大人の流儀
著者:伊集院 静
出版社:講談社
伊集院静を、テレビ番組(ゴローデラックス)で見かけたのがきっかけだ。態度は不遜な感じで、「なんだろーこの人」と思わされるが、言うことにイチイチ、何か惹きつけられる。子に人生の生き方を説くような父親のような雰囲気を持っていた。
で、「大人の流儀」を買って読み始めたわけだが、第一印象は、“のらりくらり”。エッセイのような思ったことをありのまま、気の向くままに書いたような中身。ある意味、驚きで、文章におきかわっても、そこから伝わってくる雰囲気がテレビで見た場面そのままなのだ。もっと驚きなのは、“のらりくらり”・・・超マイペースに書かれたこの本の販売が100万部を突破したという事実だ。居酒屋で話す親父の言葉を文章にまとめたような印象なのだから。
でも、読んでいると、なぜかイチイチ・・・チクチクと突き刺さるときがあるんだよなぁ。
『私は、人が社会を知る、学ぶ上でのいくつかの条件のひとつは、“理不尽がまかりとおるのが世の中だ”ということを早いうちに身体に叩き込むことだと思っている。・・・(中略)・・・“そんな理不尽な・・・”などと言ってはいられない。なったものは受け入れて、“世の中に理不尽はある。これを機にこちらも改革し、たちむかおう”と、すぐに対処できるかどうかは、その人たちが理不尽を知っていたかが決め手になる。だから、諸君、煙たがられたり、嫌われることを怖れてはいけない。言うべきことをあなたの言葉で言いなさい。それが新人に必要なことだ。』(本書「大人が人を叱るときの心得」より)
人一人の人生の密度の濃さをなめちゃいけない、と直感的に分かっているから、いちいち著者の言葉に反応してしまうのかもしれない。密度の濃い人生を送ってきた人の言葉には、(全部ではないにしても)大いなるヒントがある。40年以上生きてきた私自身の実感だ。著者の人生の密度が濃いかどうかなんて分からないって?まぁ、でも、あの夏目雅子が見初めた人だもの。とにもかくにも本書を読んでいると、まるで、スマフォにハマり過ぎて、リアルな世界やリアルな人との接し方を見失いつつある我々現代人の歪んだ精神を整体してくれるかのよう。
それにしても、やはり“のんべんだらり”としたつかみどころのない書きっぷり。もうちっと、論理的に読者の頭に重要なことがすんなり入ってくるように書けないものかなぁ・・・と思ったところに本の中の一文が目に飛び込んでくる。
「ドキッ」。
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