2015年2月10日火曜日

書評: 人を操る禁断の文章術

人を操る禁断の文章術
著者: メンタリスト DaiGo
出版社: かんき出版



「文章のたった1つの目的、それは今すぐ人を行動させること」

そう言い切る著者が書いたこの本は、わたしなりの言葉でまとめると、「文章に関する基本中の基本」にはじまり、「人の心をゆさぶるコツ」がハイライト、そして「書き方のコツ」で締める・・・そんなストーリーから構成されている。

メンタリストDaiGoの本を前にして、このように書くと、おそらく「人の心をゆさぶるコツ」が、誰もが一番気になる箇所だろう。

この箇所には、全部で7つのポイントが紹介されている。「興味」「本音とタテマエ」「悩み」「ソン・トク」「みんな一緒」「認められたい」「あなただけの」だ。

「あれ?なんかシンプルじゃね?」・・・そう感じた人はいるだろうか。その人は、私と同じだ。テレビで良く見かけていた著者だけに、本を読む前の勝手な期待は、相手の心をいかに巧みに読み取るか・・・そういった派手なワザをたくさん教えてくれるのかなー、といったもの。だって、そもそも本のタイトルが思わせぶりじゃないか。しかし、結果はことごとくそれと逆だった。著者の伝えるワザは非常にシンプルで、派手なんかじゃない。もしかしたら、彼はテレビでも派手にパフォーマンスを見せているが、その実、中身は非常にシンプルなワザの組み合わせなのかもしれない。

一方で、先の7つのポイントを見て「あれ?なんかマーケティングっぽいな」・・・そう感じた人もいるだろう。それも正解だ。昔、わたしはマーケティングでAIDMA(アイドマ)という言葉を習ったことがある。AはAttention(注意)、IはInterest(興味)、DはDesire(欲求)、MはMemory(記憶)、AはAction(行動)の略で、人間はこの流れに従って購買行動を起こす・・・という考えだ。全く同じ表現ではないが、先に挙げた7つのポイントを彷彿とさせるものだ。人をどうやって惹きつけるか・・・突き詰めていくと、マーケティングといっしょでも何らおかしいことではないのかもしれない。

「ってことは読む必要ないの?」

どうやら、本が目新しいことを語っているかどうかと、本が面白いかどうかは別物らしい。面白いと思えるかどうかを何ではかればいいのか。わたしの場合、どれだけ学びのポイントがあったか、その一点だ。この観点では、自分でも驚いたのだが、意外に学べる点が多かったということだ。

たとえば、恥ずかしながら私は「ブレインダンプ」という言葉を知らなかった。「ブレインダンプ」とは、頭に瞬間的・直感的に浮かんだことをはき出す手法だ。これは、著者が読み手を惹きつける際の言葉を生み出す上で、最初にやってみるといい、と推奨している方法の一つだが、非常にシンプルでありながら、なかなか有効な方法だと思う。

このようなちょっとしたテクニックもさることながら、実はわたしが一番勉強になったのは、”本書の文章”そのものだ。小見出しの付け方、シンプルなワザの意義や方法を印象に残るような紹介方法・・・それらが実にあざやかで、印象的だった。たとえば、彼の指摘する文章術の1つに「自分で書かない」という項がある。最初、この表現をみたとき、「???」だった。自分で書かない?・・・ゴーストライターにでも書いてもらうのか?と。だが、このように興味をもたせた時点で、おそらく著者の意図は見事に半分以上成功しているのだ。「読んで見たいと思わせて、読ませる」・・・そう思わせる小見出しやポイントが何度も出てくる。読んだ後も、もちろん「だまされた感」などはなく、「納得感」と「印象」が残る。このような彼のテクニックが、本全体に浸透しているのである。

今まで自分はどちらかというと、論理的であること=分かりやすいこと=印象に残りやすいこと・・・と思いがちで、文章を書く際には、どう表現するか・・・の部分は、ややおろそかだったように思う。だが、そこの手を抜くと、せっかく立派な文章も相手に何の印象も残さずに終わってしまうのだろう。印象に残りやすいかどうかは全く別の話なのだ。そのことを改めて気づかせてくれたのが本書だった。

本書の文章そのものが勉強になる。それが、この本の最大の魅力だろう。


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