これを小学生に伝えなければいけないとしたら・・・あなたならどう伝えるだろうか? 知りたい方はぜひ次の本を読んでいただきたい。
これが週刊こどもニュースだ
著書: 池上彰
出版社: 集英社文庫
この本を読むと
- 人にわかりやすく伝えることがいかに大切か?
- 人にわかりやすく伝えることがいかに難しいことか?
- どうすればわかりやすく伝えられるのか?
が分かる!
なお、タイトルにある「週刊こどもニュース」とは、大人向けに報道されるニュース番組の内容について、子供にも理解できる言葉に噛み砕いて解説するNHK番組のことだ。ちなみに、番組は1994年10月から放映が開始され、2010年12月19日に放映が終了している。
■「週刊こどもニュース」を徹底解説
ここで言う”表側”とは番組でとりあげた時事ニュースやそこで使われる専門用語の解説そのもののことである。本では「日本銀行」にはじまり、「ゼネコンの談合」、「政治家の不正経理処理」、「衆議院と参議院」、「比例代表制度」、「逮捕状」、「警視庁と警察庁」、「GDPとGNP」、「円安と円高」などなど、子供のみならず一般の大人でも、正しく理解できてなさそうな基本用語について解説している。映像番組とは異なり、文字だけに頼った説明(多少、挿絵もある)ではあるが、いわゆる”今更、人には聞けない”事柄について知ることのできる、絶好のチャンスだ。ここで詳しくは紹介しないが、興味のある方はぜひ本を手にとって確認して欲しい。
”裏側”とは「番組編集側がニュースの中身や専門用語を視聴者にわかりやすく伝えるためにどんな苦労・工夫をしたか、発見があったか」といった裏話のことである。たとえば「日本銀行」の役割を説明する際に、お金を”血”、日本銀行を”心臓”に例えた話や、「談合」の意味を理解してもらうために、実際に演劇仕立てにした話など、が紹介されている。この”裏側”を読んでいると、単に”伝え方の技法”だけでなく、何かを人に伝えることの難しさ、それでいてなお、伝えることの意義について、気づかされる。
まさにこの点で印象的だったのが「職員のカラ出張問題について浅野知事が、子供インタビュアーからインタビューを受けた際」の事例話だ。
(池上氏)『浅野知事はカラ出張について、当初は「公金支出の不適切な処理」などと説明していたのですが、子供には通じません。なんとかわかってもらおうと表現に苦労しているうちに、とうとう知事は、「要するに、ウソついちゃったんだよ」と言ってしまいました。これを聞いた子供は、「えー、ウソついたのー?」と反応し、カラ出張の意味がようやくわかりました。」 この発言について知事は、後日、「子供になんとか理解してもらおうと苦心しているうちに思わず出た言葉だったが、このようにわかりやすく表現したことで、たいへん悪いことをしていたことがはっきりした」と述懐しています。』(本書より)
「”理解した”とは、それを他人に分かるように伝えられてはじめて言えることだ」とは良く言ったものだが、はからずも、子供に正確にモノゴトを伝えることを通じてコトの重大性を真に理解できた、ということなのかもしれない。
■「伝える」→「理解する」→「疑問を持つ」→「鵜呑みにしないクセがつく」→「考えるクセがつく」
ところで興味深かったのは、本書を読んだお陰で多くの疑問が解決できた・・・のではなく、むしろ疑問が増えた、ということだ。
たとえば温暖化についての話を読んだ時のこと。
『氷が溶けて海の水が増えます・・・(中略)・・・気をつけなくてはいけないのは、氷山が溶けても海の水は増えないということです。これ小学校の理科でやりましたよね。南極の(大陸の上に乗っかっている)氷が溶けて一部氷山になって海にただよいだせば、その段階で海水面が上昇しますが・・・』(本書より)
これを読んで「おー、そうだよな。今まで何も考えず、南極の氷山が溶ければ海水面が上がると考えてたけど、既に海に浸かっている・・・というか、浮かんでいる状態の氷は、溶けても海水面に影響を与えないよな。」と改めて理解したわけであるが、その瞬間、次のような新たな疑問がわいたのである。
「あれ、でもテレビでたまに”北極・南極の氷が溶けて海水面が上がるので・・・”といっているのは間違いじゃないのか? なぜなら、北極に大陸はなく、あるのは全て海に浮かんだ氷の塊なのだから・・・」。
理解がまた新たな疑問を呼ぶのである。本書を読みながら、わたしも何度、インターネットで調べ物をしたことか・・・。しかしながら、このように新たな疑問を持てることは大変素晴らしいことだと思う。疑問を解決するために自らまた調べ始めるわけだが、こうしたプロセスを繰り返していくうちに「何かをすぐに鵜呑みにしないクセ」すなわち、「自分で考えようとするクセ」が身につくからだ。
本書のお陰で、”人に伝えること”が究極的にどんな意味を持つか・・・、その本質を理解できたような気がした。
「あれ、でもテレビでたまに”北極・南極の氷が溶けて海水面が上がるので・・・”といっているのは間違いじゃないのか? なぜなら、北極に大陸はなく、あるのは全て海に浮かんだ氷の塊なのだから・・・」。
理解がまた新たな疑問を呼ぶのである。本書を読みながら、わたしも何度、インターネットで調べ物をしたことか・・・。しかしながら、このように新たな疑問を持てることは大変素晴らしいことだと思う。疑問を解決するために自らまた調べ始めるわけだが、こうしたプロセスを繰り返していくうちに「何かをすぐに鵜呑みにしないクセ」すなわち、「自分で考えようとするクセ」が身につくからだ。
本書のお陰で、”人に伝えること”が究極的にどんな意味を持つか・・・、その本質を理解できたような気がした。
■とにかく読むのが楽しい本
池上氏の著書には「伝える力」という本があるが、”伝え方の技法”、”何かを人に伝えることの難しさ”、”伝えることの意義”を理解するという点では、「こどもニュース」にまさるものはないのではなかろうか。楽しみながら読める本・・・という点でも、秀逸である。
「週間こどもニュース」を見たことのない方、あるいは、本書を読んだことのない方は、ぜひ、ご一読あれ!
「週間こどもニュース」を見たことのない方、あるいは、本書を読んだことのない方は、ぜひ、ご一読あれ!
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