2013年6月28日金曜日

書評: 成功学のすすめ

「僕の夢には日付がある」・・・そう語って、自分の夢を次々に実現させてきたワタミ会長、渡邉美紀氏。でも、夢に日付を入れるだけではまだ足りない。具体的に何をどのように毎日を行動したら、夢を実現できるのか・・・その具体的手段を示すのがこの本だ。

成功学のすすめ ~7×7×7の法則~
著者:神野博史(じんの はくし)
発行元:如月出版

読みやすさ: ★★★★☆
オススメ度: ★★☆☆☆


■“豊かに生きる”ための虎の巻

著者の神野博史(じんの はくし)氏は、早稲田大学出身であり、議員であり、大学講師であり、公認会計士であり、経営者であり、コンサルタントである。身の回りの人みんなが豊かに生きることができるように、方々で活躍をしている人だ。こうした経歴自体が物語るように、神野氏は常に人生の目標を立て、それを達成してきた。自ら立てた目標を達成し成長し続けること・・・本書では”成功”をそう定義するが、著者自らが信じ、実践し、実現してみせた”成功”をつかみとるワザの集大成ともいうべきもの・・・それが本書なのだ。

人生を成功させる秘訣とは、いったい何だろうか? 神野氏が"成功を確実にする7つの黄金律"と題する章があるが、たとえばその1つにあたる「生活習慣を変える」の項では、具体的な心構え・活動のポイントとして「朝晩の心構えが成功を招く」「すすんで挨拶をする」「毎日かならず読経する」「朝風呂は成功思考を喚起する」「モノを大切にするとモノが集まってくる」「1日、7000歩、歩く」・・・などを挙げている。そこには「それができれば確かに人生は一変するだろうな」というともすれば耳の痛くなるような教訓がズラリとならぶ。

■著者自身の成功体験と熱い想いと強い信念と

成功するための秘訣??・・・自己研鑽するための方法??・・・こういった類の本はゴマンとあるじゃないか、と思う。私の数少ない読書歴からでも、たとえば、白石豊氏の「心を鍛える」新渡戸稲造氏の「逆境を超えてゆく者へ」などがパッと頭に思い浮かぶ。新鮮味という観点では、スポーツという切り口でアプローチする白石氏の本が優れていたし、説得力という観点では、やはりお札にまでなった新渡戸稲造氏が優れいていたように思う。このように類書がたくさんある中で、本書の特徴とはいったい何だろうか。

本書最大の特徴は、先に触れたように”この本のもとになる被験者が著者自身である”という点にある。いわゆる”成功の秘訣本”というものには、その根拠のほとんどを他人のケースに求めたり、自分と他人の両方のケースに求める場合が多い。本書はそのいずれでもなく、著者自身のみをベンチマークにしているといっても過言ではない。だから「信憑性が低いか」というと、そういうことでもなく、むしろ、そこに著者の「これをすれば絶対に成功できるはず。疑いの余地はない。」という熱い想いと強い信念を感じる。

また、本のタイトルに”成功学”とつけていることも特徴的と言えるだろう。そこには成功術を”学問のレベル”に昇華させようとしている著者の意志を感じる。学問とは、数学や物理学、統計学、言語学などのように、長い時間が経過しても陳腐化しない普遍的なものだと思う。つまり、著者は、人生を成功させるために役立ちそうなポイントを、ただ漠然と列挙するのではなく、誰もが、いつの世も、適用できるようなものをと、論理的・体系的な説明を試みている。なお、論理的・体系的といっても決して難しい読み物ではない。ポイントそれぞれに約1~2頁ほどの解説がついており、内容はシンプルで、ともすれば、日めくりカレンダーについてくるちょっとした教訓を読んでいるような印象だ。

■得られるものと、今後に求めたいもの

さて、この本から得られるものは何だろうか。私は先に「それができれば確かに人生は一変するだろうな」ということが書かれている、と述べた。全くその通りで、読むと身がピリリと引き締められた感じになる。具体的にはたとえば「自分の目標を立てる」という教訓について、私が既に実践してきたものであったが、ここ数年、なおざりになりがちのものであったので、本書を読んで「もう一度、緩んだふんどしを締めにゃあかんな」と思い直すきっかけをもらえた。また、ボランティアをしたほうがいいともあったが、わたしはボランティアには縁が全くないといっていいほどの人間である。だが、この本を読んで、ボランティアをすることの重要性についてははじめて納得できたような気がする。機会あればぜひ検討してみたい・・・と素直に思った。

