2016年3月30日水曜日

書評: ワークシフト

先日も書いたが、インプットとアウトプットは常にセットで行うと身につく。
習ったこと・覚えたこと・見聞きしたことを、改めて自分の口に出してみたり、文書に落としてみたり・・・。アウトプットすると、自分の考えが鮮明になり、持つべき意思も、より強固になる。意思がはっきりすれば、自然と実行力も上がる。

本書が取り扱うテーマは、自分の未来には何が待ち受け、それに備えてどう行動すべきか、だ。このテーマについては、日常生活の中で、しょっちゅう考える機会はあるし、考えてきた。でも、きちんとアウトプットする機会はあまりなかったように思う。だから、いつも未来には何が待ち受け、自分がどうするか・・・明確な意思は持ててないし、自分の行動にもつながっていない。

本書は、まさにそこを解決してくれる一助になるかもしれない。

WORKSHIFT(ワークシフト)
~孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〔2025〕
著者:リンダ・グラットン(池村千秋訳)
出版社:プレジデント社


将来がどう変わるかを予測し、我々が後悔しない生き方をするために今からどんなことに気をつけておいたほうがいいのかといったテーマを考えるための基礎情報を提供してくれている本だ。単に基礎情報を提供するだけでなく、同基礎資料を使って自分なりの答えを導き出した人々の回答例や、著者本人としての結論も紹介されている。なお、ここで言う将来とは、今から10年先(2025年)のことを指している。

ところで、著者はどうやって不確実な未来予測をしたのか。世界に散らばるメンバーからなる共同研究プロジェクトを立ち上げて実施したという。そして、次の5つの要因からなる32の現象をリストアップしていったそうだ。
  • テクノロジーの進化
  • グローバル化の進展
  • 人口構成の変化と長寿化
  • 社会の変化
  • エネルギー・環境問題の深刻化
32の現象とはたとえば、「メガ企業とミニ起業家が台頭する」「バーチャル空間で働き、“アバター”を利用することが当たり前になる」「世界の様々な地域に貧困層が出現する」など。

我々は、こうした32の現象を、一つの基礎資料として自分なりのより具体的な未来想定と、どうすべきかの答えを導き出していくわけだ。先述したように、単に基礎資料だけ用意して「あとは自分だけで考えてみてくれ」というわけではない。そこには、実際にこの現象を基にどういった未来を描いたのか、いくつかの事例が紹介されているし、著者自身の考えも述べられている。「物理的な距離を感じさせないバーチャルな共同業務が当たり前になり、ますます仕事の細切れ化が進む」といった話や「何でもネットでつながっていくがために、人と人とのつながりが希薄化していく」といった話など様々だ。

ちなみに著者自身に1つの考えはこうだ。「色々な仕事はコンピュータにとって変わられる」「コンピュータがとって変われない仕事は、専門性が高く、想像力が求められる仕事である」「そこまでの力量を身につけるためには、“自らが本当にやりたいと思う仕事”でなければ無理だろう」「ただし予想した未来が確実にやってくるとは言えない」「だから、“自ら本当にやりたいと思う仕事”を見つけ、それにつく努力を今以上にしていくことがいいだろう」というものだ。ただし、何度も言うように、これは著者自身の考えであり、実際は本書が提供する基礎資料を基に、自分なりの未来を描く必要がある。

私自身はこの本を買って読んだおかげで、冒頭に述べたように今まで漠然としか考えてこなかった未来、それに伴って自分がすべきことが、よりはっきりしてきた。その意味で本書には感謝している。他のみなさんも読んだ方がいいのか?という問いに関しては、人による・・・というのが私の答えだ。今から10年後の話なのだから、学生自身、そして学生を子供に持つ親にとっては、使い方次第で有益な本になるだろう。


2016年3月22日火曜日

常にインプットとアウトプットは“ペア”にする

NewsPicks【堀江貴文×鈴木おさむ】面白い企画は“心の貯金”から生まれる
https://newspicks.com/news/1456846/body/?ref=search

は面白い記事だった。下記、言は印象にはピンと来るモノがあった。

「インプットとアウトプットは同時に行うように心がける」(堀江貴文)
「じっくり3カ月かけて企画を出すより、短期間集中して出す22個のほうが大事だと思います。」(鈴木おさむ)

