著者: 菅野寛
出版社: 日経ビジネス文庫
BCGとはボストンコンサルティンググループのこと。すなわち、本書はコンサルタントのプロが考える理想の経営者に共通して見出されるスキルと、そうした経営者にどうやってなるか、その方法を具体的に示した本である。
BCGと言うから難しい内容かなぁと思いきや意外や意外、良い意味で単純な内容である。理想的な経営者に必要なスキルを、マネジメント知識とロジカルシンキングが必要な「科学系スキル」と、リーダーシップが必要な「アート系スキル」の2つに分解している。さらに、リーダーシップは「強烈な意志」、「インサイト」、「しつこさ」、「ソフトな統率力」に分解できる。これらの何が足りないのかを特定し不足している箇所にどういう手順で手当てを行うかを指南しているのだ。
本書の特徴が3つある。1つは、いわゆるソフトスキルと言われる教育や習得が非常に難しいエリアに対してフォーカスし、体系的な習得に挑戦していることである。すなわち先に触れたリーダーシップのことであるが、著者の考えは経営者と言うものは資質が全てではなく、育てることができると経験的に信じているからこそのフォーカスである。
2つには、そうして紹介されている手順がコンサルタントいう高名なイメージからは程遠く非常にアナログチックで泥くさいことである。1、特定のスキルを習得したいと言う強い意志を持ち目標定める。に、集中する一時期に1つのスキルの習得に専念する…のような感じだ。とにかく半年なら半年1年なら1年手順を決めたらそれを地道にしつこくやりましょう、というのが彼の持論である。
3つには、自らの発言の裏付けに著名人の名言を数多く引用していることである。本をパッと見た限りでは、ソニー元会長の出井伸之、京セラの稲盛和夫、信越化学工業の金川千尋、セブングループの鈴木敏文、ファーストリテイリングの柳井正などなど。しかもこの方々たちの多くの人に直接会って引き出した話をもとにしている。
以上3つの特徴だが、私の印象としてはとりわけ2点目の特徴である泥臭い手順については、個人的には評価したい。なぜなら、ソフトスキルの習得と言うのは結局実践からしか学べないと思うからである。ところがいざ練習しろと言われてもどうやってやればいいかわからない。まさに、その部分にスポットライトを当ててくれている点に本書の意義があるとも言える。
読んだ素直な感想としては、著者の実際の経験、著名人の裏付け、ロジカルな説明のお陰もあって、内容に納得感がある。先述したように現実的な手法であり、かつ、本書に示される手法は経営のソフトスキルだけではなく、世の他のソフトスキルすべてに通用する話だと思う。したがって経営者になることを目指していない人であったとしても自分の欠点を見つけて治したいと言う人には何らかの形で参考になると思う。私はこの本に出会えてよかったと素直に思っている。
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