2016年1月3日日曜日

書評: 日本の論点2016~2017

日本の論点2016~2017
著者:大前研一
出版社:プレジデント社


本書はプレジデント誌で連載している「日本のカラクリ」の一年間のストック及び特集記事から読者の反響が大きかった稿をピックアップし、加筆修正して再構成したものだ。大前研一氏が、自分の目と耳で事実を確認し、論理学を用いて事実と事実を結びつけ、オリジナルの答えを出したものである。

今回取り上げているテーマは、全部で24。アベノミクス、憲法改正、福島第一原発事故、TPP、水素ステーションなど、昨今、世間を賑わせている・・・それでいてなかなか答えの見つからないハードな問題について、自らの思考プロセスと結論を披露してくれている。

本書の用途は大きく3つあると思う。

1つは、企業人としてこれからの国内外のビジネス環境の変化をどう捉えるべきか・・・そのヒントとして活用できる。たとえば中国、ロシア、アメリカ、ユーロ圏、イスラム国・・・このあたりの紛争や経済情勢及びそれを元にしたこれからの世界観は非常に有益だ。

2つ目は、自らの財産をどう築くか・・・そのヒントとして活用できる。先の世界観に影響を受ける話だが、将来の年金について国を当てにできない今、どのように自らの資産のポートフォリオを考えればいいのか。ちなみに、大前研一氏によれば歴史を見ると、なんだかんだで資源国は安定した経済を維持していると言う。ならば、どこに投資すべきか・・・、考える良いきっかけになる。

3つ目は、自己啓発や子供の教育をどのように行っていくべきか・・・そのヒントとして活用できる。本書以外もそうだが、大前研一氏の本を読んでいると、とにかくその膨大な引き出しと明瞭簡潔な思考プロセスに驚かされる。基本的には、他国や他社に成功事例を見つけ、それをベースラインとして、課題を浮き彫りにしたり、解決策を見つけるヒントとしている。たとえば、TPPで、日本の農業のこれからの話をしているときにはオランダの農業の話が引き合いにだされた。日本の人手不足の課題を、アメリカにおける間接業務の生産性との比較に見いだした。大学の課題を、アメリカやドイツの教育制度との比較に見いだした。端的に言えば、冒頭で述べた、まさにアリストテレスの論理学というやつなのだろう。A=B、P=AならP=B・・・みたいな。

以上3点だが、個人的に一番気になったのは、とにかく最後の3点目だ。膨大なインプットを得るための努力、論理思考術の修練・・・これがまだまだ不足していると感じた。具体的には、

1.インプットを得る
 →色々なものを読む(本や新聞、雑誌、文献など)
2.論理的思考術の修練をする
 →考え抜く(人に会って話す・議論する、自分の考えを文章にするなど)

をしていきたいと思った次第。書評の結論としては変な終わり方だと思うが、まぁ、このような刺激を与える本である。


【大前研一氏の日本の論点シリーズ】

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