2011年10月18日火曜日

円高対策が必要な理由

日経ビジネスに東レ社長の日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏の記事が載っていた。東レと聞くとユニクロ!とかボーイング!とか、研究開発!といったキーワードが頭に思い浮かぶ。いずれも同社の強さを印象づける。


さて、東レ・・・実態はどれだけ凄いのか。先日、せっかく四季報の読み方本を読んだばかりなので、まずは四季報を手に財務諸表をチェック。ふむふむ・・・売上高は、1兆5千億円を超える。おおっ、1兆円企業。営業利益率は6%強。セグメント別に見ると、国内56%、海外44%の売上比率。事業内訳では、やはり繊維は全体の売上の4割近くを占めているが、情報通信関連が2割近い数字を占めている上、利益率も16%とダントツだ。

東レの売上高(経年変化)

「繊維の会社における情報通信事業って何だろう?」

と思い、ホームページを調べてみると、同社のアニュアルレポートに、情報通信関連フィルムや電子回路・半導体関連材料と書いてあった。薄型テレビのフィルターやパソコンの回路の材料の一部に使われる素材を生産しているようだ。なるほどねぇ。

そんな立派な会社の社長が何を今一番気にしているのだろう・・・と記事を読んだわけだが、やはり円高が一番の懸念材料のようだ。

「円高? そんなに円高が怖いなら海外に100%出て行けばいいじゃないか?」

と思う人もいるだろう。私も安易にそう思っていた口だ。しかしこれに対し東レ社長は次のように語っている。

『ここ3~4年のことを考えれば、国内工場をすべて閉めて海外に持って行った方が利益率は高くなると思いますよ。・・・(中略)・・・だけど、全てを海外に移管して5年後、10年後はどうかと言えばおそらく競争に負けて終わりでしょうね。研究開発拠点である国内の重要性は今後も変わることはありません』

なぜ、10年後は競争に負けるのか・・・その根拠は語られていなかったが、東レの強さの源(コアコンピタンス)は日本でこそ作られる・・・だから海外へ行ったら、いずれ負けてしまう・・・そういうことなのかもしれない。言い替えれば、企業のアイデンティティーに、その企業が生まれた国の文化や風土が欠かせないということなのかもしれない。

あるいは個人的には、これについては小説ジュラシックパークのイアン・マルコム氏が語っていた一説が思い起こされる。

「何事も一極化すると大きな波(変化)がきたときにあっという間に淘汰されてしまう」

100%海外に出てしまうと、何か大きな転換期を迎えたときに、柔軟に対応できる力が残っておらず、つぶれてしまうリスクが高まるのではないか。

日覺昭廣(にっかくあきひろ)氏の主張をまとめると、次のような感じになる。

円高 → 東レはローエンド製品の海外生産シフト&ハイエンド製品の国内での開発で対応 → 一層の円高 → 他社はいよいよますます海外へ → 東レの作るハイエンド製品の使い手自体が国内からいなくなる → 自分たちも海外へ行かざるを得なくなる → 日本には何が残る?

つまり、(1ドル60円だとか50円だとかいう)円高がもたらす行く末は、日本企業の衰退を意味していることになる。

しかも、自分たちさえ頑張ってれば、なんとかなるわけではない・・・というのがミソだ。

東レ社長の言うように、やはり、より積極的な円高対策・・・これが必要ということなのか、と考えさせられた。

日銀は・・・政府は・・・果たして、何ができるのか(私には、このあたりについて、いいアイデアなんて当然思いつきませんが・・・トホホ)

日経ビジネス2011年10月17日号

【関連リンク】
東レ(公式HP)
ジュラシックパークの小説(Wikipedia)
トヨタ、日本のための「籠城戦」

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