2013年6月14日金曜日

深夜3時のタクシー劇場・・・

深夜3時。オフィスを出ると目の前を”空車”を灯したタクシーが1台、2台、3台、4台と、通り過ぎていく。わぁお、多いな・・・そんなことを思ってる合間にも次から次に新たな空車タクシーがやってくる。

歩き始めたとたん、気のせいか、わたしの周りにいたタクシー達が、マトリックスのワンシーンのように速度を落として走り始める。いや、きっと、自分が気にし過ぎなんだ・・・そうだ、そうに違いない。車が同時にスローモーションのように速度を落とすなんて、そんな映画みたいなことはあり得ない・・・はずだ。

自宅方向のタクシーを捕まえるために”新宿通り”を渡るべく交差点で信号待ち。その瞬間、横断歩道の(渡りきったところ)向こう側に一台のタクシーが、キュッ・・・っと停車。手も挙げてないのに・・・まさか・・・ね。そうか、きっと誰かが乗っていて人を降ろす必要があったんだ・・・。そうなんだ。

信号が青になったので渡る。さっきのタクシーはまだ停止ランプをつけて止まっている。誰も降りてきた気配はない。意味もなく止まった車がなんか怖かったので、近づく気がしなかった。横断歩道をわたりきった瞬間・・・タクシーは、急発進して走り去った。

単にひねくれた性格が災いしてるだけなのか、純粋に怖かったからなのか・・・わからないが、横断歩道を渡りきった後も、次から次にやってくるタクシーに向かって手を挙げることができなかった。なに、してんだか、オレ。仕方がないので、しばらく道に沿って歩き始めた。はよ、帰りたいぜー。つと勇気を振り絞って手を挙げる。しかし、そういうときに限って一台も目の前を走っていない(>_<) おいおい。タクシーが私を狙っている・・・だなんて、全て妄想だったんだ・・・そうだ、そうに違いない。だって、いざ手を挙げてみれば一台もいないんだもの。

そう思った瞬間、100メートル後方で信号待ちしてい車が、猛ダッシュで近づいてくる。タクシーだ。それも遙か後方で、非常停止ランプをつけ、パッシングをしながら・・・近づいてくる。怖いって・・・。やや警戒しながらタクシーに乗り込んだ。

タクシーの運転手が「どちらまで行かれます?」と聞いてきた。「東名川崎方面でお願いします」と答えた。強い博多弁なまりで「えええええっ!!! ありがとうございます!!! 本当にっ!!!! いいんですか!? いや、いや、いや、いやーー。いやー!!! すごい助かるな-。ありがとうございます!!! ありがとうございます!!!!」・・・リアクション大き過ぎるって、運転手さん・・・。

運転手「お客さん、ナビに正確な目的地を入れたいんですけど・・・いいですか!?」
私「あ、いや、面倒なんで、東名川崎着いたら、そこから口頭で説明します」
運転手「わかりましたっ! ではもし、あれだったら・・・寝てらしてください。着いたら起こしますから・・・」
私「あ、助かります。ありがとうございます。じゃー、お言葉に甘えて・・・。」

(10秒後)

運転手「お客さん、もう、今日は雨が降ってて、客足が遠のいちゃって。いや、本当に助かりました・・・」
私「そ、そうなんですか・・・。雨降った日って逆に儲かりそうな感じしますけどねー。お役にたてて良かったです。じゃ、まぁ着いたら起こして下さい。」
運転手「はい」

(10秒後)

運転手「お客さん、私ね、九州からでてきて働いてるんですよ。家族はずっと九州、私はずっと東京で・・・。もう25年になるかな。」
私「えっ、そうなんですか。25年て・・・。でも、たまに帰ってらっしゃるんですよね?」
運転手「はい、帰ってますよ。年に3~4回。ちょうど、近いうちに祭りがあるんで・・・これだけはずっと小さい頃から出てて・・・なので、もうすぐまた帰ります。」
私「へぇ~、祭りかぁ。いいですね~。」
運転手「はい。あ、ごめんなさい。話しかけちゃって。寝てて下さいね。起こしますから。」
私「いえいえ。ありがとうございます。」

(10秒後)

運転手「お客さん、博多の名物って何か知ってます・・・?」
私「え、ええ、明太子とか・・・ラーメンとか・・・かなぁ」
運転手「そう、そうなんですよ!明太子。明太子っつってもねー、いろいろな種類があって・・・。今は・・・・が有名かな」
私「・・・・」

(繰り返し、繰り返し、繰り返し)

えんえん、この繰り返しで、ついに自宅に到着。なんだ、この”眠気さ”と、次から次と玉手箱のように話題を振ってきた運転手さんの話の底が見えなかった”もやもや感”は。


オフィスを出てから次から次へと・・・めまぐるしくいろいろなことが起こり一体何なんだ今日は・・・という困惑の気持ちと、タクシーという名のライオンの群れに襲われそうになって疲れたな・・・という疲労感一杯の気持ちと・・・、眠りたいという気持ちと・・・、でもさりげなくこの運転手さんの人生が面白そう・・・実は話をもっと聞いてみたいという好奇心と・・・。

まぁ、色々とあったわけだが・・・この奇妙な思い出と、今から名古屋で仕事なのに猛烈に眠いっ!という事実だけが残った。また、あの運転手さんのタクシーの乗りたいっ!


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