なんでお店が儲からないのか僕が解決する
著者: 堀江貴文
出版社:ぴあ
さてさて、なぜこの本を読んだのか? ホリエモンが書いたし、なんとなく読んだ・・・・・・ではなく、そこには実は明確な理由がある。端的に言えば、「飲食業が苦しんでいる理由」を知りたかったからだ。仕事がら、飲食を生業にするクライアントと接する機会が多いためだ。
なお、私が持っている“苦しんでいる”というイメージは次のようなものだ。飲食業界全体通じて、お客は値段に敏感・・・という印象。だから、多くのレストランオーナーが安さ・・・で戦いを挑んでいる。そこで経営者は、たとえばファミレスなどであれば、限りなく合理化をすすめてコスト削減を行っている。人件費が一番お金がかかると言われる業界だから、ウェイターやウェイトレスは、最小人数に抑え、賃金も決して高いとはいえない。そういう環境では、従業員に対して満足度の高いケアができないし、精神的にもモチベーションが上がらない。こうしてブラック企業の俎上ができあがっていく・・・。こんな状態では、やれコンプライアンス教育だ、やれ多少の賃上げだ、と気合を入れたところで、焼け石に水だ。
だから私は常々・・・そもそも満足のいく待遇を与えられない環境ができあがっていること自体が・・・そうなってしまっているビジネスモデル自体が問題なのではないか・・・と感じていた。だとしたら、どうすればいいのか・・・そんなことをぼんやりと考えていたときに、この本に出会ったわけなのだ。
実際に、本書ではホリエモンも次のように述べている。
『値段を抑えたいなら、それなりのビジネスモデルをきちんと考えること。人件費や材料費を抑えるのではなく、適切な情報を集め、機械化やロボット化、マニュアル化を含めた賢い工夫で合理化をすすめるべきだ。従業員であれ、お客さんであれ、もちろん店主であれ、誰かが不幸になるのは成功するビジネスとは言えないだろう』(本書より)
そんな本書だが、あらためて何が書かれているかというと、レストラン経営者の悩みについて、食事のほぼすべてを外食で済ませるというホリエモン自らの豊富な経験則をもとに、レストラン経営における問題を指摘し、助言を提示しているものである。前半は、ホリエモンの考察が、そして、後半は、レストラン経営者からの質問に一問一答形式で回答するQ&A集となっている。
本書を読んで納得のいく答えが得られたか?ワウファクター(驚きの要素)はなかったが・・・そもそもそんなものがある世界ではないだろうから、そこに贅沢を求めない・・・が、個人的には、自分の考えの裏付けや多少なりと解決のヒントを得ることができたのでOKだ。ただ、始めから終わりまで、全て似たような内容ではある。特に後半のQ&A集を読むとわかるが、レストランオーナーの悩みは、みんな同じワナに陥っているだけなのかもしれない。ホリエモンは語る。
『ブラックな労働環境を生んでいるのは、もっと古い世代と、そこに続く職人の世界だと僕は考えている。せっかく自由な世界にありながら、自分たちで世界を狭くしている』(本書より)
『モラルの低いお店や会社だと、従業員の賃金が安くてブラック家することもある。だからといって、規制すれば解決する問題じゃない。モラルや社会的地位を高めれば解決するだろう。それよりも「なんでもあり」な状況で、面白い業態を考えついて実行したり、斬新なメニューを出したりするほうが絶対に楽しい世界になる。』(本書より)
答えは割とシンプルだが、そのシンプルなことが、できていないだけなのだろう。ホリエモンにしたら、こうした課題があまりにもはっきり見えすぎて・・・それでいてなかなか解決されない世の中に一石を投じたかった・・・とにかく自分がさらにおいしい食事にありつきたいのだ、みんな頼むよ・・・と、そんなところだろうか。
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