・妊娠中の体重増加を制限すること
・ピルは妊娠より安全であると誤解して自由に服用すること
・定期健康診断を毎年受けること
・子供に予防接種を定期的に受けさせること
医者がこれらを患者に盲目的に実践させるのは
”罪”以外の何ものでもない・・・とロバート・メンデルソン氏は主張する。
医者が患者をだますとき
著者: ロバート・メンデルソン (訳: 弓場 隆)
発行元: 草思社
■現代医学がいかに危険かを説いた本
著者が我々の目を覚まさんと、日頃当たり前のように接する”現代医学”が、いかに邪教であるかを説き、みんな、そこから抜けだし”新しい医学”に目を向けなければならない・・・そう訴える本である。
著者の言う”現代医学”とは、患者の病気を根治することよりも、病院ビジネスを継続させるためにいかに一定量の患者を確保し続けるか・・・この過った思想に基づく医療行為を意味し、文字通り、今日の医学のあり方そのものを指している。
たとえば、著者が”現代医学”の1つと揶揄する健康診断について、以下のように述べている。
『検査は受ければ受けるほど、しかもその検査が徹底していればしているほど体はよくなる。ほとんどの人はそう信じ込んでいる。だが、それは思い違いだ。医者の診察というものは、信頼するのではなく疑ってかかるべきである。診察には何らかの危険が伴い、一見なんでもなさそうなことでも、体にはなにかしらの害がある。これは知っておいていただきたい。診察に使われる道具は、それ自体が危険を秘めている。』
『医者は、異常が認められなくても病気を作り出すことができる。100人の子供を検査して、慎重、体重、血圧、尿、心電図を測定すれば、「異常」と見なすことができる子供が出てくる。検査で得られる平均からはみ出した数値には、必ず何人かが引っかかる。いくるも検査を重ねれば、全員がなんらかの検査で異常となってしまうのだ。その結果、それこそ害をお呼びしかねない数々の検査をフルコースで受けさせられる羽目に陥るのである。』(本書より引用)
ちなみに、著者(ロバート・メンデルソン氏)自身が医者だ。故人だが、アメリカで「民衆のための医者」と呼ばれて親しまれた有名な小児科医だったとある。しかるに見方によっては、本書はメンデルソン氏が同僚を非難する内部告発本ということもできる。
■時代と舞台が変わっても、”医療の歪み”そのものは変わらない
説得力ある本だが、かなり前・・・1990年初頭に書かれたものだ。そして、著者がアメリカ人であることから、取り上げるケースも、非難の矛先も、当然、アメリカの医療ということになる。ここで、
「今の日本に果たしてどこまで当てはまるものか?」
という疑問がわく。たとえば、著者が取り上げる事例の1つに「赤ちゃんを育てるのに”母乳でもミルクでも、どっちでもいい”なんてことを言う医者がいる」・・・というものがあるが、こんなことを言う医者はいまの日本にはいないのではないだろうか。頭をかしげながら読んだ。
ただし、これについては”訳者あとがき”に1つのヒントがある。実際に日本の医療にたずさわる医師によれば、本書でとりあげる事例の多くが(”母乳とミルク”の例は当てはまらないかもしれないが)、まだまだ日本にも当てはまるというのである。
また、そもそも”何が具体的に間違った治療か?”を網羅的に指摘することよりも、”医療の本質そのものが歪んでおり、それが間違った治療を生み出す温床になっている”という点を明らかにしていることに本書の意義があるのだと思う。
「病気は、体があげてる悲鳴(シグナル)だが、医療では、この悲鳴(シグナル)を上げた原因を取り除くのではなく、悲鳴(シグナル)そのものを取り除いてしまうという誤った行為が多い」・・・確か、最近何かと話題になっている南雲吉則先生がその著書
「50歳を超えても30代に見える生き方」の中で、そう語っていたように思う。これは、メンデルソン氏が、はるか20年前に指摘していた内容だ。いまの時代のこの日本において、本書の意義がまだまだ衰えていないことの証明にほかならない。
■目覚めさせよう、医療に対する自己責任
本書を読んで、今の医療の何が正され、何が間違ったままか、とか、今の医療の間違い探しをしよう・・・ということではない。
「医者は倫理的にも技術的にも秀でた人間。言うことやることのほとんど全てが正しい。具合が悪くなったら、とにかく病院にかかって検査をしてもらう、薬をだしてもらう、手術をしてもらう・・・そうすることが治療への一番の近道・・・」
このように何でもかんでも盲目的に信じるのは危険だ。損をする(している)のは結局、自分なのだ。賢く生きよう。本書は、それを気づかせてくれる本だ。