著者: マーク・ピーターセン
出版社: 岩波新書
■あのマーク・ピーターセン教授が書いた英語のライティング実践編
昔、スペイン人の友達が「僕は30歳です」というのを英語で I have 30 years old と言ってきたことがある。もちろん、これは正しくない。正しくは、I am 30 years old だ。でも、なぜスペインの友人は am ではなく have を使ったのか。それは、スペイン語ではそのように(”年齢を持つ”と)表現するからだ。これは言ってみればスペイン人ならではの間違いだ。同じように日本人ならではの間違いというのも多々存在する。そんな日本語表現にスポットライトを当て、正しくは英語でどう表現すべきかについて、実例を踏まえながら理路整然とわかりやすく解説しているのが本書である。
この本の執筆者、マーク・ピーターセン教授は知る人ぞ知る、日本人向け英語解説本の大家だ。アメリカ出身者だから英語に精通しているのはもちろんだが、(氏の書いた本を読むと分かるが)日本語への精通度も半端ではない。過去に「日本人の英語」や「日本人が誤解する英語」などを出版している。
■なにが実践的なのか?
「日本人が誤解する英語」も、今作「実践編 日本人の英語」も、何となくだが似ている。どちらも日本人だからこそ間違えやすい英語に言及しているという点では一緒だ。また、部分的に同じような解説も見られる。では、いったいどこが異なるのか? いったい何が実践的なのか!?
前者が文法視点でテーマを分け、解説しているのに対し、後者は日本人が良く使う日本語視点で章立てをし、解説をしてくれている。したがって、たとえば「日本人が誤解する英語」では、前置詞、冠詞、仮定法、使役動詞、受動態などといった言葉がずらっと目次に並んでいるが、「実践編 日本人の英語」では、「~の~」「もし~なら」「~だけ」「ほとんど」「結果として」「~など」といったような、日本人なら誰もが良く使うフレーズが目次に並んでいる。
つまり、同じ誤解を生じやすい英語の中でも、よく使う日本語に焦点を当てている・・・という点が、本書を実践編と呼ぶ所以と言えるだろう。
■この問題を間違えるなら買う価値あり
せっかくなので、ちょっと考えてみて欲しい。以下に3つの問題を出す。
第一問)
みなさんは、「体重が減りました」を英語でどう表現するだろうか。なお、体重は "weight"、減るは "lose"(過去形は "lost") を使う。
第二問)
「東京で友達に会えた」を英語でどう表現するだろうか。なお、友達は"friend"、会うは"meet"を使う。
第三問)
街の情報を英語で「the information of the city」と書いた。どこが間違っているだろうか。
回答はこの書評の一番最後に書いておくが、もし、間違った人は本書から得られる学びは、それ相応のものがあると言えるだろう。本書には、このように「えっ!? それ、間違いだったの!?」「えっ!? 何が問題なの!?」と思えるような英語に対する解説が、たくさん登場する。ちなみに、私に関して言うと、カンマやイタリック体を使った場合の文意の違いについて学ぶことができたので大きな収穫だった。
■英語のライティングを極めたい人なら2冊とも読んでおきたい
さて、学び多き本ではあるが、対象読者層は、本当にライティングを極めたいという人に限定されるかもしれない。具体的にはたとえば、研究者や院生など英語の論文を書く機会の多い人や、私のように仕事で英語を使う機会が多い人、あるいは、英語の先生なんかも知っておいて損はない。いや、先生なら、こうしたことを知っておいて欲しい。断言できるが、わたしが学生時代の英語の先生は、こんなことをとてもとても理解して英語を押してくれていなかったように思う。
なお、先述したように「日本人が誤解する英語」も「実践 日本人の英語」も似た内容をカバーしてはいるが、それぞれ特徴がある。両者は、補完関係にあると言えるので、ライティング力を真剣に伸ばしたいという人なら両方の本を読むことをオススメする。そうではなく、ちょっと気軽に知ってみたい、学んでみたい・・・という人・・・そういう人には、良く使う日本語視点で解説してくれている、この「実践 日本人の英語」がちょうどよいかもしれない。
★問題の解答)
第一問) I lost weight が正解。もし、I lost my weight と書いたのなら間違い。
第二問) I was able to meet him が正解。もし、I could meet him と書いたのなら間違い。
第三問) of ではなく、 about もしくは on が正解。
※理由を知りたい方は、ぜひとも本書を読んみてください。
【類書】
・日本人が誤解する英語(マーク・ピーターセン著)
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