久しぶりに中央公論(2014年3月号)を買った。最近は、どこも韓国に関する記事が多いが、一番気になったのは、韓国とは全く無関係の記事。ヴァージン会長のリチャード・ブランソンへのインタビュー記事を発見。考えてみれば有名な人だが、彼のコメントに目を通したことはほとんどない。
気がつくと、食いついて読んでいた。出だしでいきなり・・・以下のコメント。
リチャードブランソン
『(リチャード・ブランソンは)「リスクを冒さなければ何も得られない」、そして「人生で最も大切なのは自分の評判である。たとえ大金持ちであっても、世間の評判が悪ければ決して幸せになれない」という両親から叩き込まれたモットーを、常に心の支えとしている。』
世間の評判を気にする・・・ともすれば「人の目ばかり気にして自分がない」という指摘の声が聞こえてきそうだが、それは揚げ足とりというものか。より多くの人の幸せを考えることが、結果、成功につながる・・・という言葉の裏返しだろう。
そして、知らなかった。ヴァージン会社の特徴・・・というか、小さいことは美しい・・・というリチャード・ブランソンの思想。
インタビューワ
ヴァージン・グループには四つの柱がありますね。一つ目は世界的な展開をしていること、二つ目は、中央本部がないこと、三つ目は管理ヒエラルキーがないこと、四つ目は官僚的な部分を最小限に抑えること。このようなシステムは、将来の企業モデルになるでしょうか。
リチャード・ブランソン
『小さいことは美しい。グループ会社として大きくなってくると、同時に小さいままでいることが重要になってきます。ですから、たとえばビルの中に150人以上の人間がいるようになると、副社長、副セールス・マネージャ、副マーケティング・マネージャを呼んで、「これからは会社を折半して、あなたたちが新会社の、社長であり、セールス・マネージャであり、マーケティング・マネージャです」と宣言します。誰でも小さい会社で働く方が好きなのではないでしょうか。ヴァージン・ブランド傘下であることの強みを保ちつつ、ずっと小さなユニットのために働くことになる。結果として集合的にはるかに強くなっていると思います。これまで一社として倒産させたことはないし、借金はいつも返済し、自分たちの責任を果たす組織であるという評判を維持するようにしてきました。』
色々な経営者が語っていることをまた別の言葉で表現しているだけだろうが、やはり成功者が発言すると説得力がある。いつだったか、誰かの本で、組織は50人を超えると効率的な動きがしづらくなるとか・・・。50という数字が妥当かどうかは別にしても、小回りがきく組織というのは、確かに優れた成果を発揮しやすいのだろう。
20代後半から、今日にいたるまで毎日を全速力で駆け抜けてきました。疾走するスピードは毎年加速度的に増えています。 そんな自分の足跡を残したい、考えを整理したい、自分の学びの場としたい・・・こういった思いからこのブログを立ち上げました。とりわけ、読んだ本や雑誌、観た映画、その他遭遇した事件・・・などなど、思いの丈を吐露しています。
2014年2月25日火曜日
2014年2月24日月曜日
顧客満足度調査の妙
久々の投稿。仕事に忙殺されて、完全に雑誌や本から遠のいてました。また、徐々に生活のリズムが取り戻せればいいのですが・・・。
以下、日経ビジネス2014年2月17日号と24日号から気になった記事の引用。
『アトラクションごとに「非常に満足」から「非常に不満」まで5段階で評価した場合、「非常に満足」の絶対数こそが(リピータ率向上につながる)カギになります。満足度を学校のテストにたとえれば、一定の「合格点」を超えればいいのではなく、「満点」でなければなりません。しかも、アトラクションの人気と顧客満足度は必ずしも比例しません。』(日経ビジネス2014年2月17日号 オリエンタルランド 加賀見俊夫)
