品を同時に扱っていることが多い。と、なると、流出事故は発表の多いアフラック特有の問題・・・ということではなく、保険業界全体の問題と言えなくもない。誤解を恐れずに言えば、アフラックはむしろそうした事故を積極的に包み隠さず発表しようという姿勢が強い、ある意味、”良い会社”なのかもしれない。

■個人情報の価値って本当のところどうなのか?

しかし、先日ソニーが起こした1億件の個人情報漏洩事故といい、これだけ事故が日常茶飯事に起きると、言わば誰でも容易に個人情報を手に入れることができるわけで、個人情報の価値は全体的に薄まってきているのでは無かろうか。もちろん、ひとえに個人情報といっても、名前や電話番号だけという場合と、クレジットカードや契約情報など、種類によって影響は全然異なるので一概に、「個人情報に価値はない」と言い切るのは危険だとは思うが・・・。

■事故発生時の対応策に力を入れた方が現実的

いずれにせよ、間違いなく言えることは、交通事故をゼロにできないのと同じで、今後もこうした事故をゼロにする、というのはほぼ不可能なのだろう。むしろ、銀行が行う貸し倒れ引当金の計上同様、漏洩事故は必ず起きるという前提で、企業は漏洩時の費用計上をしておくことが望ましいのだろう。そして事故が起きたときに「いかにすみやかに利害県警者に報告を行い、誠心誠意対応を行うか」・・・未然に防ぐための予防策よりも、事故発生時の対応策の整備により一層の力を入れた方が現実的なのかもしれない。

今回の事故に関するアフラックの発表文
(お詫びの文言が一言も入っていないのが興味深い)

関連リンク

2011年8月18日木曜日

今、時の人

VOICE9月号はの特集は「電力危機の戦犯は誰だ」。海江田万里氏が記事を寄せている。


ところで、この号を買って良かったと思うことが4つあった。

1つ目は、私がここ1年間ほどずっと注目しているラジオ・パーソナリティの小島慶子さんが巻頭に取りあげられていたこと。2つ目は、久々にスパイスの効いた上杉隆氏の記事を読めたこと(なんと今年いっぱいでジャーナリスト活動を休止させるらしい!)。3つ目は、加藤嘉一(かとうよしかず)氏の存在を知ることができたこと。4つ目は、堤晴彦氏の存在を知ることができたことだ。

中でも、全く知らなかったのが加藤嘉一氏。今、中国と日本の間で”時の人”らしい。高校卒業後、単身で北京大学に留学し、現地で反日デモに参加。そのときコメントを求められたことがきっかけで「中国でもっとも有名な日本人」と称されるようになった。日本びいきもしないし、中国びいきもしない、客観的に両国を評価できる数少ない人物の1人だろう。彼のような存在は貴重だ。なんと胡錦濤国家主席は、彼が書くフィナンシャル・タイムズ中国版の記事に必ず目を通しているそうだ。それくらいの注目人物である、ということだ。

我々日本人はまだまだ中国を知らなすぎる・・・つと思わされる。

印象的だったのは中国人の向学心の強さ。中国人は勉強熱心だ、とよく言われるが、この記事を読むとその感じが真に熱を帯びて伝わってくる。

「留学中は、中国人のクラスメート達からの見えないプレッシャーに大いに苦しみ、焦りすら感じていましたね。たとえば北京大学では、毎朝6時頃になると、寮に住む学生達がいっせいにキャンパスにでて、海外の専門書を音読するんです。そうやって、講義が始まるまでの数時間を読書に費やす。また夜は夜で、外に出て電灯の下で本を読んでいる。氷点下十度を下回る真冬の朝でもそうで、私も中国の学生に負けじと読書に励んだものです。」

