2011年7月18日月曜日

書評: もったいない主義

今週読んだのは、次の本だ。

「もったいない主義」 ~不景気だからアイデアが沸いてくる!
価格:740円

実は2年前に一回読んだことのある本である。先日、本棚の整理をしていたときに久々に見つけて、ウル覚えだったこともあり、改めて読みたくなった。それだけ印象に残っていた本・・・という意味でもあるのかもしれない。

■発想することが大好き

自分は、元来何かモノをつくることが大好きなタチだ。作る、ではなく、創る、の方である。下手の横好きではあるが、絵を描くことも好きだし、ゼロからプログラムをかくことも大好きだ。答えの全く見えない課題に取り組むことも大好きだ。今、従事しているコンサルタントという職業(堀紘一氏によれば、戦略コンサルタント以外は、コンサルタントではない・・・ということなので、本当はコンサルタントと呼んではいけないのかもしれないが・・・)も、作るよりも創ることを、要求されることが多い。プレッシャーも大きいが、達成したときの喜びの大きい。

そんな発想力を後押しするべく、小山氏のこの本を買ったわけである。

■心地いい、しかしピリっと辛みが効いている

この本は、”もったいない”と思う気持ちを、新しいアイデアを生み出すパワーに変換し、それを具体化させる方法について、著者の豊富な実例を交えて解説している本である。

ページ数は200ページ弱。そんなにビシっと論理的かつ緻密な分析に基づいて書かれた本ではないのだが、従来にはない企画を、次から次へと生み出す著者の柔らかい頭の中を、そのまま文章に起こしたかのような自然なタッチに、心地よさすら覚えた。

ただ心地よいだけではない。数々の事例に対して、発想のトリガーから具現化するまでを、丁寧に追って語ってくれている。

加えて、著者の輝かしいプロフィールを見ると、主張に大きな説得力を感じる。私はこの本を読むまで知らなかったのだが、小山薫堂氏は、あの超有名番組「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」といったテレビ番組をてがけた人だ。また、米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の映画脚本家でもある。ただ者ではない・・・。

■発想の源泉は、摩擦をつくることにあり!?

”もったいない”という言葉は、単に資源の無駄遣いという意味にとどまらない。「誰も部屋にいないのにクーラーをつけっぱなしにしてもったいない」という意味での”もったいない”もあれば、「嫌なことがあってそれにイライラしている時間がもったいない」という意味での”もったいない”もある。過去に一度失敗して、その経験を活かさず二度目の勝負をしないのはもったいない」という意味での”もったいない”もある。

こうした”もったいない”と思える色々な瞬間をとらえ、発想というエネルギーに変えてしまおうというのが著者が主張する柱の一つである。

ところで、”もったいない主義”とは小山氏らしい発想のヒントをわかりやすくキャッチーに表現したかったためのタイトルなのではないかと思う。(本のタイトルとしては相応しくないだろうが)実際のところは「もったいない主義」というより「摩擦をつくる工夫」という表現の方が、氏の発想の源泉を的確に表わしているように感じる。

事実、小山氏の発想が生まれる瞬間は”もったいない”と思った瞬間に限らない。本の中で「神様にフェイントを掛ける」という表現がある。氏曰く「神様にフェイントをかける」とは、つまり、普段やってないことを、突然やってみる」という意味だ。普段であれば、毎朝同じ時間に同じ電車に乗って、会社に出勤しているところを、突然、朝一の電車に乗ってみたり、あるいは逆方向の電車に乗って旅に出てみたり、突然空き時間ができたら、いつもどおり喫茶店で時間をつぶすのではなく、普段歩かない裏通りを散策してみるとか・・・、そんなことだ。

■自分も大いに影響された

私自身、実は普段から著者が言うことのいくつかを実践している。

例えば、”ネガティブスイッチを切り替える”という行為・・・。腹が立ったり、面倒くさくてやる気がでない場面に遭遇しても、どうやったら「あ、自分は実は得をしているのでは!?」と思えるようにできるか、普段から努めて考えるようにしている。洗濯物を干さなきゃいけない、掃除機を掛けなきゃいけない・・・面倒くさくて嫌だな・・・と思ったとしても、「あぁ、音楽を聴くにはもってこいの時間だ」と思ってみたり、仕事でお客様に叱られることがあっても、「ただで勉強させてもらっている」と思ってみたり・・・。そうすることで、好奇心が強くなり、新しい発見がある。

まぁ、それが具体的に何の発想の役に立ったのか!?と聞かれても、ぱっと答えられないが、おかげで、答えのない袋小路にぶつかっても困らないだけの発想の源泉は持てていると思う。

記憶は定かでないのだがおそらく、数年前にこの本を読んだときの影響で、こういった実践ができているのかもしれない。

というわけで、企画に従事する人はもちろん、発想力を豊かにするヒントを少しでも得たい人・・・そんなに高くない本なので、目を通してみてはいかがだろうか。



【類書】
企画は、ひと言(石田章洋著)

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