「人のリスクの捉え方を知っておくことで、リーダーは、適切なリスクコミュニケーションを取れる可能性が高まる。だからリスク心理学を学ぼう」
著者のメッセージをあえて一言で言うなら、こんな感じだろう。
著者は、人のリスクに関わる行動を、思考を構成するシステム1と2の組み合わせで論ずることができると言う。
システム1が持つ思考の特徴は直情径行型で思ったことを身軽に実行に移すことであり、システム2の特徴は慎重居士で腰が重いことである。じっくりしっかりとものを考えるため、その分、知的な負担は大きい。だから、我々の判断は、リスク認知を含めて知的な負担の小さいシステム1思考に依存しがちになると言う。
だから例えば10万人の飢餓が出ているから助けてほしいというメッセージよりも、そのうちの一人の悲惨な状態にスポットライトを当てた方が、システム1の思考に影響を与えやすく、結果として人は行動に移しやすいというわけだ。
逆にこのこと(システム1が主導権を握りやすいこと)が人の判断に違いや歪みを生む温床になっているとも言える。例えば、能動的な行為か受動的な行為かでも、リスク許容度が異なるようだ。具体的にはスキーや喫煙のような能動的に行う行為は、電力や自然災害のように通常の日常生活を送るだけで関わることになる受動的なハザードに比べて1000倍もの大きなリスクが許容されているとのデータがある。
結果として、本来ならそこまで害がないものを過度に恐れて、「そんなリスクは取れない」という意思決定をしてしまう場面を、私たちは数多く見てきたはずだ。「飛行機に乗って死ぬ確率の方が自動車事故で亡くなる確率よりも低いのに、飛行機に乗るリスクは取りたくない」と言うのも1つの例かもしれない。
そういう時こそ、リーダーは、システム2に頼ることが重要だと著者は言う。つまり統計データを示すなどより客観的に物事を捉え説明することだ。
著者の結論はこうだ。
「組織のリーダーとしてリスク管理を行う人は2つの思考システムの両方を機能させる必要があると言うことです」
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