本書には、社長の振る舞い方、部長や課長の振る舞い方をはじめとした組織の運営方法が書いてある。部下の管理の仕方のありがちな誤った認識について、何社も見てきた著者の経験から解説している。
たとえば具体的には次のようなものだ。
・プロセスを評価するな、結果を評価しろ
・社員から社長の評価を聞くな
・社長が直接部下の相談に乗るな
・経営理念を社員全員に理解させるのをやめろ
上記のほか、こうしたポイントが30余り書かれている。
・・・
伸びる会社は「これ」をやらない!
著者:安藤広大
出版社:すばる舎
●経営者や管理職の人は読む価値あり
さて、読んでみて・・・どう思ったか。結論から言うと、読んでよかったと思う。面白かった。気づきもあった。ゆえに、私と同じように経営者の立場ないし、管理職の立場にある人なら一度目を通しても損はないと考える。
しかし、「伸びる会社はこれをやらない」・・・なんていタイトルの本・・・なんかいま世の中に出ている大半の本がそんな感じで同じことを別の表現で言い合っているだけじゃないの?・・・そんな声が聞こえてきそうだ。事実、私も読み始めは懐疑的だった。実際、読んだ瞬間に頭をよぎった本もあった。元LINE社長の森川亮氏の「シンプルに考える」という本だ。森川氏の本は、世の中で常識的に謳われていることをほぼ真っ向からシンプルに否定している。たとえば、森川氏の本を開くと「ビジョンなんていらない」といった文字がいきなり飛び込んでくる。安藤氏の「経営理念を社員全員に理解させるのをやめろ」なんて、森川亮氏のそれと表現の仕方が似ているではないか。でもそれは、本の書き方が似ているだけのことだ。言っていることは全然異なる。この例について言えば、森川氏の「ビジョンはいらない」は「社員がビジョンに縛られて、変化に対応できなくなるデメリットのほうが大きい」という主張であるのに対し、安藤氏の主張は「理念なんて決めると、みんなそれに基づいて勝手にどんどん意思決定してしまい、ルールが瓦解する」といったものだ。
まぁ、第一印象がどうだったか・・・や、比較する本が妥当なのか・・・といったことはともかく、少なくとも私にとっては新たな気づきを提供してくれた本であることに間違いはない。
●自分の背中を押してくれた一冊
では実際にどんな気づきを得たのか?と言われれば、「プロセスを評価しない結果を評価しろ」といった点かな。なお、ここで言う結果評価とは、測定可能な目標設定を行い、それが達成できたかどうかで評価しろ・・・そういう意味での結果評価を言う。当たり前のことではあるが、わかっていても、結果評価を徹底できてない。見ている部門が営業部門だけだったらいくら売上を上げたか・・・などわかりやすい指標が使えるが、今は間接部門も見ているため、数値目標の設定が難しく、やや曖昧さを残してきた。だが、本書を読んで、改めてその大切さを認識した。また、「学びは獲得しに行くものである」という著者の主張も心に響いた。教育については本当に苦労してきたが、懇切丁寧な教育プログラムを組めば人が成長する
か・・・というのはどうもそうではないらしい・・・と思うところがあったからだ。自分の仮説を後押ししてくれた気がする。
●すべてを鵜呑みにせず、上手に使うべし
・・・というわけで、色々極端な小見出しをつけた文章がズラリと並ぶ本であり、喧嘩を売っているようにも見え、ある意味、それが読者の関心を引きつける本ではある。ただ、誤解のないように言っておくと、タイトルこそ、キャッチーで、「ん?なんだよ、それ?そんなわけないだろ」と思わせぶりなところがあるが、読んでみると、あぁ、そういうことね、それならAgreeだ、と思えることが少なくない。したがって、読み方には気をつけたほうがいい。中身をしっかりと読んで本質を理解しておかないと間違った認識が独り歩きすることになる。たとえば、「社長が直接部下の相談に乗らない」というポイントがあるが、「では、一切話しかけるのをやめよう」・・・というのは、著者の意図とは異なる。そういったことにはぜひ気をつけたい。
しっかりと内容を読んで、本質に納得がいったものだけとりいればいい。それが本書の活用方法だ。
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