そんなわけで、仕事に対する価値観って三者三様なのだ。だから私は自分の考えを他人に押し付けるつもりもないし、尊重するように意識してきた。
そんな風に考えていた私の懐に、偶然飛び込んできた一冊の本がある。
仕事にやりがいを感じている人の働き方、考え方、生き方
著者: 毛利 大一郎
出版社: 幻冬舎
偶然・・・と書いたのは、私が個人的に登録している献本サイト・・・レビュープラスさんからの献本だったからだ。ちなみに献本されて書評を書くからって、わざと持ち上げるつもりはない。いつものように思ったことを素直に書かせていただく。
●著者が尊敬できる10人の尊敬できる人の生の人生、生の声
著者が尊敬するという10人たち。その人たちにインタビューをし、彼ら・彼女らの仕事に対する考え方、そこから派生する人の生き方について生の声をまとめた本だ。
そこから何が得られるというのか? 私が感じたのは次の2点だ。
1点目・・・腐らず立ち直るためのきっかけ
紹介されている人たちは、いずれも途中で大きな苦労や挫折を経験した10人だ。奥さんを脳腫瘍で失った人、仕事で目が出ずニートになった人、開発しても開発しても売上につながらない人、お客様から三行半をつきつけられた人などなど。そんな人たちがそのとき何を思い、そしてそこからどうやって立ち直ったのか・・・本書を読むと、その追体験をすることができる。
2点目・・・自分の仕事に対する価値観を考え直すきっかけ
「仕事にやりがいを感じている人」ということに共通点を持つ10人だが、では完全に仕事に対する考え方が一致しているか、というとそうでもない。人それぞれ、経験を通じた想いがある。「仕事は人生の一部だから、楽しくやりたい」「仕事も大事だが、仕事だけが人生じゃない。家庭も大事。両方を大事にしたい」・・・などなど、本書に登場する人たちが考える仕事に対する価値観も三者三様だ。本書を読めば、こうした人達の考え方と自らの仕事に対する価値観を照らし合わせることができる。
●どこにでもいそうな身近な10人・・・それが本書の最大の特徴
本書に取り上げられた10人は決して、雲の上の存在ではない。自分と同じ生身の人間であり、身近に感じられる、いわゆる普通の人たちばかりだ。たとえば、これが孫正義やビル・ゲイツの話であれば、尊敬はできるが、すごすぎてマネをすることは到底無理という結論に至るかもしれない。また、「日本でいちばん大切にしたい会社」という本があるが、そういった本で紹介される人たちはそれこそ本当に苦労もしているし、その分大きく成功し、本当に立派な会社を切り盛りしている。だが、あそこで紹介されている人たちも、やはりやや遠くの存在に感じるかもしれない。本書で紹介されている10人は、(こんな言い方をしたら本当に失礼だが、わかりやすく言えば)ごく平凡な人たちだ。だが、自分たちなりの生き方を見つけ、それに向かって一生懸命生き、充実した毎日を送っている人たちだ。
このような人たちの話だからこそ、読み手にとっては身近に感じることができ、大きなやる気につながるのではなかろうか。
●平易な文章・・・それがまた印象的
正直、著者の文章力は決して高いとは思わない。なんというかこう10人の事例を、メリハリなく、とつとつに語っている感じだ。読み始めた最初・・・「この本大丈夫か?」・・・とそこに違和感を感じたが、最後まで読んでみると、かえって変な装飾や演出がない面が新鮮であり、朴訥であり、著者自身の良い人間性が伝わってくる感じがして・・・結果的にはプラスだったと思う。
●これから社会を切り開く若者たちに
20代から30代の人たちがターゲットだと思う。最近は新卒で就職してもすぐに辞めてしまい・・・果ては大きな挫折につながっていく人が少なくないと聞く。そういった人たちが仕事をどう捉え、どのような生き方をすることができそうなのか・・・先輩たちの声を聞くことは何らかの良い気づきを与えてくれるのではないだろうか。