2021年2月7日日曜日

書評:風神の手

道尾秀介氏の 「風神の手」・・・読みました。

小説はネタばらしせずに語ることが難しく、また、リラックス効果はあっても、学習効果があるわけではないので個人的にあまり好きではないのです。ですが、彼の作品はいつも読み応えがあるので、高評価のついた彼の作品を見つけて、つい手を出してしまいました。

ある街での出来事を中心に3編に分けて描いているのですが、オムニバスでもなんでもなく、1つのストーリーをぜんぜん異なる3つの視点で描いているなかなかおもしろい作品です。

久々に読んで「そうそう、彼の作品って・・・こんな感じ」って思いながら読み進めました。こんな感じってのが、どんな感じなのかを、うまく表現できなのですが、伏線の貼り方がすごい。そして、それが複雑すぎず読者が頭の中で咀嚼できる範囲に収まっており、それでいて結構リアリスティックだったりする。だからのめり込む。小説って基本的にフィクションですから、読んでいるとどうしても「そんなこたぁー、ないだろー」っていうところがあって、そうした場面で妙に冷めてしまうのですが、彼の作品にはそう感じる場面が少ない。

中身について言えば、「そうそうなんだよ。人生って」って思わせるところが多かった。「そうそうなんだよ。人生って」って何度か感じました。「人間万事塞翁が馬」っていうフレーズを思い出したり、「人生は奇跡の連続」っていう言葉を思い出したり・・・。そんな人生図をわずか数百ページの小説の物語にまとめた・・・著者の才能に改めて感服しました。

リラックスタイムにおすすめの一冊です。


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