出会えてよかった・・・一言でいえばそんな本だ。手に取ったのは全くの偶然だったが。
本書は、Googleやホールフーズ、エアビーアンドビー、アリババ、ネットフリックスなど、昨今すごい勢いで伸びている企業群の企業文化とその醸成方法にスポットライトをあてたものだ。それら企業が何を大切にしているのか、どうやってそれを実現しているのか、そこに共通点はないのか、といったことについて著者の考察を示した本である。
このような話をすると「またGAFAか・・・」と思うかもしれない。だが、決してGAFAの話ではない。本書が取り上げているのは「成長もしているしそこに見出されている企業文化も素晴らしい」と思われている企業である。だからなのか、本書はAmazonやFacebookよりもむしろ、その他の企業に多くのページを割いている。
こういう類の本は、ともすれば抽象的な話に終始しがちだ。だが、本書は「大きなポイントは5つだ。1つは・・・、2つは・・・、最後は・・・だ」というように綺麗にまとめてくるような(でも実は中身はそれほどないような)よくある本とは違う。たとえば、これらの企業では採用時にどのような工夫をしているのか、どんな質問を投げかけてフィルターをかけているのか、また、退職者に対してどのような接し方をしているのか・・・など、事細かな事例がそこには書かれている。
私自身、読みながら気になった箇所のメモを取って行ったが、最後には5ページにもなっていた。それだけ役立つ情報が書かれていたという証明でもある。そんな私のメモを見ると次のようなことが書いてある。
ネットフリックス社の自分たちの組織への不適合者の辞めさせ方について。普通だったら、「辞めていくやつにお金なんかやれるか」となるのが人の心だ。だが、彼らは、退職者に手厚い手当を出す。そうしなければ、辞めさせることに対するリーダーの精神的負荷が高くなるから上に、それによって辞めるべき人がいつまでも居残り続けることになるからだ。そうすると企業文化がそこから腐っていく。気持ちよく大きな手当を出した方が、お互いにとってハッピーになるのではないか・・・そう考えた結果だそうだ。
また、顧客満足度の測り方について。エアビーアンドビーでは、単純に「満足度は5点満点中何点ですか?」という聞き方ではなく、もし5点満点ではなく6点満点だとして6点をつけてもらうためには、あと何をすればいいですか?という聞き方をするという。人間心理をついたうまい聞き方だ。
さらに心理的安全性の作り方について。ブレインストーミング的な手法は確かに有効だが、実はそこにディベート方式も採用すると意見が出やすくなるという話。人間である以上どうしても忖度してしまう。だが、ディベートという方式を採用することは、そうした心理障壁を取り除いてくれるというわけだ。
何にも増して心に響いたのは「どんな企業でも、ある程度の規模になったら、企業文化が『腐ってくる』のは事実上避けられない」という一文だ。だからこそ、文化を醸成するために採用から評価、体色にいたるまでとてつもない労力を割いているということが腹落ちする。
そして、我が身を振り返って自分の組織はどうなのか? この本で言及されていることはすぐにでも自分の会社に活かせるヒントがあるそう思った。
そんなわけだから経営者には間違いなく必読の書。「企業文化は日本の伝統大企業のおはこ。ここに取り上げられているのは比較的新しい企業ばかりだし外国企業ばかりだから、そこに本当に学びはあるのか。読むのに抵抗感がある」。そう思ったとしたらそれは大間違いだ。これを読まないことがどれだけもったいないことか。それくらい重要な意義を持つ本だと自信を持って言える。
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