ITロードマップ2010年度版(情報通信技術は5年後、こう変わる)
野村総合研究所 2,2000円
■最新IT技術のこの先5年間の動向を解剖
本書は、今注目され(または注目されはじめ)ているIT技術の向こう5年間の動向について詳しく解説しているもので、毎年、更新版が発刊されている。
内容は、その章構成を見るとおおよそ理解できるが以下の通りである。
第1章 5年後のITロードマップ
第2章 5年後の重要技術
第3章 複合的なITの活用による新サービスの可能性
第4章 現在のITトレンドを知る
■「情報技術マップ」と「ITロードマップ」が最大の特徴
本書では、各分野(例:サーバや開発言語、セキュリティなど)において、現状どのような注目すべき技術があるのかということを示す「情報技術マップ」と、それら技術が向こう5年間の中でそれぞれどのように台頭(または衰退)していく可能性があるかについてビジュアル化した「ITロードマップ」の2つのマップを軸に解説を行っている点が最大の特徴だ。しかも、これらマップは比較的深いレベルでの技術的考察に基づいている。
たとえば、「情報技術マップ」では、サーバOSの分野において「クラウドコンピューティング」を先端技術の1つとして紹介している。そして、この「クラウドコンピューティング」の「ITロードマップ」では、2013年頃からこの分野での競争がいよいよ激化して企業淘汰が始まるとともに、クラウドコンピューティングを使ったサービスは、"Infrastructure as a Service(IaaS)"と呼ばれるような、単に「システムインフラをレンタルしますよ」というサービスから、”Desktop as a Service (DaaS)"のようなインターネットにつながる端末さえあれば「OSからアプリケーションまで、ありとあらゆるサービスをネットワーク経由でレンタルしますよ」という社会になっていくだろうと予想している。
■ITに興味ある全ての人が対象
本書は、「効果的・効率的にIT技術の最先端を理解したい」という要望を持つ人に対して有用だろう。言い換えると、以下のような疑問に対する回答を見つける必要がある人たちにとって役立つということもできる。
「IT技術を今後どのように活用して新製品につなげていくべきか?」
「今ある社内システムを今後どのようなタイミングで入れ替えしていくか?」
「ソフトウエアを今後、内製化するか外製化するか?」
「どのようなエリアを重点的に勉強しておくべきか?」など
したがって、システムエンジニアのみならず、ITコンサルタントやIT部門長、そしてCIOをはじめとする経営陣など、幅広い読者層が対象となると言えよう。なお、経営陣向けには、技術ごとにエグゼクティブサマリが設けられているのが有り難い。
■毎年購入する価値のある1冊
先述したとおり、どのような立場の人にも有益な情報源となるものであることに間違いはない。特に毎年、更新されるものであるというのは魅力的だ。IT戦略を立てる立場にいる人ならなおさら目を通しておきたい1冊だ。「インターネットで検索をすれば、こんな情報など簡単に手に入るのでは?」という声も聞こえてきそうだが、ここまで整理されているサイトはないだろう。2,200円でこの内容は、極めて価値ある1冊ということができる。
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