著者:ケヴィン・ケリー
示唆に富む本。
一言で感想を言えと言われれば、この言葉しか思いつかない。ただし、本書はタイトルから想像されるようなインターネットの次に来るものが何かについて1つの具体的な答えを明示している本ではなく、「どんな観点で次のテクノロジーや流行が生まれるのか、何が付加価値を持つようになるのか」を示した本だ。
「どんな観点」が、本書のいう「未来を決める12の法則」にあたる。それは次のようなものだ。
1. Becoming
2. Cognifying
3. Flowing
4. Screening
5. Accessing
6. Sharing
7. Filtering
8. Remixing
9. Interacting
10. Tracking
11. Questioning
12. Beginning
たとえば、Sharing。ここで筆者が言及しているのは「これからは群衆がますますサービスの力になっていく」というものだ。技術が発達し、ネットワークで繋がり、最適化される。それは今の世界でもどんどん起こっていること(Facebookではみんなが投稿した情報が、GoogleではみんながアップしたWEBページが、Amazonではみんなが評価したコメントが、ウーバーは車のサービスが・・・)だが、これからはもっともっとそれが広がる。「え!?そんなものシェアできるの!?」と思っていたものがシェアできるようになるのだろう。自分がいま従事する仕事の中でシェアできそうなものは何か・・・そう考えると新しい仕事のヒントが得られるかもしれない。
Questioning。技術は発達すればするほど人間の仕事が機械にとってかわられるが、人間が持つ好奇心・・・そこからくる「問い」は人間が持つ固有の能力だ。将来、何か知りたいことがあればすぐに答えが提示されるようになるだろうが、それをもとに新たな疑問を持つのが人間というものだろう。つまり、そこから想像できるのはこれからの我々の付加価値は「質問する力」なのかもしれない。
本書の悪い点をいうなら、やや冗長的で、抽象的な表現も少なくないことから、読みにくさがあるという点だ。また、よくよく考えれば当たり前のことばかりが書いてあるじゃないか・・・そう思う人もいるだろう。
ただ不思議と、私は吸い込まれるように本書を読んだ。1つには翻訳者のスキルが高いのだろう。日本語に滑らかさがあり、自然に読み進めることができた。冗長である点も、自分の理解を繰り返し確認できるという意味で特に苦痛ではなかった。
また、当たり前と言えば当たり前という点についても、全体が12の法則の基に体系的に整理されていて頭の中を整理することができた。また、色々なことをかんがえさせてくれた。「答えを求めているのではなく、ヒントを求めている」という人には刺激を与えてくれる本だろう。本を読みながら、次次と未来の世界が私の頭に浮かんできた。
10年後、20年後、30年後・・・いや、100年後の世界はどうなっているのか。もちろん正解は誰にもわからないが、間違いなくそれを考えるためのヒントを得ることができたと感じる。
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