2011年6月12日日曜日

書評: コンサルティングとは何か

今回読んだのは、次の本だ。

「コンサルティングとは何か」 堀 紘一著 (PHP出版) 
820円

仕事帰りに立ち寄った駅の本屋さんで「次は何を読もうかなぁ~」とぶらぶらと探していたときに、目にとまった。

■ 非常に重たい著者が持つ言葉

この本は、コンサルティングの世界でプロ中のプロとも言える堀 紘一氏が、本当の意味での”職業としてのコンサルタント”について激白した本である。

ところで、知らない人もいるだろうから(恥ずかしながら、私はこの人のことを知らなかった口であるが)、そもそも堀氏とは誰かについてまず語っておきたい。

堀氏が”プロ中のプロ”と言われるゆえんは、彼が30年もの間、ずっと戦略コンサルタント職に従事してきたことにある。知っている人も多いと思うが、コンサルタントという職業は、肉体的・精神的にハードなものである。どれだけハードかと言えば、長期間にわたりこの職に従事する人は、途中で燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥ってしまうくらいハードである。また、この道を極めた人は、達観できてしまうのだろう・・・多くはコンサルタント職からは退き、他の業界の第一線でめざましい活躍をしている。言い替えれば、コンサルタントとしての寿命は短いのだ。これに関しては、あの大前健一氏も例外ではないと言える。

このことから、つまり”30年間”というものがいかに長期間であり、珍しいことであるかが、容易に想像できる。プロ野球で言えば、工藤公康投手のような存在ではないか、と私は思う。現在にいたっても、肉体的・精神的にハードな業界の第一線で活躍できるのは、職業を心から好きでないと駄目だが、それ以上に、強靱な精神力と真の能力が備わっていなければできない。そのような人が書いた本であると分かって読むと、言葉の重みもまた違って伝わってくる。

■”戦略コンサルタント”が本当のコンサルタント

今や世の中にはITコンサルタントや環境コンサルタントなど「私は○○コンサルタントです」と名乗る人が圧倒的に増えてきている。堀氏は、”コンサルタント”という仕事が世に登場したときに本来持っていた言葉の意味が歪んで捉えられるようになってきていると語る。

では、氏が言う、本当のコンサルタントは何か? 本を私なりに解釈すると次のような表現になる。

超地頭(じあたま)が良く
体力があり
考えるプロで
知識の提供によるのではなく
戦略を考え経営に目に見える結果を残すことにより
対価を得る人

逆に言えば、この定義に該当しないコンサルタントは、”コンサルタントもどき”・・・氏が言うところの括弧付きコンサルタントというわけだ。

■コンサルタントを目指す人、コンサルタントを使う企業が対象

本の構成は、以下の通りだ。

第一章: 経営戦略コンサルティングの誕生
第二章: なぜ、コンサルティングが必要なのか?
第三章: コンサルタントは、生半可な能力では務まらない
第四章: コンサルタントはプロフェッショナルである
第五章: コンサルティング・ファームを使いこなせる企業が勝
第六章: これからのコンサルティング ~コンサルティングを越えて~

構成を見れば分かると思うが、本の内容は、先に定義した”コンサルタントとしての本来の姿”を踏まえた上で、「真のコンサルタントには何が求められるのか」や「コンサルタントは、どうやって使うべきか」といったテーマを中心に語られている。

「コンサルタントには何が求められるのか」という点に関しては、たとえば「ノートを取ることを心がけよ」とか「現場を重視せよ」、「コンサルは実践をやることでしか鍛えられない」「コンサルの仕事は、一言で言えば”グラフを書くこと”に集約される」といったようなことだ。

また「コンサルタントは、どうやって使うべきか」という点については、たとえば「実際に得られる効果を考えれば、高額なチャージ金額は当然の対価である」といったことや「根拠あってのチャージ金額なので、値切りをかけられればマイナス要因しかない」といったようなことだ。

さて、実際に本を読んでみると、どうしても堀氏の商魂魂(?・・・という言い方が正しいかどうか分からないが、そのような傾向)が見え隠れする。端的に言えば、この本の狙いは、以下の3つを伝えることに集約できるのではなかろうか?

「我が社(ドリームインキュベータ)には、このような人材に来てもらいたい」
「我が社を使うなら、積極的に、こうやって使ってもらいたい」
「”コンサルタントもどき”は、俺らの誤解を招くようなイメージを植え付けるな」

この本の対象像も自ずと、そういう人達になることが分かる。

■自分も”プロ”として大成したい

かくいう私も「リスクマネジメントコンサルタント」という肩書きを持っている。経営陣がリスクをどこまで取るべきか、どうやって取るべきか、どうやって最小限に減らすべきか・・・といったことを考えるお手伝いをしている・・・という意味では、戦略に近いと言えなくもない。

いずれにせよ、私も堀氏に言わせれば、なんちゃってコンサルタントになるのだろう。

ただ、彼の言うコンサルタントではないかもしれないが、今やっている仕事でのプロではありたい・・・と常に思っている。何かを提供して、お金をもらう以上、その道(自分が従事している仕事)のプロであるべきだと常日頃から考えている。プロとは、その業界で飯を食ってない人が、全く持って歯が立たないくらいの技量を兼ね備えている人である・・・と思う。そのためには、自分が闘う分野において誰にも負けないくらい精進するべきだし、結果を残すべきだと考える。

こうした自分の”プロとして大成したい”という思いに対して、改めて大きな刺激を与えくれた・・・という意味で、自分にとってそれなりに価値ある本であったと言えるかもしれない。


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