2016年7月30日土曜日

書評: 桐島、部活辞めるってよ

「世界地図の下書き」を読んで、なかなかおもしろい小説を書く人だな、と思った。だから、この本も読んでみたいと思った。映画化もされたし・・・。

桐島、部活辞めるってよ
著者: 朝井リョウ
出版社: 集英社文庫
フィクション小説だ。一言で言えば、高校生の青春小説。全7章からなり、舞台や時間は常にほぼ同じだが、章ごとに語り手・・・すなわち、主人公が変わる。これがこの小説のユニークなところだ。いずれも同じ高校に通う7名それぞれを章ごとに主人公として描いているのだ。

最初はこのような構成になっていると知らず、「あれ?オムニバス?」など戸惑いながら読んだが、途中で作者の意図が分かって、スムーズに読むことができた。

さすがだと思った。多感な時期で、同じことを異なる捉え方をし、そして、将来を考え、大いなる夢を持ち、努力をし、悩み、不安になり・・・とにかく、心のなかに大きな渦巻きができるのがこの高校時代だ。“高校生”の内面を描くには最高の手法だろう。

そして、心憎いのが、必ずそれぞれの章で、主人公たちが何らかの決意をする。彼ら・彼女らなりに感じ、思ったことを心に秘め、「こうしよう、ああしよう」と決意する。それが、またどういう決意であっても、「成長」ということを感ぜずにはいられない・・・ポジティブな感情を読者に植え付ける。

大人が読むと、「あー、羨ましい。あの頃に戻りたい」と思うだろう。高校生が読むと「あー、自分も一生懸命もがいてみよう」と思うだろう。

何も考えずにすーっと読める本だが、メッセージがハッキリとはしてないので、「ん?何が言いたいの?」と思う人もいるかもしれないが、ハマる人はハマるだろう。そういう人には、心をくすぐる一冊になるはずだ。


【朝井リョウの本】

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