2011年2月8日火曜日

書評: そこまで言うか!

本は、新聞や雑誌、ラジオなどで誰かの話を読んで(聴いて)影響を受けて買うことが圧倒的に多い。1月に読んだ「心を鍛える」もそうだし「脳に悪い七つの習慣」もそうだ。

今回買った本は違う。書店をぶらぶらと歩いていて、目にとまったものだ。「そこまで言うか!」と銘打たれたそのカバーには、著名な勝間和代氏、ひろゆき氏、そして、ホリエモンの姿が写っていた。流行りモノ・・・そういったものに手を出すことに自分はいつも抵抗感を覚えるのだが、どうしても無視することができなかった。登場人物の取り合わせが妙だと思ったからかもしれない。この「三人が混ざることでどんなアウトプットが出てくるのだろうか」と興味がわいた。


全く毛色の違う三人の取り合わせ

堀江貴文氏(ホリエモン)は、東大文学部中退(おー、ジョブズやゲイツと一緒だ・・・)。ウェブ製作会社オンザエッヂを設立。2002年ライブドアを買収し、社名変更。会社は急成長に合わせて球団やフジテレビの買収劇で一躍、有名になった。2005年衆議院議員選挙立候補、亀井静香氏と争うも落選。検察に目をつけられ、証券取引法違反に問われ有罪判決を受ける。(現在はライブドアCEOから退き、宇宙ビジネスを実現させるべく、邁進中・・・らしい。)

勝間和代氏は、慶応大学商学部卒。当時史上最年少19歳で公認会計士補試験に合格。アーサーアンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。(朝から晩まで時間という時間を余すところ無く効率的に活用し、自身の能力向上と目標達成に向けて日々邁進中・・・という印象)

ひろゆき氏は、中央大学卒。米国留学中の1999年にネット掲示板「2ちゃんねる」を開設。東京プラス株式会社社長、有限会社未来検索ブラジル取締役、株式会社ニワンゴ取締役など複数の企業の経営に携わる(自分の幸せがどこにあるのかをしっかり理解して、それを満たすのに十分な範囲での生活を行っている・・・必要以上のお金は稼ぎたくないし、庶民的な生活を失いたくはない・・・のんびりゆったりマイペース、そんな印象)

気になる。うーん、どうしても気になる取り合わせだ。

この本ができたきっかけは、ひろゆき氏と勝間氏のある番組での対談

ところで、この本が出版される前にさかのぼること数ヶ月。実は、ひろゆき氏と勝間和代氏は、デキビジ(できるビジネスマンの略称らしい)という番組で対談した。私もその番組は見た。対談では、勝間和代氏が、色々なテーマに対して主張するも、のらりくらりと巧みに交わすひろゆき氏。勝間氏はヒートアップ。彼女の「ダメだこりゃ、議論にならないわ」といった捨てセリフがその対談の全てを物語っていたように思う。ただ通常とは異なるぎくしゃくした対談が、視聴者にはウケたのは間違いない。実際、インターネット上のブログやツイッターに様々な書き込みを見た。

そして、そんな視聴者の反応を知ったホリエモンも反応した。「再び対談の機会を設けるのならぜひ、自分に取り仕切らせて欲しい」と。それを知った編集者が「面白そうじゃないか。」ということで実現させたのが、この対談であり、この本の出版である。

満を持して行われた対談、今回はかみ合うのか?

起業者としての立場は同じだが、バックグラウンドは全く異なる三人・・・「デキビジでは意見が対立(?)していたが、実は、腹を割って話せばすごく意気投合する人たちなのではないのか?」なぁんと勝手な期待をしながら読み進めた。

結果、分かったのは、三人がそれぞれブレない軸・・・“哲学“と言ったほうがいいんだろうか・・・を持っていると言うこと。彼らが元々持っていた信念に加え、社会人として場数をこなす中で磨き上げてきたものであるだけに、強固たるものだ。自分の軸を持っている人・・・というのは実は今の世の中、少ないのではなかろうか。軸を持っていない最たる人が日本の首相陣だろうか(笑)。だから、どういったテーマ・質問に対しても、答えが矛盾しない。読みやすい。それゆえ、彼らの意見は、交わる部分と交わらない部分がはっきりとしている。そして、交わる部分は、荒波にもまれてきた三人が共有する”成功者(というとひろゆき氏に嫌われそうだが)の哲学“とも言えるわけで、「自分も学ぼう」という気持ちで読める。そして交わらない部分は、どれが正解・不正解という次元の問題ではないので、三者三様の意見を聞いて「自分はどうなんだろう?」と考えることを促される。思考力が高められる、と言えるかもしれない。

三者一様、三者三様の意見

たとえば、交わる部分・・・というところでは「三人とも保険会社を信用しない」という点だろうか。「保険会社のビジネスモデルがなんたるかを理解すれば、信用ならないのは当然なことだ」と主張する。したがって、勝間氏は必要最低限の利用にとどめているし、ホリエモンにいたっては保険には一切入っていない、と言う。

交わらない部分というところでは、たとえば、ホリエモンや勝間氏は、目標設定が重要であると考えている。ホリエモンは対談の中で「目標がないと、やる気が起きず、楽しくない」と語っている。ちなみに勝間氏は無収入生涯生存年数(今、突然収入がなくなったとしても、質を落とさずに生活を続けられる年数のこと)を45年(現在は20年分貯まったらしい)にする、という目標があるそうだ。ひろゆき氏は、特に目標にこだわりはないし、明確な目標は何もないと言う。個人的には、目標を持つことは人間を突き動かす原動力になるものなので絶対に必要だと思っていたのだが、ひろゆき氏の人生観を聞くと、必ずしもそれが正解ではないのかな・・・と考えさせられた。

ホリエモンの人生観はいったいどこから?

ところで、本書を読んでいると、どうしても無視できないのが、ところどころにあるホリエモンの強烈な発言だ。彼は、離婚しており一児の父親だが、曰く「死んだ後のまわり(家族など)に及ぶリスクは知ったこっちゃない。もし、自分が死んで家族が困るのなら、それはそれでまた彼らの人生。そうやって苦労することで、また別の道が開けるかもしれない。だから生命保険なんてものも絶対に入らない」とのこと。くわえて「自分の自由な時間を奪われたくないから子供と一緒に生活したいとも思わない」とも述べている。

別に支持もしないし、反対もしないが、ユニークな考え方ではある。このような考え方を持つようにいたった経緯には興味がわく。何かそう思わせるようなきっかけがあったのだろうか。残念ながら本書ではそれを読み解くことはできなかったが、今後、何かそれを知るきっかけがあればなと思うところではある。

時間とお金に余裕があるならぜひ

この本はソフトカバーだが、持ち歩くには重たいやたらと分厚い本だ。その厚さのせいなのか、値段は1,600円弱。先述したように、このアクの強い三者の取り合わせには非常に興味深いものがあり、その好奇心は十分に満たされたが、この好奇心を満たすためだけに1,600円は少々高いかもしれない。私同様に強い好奇心を持てない人は、時間が経てば、ブックオフなどセカンドハンドで安価に入手できるようになるので、それを待つというのが得策だろう。

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