一方でこうすればもっといい本になったのにな・・・と思える点もある。先に、「完全に著者自身をベンチマークになした本」と述べたが、そうであればこそ、もっと著者自身の経験を豊富かつ具体的に盛り込んで欲しかった。たとえば本書の中には、実際に著者自身が公認会計士を目指していた当時に作成したノートなどの写真などが登場する。非常に生々しくインパクトがあったが、こうした資料をもっと載せてくれたら、本書の魅力は2倍、3倍になっただろうと思う。

■成功に近道はないが、“道”は確かに存在すると確信した

これまでに読んだどの類書とも違うことは言っていないし、私も部分的だが、これまで似たようなことを実践してきたことがあるから、著者はとても正しいことを言っている・・・ということが直感的に理解できる。著者の言うことを本当に実践できれば、間違いなく、著者の言う”成功”をすることができるのだと私も思う。こうした本を読むにつけ、改めて思う。やはり、成功への近道こそないが、成功学というものは確かに存在するのだと。

だから、自分を今より高めたいと思っていて、こうした類の本を読んだことがない人・・・正直、書き方に好みが大きく分かれるところだと思うが、そういった人は・・・もし、この本がリーズナブルに入手できるのならば(1500円は高すぎると思う)、手を出してもいいのではないかと思う。なお、著者いわく、成功学の実践に年齢制限はないとのこと。わたしも同感だ。


2013年6月23日日曜日

書評: プラチナデータ

プラチナデータ
著者: 東野圭吾
出版社: 幻冬舎文庫


■警察に革新的技術がもたらされたときに何が起こるのか?

警察庁は、犯人検挙に役立つ"DNA捜査システム"を開発した。このシステムは、犯人の残していったDNAの痕跡(たとえば、髪の毛一本)から、DNAデータベースに照合をかけ、犯人と同一のDNAを持つ者(つまり、犯人)を見つけ出せる技術。この技術が革新的なのは、その照合能力にある。DNSデータベース上に、犯人のDNAと完全に一致するものを見つけられなかったとしても、類似するDNAを持つ者・・・すなわち、犯人の近親者を特定できてしまう。さらに、DNAから犯人の顔イメージも作り出す。そして、こうした処理が、わずか数日で行われるというわけだ。

まさに夢のようなこの技術は極秘裏の試験導入ではあったが、警察において大きな成果をあげつつあった。そんな中、DNA捜査システムの開発・導入に携わった開発者の1人が大きな問題に気がつく。その問題発見のきっかけとなったのは照合時に頻出する”NF13”というコード。NFとはNot Foundの略で、DNAデータベース上で、照合元のDNAと一致または類似するDNAが全く見つからないときに表示されるエラーコードだ。その問題とは何なのか? それが明らかになろうとした矢先、その開発者が謎の死を遂げる。いったい何が起きたのか? そしてその開発者が指摘しようとした問題とはなんだったのか? 果たしてNF13というエラーコードが持つ真の意味は? 最新技術の裏に隠された巨大な陰謀が明らかになっていく・・・。

■最新技術をネタにした限りなくリアルなストーリー

この本を読み終えるまでの2日間。先が知りたくて知りたくて、隙間時間はひたすら本にかじりついていた。ストーリーや結末をどうとらえるかは人によって異なるところだが、少なくとも「読者を捕まえる魅力を十分に兼ね備えた本」ということだけは間違いなく言える。この本の何がいったい・・・そんなに興味をそそるのか。

それは、フィクションでありながら、ノンフィクションのような・・・妙なリアリズム感にあると思う。まず、小説に登場するDNA捜査システムだが、まだ現代の科学技術では無理とされるが、決してあり得ない話ではない。事実、この書評を書いている今、まさにこの瞬間、横にあるテレビでは遺伝子検査サービスなるものが登場した・・・と紹介されている。ただしちなみに、ネットで調べてみたところ現代の科学技術では、毛幹から適切なDNAを抽出できる成功確率は数パーセントだとか・・・。

