2016年8月3日水曜日

書評: 最高のリーダーは何もしない

遅すぎるかもしれないが、44歳になった今、リーダーシップとはどうあるべきかに思考を割く時間が増えてきた。特に自分は「リーダーである前に、プロフェッショナルでありたい」と思い続け、邁進してきたので、きっとリーダーシップ論には疎いほうである。まだまだ改善すべき点があるはずだ。

最高のリーダーは何もしない
〜内向型人間が最強のチームを作る〜
著者: 藤沢久美
出版社: ダイヤモンド社


■リーダーシップの指南書
本書はリーダーシップ論を説いた本である。著者自身の社長としてのリーダー経験に加え、これまで何百人と会ってきた著名な企業トップとの対談内容を基に、「昨今の“できるリーダーに共通する秘訣”」に著者なりの答えを提示している本である。

■リーダーシップ論の重要性は、ハウツーよりもハウトゥドゥー?
読んでみての個人的な結論は次のようなものだ。

「リーダーシップ論は“ふわふわ”しているようで、実はもう答えが出ている分野なのではないか。ただ、そのワザをどうやって実践するか、実践し続けるか・・・そこだけの問題なのではないか」

なぜ、そういう結論にいたったのかというと、どこぞで聞いた話、どこぞで体験した話が多かったからである。本書を擁護するために付け加えておけば、私は対象読者層ではなかったためでもあるだろう。実際、本書を読んだ時に「やっぱり、そうよね。そういう結論になるよね。あとは、それを信じて実行し続けることができるか。できる経営者とできない経営者の違いは、それに尽きるよね」と思った。

たとえば本書の中で「社長はビジョンを作り自ら共有し続けること」、「周りに対する気遣いを欠かさないこと」、「女性の登用を軽視しないこと」、「メンバーに対する感謝をまず忘れないこと」、「寝食共にする合宿などを経験すること」などといった主張(あくまでも一部である)がなされているが、自分自身がそれを実践しようと日々心がけていることと全く同じなのだ。

■本書の意義は、読みやすさ・・・これに尽きる
本書を読むことで、私自身が経営者として、あるいはチームのリーダーとして自らが、やってきたこ・これからやろうとしていることが間違っていないことを再確認できたという点において役立ったという見方もできる。

だが、別の見方をすれば、特にビジネス書を良く読む人にとっては「え、新たな学びはないの?」と、否定的な結論も出せる。実際、リーダーシップ論は、かのピータードラッカーを始め、数多くの著名人が執筆してきているテーマだ。表現の仕方は違っても、結論はほぼ似ていると言って間違いないからだ。

そう考えると、本書の意義はいったいどこにあるのだろうか? テレビ番組のキャスターやラジオのパーソナリティーとしてこれまでに著名な社長に会いいろいろな話を聞いてきた著者の経験が本書の基になっていることか? だが、出ている結論は他書と似ている。果たして本書の意義は? うーん・・・と真剣に考えたのだが、私の出した結論は、以下の点に尽きる。

「読みやすい」ということ。

本を「あっというまに読める本」と「読むのに時間がかかる本」と2つに大別するとすれば、本書は前者にあたる。1時間足らずで読める・・・いわゆる“今風の読みやすい本“なのだ。

■リーダー初心者向けの入門書
リーダーといっても会社の社長とは限らない。組織のおけるあらゆる階層でリーダー的存在が求められる。そう考えるとリーダーシップ論は組織で働く全ての人が対象になるが、本書の“読みやすい”という特徴・・・それを加味すると、リーダー的立場を今から目指す人、もしくはそういった立場になったばかりの人などが、最適な対象読者といえる。まさにリーダーシップ論の入門書的な本なのだから・・・。


0 件のコメント:

書評: 3 行で撃つ <善く、生きる>ための文章塾

  「文章がうまくなりたけりゃ、常套句を使うのをやめろ」 どこかで聞いたようなフレーズ。自分のメモ帳をパラパラとめくる。あったあった。約一年前にニューズ・ウィークで読んだ「元CIAスパイに学ぶ最高のライティング技法※1」。そこに掲載されていた「うまい文章のシンプルな原則」という記...