この本は、ルーキースマートについての本だ。ルーキーは新人のことだ。と言ったところで、当然「ルーキースマートってなに?」となるだろう。本書によれば、「全ての人、周囲にある全て、から学ぶことができるマインドセットを持つ人」だ。要するにルーキー(新人)こそ、「学習意欲の塊」になれるわけで、そうした人が持つ「とにかくあらゆることから学んでやろう」という状態をルーキースマートというのだ。
実際、ルーキー(新人)の方が経験者を圧倒する場面に出くわしたことないだろうか。著者自身が人生の中でそういう経験をしてきたし、彼女が世界中の組織のリーダーや経営者に対してコーチングを実践してきた中でも、ルーキーが経験者を圧倒する場面を何度も見てきたようだ。「どうやらこれは偶然ではなく何か法則があるはずだ」と思い、その法則をデジタル化しようと試みた集大成が本書ともいえるだろう。
しかしながら、どうしてルーキー(スマート)なのか。ルーキーじゃなければいけないのか。本書を読むと、次のような理由が見えて来る。
- 固定観念/偏見がない
→ だから経験者が避けがち/見落としがちなことに気付ける/新鮮な発想が出やすい - 自分の力量がたりないことを自覚している
→ だから、色々な人に素直にかつ必死に頼ろうとし、結果、たくさんの人の力を引き出せる - 高い緊張感を保っている
→ だから、全てに感度が高く反応係数も上がる - 失敗をしちゃいけないと言う制約が少ない
→ 大胆なことにチャレンジできる
そう言えば・・・。つい先日読んだ「パラノイアが生き残る」で、著者が次のようなことを言っていたことを思い出した
「新しく入ってくる人たちが経営者やリーダーとして前任者より能力があるとは限らない。しかし、1つだけ前任者より確実に優れている点があり、それがおそらく非常に重要な点なのだ。それは、自分の全人生を会社と共に過ごし、現場の混乱の原因に深く関わってしまった前任者と違い、新しい経営者には思い入れやしがらみがないと言う点だ。すなわち、現況においても割り切ったものの考え方ができ、前任者よりはるかに客観的に物事を捉えることができるのである」(パラノイアだけが生き残るより)
確かに、著者のいうことに合理性はありそうだ。では、ルーキースマートが事実だとして、経験者はもう終わりなのか? 「いや、違う。そうではない。経験者でもルーキースマートのマインドセットを持つことができる。それには・・・」の答えが、本書の付加価値と言えるだろう。
ルーキースマートになれる手段として、なるほどと思った例を1つだけ挙げておく。それは、「知らないことリスト」を作るというものだ。その心は「経験者はそもそも自分が知らないという事実を認めたがらないし、無意識の内に調べることは全て、自分が知っていることの裏とりばかりに終始する」からだ。「自分が知らないこと」を明示的に書き出すことで、素直にその事実を受け入れられる、ということだろう。
ところで、こうした本質が分かると、逆に「ルーキーだからといって必ずしも結果を残せるわけではない」ということもわかる。なぜなら、ルーキーであっても、先に挙げたルーキーのメリットを殺している人がいるからだ。わたしの身の回りにもいる。たとえば「いろいろな人に勇気を持ってきける」というメリットにしても、最近ではインターネット技術が発達したばっかりに「とりあえずネットで調べようとする」人が多い思う。
このように考えていくと、本書を読むべき人は、次のようにまとめることができるだろう。
- ルーキーの人
→ ルーキーであることのメリットを正しく理解し、それを最大限活かせる術を学ぶため - 成長したい人
→ 自分の能力を超えたことに挑戦することが大事だし、むしろその方が組織のためになることを理解するとともにそのような状態に身を置く術を知るため - 経営者や組織のリーダー
→ いかに「成長できる人」を増やし「成功」を増やし、組織を活性化させるかを知るため