2021年4月25日日曜日

書評:でたらめの科学 〜サイコロから量子コンピュータまで〜

「でたらめの科学」という本に手を出しました。とても読みやすく、知的好奇心をくすぐる本でした。

  でたらめの科学 サイコロから量子コンピューターまで (朝日新書)

一言で言えば「乱数」の本です。「乱数ってなに?」「乱数に良い・悪いがあるの?」「乱数ってなぜ必要なの?」「乱数ってどうやったら作れるの?」といった疑問に答えてくれます。

ここで多くの人は疑問に思うはずです。「はっ!?乱数!? ランダムな数にロマンがあるのか? そこに学びはあるのか?」と。

実際、わたしも、乱数なんてランダムに数を生成すればいいわけで、そんなの簡単にできそうだし、そこにロマンもクソもないだろう!?・・・と本書を読むまで、そう思ってました。

しかし、本書を読んでいる最中に「すげっ!」となんど、声に出したことか。その理由の1つは「乱数なんて簡単にできるだろう」という考えが全く間違っていたからです。それは次の一文を読んでも理解できます。

「いろいろな乱数生成器が並んでいるが1番びっくりしたのは『昭和14年』とか『大日本』と書かれている灰色の一銭硬貨だった。ただの貨幣ではなく、赤字で2桁または3桁の数字が書いてあり、袋の中にたくさん入っているこの硬貨を何度も袋から取り出して乱数表を作っていたのだと言う」(本書より)

そうです。昔の人は、いってみれば、何百回もサイコロを転がして「乱数」を作るということをやっていたのです。

よくよく考えるとたしかに、プログラムで乱数を作ろうとしてもコンピュータは指示されたことを忠実に実施するだけなので、そこに「ランダム性なんて存在しない」わけです。「いやいや、計算する瞬間の『時間』とかを『乱数の要素』として使えばいいじゃない?」と思うのですが、でも『時間』だと、次にどんな数字がくるのか予測できてしまいます。

結局、そうした問題を解決するために、「物理乱数」というのがあるみたいです。自然界で起きる物理現象を「乱数」に取り込むという技です。ほえっ!?となりましたが、それは具体的にはたとえば、そのときその場所で一定時間の間に検出した放射線を「乱数」につかうとか、そんなアプローチだそうです。

まぁ、何がいいたいかといえば、とにかく「乱数」を作るのって「そんなに大変」なわけです。

わたしが「すげっ!」と声を出した2つ目の理由は、「乱数」がどれだけ世の中に必要とされているかということを知ったからです。パチンコ機械で「当たり」を公平にだそうとすると、そこには「乱数」が必要になる。暗号化しようと思えば、(誰にも予測されない数字が必要という点で)「乱数」が必要になる。自然界の動きをシミュレーションしようと思えば、「乱数」が必要になる。中でも、一番驚いたのは、図形の面積を求めるのにも使えるということです。四角形の中に円を描いて、その図形に消しゴムのカスをランダムに落としていく。円の中に落ちた確率を計算していくと、それが四角形に占める円の割合と近いものになります。

何が言いたいのかといえば、「乱数」ってたんなる「でたらめな数字」なだけでなく、その「でたらめな数字」ができることがたくさんあるということです。

ちなみに、私達が小学校で円の面積を算出する際に習う3.1415....のあのπ(パイ)は、「良質な乱数」なのだそうです。どこまでおいかけても、規則性がない。「うんちく」というよりは、なんかこう・・・そこに神秘性やロマンすら感じてしまいます。

本書をきっかけに、量子暗号についても改めてYoutube動画などをみて勉強して、自分としてはかなり理解が進んだ気がします。

とにかくまぁ、知的好奇心を満たしたい人・・・中でも、「暗号」に少しでも興味ある人は、ぜったい「当たりの本」だと思います。おすすめです。


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