妙なリアリズムを感じさせるもう1つの点は、このDNA捜査システムの活用のされ方だ。小説では試験導入という名目で、国民のDNAを極秘裏に採取しデータベース化を行っていることになっている。これは明らかにプライバシーの侵害で、違法行為だ。この話を聞いて何か思い出さないだろうか? そう・・・いま、アメリカで起きているプリズム(PRISM)だ。プリズムとは、テロ活動の予測や防止という目的のために、アメリカ政府が極秘裏にグーグルやフェースブックの個人情報を収集して監視するプログラムのことだ。この小説はこのプリズム問題が明るみに出る遙か前に書かれたものだが、権威ある者が、ひとたび強力な技術(力)を手にすると、どういうことが起こりやすいのか・・・DNA捜査システムの使われ方は、まさにノンフィクション以外の何者でもない。

■軽い気持ちで読めるなら・・・

さて、「プラチナデータ」の残念な点を1つ挙げるとすれば、後半にさしかかるとだいぶ色々な展開が読めてきたという点だろうか。最後までワクワク感を持ちたい読者としてはあともう少しだけ頑張って欲しかったところだ。

まぁ、仕掛けや最後のオチに満足するかどうか・・・これは人によって大きく分かれるところだと思うが、先に述べたように読者に「先が知りたい!」思わせる点では十分成功しているし、また、娯楽要素を提供しつつ、さりげなく今後の我々一般国民へ警鐘を鳴らしている・・・という点は興味深い。大きな期待を持って読むと裏切られるが、軽い期待で読むなら、そこそこ愉しめる価値ある本だと思う。


2013年6月16日日曜日

書評: 聞く力

コンサルタントという職業柄、人と話す機会はとても多い。だが、決して、コミュニケーションが得意なほうだとは思わない。特に自分は、パーティなどで見知らぬ人と出会って、弾んだ会話をする・・・そんなことが大の苦手だ。このように苦手だと思っているから、「聞く力」がヒントになれば・・・と思って、読んだ。





■1000人斬りをして学んだコミュニケーション術

ん!?阿川佐和子(あがわさわこ)さん?聞く力!?・・・確かに有名人であるには違いないが、インタビューの達人だったっけ? 

本書のプロフィール欄を見ると、”週刊文春”の対談ページは連載900回を突破している・・・とある。なるほど、これだ。900回・・・ということは、この連載のためだけでも900人以上とインタビューをしたという計算になる。毎日インタビューをしたとしても3年近くかかるボリュームだ。そう、つまり、本書は、阿川佐和子さんが実体験の中で得た”上手な対話の仕方”について得た学びを35個のヒントにまとめ、共有してくれる本・・・というわけである。本人の言葉を借りて表現すれば、本書は、阿川佐和子さんがインタビューの中で1000人近い出会い、30回以上のお見合いで掴んだコミュニケーション術を披露したものなのだ。

■本書そのものが阿川さんの主張の裏付けになっている

ひとたびページを開くと、スラスラと読めてしまう。さすが、エッセイスト。あたかも読者が目の前にいることがわかっているかのような、淀みのない、やわらかい言葉遣い。そして、時折みせる謙虚な姿勢。人の話を上手に聞くための35のヒントの中に「相手の気持ちを推し測る」「自分ならどう思うかを考える」・・・というポイントが出てくるが、これらは何もインタビューのためだけではないのだろう。こうしたテクニックは、本書にも遺憾なく発揮されているのだ。

『今でも対談に出かける前は、ビクビクどきどきしております。あら、インタビュー? ちょちょいのちょいでやっつけてきますよ、なんて、そんな余裕はないのです』(本書の”まえがき”より)