顧客満足度調査って良くやるが、手段(調査)が目的化してしまうことが良くあるのだと思う。何気なく設定したこちらからの設問に対して、比較的高い点数を返してくれれば、それでOK・・・と判断してしまう・・・みたいな。顧客満足度調査ひとつとっても、点数をどのように解釈すべきか・・・そこをつかみとらないと単なる自己満足で終わってしまう、ということだろう。
『ユニ・チャームも変化の兆候をつかんでいなかったわけではない。「日本国内のベビー用品店で中国人が加増の紙おむつ「メリーズ」を買い占めているらしい」。2012年の中頃、営業担当者からこうした報告が入り始めた。しかし「輸出品の価格は中国国内産に比べて4割ほど高い。需要が急拡大するわけがない」と判断し、対応が遅れた。』(日経ビジネス2014.2.24号 ユニ・チャーム、中国で失速のワケ)
この記事を読んで企業のリスク管理をどうあるべきか・・・について、悩んでしまった。こういう事態の検知と、検知したとしてそれを将来のリスクとして対応をとるかどうかの判断・・・「あのとき、こうしとけば・・・」とか「あのとき、あの人にいっておけば・・・」とか、いくらでも言えるが全て結果論だ。おそらくリスク管理部・・・というより、経営企画部などがこうした事態への対応責任を持つのだろうが、果たして、こうした事態をリスクとしてとらえることができるのか、それを誰がどうやってとらえる環境を醸成するのか・・・。なにかこう、まだモヤモヤっとしている。
『在庫を極限まで減らして緻密に部品供給網(サプライチェーン)を管理すればするほど、不測の事態による影響は大きくなる。ただ、三菱自動車の益子修社長は「自然災害を想定して在庫を増やしたり供給網を分散したりするのは現実的でない」と話す。復旧に全力を尽くすしかないのが実情だ。(日経ビジネス2014.2.24号 時事深層より)
BCP(有事にも重要業務を継続するための行動計画)というキーワードが登場して久しい。BCPは考え方を提供してくれるが答えを提供してはくれない。今回のこうしたリスクに対して、企業にとって有効な対応策はいったいなんなのか? BCPと言うと、仮に1つの工場が撃沈したとしても、もう1つの工場で肩代わり生産・・・みたいな代替手段による継続・・・が注目されがちだが、BCPはBCPでも、益子社長が指摘しているように、被災した工場を速やかに元に戻すために何ができるか・・・そちら(復旧)のほうに力点を置かないと難しいのだろうと思う。
以上。
以下、日経ビジネス2014年2月17日号と24日号から気になった記事の引用。
『アトラクションごとに「非常に満足」から「非常に不満」まで5段階で評価した場合、「非常に満足」の絶対数こそが(リピータ率向上につながる)カギになります。満足度を学校のテストにたとえれば、一定の「合格点」を超えればいいのではなく、「満点」でなければなりません。しかも、アトラクションの人気と顧客満足度は必ずしも比例しません。』(日経ビジネス2014年2月17日号 オリエンタルランド 加賀見俊夫)
顧客満足度調査って良くやるが、手段(調査)が目的化してしまうことが良くあるのだと思う。何気なく設定したこちらからの設問に対して、比較的高い点数を返してくれれば、それでOK・・・と判断してしまう・・・みたいな。顧客満足度調査ひとつとっても、点数をどのように解釈すべきか・・・そこをつかみとらないと単なる自己満足で終わってしまう、ということだろう。
『ユニ・チャームも変化の兆候をつかんでいなかったわけではない。「日本国内のベビー用品店で中国人が加増の紙おむつ「メリーズ」を買い占めているらしい」。2012年の中頃、営業担当者からこうした報告が入り始めた。しかし「輸出品の価格は中国国内産に比べて4割ほど高い。需要が急拡大するわけがない」と判断し、対応が遅れた。』(日経ビジネス2014.2.24号 ユニ・チャーム、中国で失速のワケ)