自分の努力なんてたいしたことないと、身につまされる。土俵がますます国内からグローバルへシフトしていく中で、まだまだ、のほほんとしすぎているのかもしれない。

記事では、日本人の中国文化に対する理解の足りなさも指摘してくれている。まだまだ我々は井の中の蛙。隣国のことですら、知らないことが多すぎる。

加藤嘉一氏・・・今年一番注目したい人物の1人だ。

いいね、頑張って欲しい。

絡まないコードの巻き方

最近、知って得したなぁ~と思うことがある。

イヤフォンコードの巻き方だ。朝のジョギング中や通勤・帰宅時など、イヤフォンにお世話になるのだが、使っていないときのしまい方に意外に困る。十分に注意していても、気がつけばコードが複雑に絡みあっている・・・ということが少なくない。おまけに、絡む・解く、を繰り返しているうちにコードが劣化し、壊れてしまうこともある。

先日(といっても数ヶ月前だが)、勝間和代さんが「絡まないコードの巻き方を発見した」とツイッターでつぶやいていた。おそらく多くの人が既に知っている内容だろうが、わたしは初耳だった。

実際にその通りに実践して、はや3ヶ月以上が経つ。すごく便利で、これまでに抱えていた悩みが一気に解決した。絡んだコードを解くという無駄な時間もなくなった。

同じ悩みを持っている方は、ぜひ参考にしていただきたい。


2011年8月16日火曜日

一石十鳥

■過去のブログを見返して、大事なことに気がついた

どうやら私がジョギングを本格的に始めたのは昨年の6月頃だったようで(2010年6月29日のブログ「睡眠不足と健康について」でジョギングについて触れている)、ジョギングを始めてから、正確には1年と2ヶ月弱が経過したことになる。この間、2~3週間の海外出張が入ったり、一月の中で5~6回の徹夜をしなければいけないときがあったりと、山あり谷ありの生活だったが、何とか乗り切ってこれた。特に冬にロシア出張が入ったときは、どうやってジョギングを続けようか、と悩んだものだ(ホテルにジムはなかったし・・・)。ちなみに、このときは雪が降る真冬のロシアの道路沿いをジョギングした。

■継続できたのは、何よりも効果を実感できたから

ここまで続けてこれたのは、なぜだろう? 理由は2つある。1つは、夜ではなく”朝”に走ることにしたということ。もう1つは、明確に効果を実感できたということだ。
元々、早起きは得意分野で会社を設立してからというもの、朝4時、4時半起きは当たり前だった。ただし、昨年の6月頃までは起きたら即会社へ出勤・・・という毎日。せっかく早起きをルーチン化できているのだから、その朝の時間の30分~1時間ほどをちょっとした運動に振り向けても損はないはず、いや、無理はないはず、という思いから、朝にジョギングを始めたのだ。これが功を奏したのだと思う。夜に走ることにしていたら、会社から疲れて帰ってきてその気にならないことが多かっただろう。
くわえて、継続的に運動を続けるようになって気がついたのは、その効果の大きさだ。運動をせずに一週間ほど過ごしただけで体の節々が痛くなったり、肩が凝りがひどくなった。結果、かえって仕事に対する集中力が明らかに落ちたわけだが、ジョギングなど運動を再開するとみるみるうちに解決した。

■一石十鳥

朝ジョギングをすることは、他にもメリットがある。朝のうちに課題の1つをクリアすることで「あぁ、少なくとも今日やるべきことのうち一つは、早くもやり終えた」という気持ちになれる。これが精神的な余裕をもたらしてくれるのである。また、運動が苦じゃなくなり、週末には自分の体が自然と、子供達との運動を求めるようになる。さらに、変に食事の量を意識せずとも体重も維持できる。

わたしにとって見れば、一石二鳥どころか、一石十鳥くらいの効果があったと言っても過言ではない。

いや~、一年続けることができて万歳! 

来年も同じ事が言えているように無理のないペースで継続させたいものだ、と心底思っている。

RunKeeper というジョギングデータ管理ソフト

2011年8月14日日曜日

書評: やめないよ

「あの人は、なぜ、そんなんに頑張れるんだろう?」

みなさんは、そう思ったことがないだろうか?