「テレビにしょっちゅう出てる人が、そんなビクビクしてる・・・だなんて。謙遜し過ぎるのもはなはだしい」・・・普通なら読者はこう考え、やや引いてしまうところだが、彼女が惜しげもなく披露する失敗事例を読んでいると、それ(謙虚な姿勢)が全くの嘘ではないことが分かる。本当は、相手にしゃべってもらわなければいけなかったのに、自分がほとんどしゃべっていた、という話。事前に用意したメモばかり見てインタビューをしたがために、全く流れを無視した質問になってしまった、という話。分からなければ何でも正直に聞けばいいという考えに甘えすぎて準備を怠り、相手を怒らせてしまった話・・・などなど、聞いていると、「あぁ、テレビに出てるような有名人でも、我々庶民とさして変わらないところから出発し、苦労を積み重ねてきたんだなぁ・・・」という(なぜだか)読んでいる者に、安心感を与えてくれるのだ。

■人とコミュニケーションをとる機会が多い人に

さて、読んでみてどうだったか。冒頭に触れた自分の苦手は克服できそうか。結論から言うと、”難しそう”である。理由は、(少なくとも私にとっては)35のヒントについて、既に知っていた・・・あるいは、これまでも何となく気にかけていた・・・といったものがほとんどであったからだ。きっと、過去にビジネス書を何冊か読み、テクニックだけに関しては既に”頭でっかち”の息に達していたからなのかもしれない。だからわたしのように「明日からすぐにでも使えそうな魔法のテクニックが欲しい」・・・そんな幻想を抱いて読むなら、やめた方がいい。

とは言え、本書を読むことで、基本的な考え方は整理される。「メモなんか用意してたらダメ。相手の話に集中できなくなる。」などといった指摘を聞くと、「ああ、そうだった、そうだった」と、普段からなんとなく分かってはいるけどあまり意識していなかったことに気づかせてくれる。ぼんやりと考えていたことが整理された・・・みたいな・・・感覚だ。

まとめると、”決して魔法の本ではないが(いや、そんなものがあるはずもないだろうが)、人との対話における基本中の基本をカバーしている本”・・・それが本書「聞く力」と言えるだろう。だから、「人と話す機会は多いけど、自分はしっかりと基本を抑えることができているか自信がないな」とか、「いま、人と話すことにおいて、自分はどのレベルにいるんだろう」とか・・・そんな疑問を持つ人が読むのにちょうどいい本だと思う。ちなみに、私の場合は、「どうも、基本は抑えることができているようだ。だから、後はテクニックにこだわり過ぎて”頭でっかち”にならず、実践重視で磨いていくのが正しい道かな」ということが、本書を読んで得た結論だ。


【コミュニケーションという観点での類書】
伝える力(池上彰著)
伝え方が9割(佐々木圭一)

2013年6月14日金曜日

深夜3時のタクシー劇場・・・

深夜3時。オフィスを出ると目の前を”空車”を灯したタクシーが1台、2台、3台、4台と、通り過ぎていく。わぁお、多いな・・・そんなことを思ってる合間にも次から次に新たな空車タクシーがやってくる。

歩き始めたとたん、気のせいか、わたしの周りにいたタクシー達が、マトリックスのワンシーンのように速度を落として走り始める。いや、きっと、自分が気にし過ぎなんだ・・・そうだ、そうに違いない。車が同時にスローモーションのように速度を落とすなんて、そんな映画みたいなことはあり得ない・・・はずだ。

自宅方向のタクシーを捕まえるために”新宿通り”を渡るべく交差点で信号待ち。その瞬間、横断歩道の(渡りきったところ)向こう側に一台のタクシーが、キュッ・・・っと停車。手も挙げてないのに・・・まさか・・・ね。そうか、きっと誰かが乗っていて人を降ろす必要があったんだ・・・。そうなんだ。

信号が青になったので渡る。さっきのタクシーはまだ停止ランプをつけて止まっている。誰も降りてきた気配はない。意味もなく止まった車がなんか怖かったので、近づく気がしなかった。横断歩道をわたりきった瞬間・・・タクシーは、急発進して走り去った。

単にひねくれた性格が災いしてるだけなのか、純粋に怖かったからなのか・・・わからないが、横断歩道を渡りきった後も、次から次にやってくるタクシーに向かって手を挙げることができなかった。なに、してんだか、オレ。仕方がないので、しばらく道に沿って歩き始めた。はよ、帰りたいぜー。つと勇気を振り絞って手を挙げる。しかし、そういうときに限って一台も目の前を走っていない(>_<) おいおい。タクシーが私を狙っている・・・だなんて、全て妄想だったんだ・・・そうだ、そうに違いない。だって、いざ手を挙げてみれば一台もいないんだもの。