アウトプットってインプットするより面倒臭くて、例えば自分で本を読んでもアウトプット出すのに時間を空けちゃうことがよくある。「きちんと思考を整理したいから、時間を取れるまで置いとこう」みたいな。でも、振り返ると時間をおいたからってアウトプット品質がすごく良くなるわけではないし、むしろ時間が経過したせいで記憶が薄れ、品質が劣化する(あるいは時間がかかる)ことも少なくない。

「アウトプットは自分にとって本当に役立つ情報への変換作業である」という目的に鑑みれば、時間をかけてアウトプットするよりも、むしろ、できるだけ素早く数多くこなした方が、有効性が高いという事実は、成功者が共通に発見してきたことなのだろう。

2016年3月12日土曜日

書評: 経営パワーの危機 ~会社再建の企業変革ドラマ~

インフルエンザBで倒れてた...。読み終わってはいたけれど、パソコンに向かうことができなかった。

さて、書評。


■ノンフィクションに限りなく近い、会社再建ドラマ
これは、会社再建ドラマだ。フィクションではあるが、著者自身が経営コンサルをする中で得た実話を上手に組み合わせて、書き上げたかなりリアルな物語である。読者に追体験させることを狙いとしている。

舞台は、色々な会社を買収し、多角化を進めてきた企業、新日本工業から始まる。投資した子会社の業績は惨憺たる状態。新日本工業社長・・・財津は、立て直しをしようと抜本改革を目指す。そもそも経営を担える次世代幹部が育っていないことを真の課題ととらえた財津社長は、36歳の伊達陽介に注目し、彼を傾きかけた子会社の1つに出向させる。そう、物語の主人公は財津社長・・・ではなく、倒産寸前の会社に送り込まれた伊達陽介だ。彼は困難に立ち向かい、会社を再建できるのか。

■「ザ・ゴール」を彷彿とさせる示唆にとんだ本
読んでパッと頭に思い浮かんだのは、エリヤフ・ゴールドラット氏が書いた有名なオペレーションズ・マネージメント小説「ザ・ゴール」だ。「ザ・ゴール」は小説に仕立て上げられた経営管理の教育本だが、本書「経営パワーの危機」も、言わば、その経営再建バージョンと言えるだろう。

結論から言うと、面白かった。500ページ近くからなる分厚い本だが、立ち止まることなくあっという間に読めた。加えて、小説の合間合間に登場する著者のちょっとしたコメントは示唆に富んでおり、役に立つ。たとえば、財津社長が主人公の伊達陽介を出向させる場面では、

「日本企業の弱点は、経営が育ちにくい環境であることだ。組織を小さなプロフィットセンターに分けて、権限を与えればいいが、日本ではこのアプローチがまだまだできていない。多くの日本企業が依然として機能別組織や中途半端な事業部制の組織にとどまっている。だから実質、本来の意味での“経営センスを磨く場”が乏しいといえる」

といった著者のコメントが登場する。なるほどな、と思っているところ・・・本を読み終えた翌々日くらいに次のような日経新聞の記事がたまたま飛び込んできた。

みずほ、顧客別に組織!みずほフィナンシャルグループは4月に社内カンパニー制を導入する。2016年2月27日日経新聞朝刊より
トヨタ、次世代経営者育成! カンパニー制導入発表。「トヨタ自動車は2日、社内カンパニー制を4月に導入すると発表した。」2016年3月4日日経新聞朝刊より

みずほの場合は、どちらかと言えば顧客ニーズを掘り起こすことを目的とした組織編成だが、トヨタなどはまさに著者がしてきたしたような課題解決を目指した組織編成を行おうとしているわけだ。

こうしたリアルな企業のニュースが、自分のアンテナにひっかかり、単なるニュースが単なるニュースだけでおわらないのは、本書を読んだからこそだと思う。本書は本当にタメになる。こんなケーススタディ本がたくさん登場し、読まれるようになれば、と願う。日本企業から真の経営者が生まれることは、日本経済の活性化にもつながるのだろうから。


【経営ノウハウを物語から学習できるという観点での類書】
ザ・ゴール(エリヤフ・ゴールドラット)
ザ・ゴール2(エリヤフ・ゴールドラット)

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...