わたしは、もちろん、ある。高橋尚子選手しかり、室伏広治選手しかり、野茂英雄投手しかり。そして、今回、読んだ本の著者、三浦知良選手しかり・・・。

タイトル: 「やめないよ」
著者: 三浦知良  発行元: 新潮新書
発行年: 2011年1月20日 (740円)

三浦知良選手は、1967年生まれ。選手としての平均寿命が30歳前後と言われるサッカー界において、43歳になる今もなお活躍しているが、辞めるなんてこと気はこれっぽっちも無いようだ。

「僕の中では、どこでどんなふうに引退しよう、ていう設計図はまったくない。・・・(中略)・・・そんなことも考えずに、ただ今日も一生懸命やる、明日も一生懸命やる、それだけなのだ。」

■30歳、そして40歳からの適応力

この本はカズが「サッカー人として」というタイトルで、日本経済新聞に隔週で連載したコラムを一冊にまとめたものだ。38歳から43歳にかけて現役選手としてサッカーをプレーする中で、彼が感じたことを書き綴ったものだ。

【目次】
第1章 勝ちたい力 2006
第2章 不惑の力 2007
第3章 続ける力 2008
第4章 戦い抜く力 2009
第5章 明日を生きる力 2010

まっすぐな本だな、というのが第一印象。斜に構えて綺麗にまとめようとせず、自分の考えや思ったことを素直に語っている。くわえて、(自身も”あとがき”の中で認めているが)このコラムを書き綴った5年間の中で、カズの環境的・肉体的・精神的な移り変わりが、読者にはっきりと伝わってくる。

先日、羽生善治名人の「40歳からの適応力」という本を読んだが、このタイトルは実は、このカズの本にこそ相応しいタイトルなのではなかろうか。

「今までの節目を振り返ると、30歳のころにサッカー選手として一番焦りがあった。体が動かない、衰えてきたということを急に感じたから。どう対処すればいいかもわからなかった・・・(中略)・・・つけすぎた筋肉をそぎ落として、量より質を意識した練習に切り替えていく中で、32歳のころにようやく楽になった・・・(中略)・・・今はそのときのような急速な衰えは感じない。もちろん見えない部分では少しずつ力が落ちているはず。それを食い止めようと日々努力している。たとえ若々しくはなくても、生き生きとした選手でいたい。」

30歳半ばから上の人が、この本を読むのが一番、面白く読めるのでは、と思う。

■モチベーションの源泉は、いかに愉しめるか

「カズ選手は、なぜそんなに頑張れるのか?」

カズは本の中で、この点について明瞭完結に答えている。「サッカーを愉しんでいることに尽きるのだと思う」と。

ふと、ここで堀紘一氏(戦略コンサルタント)の言葉を思い出す。堀氏は、”精神的・肉体的なハードさ”から、誰もが例外なく6~7年で第一線から退いていく中にあって65歳を越える今に至ってもなお現役コンサルタントとして活躍している人だ。そんな彼が仕事を続けていられる理由について、著書「コンサルティングとは何か?」で、「この仕事が心から大好きだから続けられるのだ」と語っていた。

ただし、カズの本からは、頑張れるのは、単に受け身としての「サッカーが愉しいから!」ということだけではなく、「サッカーを愉しもうとしているから!」という前向きな理由も伝わってくる。本の帯には、こう書いてある。

「上を向いている限り、絶対にいいことがあるんだ」

言わば究極のポジティブシンカー、三浦知良の考えが一杯詰まった本だ。




関連リンク:
BOA SORTE KAZU! (三浦知良オフィシャルサイト)
40歳からの適応力(羽生善治)
40歳からの教科書(モーニング編集部&朝日新聞社)

2011年8月10日水曜日

防犯グッズ: 電源タイマー

最近、防災・防犯グッズに凝っている。

というわけで購入したアイテム第一弾がこれ(REVEX AUTOMATIC TIMER AT120)だ。


これは電源のオン・オフを分単位でコントロールできる非常にシンプルなタイマーだ。正直、見かけはダサい。いや、胡散臭くすら見える。値段の安さがそれに一層輪をかける。私が支払った額は800円弱。

