2013年12月13日金曜日

書評: 消費税のカラクリ

2014年4月から消費税が8%になる。その後、順当にいけば、すぐに10%になる。無関心ではいられないハズだ。

消費税のカラクリ
著者: 斎藤 貴男
発行元: 講談社現代新書



■消費税アップ、いや、消費税そのものに反旗を翻す本

「(消費税について)訳知り顔の講釈が、街のあちこちから聞こえてくる。問題は、そう語りたがる人々が、消費税という税制の本質を少しでも理解できているのかどうか、という点だ。一人一人に問いただすことはできないが、一般の主要な情報源であるマスコミが、いつの間にか消費税増税派ばかりになっていた事実だけは明白である。」

そんな書き出しからも容易に推察されるように、本書は消費税アップに強く異を唱える本だ。消費税のアップ・・・いや、アップどころか消費税そのものの悪い部分・・・それも世間一般にはあまり広く知られていない負の側面に対して、スポットライトを当てている。

■税収アップの手段としての有効性に疑問を投げかける


「視界が開けた感じがする」・・・それが本書を読み終えたときのわたしの素直な感想だ。それは本書の論点が、今まで目にしてきたメディアのそれとは大きく異なるからだ。

メディアのそれと、どう異なるのか。一般的な消費税の論点は、税率や税率アップのタイミングに終始する。とりわけ、ここ最近は「消費税アップは必要不可欠だ。問題はそのタイミングだ」というように時期を問題にした論戦が多い。2014年度からの消費税アップに賛成する人たちの多くは「このままでは現在の福祉水準を維持することができなくなるから」とか「日本の世界に対する信用問題につながるから」とかといったものだ。逆に消費税アップに賛成しない人たちの多くは「長いデフレからようやく脱却する足がかりをつかみ始めたのに、その芽を摘み取るなんてありえない」というものだろう。しかし、本書の論点はそこではない。本書は、税収アップの手段としての消費税の有効性に疑問を投じているのである。消費税の有効性・・・これこそが著者が本書の中で首尾一貫して掲げている論点であり、本書最大の特徴でもある。

なお、著者が消費税を「ダウト!」と叫ぶ理由にはおもに2つある。1つには、そもそも消費税は、税率アップ=税収アップとは言いづらい、極めて非効率な手段であることを挙げている。「消費税は、国税のあらゆる税目の中で、最も滞納が多い税金なのである」というクダリを読んだときに、私自身少なからずびっくりしてしまった。そして2つ目には、消費税は、大企業を保護し中小企業をイジメる不公平な環境を生み出すものであることを理由に挙げている。なるほど、中小企業は日本の強さの源だ。日本国全体の企業数の99.7%、従業者数の7割、付加価値額(製造業)の5割強を占めており「日本経済の基盤そのものを形成している存在」といっても過言ではない。消費税が、そんな中小企業イジメにつながっているという点は決して見過ごせるものではない。

■消費税に少しでももの申したいなら・・・

ユニークさが際立つ本書だが、決して奇をてらった的外れな本ではない。論拠がしっかりしており説得力がある。そんなわけで、社会問題に興味がある人は言わずもがな、消費税アップの是非に何らかの意見を持つ人であれば、その意見の誤りをただすためにも、意見の質を上げるためにも、ぜひ、読んでおきたいところだ。

なお、誤解のないように言っておくが、別にわたしは本書の宣伝を通じて世の皆さんに消費税に反対してほしいという考えを持っているわけではない。実際のところ、わたし個人的には、本書を読み終えた今でも「消費税アップはやむなしかな」という考えを持っているくらいなのだから。

ただ、本質を知らずして意見するのはあまり健全でないように感じてしまうわけで・・・本質を理解し、それに基づいて自分の意見を持つ人が増えれば、それだけで社会は少しずつ良くなっていくような気がするのだ。いかがだろうか。


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