2011年1月16日日曜日

書評:リスク・リテラシーが身につく統計的思考法

今年の目標の1つに、「週一冊ペースで年間52冊程度の読書を行うこと」を掲げている(本物の読書家に比べたらはるかに少ないのは重々承知している・・・)。

早速今年2冊目を読み終えたので、簡単なコメントを書いておこうと思う。読んだ本のタイトルは、

リスク・リテラシーが身につく統計的思考法 初歩からベイズ推定まで (ゲルト・ゲーゲレンツァー)

だ。なんとも難しそうな本である。いや、確かにお固い本だった。リスクコンサルタントとしてリスクリテラシーという言葉には敏感に反応して買ってしまった。

一言でまとめると「いかに世の中の人が数字の意味を正しく理解せず、間違った判断を下してきたか」ということと「では、どのようなアプローチをすれば、数字に絡んだ誤解が減るか」ということを、わかりやすく説明した本である。

ここで言う「世の中の人」とは、一般人のみならず、いわゆる数字によく接する専門家(例えば、医者であったり研究者そして検察官など)のことを含む。裁判で、被告の有罪(もしくは無罪)を立証するにあたり、確率を用いることが多いが、実は不正確な情報が陪審員に伝えられ、関係者全員がその間違いに気づかずに判決を下す・・・ということが、過去に(過去といっても、つい最近までの話だが)多々あったそうだ。

たとえば、殺人の容疑者のDNAと殺人現場で見つかったDNAが一致する確率が、1000分の1(わざとわかりやすくするために控えめな数字を使っている)という前提条件をおいたとする。そして、もしDNAが一致したならば、その容疑者が犯人でない(無罪である)確率も、1000分の1のはずである、と思い込んでしまう間違いが多いそうだ。これは「訴追者の誤謬」と言われるらしい。正解は、仮に殺人が起きた地域の人口が10万人とするならば、DNAが一致する可能性のある人は全体で100人いることになるわけで、すなわち、犯人である確率は100分の1(無罪である確率は100分の99。すなわち99%)になる(繰り返すが、DNAの精度がそれほど低いなんてことはありえないが・・・例えばの話だ)。

著者に言わせれば、こういった過ちは何でも便利だからと確率(パーセンテージ)に置き換えることによって起きるのだそうだ。そして、それは専門家であればあるほどその傾向は強い可能性があるという。逆にパーセンテージではなく、自然数を使って(実数に置き換えて)説明をすると誤解が減りやすくなるという。

数学の決して得意でない私がこのように説明しても、このブログを読んだ人はきっとナンノコッチャと思っていることだろう。私にしてみれば、数字に踊らされないようにするためにはそれなりに良い知識をもらったと思うし、また、逆に人を数字で踊らせるにはどうしたらいいのか、というヒントをもらったとも思う。

そんな本です。

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