しかし、実は見栄えも昨日も私が海外に住んでいた頃お世話になっていた装置と全くソックリなのだ。

シンプル・イズ・ベスト。この言葉をそのまま証明するアイテムだ。

毎日、シッカリとお世話になってます。満足度100%。

2011年8月9日火曜日

いざ、ごきぶり退治へ

ゴキブリワイン事件はわたしの心の中に大きな傷跡を残した

自分自身でも信じられないほどにトラウマになった。ショックだったのは2階の部屋のワイングラスにピンポイントでゴキブリが入っていた、という事実だ。2階に来るまでには、台所も、ダイニングもある。それを飛び越えて、私の部屋に来た・・・なんというゴキブリの嗅覚か。ちなみに、7月初めに新しい家に引っ越してきてから、ゴキブリに遭遇したのは全部で3回だが、全部私が接客させていただいた(正確には”叩きつぶした”だけだが)。

千聞は一見にしかず

「ゴキブリが来たらいけないから、食べ残しや飲み残しは全部処理してから寝て」と、過去に何十回、何百回も言われてきたが、それよりも今回のこのたった一回の事件のインパクトの大きさ・・・である。

この日以来、私の行動は一変した

みなさまからは「それは当たり前のこと。いままでやっていなかったことが信じられない」とお叱りを受けるかもしれないが、この日以来、食べ残しや飲み残しは即座に処理。どんなものでも必ず綺麗に水で丁寧に洗ってからゴミ箱へ処理。子供達が食べた後、テーブルの下には食べカスが落ちていることが多いが、率先して、即座に掃除機をかけて全て除去。

お菓子やジュースが机の上に置きっぱなしになっていたら、即座に、厳重にラップをして冷蔵庫へ。台所やお風呂場の水気をとにかく可能な限り排除。

これでも安心できない、”ホウ酸団子”を買いに走った



買いに買いまくった。家の隅々に”ホウ酸団子”を配備。”攻撃は最大の防御なり”・・・、近くの竹林にホウ酸団子をばらまこうかとも思ったくらいだ。

さて、どう出る・・・ゴキブリくん。

この計画を遂行して、はや2週間が経過。今のところ、ゴキブリは見かけていない。

来るなら来いヤッ!・・・いや、できれば来ないで欲しい・・・。

関連リンク
ダニ対策・退治・駆除するブログ(たまたまネットで見つけた有益なブログ)

2011年8月8日月曜日

今の世界は”モノポリーゲーム”と同じ

日経ビジネス2011年8月8日・15に号を読んだ。今回の特集は”突入、「資源力」時代”


レアメタル、液化天然ガス(LNG)、天然ガスハイドレート(NGH)、日経ビジネス5月2日号でもとりあげられていたシェールガスなど、世界をとりまく有力資源について語っている。

しかし何よりも印象的だったのは、こうした特集記事よりも、実は雑誌1ページ目にあった「編集長の視点」。日本の今の状態を山川龍雄編集長は「モノポリーゲーム」に例えた。

「決め手となる交渉のカードを持てずに、ボード上を周回しながら、高騰していく賃借料を支払い続けている状況でしょうか」

この状態はモノポリーゲームなら絶対的な敗者を意味する。日本が生き残る道は残されていないのか?

