2015年6月23日火曜日

書評: 子供の頭を良くする勉強法

え!? なぜ読んだかって? そりゃー、子育てしてる親としては色々とインプットして損はないかなと・・・。

著者: 伊藤 真
出版社: ベスト新書


子供をどのように育てれば、人生の成功者になれるのか・・・著者自身の経験を踏まえ、そのテクニックを紹介した本だ。人生の成功者っても色々とあるだろ・・・と突っ込みが入りそうだ。こうした類いの議論は、多種多様な価値観を持った人達が世の中にいる中で難しいと思うが、著者は逃げずに定義している。曰く、「自分が幸せだと感じられることと同時に、社会に貢献ができる人」「人から求められる仕事ができる人間になれたという実感を持てた人」とのこと。

では、そんな偉そうなことを語る「著者自身の経験はいかに?」となるが、弁護士だそうだ。弁護士になるまでに相当な苦労をした・・・ということだけは容易に想像できる。弁護士業以外にも、ロースクール立ち上げを試みたり、色々とご経験をなさっている方のようだ。氏の成功・失敗経験から、強く感じた「成功者を育てるためのポイント」があったのだろう。本書には、そんな氏の思いがたくさんつまっている。

ざっと238ページ。あっという間に読める。頑張った時には、しっかりと感情豊かに褒めてあげましょう! 目標意識を植え付けよう! 習い事漬けはやめましょう! “考える力”をつけるため、“なぜなぜ”と思う気持ちを醸成しよう!等々。はなまる学習会の塾長であられる高濱正伸氏も同じようなことを言っていたし、目標意識をしっかり持たせることで、立派に成長させた友人を実際に知っているだけに、あぁ、きっと、正しいことを言っているんだな・・・というのは理解できる。

しかし、天邪鬼な性格の私には、ここで違和感が芽生える。そんなに“立派そうな子”を育てることって本当に正しいことなのだろうか・・・と。百歩譲って、目標意識など本書に書かれたことは、子供が成功者になるための必要条件かもしれないが、十分条件でないんじゃないかなと。そんな悶々とした気持になっているときに、本書の最後の方で、著者の次のような言葉が登場する。

『生真面目な人こそ人のせいにしよう』

最初は、「は!?」と思った。いきなり何をいうのかと。要は、逃げ道を用意しときなさいということであるが、次の瞬間、なぜ違和感があったのかが分かったと同時に、なるほどなと思った。そう、著者の言うこと(少なくとも前半の話)はイチイチ息苦しい感じがしたのだ。なにか立派すぎる。逃げ道がない・・・。

“考える力”をつけさせるために「常に、それはなぜなんだい!?」と子供に問いかけ続けてきた知人が、「子供が高校生くらいになって鬱になった」という話をしていたのをふと思い出した。さらに先日、NHKの番組、100分で名著「荘子(そうじ)」の回で、「やむをえずの思想」が大事という話を思い出した。これは、無理に目標や計画を立てずに、必要に迫られたら動けばいいじゃないか・・・という話で、目標設定や計画設定は、今のストレス社会を作っている要因の一つでもある・・・という指摘だった。

つまり、著者の言いたいのはこうなのだ。本書で紹介されている色々なテクニック・ポイントを押さえるのは大事だけど、最後に“心の逃げ道を用意しておく”のだけは忘れるなよ・・・と。これで色々なことが腑に落ちた。

さて、腑に落ちたが、本書のような本はゴマンとある。先述したはなまる学習会の高濱正伸氏の本もこの類いだ。そんな中、あえてこの本を読む価値があるのか?と問われれば、私は類書だからこそ、読む価値があると答えたい。最近、特に感じるのだが、人間はすぐに色々なことを忘れる。重複する部分が多かったとしても、忘れているポイントは呼び覚まされるし、改めてすり込まれる。そして、重複しない部分や意見の異なる部分は、それは自らが「正しいことは何だろう!?」とさらに深く考える良いきっかけとなる。だから、この本を買って良かったと思うし、子供がまだ子供である限りは、1年後・2年後、また似た本を見かけたら、買うだろう。


【類書】

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