2012年11月18日日曜日

書評: 「進化する教育」 ~あなたの脳力は進化する!~

今週は献本サイトReview+(レビュー・プラス)からもらった宿題本。

「進化する教育」 ~あなたの脳力は進化する!~
大前研一通信・特別保存版 PARTⅥ
大前研一、ビジネス・ブレークスルー出版事務局 編著

本書は、大前研一氏が経営するMBA大学・・・ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学とその提携校である豪州ボンド大学大学院・・・のプロモーション本である。プロモーション本とはつまり・・・、
  • BBT大学の教育理念とは何か?
  • BBT大学の特徴とは何か?
  • BBTのカリキュラムはどんなものか?
  • BBTに参加している人たちの声はどんなものか?

など、同大学について、あらゆる角度から解説をしている、という意味だ。200ページほどのボリュームがあり、あたかも”大学院パンフレットの超豪華版”といった印象だ。ちなみに紙版と電子書籍版の2つがあり、電子書籍版はiPhone、iPad、Android、Tablet版PCや普通のパソコンなどで閲読できる。

どれどれ・・・どんなことが書いてあるんだろう。

恐る恐る本を開くと、最初から大前研一節が目に飛び込んでくる。今の日本人が世界で戦えていないワケ(今の日本人に欠けているモノ)が、熱く語られている。

『・・・世界中どこに放り出されても裸一貫で生きていける「生存力」を子供に身につけさせる、これこそが教育の目的のはずなのである。ところが、いまの日本の学校はどうかというと、学習指導要領に基づいて、先生が生徒にこれが正しいという答えを教えるという愚行を、あいも変わらずやり続けている・・・。』

大前氏は「これからの人材に求められるモノ」を、はっきりと、IT力、論理的思考力、コミュニケーション能力(=英語)の3つだと主張する。まさにそれを提供する場がBBT大学であるというわけだ。

本書最大の特徴は、”分かりやすさ””具体性”に尽きるだろう。さすが、論理的思考力をウリにする大学だけあって、「主張」、「理由」、「それを裏付ける具体的な証拠」・・・全てが明瞭完結にまとめられている。思わず「一流コンサルタントが大学院パンフレットを作るとこうなる!」と言い換えたくなるくらいだ。また、授業で取り上げられたケーススタディ及びその時のオンラインディスカッションの生の記録(一部)が記載されており、BBT大学で実際に何が行われているかが手に取るようにわかる。通信制のMBA受講をとるべきかどうか悩んでいる人が知りたい情報全てが載っているといっても過言ではないだろう。

1つ・・・留意事項を挙げるとすれば、当然だが、本書はBBT大学の欠点についてはほとんど振れていないという点だ。先にも触れたように、おそらく「受講すべきかどうか」を検討する人が読む本だろうが、そこは冷静かつ客観的に読むように努めるべきだ。BBT大学は基本的に通信制大学院(わずかだがキャンパスでの授業もあるようだが)だ。だから、キャンパス通いで得られるメリットは享受できない。たとえば、私はヨーロッパの大学のフルタイムキャンパスでMBAを取得したが、そこには40超の国から参加した学生と触れ合うことができた。グローバルな付き合い方(グループワークで喧嘩したほどだ)、生きた英語でのコミュニケーション、国際的な著名人のひっきりなしの講演、海外工場の見学・・・など、キャンパスでしか体験できないこともある。7年経過した今だからはっきり言えるが、そしてこれらは全て今の仕事の糧になっている。

勘違いしてもらいたくないのは、BBT大学を否定するつもりは全くない、ということである。むしろ、大前氏の主張にも、同大学の意義・・・にも賛同している。お金と時間をかける以上、効果的・効率的な手段を選ぶのは当然だ。通信大学も選択肢に入れている人であれば、本書も1つの貴重な判断材料とすべきだ。

フルタイムキャンパスに通うのは難しい、時間もお金もそこまではかけられない・・・でも本気で今の殻を打ち破りたいと思っている・・・そんな30代前半から40代の闘うビジネスマン・・・色々な手段を知り、自分の将来の選択肢を増やす・・・そう考えている人に1500円(電子書籍は600円)は決して高くないはずだ。

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