そんなことはない、とわたしは思う。ゲームではルールを変えられないが、現実の世界ではルールを変えることができる。そして日本人のはその力がある。そう信じている。

2011年8月7日日曜日

苦悩する日本

アップル社の株価の推移(過去3年間)
アップルやGoogleが儲かっている。アップルの企業価値は約27兆円! 「さぞかし、アメリカの富みに貢献しているな」と思いきや、必ずしもそうではないゾ、とは今日の日経新聞国際面「苦悩するアメリカ」

アップルのビジネスモデルを良く考えてみれば、確かにそうかもしれない。ネットワーク機器の製造販売で有名なシスコ同様で、アップル社は戦略立案や設計、ソフト開発以外は、そのほとんどを他社に委託している。”創造力・企画力”の部分でお金を儲け、もの作りや販売といったあまり大きな利益を見込めない(低付加価値の)部分は他社(特に海外企業)に任せている、というワケだ。

ちなみに、アップル社がいかにおいしい旨みの部分を吸い上げているかは、営業利益率を見ると分かる。アップル社の2010年の営業利益率は驚愕の28%(売上総額約652億米ドル、営業利益約183億米ドル)。業種が異なるので、比較するのがはばかられるが、日本を代表するトヨタの2010年度の営業利益率は0.7%。

しかし、このアップル社のビジネスモデル、売上総額が必ずしも米国の富そのものと比例するわけではなさそうだ。海外で調達し、海外で生産し、海外で販売する・・・結局は、海外での雇用が増えるばかりで、国内にお金がまわるわけではないからだ。

この点については、国内の空洞化が進む日本の製造業と同じ構造だ。

「なんか企業の利益が上がっているのに、経済が良くなった気がしない・・・。」

この言葉を聞くようになって久しいが、その解決の糸口はいったいどこに・・・。

2011年8月5日金曜日

感想文: 「ニッポンの書評」

期せずして書評が多くなってしまった、わたしのブログ。本を読んだ感想を書いていれば、書くネタに困らない・・・、書く練習になる・・・、考えを整理する訓練になる・・・、備忘録になる・・・、というのが主な理由だ。ただ、こうした執筆を続けていると、

「”書評”って何だろうか?」
「自分の文章を、いったいぜんたい”書評”って呼んでいいのだろうか?」

と、疑問を持つことがある。

そんな疑問に直球で答えてくれる本があった。

タイトル: 「ニッポンの書評」
価格: 740円

■”書評道”を求めて”書評”を切り捨て御免


この本はプロ書評家、豊崎氏が”書評道”を追求した本である。今日、我々はあらゆるメディアを通じて書評を目にする。雑誌、新聞、ブログ、書籍、ラジオ、テレビ・・・もはや読み手よりも書き手が多いのでは?と言われるほどだ。書評家が溢れかえる中、著者が自身のレゾンデトール(存在意義)を問うべく、様々な観点から書評に対する考察をし、「書評はどうあるべきか」について激白している。

この本の最大のウリは、プロ・素人を問わず、ちまたに溢れる書評を勝手に”切りまくっている”点だろう。

たとえば著者は、村上春樹氏の「1Q84」の書評を書いた黒古一夫氏(文芸評論家、筑波大学大学院教授)を、次のように断じている。

「黒古氏は、たった750字という限られたスペースの中で、よりによってストーリーの結末を明かしているんです。字数少ないんだから、その部分こそを削ればいいのに・・・(中略)・・・黒古氏は、自身のブログにこの書評を全文アップすることでさらに被害を拡大。あまりの驚きから思わず(ブログの)コメント欄に書き込みしちゃったトヨザキです。」

もちろん、こうした”切り捨て”に対しては、複雑な思いを持つ人もいるだろう。「持論を展開するのは構わないが、リアルタイムな反論ができない紙媒体に、人を勝手に引きずり込み批判するのは何様か」と。ただ、著者は自分の書評も掲載して、一応は、ディベート的な体裁をとろうという姿勢を見せている。

この勇気ある”切り捨て”は、豊崎氏がプロの書評家として道を極めてきた自負の裏返しでもあると思う。いずれにせよ、なかなかできることではないことをやった、という点で私は著者を評価したい(まぁ、わたしが、切られているわけでないので、読む側の立場からすれば面白いわけだし・・・)

■書評の目的は何か?

