2016年1月24日日曜日

書評: 会社という病

東芝や旭建材、ダイコーなどで起きている事件を、反面教師にしたいなら、本書を読んでおくことをお勧めする。

著者:江上剛
出版社:講談社プラスα新書



⚫会社が腐敗していくさまを見える化した本
どのようにして会社というものが腐っていくのか・・・そのさまを、著者自らの体験をもとに紐解いた本。著者が20年以上にわたり、今のみずほ銀行(旧第一勧銀)に勤めたときの体験が基になっている。人事、出世、派閥、上司、左遷、会議、残業、定年、根回し、社長・・・などといった軸で語っている。

⚫️読みどころは、なんと言っても生々しい事例
著者の体験と言っても普通のサラリーマン話ではないところが本書の魅力だ。大組織の人事部・・・という言わば、人の昇進や降格に近い立場・・・すなわち、人の欲望や絶望が渦巻く場所にいたときの話だから、貴重である。著者自身も、総会屋利益供与事件に巻き込まれ、最後は逮捕・退職につながっていく・・・という話には、本来であれば「えっ!?」という話だが、本書にあってはさらなる付加価値である。

⚫️一昔前の銀行の事例が、今の時代に役立つのか?
一方で、今更、一昔前の銀行の話を聞いて、役に立つのか?・・・そう思わないといったらウソになる。銀行は、お金の取り扱い自体が主要業務という点で“法規制やルールが全て”といった感があり、他の民間事業会社とは大きく異なる。

だが、冷静に読むと、特殊な事例ではないことが分かる。たとえば、「東大卒はやっぱり有利」という話。東大卒・・・というのは大銀行だからこそ登場する固有名詞ではあるが、事の本質は東大云々ではなく、学歴至上主義がまだ残っているという点だ。人事評価、出世争い、左遷、残業・・・全て他人事ではない。

⚫️本書の真の価値とは
改めて問おう。東芝や東洋ゴムなどのような大事故はどうすれば防げるのか? 

残念ながら、東芝や東洋ゴムなどの事件そのものから学べることには限界がある。なぜなら、事件を外から見ていても、入手できる情報に限りがあるからだ。事の本質に迫ることは難しい。

そこに本書の価値があるのだと思う。本書には、まさにその外からは見えない部分・・・大事故を起こした会社ではおそらくこういうことが起きていたのではないか・・・と思える内部のことが描かれているからだ。

⚫️歴史ある企業や大企業のサラリーマンこそ、読んでおきたい
私が得た答えの一つは、「今までこれで大丈夫だった(or 成功してきた)から、これからも大丈夫な(or これで成功できる)はずだ」という人間が持つ心理だ。大事故を起こす組織では、これが組織のあらゆる階層、あらゆる場面で起きているのではないか・・・と思う。つまり成功体験が多い組織ほど、伝統ある組織ほど、明日は我が身・・・と思った方がいいように思う。

その意味では、澱がたまりがちな年齢を重ねた企業のサラリーマンほど、本書を読んで、我が身・我が社を振り返ることが必要なのではなかろうか。

さて、あなた自身の感想はいかに?


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