2017年2月26日日曜日

書評: 新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~

最近、「リーダーとはどうあるべきか」ということについて良く考える。
  • とにかくやりたいことを強く持っており、その熱を帯びている人
  • その熱を周りに伝えることができる人
  • その結果に責任をとる覚悟がある人
  • 多少なりと一般的な教養を持っている人
これは単に私の「リーダーとはどうあるべきか」に対する持論だ。とりわけ経営者として40代も半ばになり、こうした自分なりの考えを持てるようになってきたせいもあるだろう。リーダーシップとはどうあるべきか?ということについて、本当に良く考えてしまうのだ。

さて、このあたり著名なお二人・・・池上彰氏や佐藤優氏はどう考えているのか?

新・リーダー論 ~大格差時代のインテリジェンス~
著者:池上彰・佐藤優
出版社:文春新書



本書では、現代のようにアトム化する(原子のようにバラバラでまとまりがない)社会、ポピュリズムが台頭する社会・・・において、「あるべきリーダーの姿も変わっていくべきか」、「変わるべき・変わるべきでないとしたらそれはどんなリーダー像か」、「リーダーはどのように育てられるのか?」といった論点を追究している。「裁判員裁判制度」「日本の核保有」「アメリカの選挙戦」「トランプ大統領」「ブリグジット」などといった最近、話題になった時事ニュースに対する著者二人の考察を通じて、新・リーダー論につながるキーワードを引き出し、最後にまとめ・・・それが本書のアプローチだ。

本書を読んで、私が感じたことは次の3点である。

1つには、結局、環境が変わっても、求められるリーダー論はそれほど変わらないのでは?というものだ。ただし、これは人それぞれがどう感じるかなので、このあたりは、本当は他の人の意見も聞いてみたい。

2つには、今まで以上にリーダーを育てることを強く意識していかなければいけないというもの。現代の環境はリーダーが育ちにくい環境になりつつあるというのが本書の指摘だからだ。なお、「リーダーを育てることを意識すべし」という点については本書だけでなく、過去に読んだ「経営パワーの危機」の著者、三枝匡氏もそうだし、「生産性」の著者伊賀泰代氏もそう言っていたように記憶している。たとえば、伊賀氏は、その著書の中で次のようなことを述べていた。

『米国の企業や大学では、リーダーシップとは新入社員も含めた全員がもつべきスキルであり、そのスキルは学び、訓練をすることで、誰でも身につけられると教えています。これは、世の中にはリーダー資質をもつ一部の人と、リーダーには向かないその他大勢の人がいるとか、組織には優れたリーダーがひとりいればよい。他のメンバーに必要なのはフォロワーシップである。全員がリーダーシップなど発揮したら組織の和が乱れる」といった日本的な考え方とは異なります。』(生産性より)

このように“もともと育てるという気持ち”が薄い日本において、輪をかけてリーダーが育ちにくい環境になりつつあるという本書の指摘は、我々への大きな警告だと思った。

3つには、だからこそ、組織の経営者などが本書を読んだほうがいいというものだ。ちなみに、著者の二人が触れる話題が広範囲で、たまに横道っぽい話も含まれているので、読む際にはしっかりと「リーダー論」ということを念頭において読み進めないと何も残らない可能性がある。2回は読んだほうがいいかもしれない。


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