著者:中村和己
出版社:角川新書
私は、厳密には経営コンサルタントではないが、同じコンサルタント業を営んでいる立場から、気になって買ってしまった。
「なぜ、経営コンサルタントが不要か?」を、著者自らの経験から、ロジカルに説いた本だ。著者自身が経営コンサルタントを使う側と、経営コンサルタントとして使われる立場の両方を経験しているので、説得力がある。
結論から言えば、(あえて言わなくても分かる話だが)本書はもちろん「なぜ、中村事業企画(=著者の会社)か?」を訴えた本でもある。商売っ気的な側面が見え隠れするのが気になる人は嫌かもしれないが、それを差し引いても、経営コンサルタントに多額のお金を使っている人、経営コンサルタントまたは経営コンサルタントになろうと考えている人であれば、読む価値はあるだろう。
理由は大きく2点ある。1点目は、コンサルタントの付加価値は何だろうか・・・真剣に考える機会を与えてくれるからだ。本書を読んでいると、経営コンサルは果たして役に立っているのか・・・を改めて深く考えさせられる。
『日本人の年間労働日数の平均253日を年収1000万円の社員に当てはめて考えると、一日平均10時間労働で、福利厚生込みの時給はほぼ5000円になる。ところが経営コンサルタントは最低でも2万円、高くなると5万円を超える時給を請求するから、日本企業にいるエリートの最低でも4倍、多ければ10倍超の価値を生まなくてはならない』(本書 現在のフィーは高すぎるより)
上記は本文中で著者が紹介していたものだが、改めて数字を見てみると、提供されるべき付加価値は極めて高いものでなくてはならないと思い知らされる。(成果主義でフィーを決めているコンサル会社もあるだろうから、全ての会社に当てはまるものではないが)
2点目は、コンサルタントの使い方について全く正しい指摘をしていると思うからだ。
たとえば、本書の第三章に「コンサルタントに意思決定を求めてはいけない」と銘打ったタイトルがある。「そりゃーそうだ」と思う。良くアウトソースするときに、責任まではアウトソースできない・・・というが、自ら責任をとるということは自ら意思決定する、ということだ。良く、答えを教えてくれ・・・のような感じでコンサルタントを頼ってくるお客様がいるが、それはあまり良くないと思う。私ごとだが、「ああ、プロジェクト上手く言ったな」と思えるときは、たいてい、「コンサルがお客様を引っ張るというよりも、お客様がコンサルを引っ張るようなときだ」
ところで、著者はなぜ経営コンサルタントは役立たず・・・と言っているのだろうか。著者が本書の冒頭で簡潔に述べているので紹介しておきたい。①米国と日本では状況が全く違う。米国は株主が強く、リストラ推進や格付け的側面からコンサルの意義があるが、日本ではそうではない。②コンサルのアプローチがもはや時代遅れである ③自ら考えるべきところを他人任せにしてしまうので成長を阻害してしまう・・・の3点だ。②に関しては、確か大前研一氏自身も(最近読んだ)「もしも、あなたが最高責任者ならばどうするか?」などで、古典的なケーススタディなどは今や役に立たなくなってきている(これからは、リアルタイムオンラインケーススタディだ)・・・などと述べていたことにも通じるかなと思う。
最後に、あえて本書の残念な点を挙げるとすれば、著者が引き合いに出している一部の事例の弱さだ。コンサルタント第一人者である大前研一氏が、過去に雑誌(ハーバードビジネスレビューなど)に公に発表した論文を引き合いに出し、その事例がMECE(ミッシー)になっていなかったなどといった主張を通じて自らの一つの論拠としているが、それを持って経営コンサルタントは役に立たないと結論づけるには、やや寂しい気がした。まぁ、かといって証明することが難しい領域ではあるが、そこは著者以外の複数の経営コンサルタント経験者の生の声を聞きたいところだ。
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