2011年1月8日土曜日

書評: 心を鍛える

「安住紳一郎の日曜天国」をポドキャストで聞いていた。そのときのゲストは私の知らない人だったが、白石豊さんという方でメンタルトレーニングコーチで有名な人、と紹介されいた。

白石氏:
「良く、集中しろ!とかリラックス!、頑張れっ!とか言うことがありますよね。でも、言われた本人にしたら、あまり役に立たないんです。誰も、どうやれば集中できるのか、どうやればリラックスできるのを具体的に説明しないんですから・・・。」

(ラジオを聞いていた)自分:
「うむむっ・・・全くおっしゃる通り!!」

そういえば自分も、”頑張る”と言う言葉は嫌いだった。なんとなく抽象的で無責任な言葉に聞こえるからだ。本人にしたら「言われなくたって頑張ってるよ」と言いたくなるのではないか、といつも感じていた。とは言え、そんな簡単に「頑張れ!」に代わる言葉も出てこない。「集中しろ」や「リラックスしろ」にしたってそうだ。

そんなわけでいてもたってもいられずに、答えを求めてすぐに白石さんが出している本を検索してAmazonで購入した。

「心を鍛える」 白石豊著 生活人新書 ¥680

これはメンタル面の向上手法について、トレーニングの項目を大きく7つの要素に分けて解説している本だ。もう少し柔らかい言葉で言い替えると

「頑張れ」とか「集中しろ」などといった単なる抽象的な表現(WHAT)について、具体的でわかりやすい方法(HOW)をしっかりと説明してくれている本、である。

本で取り扱っている事例は、著者自身、過去に体操選手を経験し、また、スポーツ選手のコーチなどをやっていたこともあって、全てスポーツに絡むものだ。しかし、(著者自身もそのようにおっしゃっておられるが)ここで触れられている内容は全て、日々の生活やビジネスに、間違いなく、そのまま応用できるものであるように思う。

さて、本を読んでの感想だが、HAPPYの一言だ。このような本に知り合えて・・・というより、白石さんという方を知ることができて、とても良かった。なぜなら、この本には自分に欠けていたものがいっぱいのっているからだ。

では、どんなアドバイスが有用であったか・・・だが、一部触れておきたい。先述した通り、メンタルトレーニングには大きく7つの要素がある。著者は、自分が今各要素についてどの程度の段階にあるかをアセスメントしなさい、と述べている。すなわち、課題を特定することから始めよ、というわけである。その7つの要素とは、

・意欲
・自信
・感情コントロール能力
・イメージ想起能力
・集中力
・リラックス
・コミュニケーションスキル

になる。私自身に当てはめると、「感情コントロール能力」と「集中力」の2つが弱いように思う。特に集中力については自信がない。何かものすごく興味のあることをやっているときは圧倒的な集中力を発揮する自信があるが、多くの場合、いつも気がつくと本来すべきこととは違うことを頭の中でぼんやりと考えてしまっているように思う。

著者によれば、集中が高まらないのは、意識を集中させる対象が不明確、すなわち、目標の立て方が悪いからだそうだ。きっと、そんなのは当たり前!という人が多いだろう。しかし、そんな当たり前なことでも私には新たな気づきがあった。勘違いしないでいただきたいのは、私自身、普段から目標設定は意識して行っているつもりだ。年初には個人目標を立てるし、ビジネスにおいても四半期毎、月ごと、週ごと、日ごとの目標も具体的(SMART※)に立てて活動している。

※SMART: Specific(具体的であること)、Measurable(測定可能であること)、Achievable(達成可能であること)、Realistic(現実的であること)、Time Phased(期限が設けられていること)

では、何が目から鱗だったのか・・・というと、細かさが足りないという事だった。つまり、SMARTな目標設定を、活動1つ1つに対しても行う必要がある、ということだった。

例えば「今日中に記事を一本執筆しよう」ではなく、「朝の9:00~10:00までの間に、XXXの資料を基に、2000字程度書いてしまおう」というようなイメージである。(同様に子供に向かって言うのでも「勉強に集中しろ!」ではなく、「XX時までに、この問題とこの問題まで終わらせてごらん」とか、いう感じだろうか)

普段からできるだけ意識して、このようにやっているつもりだったが、集中できないなぁ・・・と思うときを振り返ってみると、なるほど、自分に課している目標の質が甘かったように感じる。

ところで、著者は、かの有名な(巨人軍9連覇を実現した)川上哲治氏の考え方に強く影響を受けたとも述べている。川上氏は、選手としても監督としても一流の結果を残した希有な人だが、彼は”禅”を学ぶことで心が開け、そこから監督しても大きく開花することができたそうだ。著者も、感ずるところがあり実際に、”禅”を体験したようである。そして、実は禅の考え方が取り入れられ、その結果、後世に残る結果を残したスポーツチームは少なくないことに気がついたと述べている。

私はすぐに影響を受けやすいので、この話を聞いて、”禅”も体験してみたくなってしまった。立派な成果を出している二人(川上氏と白石氏)が、共に影響を受けたという”禅”・・・そこに自分の求めている大きな答えの1つもなんとなく見つかりそうな気がしてならない。

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