そう思った瞬間、100メートル後方で信号待ちしてい車が、猛ダッシュで近づいてくる。タクシーだ。それも遙か後方で、非常停止ランプをつけ、パッシングをしながら・・・近づいてくる。怖いって・・・。やや警戒しながらタクシーに乗り込んだ。

タクシーの運転手が「どちらまで行かれます?」と聞いてきた。「東名川崎方面でお願いします」と答えた。強い博多弁なまりで「えええええっ!!! ありがとうございます!!! 本当にっ!!!! いいんですか!? いや、いや、いや、いやーー。いやー!!! すごい助かるな-。ありがとうございます!!! ありがとうございます!!!!」・・・リアクション大き過ぎるって、運転手さん・・・。

運転手「お客さん、ナビに正確な目的地を入れたいんですけど・・・いいですか!?」
私「あ、いや、面倒なんで、東名川崎着いたら、そこから口頭で説明します」
運転手「わかりましたっ! ではもし、あれだったら・・・寝てらしてください。着いたら起こしますから・・・」
私「あ、助かります。ありがとうございます。じゃー、お言葉に甘えて・・・。」

(10秒後)

運転手「お客さん、もう、今日は雨が降ってて、客足が遠のいちゃって。いや、本当に助かりました・・・」
私「そ、そうなんですか・・・。雨降った日って逆に儲かりそうな感じしますけどねー。お役にたてて良かったです。じゃ、まぁ着いたら起こして下さい。」
運転手「はい」

(10秒後)

運転手「お客さん、私ね、九州からでてきて働いてるんですよ。家族はずっと九州、私はずっと東京で・・・。もう25年になるかな。」
私「えっ、そうなんですか。25年て・・・。でも、たまに帰ってらっしゃるんですよね?」
運転手「はい、帰ってますよ。年に3~4回。ちょうど、近いうちに祭りがあるんで・・・これだけはずっと小さい頃から出てて・・・なので、もうすぐまた帰ります。」
私「へぇ~、祭りかぁ。いいですね~。」
運転手「はい。あ、ごめんなさい。話しかけちゃって。寝てて下さいね。起こしますから。」
私「いえいえ。ありがとうございます。」

(10秒後)

運転手「お客さん、博多の名物って何か知ってます・・・?」
私「え、ええ、明太子とか・・・ラーメンとか・・・かなぁ」
運転手「そう、そうなんですよ!明太子。明太子っつってもねー、いろいろな種類があって・・・。今は・・・・が有名かな」
私「・・・・」

(繰り返し、繰り返し、繰り返し)

えんえん、この繰り返しで、ついに自宅に到着。なんだ、この”眠気さ”と、次から次と玉手箱のように話題を振ってきた運転手さんの話の底が見えなかった”もやもや感”は。


オフィスを出てから次から次へと・・・めまぐるしくいろいろなことが起こり一体何なんだ今日は・・・という困惑の気持ちと、タクシーという名のライオンの群れに襲われそうになって疲れたな・・・という疲労感一杯の気持ちと・・・、眠りたいという気持ちと・・・、でもさりげなくこの運転手さんの人生が面白そう・・・実は話をもっと聞いてみたいという好奇心と・・・。

まぁ、色々とあったわけだが・・・この奇妙な思い出と、今から名古屋で仕事なのに猛烈に眠いっ!という事実だけが残った。また、あの運転手さんのタクシーの乗りたいっ!