この記事を読んで企業のリスク管理をどうあるべきか・・・について、悩んでしまった。こういう事態の検知と、検知したとしてそれを将来のリスクとして対応をとるかどうかの判断・・・「あのとき、こうしとけば・・・」とか「あのとき、あの人にいっておけば・・・」とか、いくらでも言えるが全て結果論だ。おそらくリスク管理部・・・というより、経営企画部などがこうした事態への対応責任を持つのだろうが、果たして、こうした事態をリスクとしてとらえることができるのか、それを誰がどうやってとらえる環境を醸成するのか・・・。なにかこう、まだモヤモヤっとしている。
『在庫を極限まで減らして緻密に部品供給網(サプライチェーン)を管理すればするほど、不測の事態による影響は大きくなる。ただ、三菱自動車の益子修社長は「自然災害を想定して在庫を増やしたり供給網を分散したりするのは現実的でない」と話す。復旧に全力を尽くすしかないのが実情だ。(日経ビジネス2014.2.24号 時事深層より)
BCP(有事にも重要業務を継続するための行動計画)というキーワードが登場して久しい。BCPは考え方を提供してくれるが答えを提供してはくれない。今回のこうしたリスクに対して、企業にとって有効な対応策はいったいなんなのか? BCPと言うと、仮に1つの工場が撃沈したとしても、もう1つの工場で肩代わり生産・・・みたいな代替手段による継続・・・が注目されがちだが、BCPはBCPでも、益子社長が指摘しているように、被災した工場を速やかに元に戻すために何ができるか・・・そちら(復旧)のほうに力点を置かないと難しいのだろうと思う。
以上。
2014年2月2日日曜日
書評: がんワクチン治療革命
がんワクチン治療革命
著者:中村祐輔(なかむらゆうすけ)
発行元:講談社
最近、高齢化社会の影響か、やたらと健康をテーマにした本を見かけるようになった。ガン関連の本もその例外ではない。そこでふと思った。自分の持っているガンの知識は大分古いのではないかと。そんなときにたまたま目にしたのが本書だ。
■ガン退治に有効なペプチドワクチン療法に迫る
ガン退治に有望視されている最新医療を紹介している本だ。その目的は、ありとあらゆる最新医療の紹介ではなく、新薬としての正式な承認が期待されているペプチドワクチン療法の紹介だ。
ところで、ペプチドワクチン療法とは何だろうか。少しだけ触れておきたい。ペプチドワクチン療法とは、著者の言葉を借りると「免疫力を高めてがん細胞を殺す治療法」、つまり、免疫療法と言われるもののひとつだ。ペプチドワクチンを投与することで、がん患者の体の中に、がんと戦う精鋭部隊を増やし、多勢に無勢だった状況をひっくり返し、がんに勝とう、という考えだ。
というわけで、本書にはガンの特徴にはじまり、既存医療の特徴と限界、ペプチドワクチン療法の特徴と仕組み、実験段階での実績、正式な新薬化に向けた活動進捗、ガンに対する専門家間のアプローチや意見の相違、これから進むべき方向性などについて書いている。
■本書がもたらす3つの驚き
以下、読んでの率直な感想だ。
まず、有望な新薬が登場しつつあるという事実に驚いた。「がんはまだまだ不治の病」という印象をもっていただけに、「いつの間にこんなに世の中は進んでいたんだ!?」とびっくりしたほどだ。
つぎに、これだけ情報技術が発達した世の中になっても、いまだに情報格差があるという事実に驚いた。ガン治療に関して、ガン患者を救うかもしれない情報が、タイムリーに届いていないのだ。本書で紹介されているペプチドワクチンの恩恵を受けた末期ガン患者の多くの人が、自らが、または近親者が、能動的に調べに調べ上げて、ようやくペプチドワクチンにリーチできたという事実は見逃せない。
最後に(どこでそう思うようになったんだかは思い出せないが)「なんだかんだで、免疫力さえ高めれば、ガンには勝てそう」という自分の思い込みが、いかに浅はかだったかを知って驚いた。がん細胞の膨れ上がり方は、気合いや、ちょっとした健康術による免疫力向上効果でなんとかなるような代物ではないようだ。ちなみに、中村先生によると、これを「多勢に無勢論」というのだそうだ。
■決して小さくない本書の意議
