本を読み終えた瞬間
「うわっ、これはできる限り多くの人に読んでもらいたい」
・・・そう思った。
著者がゲスト出演していたTBSラジオDigDag(6月16日放送)を聞いて、この本の存在を初めて知った。パーソナリティーの荻上チキ氏は、当時、やはり次のように語っていた。
「できる限り多くの人に読んでもらいたい」・・・と。
「困ってるひと」
発行年: 2011年6月20日 価格: 1,400円
■読む者を「困ってるひと」にさせる「困ってるひと」
24歳までいたって健康だった大野更紗さんが2008年のある日、突然に難病(発症当時は、当然、難病とはつゆしらず)を発症。そこからの約2年間にわたる(現在進行形の)闘い・・・病名を特定するまでの大変な苦労とその後の想像を絶する治療生活について、ユーモアたっぷりに書いた本だ。こういった病気の類を扱った本は、どちらかと言えば敬遠されがちではなかろうか。あまりに”重すぎる”からである。私も、そうだ。
しかし、
「そこ、笑い飛ばすところか・・・う、い、いや、確かに面白い・・・ははっ(笑)」
と思うこと十数回。著者のナイスな表現力・文章力にも圧倒され、気がつけば本から目を離すことができずあっという間に読み終えてしまった。その吸引力たるや恐るべし。お恥ずかしい話だが、著者の執筆センスに思わず、嫉妬すらしてしまった。文章の展開のさせ方、文章の切り方、表現の仕方・・・ユーモアセンス・・・素晴らしい。精神的・肉体的に大きなダメージを受けながらにしての、この達人ぶりには・・・完全に脱帽だ。
目次だけ見ても、何が書いてあるんだろうと気になって読みたくなってしまう。
- 絶望はしない
- わたし、何の難病?
- わたし、ビルマ女子
- わたし、入院する
- わたし、壊れる
- わたし、絶叫する
- わたし、瀕死です
- わたし、シバかれる
- わたし、死にたい
- わたし、流出する
- わたし、マジ難民
- わたし、引っ越す
- わたし、書類です
- わたし、家出する
- わたし、はじまる
著者のユーモア溢れる表現とは裏腹に、それと反比例して次々と彼女を襲いかかるつらい試練に、読んでいるこっちがどうリアクションしていいか「困ってるひと」になってしまう。
■「~くれる」では自分は救えない
それにしても思い知らされたのは、どんなにツラい状況に陥っても、それこそ瀕死の状態になっても、自分を救うのは最後は自分自身しかない、という事実である。身内は当然のこと、友人や医者の先生・・・もちろん、彼らはできる範囲で精一杯の救いの手をさしのべてくれる。しかし、全てを100%委ねていれば全部やってくれる、助けてくれる、自分は救われる、とは、ならないのである。
「身体障害者のための申請も誰かがやってくれる」「医者に任せておけば、世の中でベストな治療薬を持ってきてくれる」「誰かが食べさせてくれる」「社会福祉制度に欠陥があっても、誰かがなおしてくれる」・・・くれる・・・くれる・・・くれる。
人は病気になったとき「~してくれる」・・・を期待する。でも「~してくれる」ではなく「~するんだ」というように意識が変わらなければ、自分は救えないのかもしれない。そう思ったのは、自分の周りの人達も人間である、ということ。神様ではない。みんな家族もいれば、自分の生活もある。感情もあれば限界もある。そして、世の中に完璧な社会制度など存在しない(どちらかと言えば、欠陥だらけである)。つまり、「~くれる」だけでは解決しない・・・のだ。
■お金はこういうものに使うべき
この本は、単に「かわいそうな人の話」ではない。
「世の中の仕組みを知るため」
「今の自分を知るため」
「”まさか”は誰にでも起こるということを知るため」
「”まさか”が起こったときの”光”を知るため」
「・・・」・・・自分の人生観をおおいに見つめ直すきっかけを与えてくれる本である。
こういうものにお金を使いたい。
関連リンク:
・わたし、難病女子(著者のブログ)
・荻上チキ氏のラジオ番組TBS Dig(著者がゲスト出演した回の放送)
・ポプラビーチ(著者が本の元となる内容をWEB連載していたサイト)
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