2011年11月15日火曜日

書評: 佐藤可士和の超整理術

「仕事ができるかどうかは、机の上を見れば分かる」

ある意味、この言葉の正しさを証明してくれる本だ。

タイトル『佐藤可士和の超整理術』
著者:佐藤可士和
発行元:日経ビジネス文庫 価格:750円


この本を買ったきっかけは数年前に見たNHK番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」だ。佐藤可士和氏がSMAPやキリンレモンなどのプロモーションでの大活躍ぶりが紹介されていたことは、今でも鮮明に私の記憶に残っている。

■空間の整理=情報の整理=思考の整理

さて、そんな佐藤氏が書いた本のタイトルは『佐藤可士和の超整理術』。”整理”と聞くと、モノの整理整頓!をすぐに思い浮かべる(実のところ、私もそのつもりでこの本を買ったのだが (^_^;))。ところが、ここで氏が言う”整理”とは、大きく次の3つのことを指している。
  • 「空間」の整理(※これが一般的に我々が連想する物理的な整理のことだ)
  • 「情報」の整理
  • 「思考」の整理
本の帯にも書かれているのだが、つまり一言で言えば「整理力をつけて問題解決力を養おう」・・・それがこの本の趣旨だ。著者に言わせれば「空間の整理」も「情報の整理」も「思考の整理」も、実は全て同じ活動の延長線上にあるのではないか、そして「思考の整理」の前段階に、「情報の整理」があり、「情報の整理」の前段階に「空間の整理」があるのではないか、というわけだ。さしずめ整理の初歩段階的活動とも言える「空間の整理」ができずして「思考の整理ができるのか」といったところだろうか。

整理とは”不要なモノを捨てること”と国語辞典にはあるが、なるほど著者の言うとおり、それは裏を返せば「自分にとって大事なものは何か」を選ぶことに他ならない。つまり、整理をする際には本来、その対象が何であっても、

「何を捨てるのか」 → 「何を残すのか」 → 「何で重要なのか(何に使うのか)」

といった思考プロセスを踏むことになる。

■著者の整理プロセスを疑似体験できる

”問題解決力”などという言葉を使い出すと「尤もらしく聞こえるが、抽象的な言葉ばかりが羅列されたぼんやりとした解説本なんじゃないの?」という疑念がわく。

そこはさすが経験豊富な佐藤可士和氏。それぞれの整理のあり方について、彼が実際に実践して結果が出たもののみを採用し、理由から実践の方法まで事細かに解説してくれている。ちなみに「空間の整理」で鞄の整理について触れているのだが、私は早くも私生活に取り入れて効果を得ている。

「情報や思考の整理」については、私自身がコンサルタントであることから、整理術そのものにそこまでの目新しさがあったわけではないが、それでもやはり業界の最前線で活躍するプロ中のプロの整理プロセスを共有できることは大きな財産である。どうやってクライアントから情報を引き出し、整理し、具現化させたのか、あたかも私自身が佐藤氏の現場にいると錯覚してしまうかのように、彼の頭の中をさらけだしてくれている。しかも、ありがたいことに彼がその結果として実際に作り上げた作品(写真)も掲載されているので、頭の中だけでなく視覚にも訴えかけきて、読んでいて何か頭がすっきりする。

■アート/クリエイティブディレクターが整理の達人たる所以

ところで「アート/クリエイティブディレクターなんぞが、なぜ整理の達人たるのか?」という疑問を持つ人もいるかもしれない。本の1章でその理由について触れられているので、あえてここで細かくは言及しないが、要するにコンサルタント・・・すなわち思考のプロだからである。「こんな製品を作ってこんな消費者に売りたい」と思うクライアントがいたとしても、具体的に何を誰にどうやって訴えればいいか分からない人が多い。それはクライアントの頭が整理されていないからだ。コンサルタントは、クライアントに的確な質問を投げ、奥底に眠った情報を引き出させ、整理させ、目に見える形に落とし込む。そういった行為をほぼ毎日、大企業の最前線で実践してきている佐藤氏は、整理について達人の域に達しているといっても過言ではないだろう。

■自らの身の回りを今一度、確認

影響を受けやすい私は、この本を読み終えた直後、自分の机の上を見てみた。汚かった。いつも「時間がない、ない」と時間のせいにしてしまっているのだが、それは単なる言い訳で、要するに、何が必要で必要じゃないかの判断と決断力・・・総じて整理力が弱いということの証明だ。

と、いうわけで慌てて仕事机を整理整頓してみた。何となく気持ちの良く整理された机の上でこの記事を書いたわけだが、その効果はいかに・・・。



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