さて、ペプチドワクチンが全てのガンにたいする答えとなりうるのかといえば、答えはNOだ。それは著者自身も認めている。だが、ペプチドワクチンが、がん患者の希望の光になるのは間違いない。ガン患者には生きる希望が何よりのパワーだ。それこそが本書の意義でもある。
そして、本書の意義はもうひとつ。先述したように、ガン治療に関する情報格差をなくす手助けになることにある。大野更紗さん著の「困ってるひと」を読んだ時にも感じたが、生きたいなら受け身ではダメなようだ。自らが積極的に動いて情報を得る活動をしなければならないと思うのだ。「誰かが教えてくれる」「〜してくれる」という姿勢ではダメだ。本書は間違いなく、そうした意識を持つ者の助けになってくれるはずだ。
著者:中村祐輔(なかむらゆうすけ)
発行元:講談社
最近、高齢化社会の影響か、やたらと健康をテーマにした本を見かけるようになった。ガン関連の本もその例外ではない。そこでふと思った。自分の持っているガンの知識は大分古いのではないかと。そんなときにたまたま目にしたのが本書だ。
■ガン退治に有効なペプチドワクチン療法に迫る
ガン退治に有望視されている最新医療を紹介している本だ。その目的は、ありとあらゆる最新医療の紹介ではなく、新薬としての正式な承認が期待されているペプチドワクチン療法の紹介だ。
ところで、ペプチドワクチン療法とは何だろうか。少しだけ触れておきたい。ペプチドワクチン療法とは、著者の言葉を借りると「免疫力を高めてがん細胞を殺す治療法」、つまり、免疫療法と言われるもののひとつだ。ペプチドワクチンを投与することで、がん患者の体の中に、がんと戦う精鋭部隊を増やし、多勢に無勢だった状況をひっくり返し、がんに勝とう、という考えだ。
というわけで、本書にはガンの特徴にはじまり、既存医療の特徴と限界、ペプチドワクチン療法の特徴と仕組み、実験段階での実績、正式な新薬化に向けた活動進捗、ガンに対する専門家間のアプローチや意見の相違、これから進むべき方向性などについて書いている。
■本書がもたらす3つの驚き
以下、読んでの率直な感想だ。
まず、有望な新薬が登場しつつあるという事実に驚いた。「がんはまだまだ不治の病」という印象をもっていただけに、「いつの間にこんなに世の中は進んでいたんだ!?」とびっくりしたほどだ。
つぎに、これだけ情報技術が発達した世の中になっても、いまだに情報格差があるという事実に驚いた。ガン治療に関して、ガン患者を救うかもしれない情報が、タイムリーに届いていないのだ。本書で紹介されているペプチドワクチンの恩恵を受けた末期ガン患者の多くの人が、自らが、または近親者が、能動的に調べに調べ上げて、ようやくペプチドワクチンにリーチできたという事実は見逃せない。
最後に(どこでそう思うようになったんだかは思い出せないが)「なんだかんだで、免疫力さえ高めれば、ガンには勝てそう」という自分の思い込みが、いかに浅はかだったかを知って驚いた。がん細胞の膨れ上がり方は、気合いや、ちょっとした健康術による免疫力向上効果でなんとかなるような代物ではないようだ。ちなみに、中村先生によると、これを「多勢に無勢論」というのだそうだ。
■決して小さくない本書の意議
さて、ペプチドワクチンが全てのガンにたいする答えとなりうるのかといえば、答えはNOだ。それは著者自身も認めている。だが、ペプチドワクチンが、がん患者の希望の光になるのは間違いない。ガン患者には生きる希望が何よりのパワーだ。それこそが本書の意義でもある。
そして、本書の意義はもうひとつ。先述したように、ガン治療に関する情報格差をなくす手助けになることにある。大野更紗さん著の「困ってるひと」を読んだ時にも感じたが、生きたいなら受け身ではダメなようだ。自らが積極的に動いて情報を得る活動をしなければならないと思うのだ。「誰かが教えてくれる」「〜してくれる」という姿勢ではダメだ。本書は間違いなく、そうした意識を持つ者の助けになってくれるはずだ。
【医療という観点での類書】
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