2013年6月7日金曜日

書評: 学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇編

人生ではじめて日本史が頭に焼きついた。相変わらず面白い本を書いてくれる著者に感謝。

タイトル: 井沢元彦の学校では教えてくれない日本史の授業2 天皇論
著者: 井沢元彦
出版社: PHP出版


■点と点を結ぶ歴史の”裏教科書”

著者、井沢元彦氏特有の鋭い視点をもって日本の歴史を解剖するシリーズ第二弾だ(シリーズ第一弾はこちら)。今回は、天皇制についてだ。例によって歴史教科書にはおろか、学校の先生の話にも出てこないような”裏話”や”行間”を語ってくれている。

ところで、城郭研究者の西股総生(にしまたふさお)氏は、戦国時代の城のデザインから、当時の戦い方のみならず、当時の兵士達がどのように徴兵されていたのか、戦争のないときはどのように生活を営んでいたのか・・・を、ひもといて見せた。人文地理学の権威、足利健亮(あしかがけんりょう)氏は、地図に見てとれる地形や地名、番地などから、昔は土地が何に利用されていたのか、その土地に住む人々の昔の暮らしがどんなだったのか、どのような思いで戦国大名がその場所に城を建設したのか・・・をひもといて見せた。

実は、井沢元彦氏の”鋭い視点”というのもこうした人達に通ずるものがある。通常の歴史専門家が加味していない視点・・・すなわちたとえば、通常の学問に、宗教学や言語学などを加味することが新たな発見(著者曰く、当然の発見)につながっている。たとえば、幕府と朝廷の二立併存の話。かの藤原氏も、足利氏も、織田信長も、豊臣秀吉も、徳川家康も・・・決して、天皇を抹殺してその権威を奪うようなことはしなかった。著者はその理由について、日本人の怨霊を恐れる気持ちとケガレ(血を流すこと/流した者)を忌み嫌うという宗教観から見事に説明してみせている。仏教では輪廻転生や輪廻から解き放たれる解脱(げだつ)という考え方があるが、日本人(・・・いや神道といったほうがいいかもしれないが)にはどうやら、死=無/ろくなものではない、(だから忌み嫌うもの)といった考え方が強かったようだ・・・と、天皇のお墓の造りや埋葬の形態などから解説してみせているのだ。

■天皇を見つめることで日本史のすべてが浮き彫りになる面白さ

点と点を結んでくれる”学校では教えてくれない”シリーズにおける本書の見どころは、日本史に一本の太い線をとおしてくれることにあるだろう。逆に言えば、天皇制というテーマを深く掘り下げることで、これほどまでに、はっきりと日本史の全体像が見えてくるとは思わなかった。邪馬台国、豪族、聖徳太子、武士、大名、幕府、仏教、2・26事件・・・すべてが天皇制につながっている。

しかも本書で取りあげるテーマが誰もが興味を持つものばかりなのである。たとえば今ぱっと、私が思い出せるだけでも、以下のようなものがある。
  • 邪馬台国は結局どこにあったのか?
  • 古墳とはいったいなんなのか?
  • 白河上皇がとった院政(いんせい)は何がそんなに凄いことなのか?
  • 武士はなぜ天皇の地位を脅かさなかったのか?
  • 仏教は神道になぜ?どのように?とりこまれたのか? 

■読む者全ての頭を刺激してくれること間違いなし

著者も認めているが、この本に書かれていること全てが正しいとは限らない。だが、教科書に載っている歴史も正しいことは限らないのである。むしろ、そうでないことのほうが多いくらいだと思う(知っているだろうか? われわれが昔ならった仁徳天皇陵は、もう仁徳天皇陵とは言わないそうである。また、鎌倉幕府の設立年度は1192年よりももっと前だったという説が有力になってきているそうだ)。

であるとするならば、本書の価値を”書いている内容の正確性”だけで判断するべきではなく、むしろ、”どれだけ人の興味を刺激してくれるか”あるいは”既存の歴史をどれだけ補ってくれるか”で判断するべきだろう。そのようなわけでとりわけ、(もちろん、賛否両論はあるだろうが)
  • 受験勉強で日本史を丸暗記しようとして苦しんでいる人
  • 神道や仏教のつながりに疑問を持っている人
  • 天皇はいったい何者なんだと思っている人
  • 学校で歴史を教える先生方
といった人達には極めて有益になると思う。



【面白い切り口で歴史をひもとくという観点での類書】
 ・学校では教えてくれない日本史の授業(井沢元彦著)
 ・学校では教えてくれない日本史の授業 悪人英雄論 (井沢元彦著)
 ・地図から読む歴史(足利健亮著)
 ・戦国の軍隊(西股総生著)

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...