2021年1月24日日曜日

書評:RANGE 〜知識の「幅」が最強の武器になる〜

久々に「超感動」した。

その理由を一言でいえば、自分がなんとなく感じていたことだがはっきりとはできてなかったことを、ズバリ解説してくれたからだ。間違いなく今後の自分の行動に影響を与えたと思うし、仕事に活用していくと思う。


RANGE

知識の「幅」が最強の武器になる

著者:デイビッド・エプスタイン


タイトルをどんな想いでつけたのか、疑問だったが、すぐに分かった。RANGEとは「幅」と言う意味だが、本書が示す「幅」とは「知識の幅」のことだ。才能を伸ばすのも、難解な問題を解くのも、クリエイティビティさを発揮するのも「知識の幅」を持つことが大事であり、それはなぜか、どんな事例があるのか、どうやってそれを実践するのか、どんな組織を作ればそれがビジネスシーンでも実現できるのか、などについて解説している。そして、おそらくは途方もない数の人たちにインタビューしたり、文献を調査したのだろうと言うことがわかるくらい、克明に事例を紹介してくれている。


「すごい」の一言に尽きる。


印象に残った話はたくさんあるが、強いてその中から2つ挙げるとすれば、アナロジー思考と言う言葉。類例を他分野や全く異なる分野に求めることがいかに大切か(でも、実際はいかにできてないか)、と言う話である。


「テトロックは専門家たちの意見をテストしてみることにした。東西冷戦が続く中、284人専門家による短期と長期の予測を集めた・・・(中略)・・・プロジェクトは20年間続き、約80,000件の予測が集まった。その結果見えてきたのは、とても意地悪の世界だった。専門家の予測の能力はひどいものだった。専門分野であることや、経験年数、学位、そして極秘情報にアクセスできることすら、予測の能力には何の関係もなかった。短期予測も調教側も間違っており、どんな領域でも間違っていた。専門家たちが、その出来事が起こる事は決してありえない、あるいはほぼありえないと断言したことが、15%の確率で起きていた。専門家たちが間違いなく起こると言った事は、4回に1回以上は起こらなかった」(本書より)


そしてもう1つは、ロジカルシンキングが強調されがちなビジネスシーンにおいて、整合性がいかに組織に成功に意味をなしていないか、と言う話だ。


「人間は一貫性が好きだ。多くの企業を調べると、そのプロフィールには整合性が見られた。しかし、1つの業界の組織を幅広く対象とした最初の体系的な研究で、334の高等教育機関を調べて研究者たちは、組織の成功を示すどんな指標にも整合性が全く影響を及ぼさないことを示した」(本書より)


自分がコンサルタントという立場であるから、こうした指摘は余計に心に響く。


ところで、私自身、仕事で「難題を解けたとき」や「ひらめいた!となったとき」は、たいてい他分野のことを考えていた時である。また、経営者、コンサルタント、品質管理、内部監査、マネージャーなど、複数の役割を同時並行して担うことがあったが、面倒くさいなと思う一方で、そこから得られるメリットの方が大きかった。1つの役割で得た知識・経験が、他の役割で役に立ったことが少なからずあったからだ。だが、冒頭で「自分がなんとなく感じていたことだがはっきりとはできてなかったこと」と述べた通り、その「良さ」をうまく説明できずにいた。だから、職場で「それは自分の業務とは異なるからやりたくない」「ゴールに直結しないことはやりたくない」といった発言をする人がいたときに、「君のその考え方は、すごく損をしているよ」と、うまく説得できないことにもどかしさを感じていた。


そうしたモヤモヤがついに払拭された気分だ。偶然、手にした本だが、本書に出会えて本当に幸運だったと思う。



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