2010年12月30日木曜日

書評: ITロードマップ2011年度版

ここに1つのテーマがある。

「来年以降のITを取り巻く動向はどうなるのか?」

年々加速度的に増す技術革新のスピードには、もはや驚きを通り越してあきれる思いすらある。そんなわけで正直、目を背けたくなる気持ちもある。しかし一方で、ビジネスに携わっている者であれば、このようなテーマに多少なりとも触れておくことは、決して損なことではないと感じるのも事実だ。

そこでだ。「ITロードマップ2011年度版」(野村総合研究所)を読んだ。

様々なキーワードが注目される中、とりわけ自分の興味を引いたのは、以下のものだ。

・ワイヤレス
・ソーシャルCRM
・ITモダナイゼーション
・次世代データセンター

「ワイヤレス」という言葉自体に目新しさはないが、ここに2つの注目されるべき技術がある。

(正直もう英語3文字の略語にウンザリだが)1つはLTE(Long Term Evolution)だ。携帯の通信速度が、また格段にアップグレードされる。現行はWiMax(ワイマックス)と呼ばれる技術が普及しつつあり40Mbpsだが、LTE技術により論理的には最大100Mbps(下り100Mbps、上り50Mbps)にまでスピードアップする。さらに、ゆくゆくは4G(フォージー)と呼ばれる技術で、最大1Gbps(1000Mbps)のスピードが実現されるそうだ。

「そんなにスピードが速くなっても、コンテンツや使う人間の側がおいついていかない」

という声が聞こえてきそうだが、少なくとも可能性は無限大に広がりそうだ。果たして、どのようなビジネスチャンスがあるのか、アンテナを張っておく必要がある。

「ワイヤレス」に関わるもう1つの技術は「ワイヤレス給電」だ。個人的には、この技術が注目度ナンバーワンだ。我々の生活スタイルを劇的に変える可能性のあるものではなかろうか。ワイヤレス給電とは、電化製品であっても電源ケーブルが半永久的に不要になる技術だ。空気中を伝わって電気が供給される世界を思い描くと、なんとも不思議で、また、やや恐怖心もわいてくるところではあるのだが・・・。

しかし、よく考えてみれば、その一部は既に実用化されている。携帯電話の子機などがいい例だ。子機などの充電に使われている技術は1センチ以上離すと給電できないというデメリットがあるが、現在、10メートル離れても給電できる技術も開発過程にあるとのことだ。末恐ろしい。

【ワイヤレス給電の種類と給電可能距離】
電磁誘導方式・・・1センチ
磁界共鳴方式・・・ 10メートル
マイクロ波帯電磁波方式・・・給電装置不要

「ソーシャルCRM」は、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェースブック)、Mixi(ミクシー)などに代表されるソーシャルメディアを使って発信される情報を収集・分析し、マーケティングにフル活用するという技術だ。この技術が注目されるべき点は、考え方そのものにある。ビジネスシーンに直結しやすいということから、CRMと結びつけられているが、今後、ソーシャルメディアに端を発した様々な組み合わせ技術が出てくる、いや、開発していく必要があるのではなかろうか。

自身は、リスク管理に関わるコンサルティングを行う立場にあるが、この業界にいたっても様々な利用シーンが思い浮かぶ。(例:人々がつぶやくキーワードからどのようにリスクを抽出し、管理するために活用するか・・・など)(ここには、もちろん具体的なアイデアを書かないけど)

「ITロードマップ2011年度版」を読んで描く思いは三者三様だが、ITに関わる立場にいる者であればぜひ読んでおくことをお薦めしたい。



【関連リンク】
 ・置くだけでバッテリー補充!(2011年12月19日ブログより)

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