2014年12月27日土曜日

書評: 人に強くなる極意

たたき上げの実力者。鈴木宗男さんと仲の良い人。ロシアに精通する人で、逮捕されても信念を曲げないブレない人・・・そんな印象を持つ佐藤優氏の名前は色々な場面で目にしてきた。だが、これまでに彼の本を読んだことはなかったので、思わず手に取った。

タイトル:人に強くなる極意
著者:佐藤 優
発行元:青春出版社
価格:838円



■グローバル社会における人との接し方指南書
今の時代、一定の成功をおさめるためには、人との接し方をマスターしなければならない。それもグローバル社会に通用するものを。本書は、その指南書だ。グローバル社会における人との折衝においては、そのテクニックがフルに要求される外交官。かつてその立場にあった著者が、自身の痛みを伴った経験を踏まえつつ、役立つことを示してくれている。

■してはならない全8箇条
第一章「怒らない」にはじまり、「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」・・・本書はこのように「人との折衝において、してはならないこと」という視点でまとめられている。各章では、それぞれのテーマに対して「どうしてそうしてはいけないのか?」、そして「そうしないためにはどうしたらいいのか?」というポイントを解説している。

具体的には、どんなことが書かれているのだろうか? たとえば、第一章の「怒らない」。著者は、目的を持って怒るのは良いが、理由なく怒りに身を任せるのは良くないと述べている。さらに、人との折衝において怒りに身を任せないようにするためにはどうしたらいいか、怒りに身を任せている相手と折衝するときにはどうしたらいいか、についてアドバイスをしてくれている。

■標準的な努力ができる人なら確実に実行できるもの
本書の特徴は2つ。著者自身が「はじめに」で述べているように「標準的な努力ができる人なら確実に実行できることだけ」が書かれた本である、ということ。「本当にそうか?」と思いつつ読んだが、なるほど実行可能なことばかりが書かれている。たとえば第七章「あきらめない」における「目標は終わりがイメージできるものに」では、次のように記述している。

『「執着」の泥沼に陥ってしまう人は、たいがい「終わり」や「出口」の見えないものを追いかけている。・・・何か目標設定をする時は、完成形がイメージできるもの、実現可能なものにすることが大切です。たとえばもし東京に住んでいる人なら、比較的簡単に上れる高尾山や三峰山に登るという目標を立てる。あるいは伊豆七島を全部回るとか、頑張れば達成できて、しかも充実感のある目標を立てて楽しんでみるのです。』

特徴の2つ目は、各章のテーマに絡めて、役立つ本を数冊紹介してくれている。これは興味深い。「~してはいけない」という著者の意図を理解した後だけに、余計にそうした本に手を出したくなる。余談だが、「びびらない」という章で紹介されていた梶原しげるさんの「すべらない敬語」という本・・・買ってしまった。

■私が本書に影響を受けたこと
私が実際に読んで見て、全部ではないがいくつか、琴線に触れるものがあった。先に例に挙げた「目標はイメージできるものにすべき」、という主張もその一つだ。自分のつたない人生を振り返っただけでも、意外にゴールが明確でないゲームなどに熱中してハマって時間を無駄に費やしたことが思い浮かぶ。反省したい。

書いてあることがほとんど役に立つというものでもないので、誰もが絶対に読むべきとは思わないが、本書はターゲットを選ばないし、人によっては読めば何か得るものがあるかもしれない・・・そんな本である。


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