本書を一言で表すとすれば「有効な学習方法の集大成本」だろう。
Learn Better
著者:アーリック・ボーザー
要するに学習方法のコツをまとめた本である。ここで言う学習方法には、記憶の仕方もあれば、理解の仕方、そしてそれを有効活用する方法などが含まれる。
今の世の中、さまざまな自己啓発本があり、「今さら、学習方法について何が学べるのか?」と思うかもしれないが、要所要所で大きな気づきを与えてくれた。
振り返って、強く印象に残った点がいくつもある。
例えば「効果的な記憶方法」とは、今や色々なところで聞かれる話だ。だが、私の興味をそそったのはその背後にある短期記憶と長期記憶の関係性についての話である。「短期記憶メモリは非常に小さいもので揮発性が高く、さっさと消えていってしまう」といった話を聞いて、脳内にイメージが膨らんだ。それが分かっただけで、どういう風に「覚えたいもの」と向き合うべきか、パッと視界が開けたように感じた。
「記憶においてネックとなるのは短期記憶がその名の通り、非常に短い時間しか持たないことだ。脳のスケッチ帳は小さい。短期記憶の働きはいろいろな意味で狭い入り口になぞらえられる。大きいものは入らないし、たくさんの情報も入らない。ダイヤルアップ接続用モデムのようなものと考えても良いだろう」(本書より)
また、イメージトレーニングもよく聞く話ではある。ただ私にとっては「ふーん、そうなの。ボクサーとかよくやってそうだよね。あと、格闘技漫画とかでなんかそんなのよく見るけど・・・」と言った程度のものだった。だが、これも「イメージトレーニングをした者とそうでない者の実験結果」の話を聞いて、何よりも「イメージトレーニングを使うことで自分の実力に自信が深まり、やがて大会に対する感情にも良い影響を及ぼせるようになった」といったクダリを読んで、一気に「これはやらねば」という気になった。
「記録することの意味・意義」もそうである。皆さんは「記録」はなんのために行うとお考えだろうか。私の中では記録をする理由は3つあった。1つは、「後で振り返りをするため」。2つに「第三者が、チェックをするため」。3つに、「忘れないようにするため」である。ところが、本書は第四の理由を教えてくれた。それが次のクダリである。
「モニタリングとは要するに気づきの一形態であると言う。結果を記録するためには何が起きているかに気付かざるを得ない」(本書より)
まだ、ある。「不確実性の意識の仕方」について。ここでは、学習力の高い人にある傾向の1つとして「はっきりと定義されてないものや不確実性を受け入れる感性を持っていること」をあげているのだが、その中で「あえて毎日左と右で箸を持ち替えて食べてみたりするなど、日々の身近なそうした試み1つで、人は小さな違いを意識するようになり、『変化』への感度が高くなる」という話を聞いた時、なるほど!と思ったものだ。と言うものも、リスクマネジメントの仕事をしているせいもあり、普段から、「人はどうやったらリスクに敏感になれるか?」と言うことを考えていて、こうした問いのヒントになったからだ。
350ページ近い本なので、本を読むのが苦手な人には後半、だんだんと疲れてくるかもしれないが、斜め読みをするだけでも十分に気づきを与えてくれる本だと思う。少しでも、このタイトルがあなたの心に響くのならば、価値ある一冊になってくれるだろう。
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