さて、書評とは結局なんなのだろう? 豊崎氏は彼女自身、やはり同じように”書評”について論じている数々の書評本を読んでみて、次のような”気づき”を得た、と述べている。

「批評は対象作品を読んだ後に読むもので、書評は読む前に読むものだということです」

なるほど、わかりやすい。つまり書評は、これから本を読もうとしている人に「本当に読むべきか、どうか」の判断を手助けするものである、ということだ。残念ながら、メディアに掲載されている書評の中には、いわゆる”ネタバレ”をするだけして購買意欲を減じさせ、こうした役割を必ずしも果たしていないものがある、と豊崎氏は論じる。

で・・・である。このブログにおけるわたしの”書評(モドキ)”は、いったい何なのだろうか。

「書評なの?批評なの?」

■で、私のは書評?それとも単なる日記?

著者の定義に従えば、わたしの文章は”感想文”になる。感想文とは”書評”に昇華しきれていない素人の文章のことだ。与えられた字数制限の中で、適度に他の著者の本を引用し、自分なりの深みある考察を述べ、読むモノの興味を強く惹く・・・そうしたレベルのモノが書けるようになって初めて書評というわけだ。

ただし、豊崎氏は、読み手の読書意欲をかきたてることができるモノであれば、どんな文体だろうが、内容だろうが、それで十分書評なのだとも強く主張している。

で、わたしのは感想文?それとも書評?・・・その答えは如何に・・・。

関連リンク
黒古一夫BLOG(豊崎氏に批評を受けた教授のブログ)

2011年8月1日月曜日

これまでの常識をこれからの常識と思うな

日経ビジネス2011年8月1日号のテーマは、「元気が出る! すごい制度100」


良くもまぁ、ここまで調べたなと関心。サイバーエージェントの「役員入れ替え制度」や沖縄教育出版の「日本一長い朝礼」、アルバックの「超・長時間会議」など、それはもう様々。

こうした制度の背景には「他社と同じ事をやっていてはだめ」「これまでの常識をこれからの常識と思うな」といった経営者の気持ちが伝わって来る。

個人的にびっくりしたのは西松屋チェーンの「繁盛店は作らない」という経営戦略。人がごったがえして、BGMがなっていて、レジには行列・・・そういった繁盛店を目指すのではなく、人のいない店内に無骨なレイアウト、BGMも流れず、レジには店員がぽつんと一人立つ。そんな味も素っ気もない閑散とした店こそ、同社が目指す店舗だ、という。

わたしも利用者の一人だが、確かにそんな表現がぴったりと当てはまる店舗だ。えっ!?そんなんで経営が成り立つの?と思ってしまう。気になって同社のIR情報を覗いてみた。近年は利益がやや減少傾向にあるようだが、店舗数も売り上げも伸びている。今後の計画によれば、利益も急激に右肩上がりの図を示している。今後の動向に注目したい。

売上高・経常利益・店舗数の推移及び中期計画

さて、特集記事ではないが気になったニュースが1つある。全日空がエアアジア(マレーシア)と共同出資を行って、LCC(格安航空会社)、エアアジア・ジャパンを設立するという話だ。記事のタイトルは、「名より実を取った”赤い”全日空」。発表した会場が、全日空のコーポレートカラーの青色ではなく、エアアジア(マレーシア)のコーポレートカラーである赤色を基調にしていたことを揶揄したものだ。

私は、この赤色を全面に押し出した動きも、全日空の経営戦略の1つだと思う。そもそもLCCは、自社の顧客を共食いするリスクをはらむものだ。できるだけ、全日空ブランドを遠ざけた方が、そのリスクを回避できる。ちなみに全日空が推進するもう1つのLCC「ピーチ」にしたって、機体の色はピーチ(桃)色だ。

記事は「なれない赤」に包まれるのは、ライバルがもはや国内競合ではなく、海外の新勢力であることを物語っている」と締めくくっているが、戦略的選択として、当然の帰結のように思えるのだが。

関連リンク
西松屋(会社のホームページ)
日経ビジネスオンライン

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...